海外ビジネス人材育成塾・育成塾プラス修了者に聞く「海外市場へのチャレンジ」廃棄バナナを活用し海外展開へ(東京都・ホワイトフロムグリーン)
2026年1月23日
ホワイトフロムグリーン(white from green
、本社:東京都渋谷区)は、規格外で破棄されるバナナを原材料として活用したレジスタントスターチ研究開発と、それらを使った商品の製造販売を行うフードテック系スタートアップ企業だ。レジスタントスターチとは、腸内細菌の栄養源になる「難消化性でんぷん」のことで、胃や小腸で消化吸収されず大腸の奥まで届き、腸活や糖質制限に役立つ健康食品として昨今注目を集めている。
代表取締役の工藤泰正氏は、レジスタントスターチの研究者との出会いをきっかけに、1999年に同事業をはじめた。商社や大手IT企業での販売・マーケティングの経験を活かし、腸活プロテインや気軽に楽しめるスナックなどの商品開発と製造販売を行っている。海外ビジネス人材育成塾(以下、育成塾)への参加を通じて海外市場へのチャレンジを実現した工藤氏に、海外展開のきっかけや今後の展望について聞いた(取材日:2025年11月13日)。

廃棄されていたバナナに価値を与えるビジネス
- 質問:
- バナナ由来のレジスタントスターチを活かしたビジネスを始めたきっかけは。
- 答え:
- レジスタントスターチの研究者との出会いから起業した。亜熱帯地域に集中しているバナナ農園では、欧米や日本などに輸出できない規格外のバナナを破棄することに課題を抱えていると気付いた。規格外のバナナからレジスタントスターチを作ることで廃棄量を減らし、バナナ農園で働く人たちの収入拡大にも貢献できると考えた。
- 商品化に当たっては、高品質のレジスタントスターチに合うバナナを見つけるため、アジアを中心に15カ所以上のバナナ生産地を回り、あらゆる農園の課題である規格外バナナを付加価値素材に変える当社の技術に強い関心が寄せられたため、事業の方向性に大きな自信を持つことができた。その中でも、情熱が高く生産量や品質に信頼を感じるフィリピンのオーガニック農園とまずは取り組むことを決めた。
- 質問:
- 海外ビジネスに取り組むことになった経緯は。
- 答え:
- 2024年10月、輸出を目指して米国の展示会に出展した。この展示会は食品原料の展示会で、米国市場を事前にリサーチし、品質や風味が同等レベル以上の素材が無いことが確認できたため、直接バイヤーからの評価を得ることが参加の目的だった。ここでの商談で、新しい素材として多くのバイヤーの関心を惹きつけられることができ、原料としてのポテンシャルを感じられた一方、供給量に圧倒的な課題があることを痛感した。これは国内の食品メーカーとの商談でも同じであった。
- 当時の生産量を考慮し、BtoBでの原材料供給を目指すのではなく、ブランドの顔となるようなBtoC製品を自社開発し、日本市場での評価を得たうえで輸出する方針に転換した。それが「ハイブリッド腸ファイバープロテイン」だ。この商品はレジスタントスターチ以外の原材料にも徹底的にこだわった。それまでのプロテインと比べて、圧倒的に美味しく、体を鍛えるために必要なプロテインと体調管理に重要な食物繊維を同時に摂取できる唯一の商品に仕上がった。日本国内には体づくりのためにプロテインを摂取する人が約1,000万人いると言われているが、その国内市場で、発売から1年半の間で200万食超を売り上げるヒット商品となった。国内では、自社電子商取引(EC)サイトを中心に確実にファンを増やしている。
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ハイブリッド腸ファイバープロテイン(同社提供)
育成塾でシンガポールの展示会に出展、販路開拓へ
- 質問:
- 育成塾を受講しようと思った動機は。
- 答え:
- 元々が商社出身で、グローバル市場に対する意識はあった。日本国内の消費人口が縮小してゆく将来を見据え、外貨を稼ぐことができる事業を作り上げていきたい気持ちがあった。一方、原材料の輸入などで貿易経験はあったものの、自社ブランド商品の輸出経験がなく、輸出に関する実務がわからなかった。そんな時にジェトロのウェブサイトで育成塾の存在を知り、参加を決意した。
- 質問:
- 育成塾から得られたものは。
- 答え:
- 一番は、輸出に取り組むという同じ目標を持った仲間を得られたことだ。私が参加したのは「展示会準備コース」で、メンバー全員が近々、海外展示会への出展を目指している人たちだった。同じ目標を持つ仲間という意識が強く、修了後も関係が続いている。
- さらに、展示会出展時の応対も学べた。プレゼンテーションはそれまでも多く経験しており、商談にはあまり不安がなかった。しかし展示会中、短時間で会社や商品について英語で説明し、来場者やバイヤーに足を止めてもらうことは難しい。この点について育成塾を通して考え、準備できたことは重要であった。例えば、商品の陳列の見せ方や、1分間で興味を持ってもらうためのエレベーターピッチ、試食の準備など。
