「次のフロンティア」アフリカを巡る世界各国・地域の動向米国のアフリカ特恵制度「AGOA」、失効リスクに備える

2025年6月16日

米国のアフリカ・サブサハラ諸国に対する特恵関税制度の「アフリカ成長機会法(AGOA)」の有効期限が2025年9月末に迫る。米国連邦議会が有効期限を更新するなどの立法措置を事前に講じず、AGOAが失効すれば、サブサハラ諸国の産品の米国への輸入に対して、現在よりも高い関税が課される可能性がある。その場合、AGOAを利用して米国に自社製品を輸出する在サブサハラ諸国の日系企業や、サブサハラ諸国の産品を輸入する在米の日系企業にとっては、事業コストが増大することになる。本稿では、米国政府の輸入統計を基に、AGOAが失効した場合に影響が想定される国や産業を解説する。また、トランプ政権発足後のアフリカに関連する外交・通商政策の動向を振り返り、AGOAの更新可能性を展望する。

有効期限が2025年9月末に迫る

「アフリカ成長機会法(African Growth and Opportunity Act:AGOA)」は、2000年に成立した米国法だ。米国とアフリカ・サブサハラ地域間の貿易投資の拡大や、同地域の持続可能な経済成長の促進などを目的に、サブサハラ諸国の産品の米国への輸入に対して関税を免除する。2025年5月時点で、同地域49カ国のうち、市場経済、法の支配、人権擁護などの受益要件を満たすとして、米国が受益国に指定する32カ国の約6,900品目(注1)が同制度の対象となる(表1参照)。

ただし、AGOAの有効期限は2025年9月30日で、議会が有効期間を更新するなどの立法措置を事前に講じない限り、失効することになる。仮に失効した場合、受益国の産品の米国への輸入に対して、2025年10月1日の通関以降、AGOA特恵税率(0%)が利用できなくなる。代わりに、基本的に最恵国税率(MFN税率、米国の平均MFN税率は3.3%、注2)が適用されることになり、AGOA利用時と比べて高い関税が課されることになる。関税率の上昇は、一般的に調達価格の上昇を招き、輸入業者の利益圧迫や、販売価格の上昇につながり得る(注3)。

表1:AGOA受益国・除外国、除外理由
受益国、除外国 国名 除外理由
受益国 アンゴラ、ベナン、ボツワナ、カーボベルデ、チャド、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ、エスワティニ、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、モーリタニア、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ共和国、タンザニア、トーゴ、ザンビア ただし、ルワンダの衣料品に対する特恵待遇は2018年7月31日以降停止中。
除外国 ブルキナファソ、ガボン、ギニア、ニジェール 法の支配の欠如
ブルンジ、南スーダン 政治的暴力
カメルーン、中央アフリカ共和国、エリトリア、エチオピア、ウガンダ 人権侵害
赤道ギニア、セーシェル 所得水準の達成
マリ 人権侵害、法の支配の欠如、労働者の権利の侵害
ソマリア、スーダン、ジンバブエ これまでにAGOA受益国への指定なし

出所:米国通商代表部(USTR)、米国議会調査局(CRS)公表資料を基にジェトロ作成

米国は対アフリカ通商政策の柱の喪失が懸念

2024年の米国のAGOAを利用した財の輸入額(通関ベース、注4)は約84億ドルで、同年の財の輸入総額(約3兆2,534億ドル)の0.3%を占めるにとどまることから、失効による関税率の上昇のみが米国経済全体に及ぼす影響は短期的には小さいとみられる。

一方で、AGOAは、米国の経済的利益を推進する手段であるとともに、人権擁護などの受益要件の順守を通じて米国の重要視する価値観を広め、自由主義的な国際秩序を促進する手段だという指摘もあり、これを失効させれば米国は対アフリカ通商政策の柱を失う可能性がある。米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長のダニエル・ルンデ氏は、特に中国が「一帯一路」構想を通じてアフリカ諸国との関係を強化する状況などを踏まえて、「AGOA更新に失敗すれば、北京とモスクワでシャンパンの栓が飛ぶだろう」と述べ、米国のアフリカにおける関与が減退すれば、地政学的競争相手の中国やロシアを利する結果を招くと指摘している(注5)。

