アフリカと日本の未来切り拓く、日系スタートアップの挑戦DO・CHANGE、銅線などの廃棄物を資源に変える(アフリカ)

2025年6月4日

国連人間居住計画(UN-Habitat)は、アフリカは今後、人口増加により、世界でも廃棄物の発生量が多い地域になると予測している。また、アフリカで発生する廃棄物の90%以上は、管理されていないごみ捨て場や埋立地で処理され、多くが野焼きなどと関連しているという。

香川県に本社をおくDO・CHANGE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、被覆銅線から効率的に金属銅を抽出する技術により、アフリカで野焼きを減らし、環境にやさしい技術で資源をリサイクルする事業を展開しようとしている。同社のアフリカでの挑戦について、代表の岸本明弘氏に話を聞いた(取材日:2025年4月4日)。


代表の岸本氏(同社提供)

銅線から金属を抽出する同社の試作機(同社提供)
質問:
御社の概要は。
答え:
2024年3月に創業したスタートアップだ。開発途上国では、廃棄物として回収された被覆銅線から資源となる銅を抜き出すのに、野焼きなどを行っている。野焼きでは、ダイオキシンが発生して作業員や周辺コミュニティに健康被害や環境汚染が出ることが懸念されている。
弊社は、被覆銅線から環境にやさしい形で銅を効率的に取り出して再資源化するリサイクル技術を使用する。この技術を使って、アフリカのパートナーとともにリサイクルの枠組みを立ち上げ、ビジネス化していくことを目指している。
また、銅線の被覆部分を炭化させた炭化物は、活性炭として水質浄化や消臭用途などで再利用できる可能性がある。さらに、銅線とは別に、中古衣類のリサイクル事業も今立ち上げようとしているところだ。
参考:「特許技術による被覆配線処理プロセス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(DO・CHANGEウェブサイト)

同社の技術で取り出した銅線(同社提供)

被覆部分の炭化物(同社提供)
質問:
起業の経緯は。
答え:
弊社は、清水建設にて2022年度から開始された社内起業制度を活用して設立した会社だ。創業は2024年3月。清水建設との資本関係はないが、事業展開にあたり様々な支援を受けている。「天ぷら」のように廃油を使った熱処理に関する技術は、ポリテック香川と香川高等専門学校の共同特許だ。
質問:
アフリカに取り組むきっかけは。
答え:
アフリカでのビジネスは当初、想定していなかった。社内での起業の審査の際に、アフリカでは、廃棄物の野焼きをやっているので社会課題の解決とビジネスの可能性があると、社外審査員からのアドバイスあり、アフリカの特にガーナに注目した。
ガーナには数回渡航し、2024年12月に銅線リサイクルのPoC(概念実証)として、トライアルで被覆配線を購入するところから、銅線を取り出し再資源化して、その資源を販売するところまで実施した。
PoCの結果、現地ワーカーの作業の飲み込みは早かったし、再資源化して販売することもできたが、利益を出すところまでは至らなかった。廃線収集のコストや、銅の含有量に応じた選別、資源の販売価格などを改善していくことによって利益が出せると考えている。
ケニアでは、廃線の再資源化事業と併せて、日本企業と協業して中古衣料から化学繊維を取り出してリサイクルする事業の立ち上げも行っている。今後、法人設立の比較的しやすいケニアを念頭に、アフリカでの拠点設立も検討している。
質問:
アフリカでの可能性と課題は。
答え:
実際にアフリカに渡航して、野焼きする現場も見たので、ビジネスの可能性はあると考える。もちろん、廃線を集めて処理し資源を販売するところまで一貫してできるのが望ましいが、技術としての実装を目指すのが優先事項と考えている。
課題は、どれだけ量を集められるか。量がなければ利益を上げることはできない。その点、量を確保できているパートナーを見つけられれば、数字的なものは見えてくると考えている。スクラップ関係はどこでも競争は激しく、既得権益などもあるので、まずは競争できるところから技術を実装していくよう取り組んでいくつもりだ。
質問:
今後の方向性は。
答え:
自分自身、最初はアフリカに行くことなど考えていなかった。しかし、実際にアフリカに行ってみて、色々な事業の可能性があると思った。アフリカは援助のイメージがあるが、援助は一時的なものなので、いかにビジネスとして継続していけるかが大事だと考えている。そのためには、パートナーによく理解してもらって、一緒に利益をシェアできるような関係を作らないと、どこか一社だけがもうかる仕組みでは続かない、と現地の人たちと触れ合ううちに感じるようになった。
アフリカに行くと、日本よりパワーがあって、生きているという感じがする。社会課題解決とビジネスの両輪はなかなか難しいけれども、色々な日本企業と協力して面白い事業ができるのではないかと思う。
これまで社名の「DO・CHANGE」のとおり、「やれば、変わる」との気持ちで取り組んできた。今後も、身の丈にあったやれることから取り組み始めて、社会課題の解決につなげたい。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。