- われわれのようなスタートアップは、起業するときには仮説ながら3C分析やSWOT分析、ビジネスプランを作り計画を立てる。事業がスタートしたら、創業時に立てた計画を、走りながらことあるごとにチューニングしていくわけだが、なかなかじっくりと振り返る時間が取れない。育成塾に参加することで、仮説とビジネス開始後の実感を加味した再分析を行い、それをグループでディスカッションしながら、自分のビジネスの海外における訴求ポイントを丁寧に振り返ることができたのは良かった。
- 質問:
- 育成塾の修了後、シンガポールでの展示会、「Beauty Asia 2025 Singapore」への共同出展を行うフォローアップ研修にも参加したが、その成果は。
- 答え:
- 大きな成果を3つ得られたと考えている。1つは世界的なラグジュアリーホテルチェーンとの取引の機会を得られたこと。2つ目はシンガポールで新たな現地ディストリビューターと出会い、輸出販売が可能になったこと。3つ目は、一緒にフォローアップ研修に参加した仲間との協力が、新たな製品開発につながったこと。
- 展示会に出展することは、当社のように食品を扱う会社には効果的だ。来場したバイヤーに対して、実際に商品を試して味わってもらうことは、言葉で説明するよりも何倍も効果がある。世界的なホテルチェーンとのビジネスは、たまたま関係者が当社のブースの前で足を止めて試食し、「美味しい!」と言ったことがきっかけで商談につながった。
- 小規模事業者が単独で海外の展示会に出展するハードルは高いが、育成塾の修了者が合同で出展することでさまざまな良い効果があった。準備段階から一緒に研修を行ったことでチームとしての一体感も生まれた。「Japan Beauty」をテーマにした合同ブースは目立ち、集客にも大いに役立った。
- また、育成塾のフォローアップ研修ということで、現地の消費者やインフルエンサーと直接話をし、彼女たちの意見を聞く機会を設けていただいた。実際に現地の顧客や消費者と接することでの気づきもあった。良い商品があって、それを持って行動すれば良い反応があり、そうして良い方向に進んでいくということにあらためて気付くことができた。
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シンガポールの展示会で来場者に説明する工藤氏(ジェトロ撮影)
「日本」の商品で米国市場に再チャレンジ
- 質問:
- 今後の展開について。
- 答え:
- 当社の初めての輸出事業は、2026年春にシンガポールから開始できるよう準備中だ。そのタイミングに合わせて、現在、海外向けに「日本」をアピールできる商品を開発している。具体的には「ハイブリッド腸ファイバープロテイン」の抹茶味だ。世界的な抹茶ブームであるが、この「ハイブリッド腸ファイバープロテイン石臼挽き抹茶」は、毎日のプロテイン摂取が待ち遠しくなるような味わいを目指した。抹茶独特の旨味と苦みを兼ね備えた最上級抹茶の探索、その風味を邪魔せず調和できる高純度でクリアなプロテインの組み合わせ施策を重ね、1年半の開発の月日をかけて創りあげた自信作だ。
- 当社の商品は日本で開発された技術に基づき生産されているが、これまで原材料は輸入品が中心だった。この新製品は国産バナナ由来レジスタントスターチに加え、日本初の抹茶地域ブランドとして注目を集める、伝統の石臼挽き製法「西尾の抹茶」を惜しみなく使用している。日本製・日本ブランドをアピールして、海外で販売していきたい。「ハイブリッド腸ファイバープロテイン石臼挽き抹茶」は、これまでの製品以上に海外市場を意識して開発したものなので、シンガポール展開を皮切りに、米国市場にも再チャレンジしたい。生産量が軌道に乗った暁に、米国の展示会にも積極的に出展する予定だ。
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ハイブリッド腸ファイバープロテイン石臼挽き抹茶(同社提供)
工藤氏は「新たな文化やトレンドを作ることも大事だが、既存の文化や習慣の中にもチャンスがあり、その中に入っていくことを意識している」と話す。レジスタントスターチの特長がまだまだ知られていない中、同社は国内のみならず海外での市場創造に果敢に挑戦してきた。ホワイトフロムグリーンの事例は、あきらめずにチャレンジし続けることと、商品に関して一切妥協しない姿勢が海外ビジネスでも成功を呼び寄せることを示す好例だ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ知的資産部海外ビジネス人材育成課 コーディネーター
志摩 浩史(しま こうじ) - 大手日用品メーカーで海外マーケティングや新規国・新市場開拓などを担当。複数の現地法人にも駐在。2023年、ジェトロ入構。
- 執筆者紹介
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ジェトロ知的資産部海外ビジネス人材育成課
町田 早弥香(まちだ さやか) - 2024年、ジェトロ入構。同年4月から現職。




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