アフリカ諸国はAGOA利用割合が大きい国や産業の影響が懸念

サブサハラ諸国にとっても、AGOA特恵待遇を失った場合、米国市場での製品の価格競争力が損なわれる可能性がある。ただし、2024年の米国の受益国からの財の輸入総額(約291億ドル)に占めるAGOA利用額(約84億ドル)の割合は28.8%にとどまることから、AGOA特恵待遇を利用していなかった残りの7割超のサブサハラ諸国の産品の米国への輸入には、失効は直接的な影響を及ぼさないことになる。

一方で、AGOA特恵待遇を利用して米国に輸入する金額の大きい一部の国や産業にとっては、失効は打撃となる。AGOAの恩恵を特に享受しているのは、南アフリカ共和国で、同国のAGOA利用額(41億ドル)だけで、全サブサハラ諸国のAGOA利用額のほぼ半数を占める。同国のAGOA利用の中心の品目は乗用自動車〔米国関税分類番号(HTSコード)870323〕で、利用額は23億ドル、利用率はほぼ100%に上る。このほか、ナイジェリアやガーナでは石油や金属などの鉱物資源、また、ケニアやマダガスカルでは衣料品で利用額が大きく、同時に利用率も高くなっている(図・表2・表3参照)。

AGOA特恵待遇の利用機会を失う影響について、米国が2022年1月以降にエチオピアに対する受益資格を同国の人権状況を理由に停止した事例では(2021年11月4日付ビジネス短信参照)、同国が受益国から除外された後に、同国のAGOA利用の中心だったアパレル・繊維産業において、外国企業18社が撤退し、雇用が1万1,500人以上失われたなどとの経済的な影響も報告されている(注6)。

図:輸入総額、AGOA利用額、AGOA利用率の各上位5カ国の金額・割合(2024年)
図は、各値に合わせて各国の範囲全体の色を塗り分けた(濃い色ほど各値が大きい)。表は各値の上位5カ国を抜粋した。輸入総額は、1位が南アフリカで146億ドル、2位がナイジェリアで61億ドル、3位がアンゴラで17億ドル、4位がガーナで12億ドル、5位がコートジボワールで10億ドル。AGOA利用額は、1位が南アフリカで41億ドル、2位がナイジェリアで18億ドル、3位がケニアで6億ドル、4位がガーナで4億ドル、5位がマダガスカルで4億ドル。AGOA利用率は、1位がコンゴ民主共和国で89%、2位がエスワティニで79%、3位がケニアで78%、4位がトーゴで78%、5位がマラウイで71%。

注1:国境線は出所に準ずる。
注2:図は、各値に合わせて各国の範囲全体の色を塗り分けた(濃い色ほど各値が大きい)。
出所:米国国際貿易委員会(USITC)公表資料からジェトロ作成

表2:輸入総額、AGOA利用額、AGOA利用率の各上位5カ国の金額・割合(2024年)

輸入総額
順位 国名 金額
(億ドル)
1 南アフリカ共和国 146.1
2 ナイジェリア 61.1
3 アンゴラ 16.6
4 ガーナ 12.4
5 コートジボワール 10.1
AGOA利用額
順位 国名 金額
(億ドル)
1 南アフリカ共和国 40.8
2 ナイジェリア 17.6
3 ケニア 5.8
4 ガーナ 4.3
5 マダガスカル 3.5
AGOA利用率
順位 国名 利用率
(%)
1 コンゴ民主共和国 88.8
2 エスワティニ 78.9
3 ケニア 77.9
4 トーゴ 77.6
5 マラウイ 70.9

注:図は、各値に合わせて各国の範囲全体の色を塗り分けた(濃い色ほど各値が大きい)。表は、各値の上位5カ国を抜粋した。
出所:米国国際貿易委員会(USITC)公表資料からジェトロ作成

