アフリカと日本の未来切り拓く、日系スタートアップの挑戦Anique、日本のエンターテインメントの海外展開を目指す(アフリカ)

2025年6月20日

アフリカでは人口増加が続く中、年齢中央値は約19歳で若者が多い。近年、アフリカの若者にも、アニメやマンガなど日本のコンテンツが知られるようになってきた。アフリカ各地で日本のポップカルチャー関連のイベントも開催されており、今後、さらに普及する可能性がある。また、スマートフォンやインターネットの普及により、EC(電子商取引)での買い物やオンラインでの購読・視聴も進みつつある。

このような中、日本の主要なコンテンツホルダー20社以上との協業実績があるAnique外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(アニーク)は、アフリカを含む海外でのコンテンツ展開を目指す。同社は週刊東洋経済の2023年「すごいベンチャー100」にも選出された。

同社のアフリカでの挑戦について、代表取締役の笠井高秀氏にインタビューを行った(取材対応日:2025年5月27日)。


代表取締役の笠井氏(同社提供)
質問:
御社の概要は。
答え:
Anique株式会社は、2019年に設立された日本発のエンターテインメント・スタートアップ企業だ。当社は、「リアルとデジタルの力で、キャラクターに命を吹き込み、世界を感動させる。」というミッションを掲げ、アニメ・マンガ・ゲームといった日本のコンテンツを軸に、国内外のファンに新しい体験価値を提供する事業を展開している。
私たちの主な取り組みは、大きく「リアルグッズの企画・販売」「デジタルコンテンツの開発・提供」「バーチャル展覧会・AR体験の実施」の3つに分類される。例えば、人気アニメ作品とのコラボグッズを、オンラインで販売することだけにとどまらず、物理的なポップアップストアを国内外で展開するなど、ファンとのリアルな接点を大切にしている。一方で、NFT(非代替性トークン)やAR(拡張現実)などの最先端技術を用いた「デジタルグッズ」や「体験型コンテンツ」の開発にも積極的に取り組み、リアルとデジタルの垣根を越える新たなユーザー体験を追求している。
また、公式のオンライン展示空間「Anique Museum」や、スマートフォンで体験可能な「Anique AR」など、独自のプラットフォームを活用しながら、IPホルダー(出版社・制作会社など)やクリエイターの皆さまと協業し、作品やキャラクターの魅力を多角的に届ける取り組みを推進している。これまでに『進撃の巨人』『五等分の花嫁』『ブルーロック』『ハイキュー!!』など、国内外で高い人気を誇る作品と連携してきた。
現在では、台湾に現地法人を設立し、アジアを中心に海外展開も本格化している。日本のコンテンツが持つ「感動の力」を世界に届けるため、さらなる挑戦を続けていく。
私たちAniqueは、コンテンツとファンを「共感」でつなぎ、エンターテインメントの未来を切り開く存在でありたいと考えている。
質問:
御社の商品・サービス概要は。
答え:
リアルグッズの企画・販売、ポップアップストアの開催、デジタルグッズの企画・システム開発を行う。詳細は以下のサービスサイトを参照。
  • Anique Shop外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます :Aniqueが企画・制作したアイテムを購入できる ECサービス。
  • Anique Museum外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:デジタルとリアルを融合し、日本のアニメ、マンガ、ゲームコンテンツを幅広く展示するバーチャル美術館。
  • Anique AR外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:Instagram / TikTokの AR 技術でグッズの新しい遊び方を提案。
  • Anique Digital Collection外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:世界中にファンを持つアニメ・マンガ・ゲーム・イラストなどのアートワークを特別な体験とともに届けるサービス。
質問:
なぜ、アフリカに取り組もうと思ったか。
答え:
アフリカは、今後数十年にわたり最も人口が増加し、インターネット普及率も急速に高まる成長市場だ。一方で、日本のポップカルチャーは既に世界的に高い評価を受けており、「コンテンツ大国・日本」の価値を、アフリカの若い世代にも届けたいという思いがある。また、ジェトロの「ジャパンテック・アフリカチャレンジ」採択をきっかけに、現地ニーズとの接点が見えたことも大きな後押しとなった。
質問:
実際にアフリカに取り組んだ感触は。可能性は感じたか。
答え:
モロッコで開催されたアフリカ最大級の大型情報通信系展示会「GITEX AFRICA 2024」に出展し(2024年6月12日付ビジネス短信参照)、多くの現地の方々と直接交流したことで、日本のアニメやキャラクター文化への高い関心を肌で感じた。特に、デジタル技術を通じて「文化的な距離」を一気に縮められる手応えがあり、今後の展開に大きな可能性を感じた。日本とアフリカのクリエイティブな架け橋となれることに、ワクワクしている。
質問:
アフリカの課題は。また、どのように解消できると考えるか。
答え:
一番の課題は、ロジスティクスや決済などインフラ面でのギャップだ。現地ユーザーに商品や体験を届ける手段について、日本や他のアジア圏とは異なり、より柔軟かつ地域ごとの最適化が求められる。また、言語や文化理解も不可欠だ。これらの課題は、現地パートナーとの連携や、まずはデジタル体験を起点に接点をつくることで、段階的に解消していけると考えている。
質問:
アフリカへの意気込みは。
答え:
Aniqueは、「好き」という気持ちを世界中に届けることができる企業でありたいと考えている。アフリカは、情熱と創造力に満ちた大きな可能性を秘めた地域だ。現地の皆様とともに、日本発のキャラクター文化を軸に、共感と熱狂を生み出すプロジェクトを一歩ずつ形にしていきたい。私たちは、アフリカとの未来を本気で見据えている。
執筆者紹介
ジェトロイノベーション部スタートアップ課
大田 真澄(おおた ますみ)
2024年5月、ジェトロ入構。同月から現職。
執筆者紹介
ジェトロイノベーション部スタートアップ課
加峯 あゆみ(かぶ あゆみ)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部、ジェトロ大分、ジェトロ・クアラルンプール事務所を経て、2024年10月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。