米USTR、アフリカ特恵制度「AGOA」受益国の適格性に関する年次審査開始、パブコメ募集
(米国、アフリカ)
ニューヨーク発
2025年06月04日
米国通商代表部(USTR)は5月30日、アフリカ・サブサハラ諸国に対する特恵関税制度「アフリカ成長機会法(AGOA)」の受益国の適格性に関する年次審査を開始すると官報で公示した。
AGOAは、米国とサブサハラ地域間の貿易投資の拡大や、同地域の持続可能な経済成長の促進などを目的に、サブサハラ諸国の産品の米国への輸入に対して、関税を免除する制度だ。5月時点で同地域49カ国のうち、市場経済や法の支配、人権擁護などの受益要件を満たすとして、米国が受益国に指定する32カ国(注1)の約6,900品目(注2)が同制度の対象となっている。
USTRは、受益国の適格性に関する意見や情報について、7月31日までウェブサイトでパブリックコメントを募集する(案件番号:USTR-2025-0012)。また、7月18日に公聴会を開催する。
なお、AGOAは有効期限が2025年9月30日に迫る。連邦議会が有効期限を延長するなどの立法措置を事前に講じなければ、失効する。失効した場合、受益国の産品の米国への輸入に対して、2025年10月1日の通関以降、AGOA特恵税率(0%)が利用できなくなる。代わりに、基本的に最恵国税率(MFN税率)が適用されることになり、AGOA利用時と比べて高い関税が課されることになる。
今回の年次審査と意見募集はAGOA受益国の適格性に関するもので、AGOAの制度自体の有効期限の延長要否に関するものではない。ただし、有効期限が今後延長されたとしても、国によっては米国が年次審査の結果を踏まえて受益資格を停止する可能性もあり(注3)、有効期限の立法措置の動向と併せて、受益資格の年次審査の動向も注目される。
(注1)受益国の32カ国は、アンゴラ、ベナン、ボツワナ、カーボベルデ、チャド、コモロ諸島、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ、エスワティニ、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、モーリタニア、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ共和国、タンザニア、トーゴ、ザンビア。受益国でない17カ国は、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、ガボン、ギニア、マリ、ニジェール、セーシェル、ソマリア、南スーダン、スーダン、ウガンダ、ジンバブエ。
(注2)AGOAに基づく1,800以上の品目に加えて、一般特恵関税制度(GSP)に基づく5,100以上の品目に対しても、特恵待遇が供与される。GSPは2020年末に失効しているが、AGOA対象国から米国への輸入に対しては、GSPに基づく特恵待遇も引き続き適用可能。対象品目は、米国関税率表(HTSUS)の関税率欄に「D」(AGOA)、「A」「A+」「A*」(GSP)が付された品目。
(注3)例えば、米国は2024年1月に、中央アフリカ共和国、ガボン、ニジェール、ウガンダの受益資格を停止している(2023年11月8日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、アフリカ)
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