表2:AGOA利用額上位5カ国におけるAGOA利用額上位5品目の米国への輸入額(2024年)(-は値なし)
No. 国名 HTS
コード
(6桁)
品目 米国輸入額(100万ドル) AGOA利用額(100万ドル) 米国輸入額に占めるAGOA利用額の割合(%)
1 南アフリカ共和国 870323 乗用自動車(シリンダー容積1,500立方メートル超~3,000立方メートル以下) 2,322 2,321 100
711319 金属製身飾品 276 275 99.6
720241 合金鉄 195 195 100
870340 乗用自動車(その他) 86 86 99.8
890332 プレジャーボート 69 68 99.2
その他 11,665 1,136 9.7
合計 14,613 4,082 27.9
2 ナイジェリア 270900 原油 4,437 1,623 36.6
780110 精製鉛 78 78 100
230400 大豆油かす 30 29 98.8
392062 PET樹脂シート、フィルム等 15 15 100
190230 パスタ 2 2 99.6
その他 1,546 8 0.5
合計 6,108 1,755 28.7
3 ケニア 620343 男性用衣類(化学繊維製) 78 78 100
620342 男性用衣類(綿製) 59 59 100
611030 ジャージ、プルオーバー等(化学繊維製) 55 55 99.5
620463 女性用衣類(化学繊維製) 45 45 99.9
611020 ジャージ、プルオーバー等(綿製) 41 41 99.4
その他 461 298 64.7
合計 739 575 77.9
4 ガーナ 270900 原油 722 288 39.9
780110 精製鉛 32 32 100
180320 ココアペースト 19 19 100
610520 男性用シャツ(化学繊維製) 17 17 100
071430 ヤム芋 17 17 100
その他 436 52 11.9
合計 1,243 425 34.2
5 マダガスカル 620342 男性用衣類(綿製) 77 77 99.8
610520 男性用シャツ(化学繊維製) 33 33 99.9
610990 Tシャツ、肌着 30 30 99.8
620520 男性用シャツ(綿製) 29 28 96.7
611030 ジャージ、プルオーバー等(化学繊維製) 28 27 99.2
その他 539 155 28.8
合計 737 351 47.7

注:米国輸入額に占めるAGOA利用額の割合は小数点第2位を四捨五入している。
出所:米国国際貿易委員会(USITC)公表資料からジェトロ作成

米国議会で更新を求める声は根強くも、課題は山積み

失効を回避するためには、有効期限を迎える前に米国議会の上下両院が更新法案を可決したのち、大統領が同法案に署名する必要がある。議会の動きを振り返れば、前118議会(会期:2023年1月~2025年1月)では、AGOAの更新に関する2本の法案が超党派の議員により提出されたが、いずれの法案も本会議で採決に付されることはなかった(注7)。

AGOA更新の必要性についての超党派の支持がありながら、法案の採決に至らなかった理由として、AGOA更新と同時に、受益要件を含めた制度の改革や、貿易調整支援制度(TAA)の成立などについて、両党で合意できなかったことが挙げられる(注8)。2025年1月に発足した119議会(会期:2025年1月~2027年1月)も、TAA復活とのパッケージでのAGOA更新を主張する民主党議員の方針は変わっていないもようだ(注9)。だが、前議会から議席構成は変化したとはいえ、依然として与野党の議席数が僅差の今議会において、両党の意見が分かれる分野の合意形成は容易でない。

また、トランプ政権が関税措置を積極的に打ち出すのと対照的に、今議会の法案提出・審議に関する動きは鈍い。ドナルド・トランプ大統領の矢継ぎ早の大統領令など行政措置の発動に対して、共和党議員は不用意に介入したくなく、また、民主党議員は「情報洪水」の中で焦点を絞り込めずにいるとの指摘もある(2025年5月2日付ビジネス短信参照)。実際に、トランプ氏は就任後100日間で140本以上の大統領令などに署名した一方、議会が同期間で可決・成立にこぎ着けた法案は5本のみで、これは過去70年間の同期間の法案成立数として最も少ない水準だ。

政権は米国第一主義に基づき、サブサハラ諸国に相互関税を設定

仮に議会でAGOA更新法案が可決されたとして、大統領が署名し成立させるプロセスが待ち構える(注10)。前政権を振り返れば、ジョー・バイデン前大統領は2024年7月に、「AGOAを速やかに再承認・現代化するよう議会に要請する」との声明を発表し、更新に前向きな姿勢を見せていた(2024年7月30日付ビジネス短信参照)。2025年1月に就任したトランプ氏自身のこれまでのAGOAに対する直接の言及は確認できていないものの、「米国第一主義」に基づき、既存の米国と貿易相手国の通商関係を問題視しており、安易な関税免除には否定的な考えとみられる。

実際に、トランプ氏は2025年4月に、相手国の関税障壁の削減、非関税障壁の撤廃、米国の貿易赤字の縮小などを目的に、ほぼ全世界の国・地域に対して一律10%のベースライン関税を賦課したほか、一部の国・地域に対してベースライン関税よりも高い相互関税を設定した。相互関税については、2025年7月上旬まで適用が一時停止されているものの(2025年4月10日付ビジネス短信参照)、サブサハラ地域の17カ国も相互関税の対象となった。このうち、AGOA受益国のレソト(50%)は、全世界で最も高い関税率が設定されている(表4参照)。

AGOA最大の受益国の南アフリカ共和国に対するトランプ政権の風当たりも強い。トランプ氏は2025年2月に、南アフリカ共和国の人権状況や、同国がイスラエルを国際司法裁判所に提訴したことを受けて、関係閣僚に対して同国の人権状況への対処や、同国に対する援助や支援の停止などを指示する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発令した。また、3月には、駐米南アフリカ共和国大使を国外追放している(2025年4月18日付ビジネス短信参照)。

このほか、政権で通商を所管する米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は、AGOAや開発途上国に対する一般特恵関税制度(GSP)について、「相互主義に基づかず、米国に利益をもたらさない」などと批判的な考えを過去に示していた(注11)。外交を所管する国務省のマルコ・ルビオ長官は、2国間関係の緊張などを理由に、同月に同国で開催されたG20外相会合への参加を取りやめている(注12)。

表3:サブサハラ地域の相互関税の対象国・関税率
No 国名 関税率(%)
1 レソト 50
2 マダガスカル 47
3 モーリシャス 40
4 ボツワナ 37
5 アンゴラ 32
6 南アフリカ共和国 30
7 コートジボワール 21
8 ナミビア 21
9 ジンバブエ 18
10 マラウイ 17
11 ザンビア 17
12 モザンビーク 16
13 ナイジェリア 14
14 チャド 13
15 赤道ギニア 13
16 カメルーン 11
17 コンゴ民主共和国 11

出所:官報を基にジェトロ作成

企業は失効以外のシナリオも想定を

仮に、有効期限を迎える前に議会の上下両院が更新法案を可決し、大統領が同法案に署名して成立させることができたとしても、前述のとおり、更新と同時に制度が改革される可能性も考えられる。例えば、人権擁護などの受益要件が厳格化されるなど、米国が受益国に対してこれまでより高いコミットメントを求める場合には、要件を満たせずに受益資格を喪失する国が出てくる可能性がある。また、現行の制度がそのまま維持された場合においても、これまでも地域情勢の変化などにより受益資格を停止される国が複数あったことを踏まえれば、今後も受益資格を停止される国があっても不思議ではない。実際に、USTRは2025年5月にAGOA受益国の適格性に関する年次審査を開始しており、有効期限に関する立法措置の動向と併せて、受益資格の年次審査の動向も注目される(2025年6月4日付ビジネス短信参照)。

従って、AGOAを利用して米国に自社製品を輸出する在サブサハラ諸国の日系企業や、サブサハラ諸国の産品を輸入する在米の日系企業は、(1)有効期限を迎える前に更新される可能性、(2)失効したまま更新されない可能性、(3)更新されても米国政府が随時各国の受益資格を停止する可能性など、複数のシナリオを想定して発生し得るコストを洗い出し、生産や調達の実現可能性を検証することが求められるだろう。


注1:
AGOAに基づく1,800以上の品目に加えて、一般特恵関税制度(GSP)に基づく5,100以上の品目に対しても、特恵待遇が供与される。対象品目は、米国関税率表の特別(Special)欄に「D」(AGOA)、「A」「A+」「A*」(GSP)が付された品目。また、対象品目は南アフリカ共和国のシンクタンクのトララック(Tralac)が作成するAGOAに関するポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも検索可能。なお、GSPは2020年末に失効しているが、AGOA対象国からの米国への輸入に対してはGSPに基づく特恵待遇も引き続き適用可能。GSPについては2023年5月22日付地域・分析レポート参照
注2:
WTO公表資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(13.1KB)に基づく、2023年の単純平均MFN税率。
注3:
Elijah Asdourian and David Wessel, “What are tariffs, and why are they rising?”, Brookings Institute, February 11, 2025.
注4:
AGOAの特恵待遇に加えてGSPの特恵待遇も含む。
注5:
Daniel F. Runde, “The AGOA Ship Is Sinking: Congress Must Act Now to Save It”, Center for Strategic and International Studies (CSIS), December 20, 2024.
注6:
“Ethiopia loses 11,500 jobs, 18 foreign companies following AGOA suspension”, The Reporter, February 15, 2025.
注7:
2024年4月に上院に提出された法案(S.4110外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、AGOAの有効期限を2041年まで更新する内容で、クリス・クーンズ上院議員(民主党、デラウェア州)とジェームズ・リッシュ上院議員(共和党、アイダホ州)が超党派で主導した。2024年12月に下院に提出された法案(H.R.10366外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、AGOAの有効期限を2037年まで更新する内容で、ジョン・ジェームズ下院議員(共和党、ミシガン州)が主導した。なお、両法案は、118議会の会期が終了して廃案となった。両法案のほか、2024年1月に下院で通商を所管する歳入委員会のジェイソン・スミス下院議員(共和党、ミズーリ州、同委員長)およびリチャード・ニール下院議員(民主党、マサチューセッツ州)がAGOAの更新と改革に向けた取り組みを歓迎する超党派での共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。また、同委員会は2024年6月にAGOAに関する公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開催した。
注8:
輸入増加などにより損害を被る米国労働者に対する支援制度。TAAに関して、民主党議員はTAAとのセットでAGOAやGSPの更新を主張したのに対し、共和党議員はTAAについて大統領貿易促進権限(TPA、通商交渉に関する権限を大統領に付与する法律)と抱き合わせであり、TPAが2021年6月に失効したままになっている以上、TAAの復活は選択肢に上がらないなどと主張していた。William Alan Reinsch, “Is the Congressional Train Leaving the Station?”, Center for Strategic and International Studies (CSIS), April 22, 2024.
注9:
ジェトロによる2025年4月の議会スタッフへのヒアリングに基づく。
注10:
大統領は議会が可決した法案に対して拒否権を発動することができる。議会は大統領の拒否権の発動に対して、上下両院の3分の2以上の賛成で決議案を再可決できるが、野党が僅差の議席数の今議会において、3分の2以上の合意を形成するハードルは高い。
注11:
USTR代表人事承認に関する上院財政委員会の2025年2月の公聴会PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(468KB)において、ロン・ワイデン上院議員(民主党、オレゴン州)の質問(8問目)の中で明らかにされた。
注12:
Alexandra Sharp, “Rubio Skips G-20 Over South Africa’s Land Ownership, Israel Policies”, Foreign Policy, February 20, 2025.
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所〔戦略国際問題研究所(CSIS)日本部客員研究員〕
葛西 泰介(かっさい たいすけ)
2017年、ジェトロ入構。対日投資部、ジェトロ北九州事務所、調査部米州課を経て、2024年2月から現職。