欧州各国の脱炭素・循環型ビジネス最新動向プラスチック廃棄物削減へ、対策が官民で進む(英国)

2023年12月28日

国連では2015年、「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。これに基づき、各国で対策が進められている。プラスチック廃棄物の問題は「(目標14)海の豊かさを守ろう」のほか、「(目標12)つくる責任、つかう責任」などに深く関わっている。

本稿では、英国におけるプラスチック廃棄物削減に向けた取り組みと、2022年4月から施行されているプラスチック包装税、また2023年10月から施行されているプラスチックカトラリーの禁止対象拡大について、同国の小売店での取り組みを踏まえて紹介する。

2018年に行動計画を発表

英国政府は2018年、「25カ年環境計画」(A Green Future: Our 25 Year Plan to Improve the Environment外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。この計画には、(1)プラスチック廃棄物を削減する、(2)野生生物を保護する、(3)環境保護で世界的リーダーになる、(4) EU離脱を契機に、英国独自の環境保護政策を構築する(グリーンブレグジットの実現)、(5)住宅開発に当たって事業者の負担を増やすことなく、生物多様性と環境の両方を開発前より良い状態にする(net environmental gain)、(6)自然に親しむ学校(nature friendly schools)の設立などを通し国民と自然の結びつきを強める、などの目標が盛り込まれた。

それ以降、英国ではプラスチック廃棄物の削減に関して様々な取り組みが進められてきた(表1参照)。

表1:英国が進めるプラスチック廃棄物削減の取り組み(2018年以降)
開始日 項目 内容
2018年1月 化粧品やパーソナルケア製品に含まれるマイクロビーズの禁止 化粧品や歯磨き剤、石けんなどのパーソナルケア用品(衛生日用品)についてマイクロビーズを使用した製品の製造を禁止する。同年6月からは、マイクロビーズを含む製品をイングランドとスコットランドで販売するのも禁止。
2020年10月 使い捨てのプラスチック製ストロー、マドラー、綿棒の供給制限 イングランドで、ストロー、マドラー、綿棒について、使い捨てプラスチック製品の供給を原則として禁止。さらに2021年7月以降は、パッケージに使い捨てプラスチック製ストローを付属する飲料提供を禁止。
2021年5月 使い捨てレジ袋有料化義務を全小売事業者に拡大、販売価格引き上げ イングランドで、レジ袋の有料化をすべての小売業者に拡大(それまでは、大規模小売業者に限って適用)。同時に、その販売価格も、最低5ペンス(約9円、1ポンド=100ペンス、1ポンド=約183円)から、最低10ペンスに引き上げ。
2022年4月 プラスチック包装税を施行 包装用プラスチック1トンあたり210.82ポンド(2023年4月時点)を課税。対象になるのは、包装用プラスチックを年間10トン以上、生産または輸入する事業者。
2023年10月 使い捨てプラスチック製品の禁止対象を拡大 イングランドで、使い捨てプラスチック製の皿、トレー、ボウル、カトラリー、風船の棒、および特定の種類のポリスチレン製のカップと食品容器を禁止。あらゆる事業者が対象(小売店、テイクアウト、食品販売店、接客業などを含む)。

出所:英国政府ウェブサイトからジェトロ作成

持続可能な資源利用を推進するNGOが、WRAPだ。WRAPは2023年11月、英国プラスチック協定(注1)に関して2022年度の年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。協定に参画する企業が販売する品目には、不必要または問題含みと特定されたものが8種ある。具体的には、プラスチック製の(1)カトラリー、(2)皿とボウル、(3)ストロー、(4)綿棒、(5)マドラー、(6)家庭用ポリスチレン梱包(こんぽう)材、(7)オキソ分解性プラスチック、(8)ポリ塩化ビニル包装(PVC)材、だ。報告書によると、このうち(1)~(5)については2018年以降、点数では99.6%削減された。2022年2月にはこれら8品目に加えて、缶・ボトルなどの複数パック向けのラッピング、PVCラップ、堆肥化できないティーバッグおよびコーヒーバッグなど、6種が追加されている。

一方、プラスチック包装材のうち、リサイクル可能になっているものの割合は、2018年に66%だったのに対し、2022年は71%と5ポイントの増加にとどまった。プラスチックフィルムのリサイクル可能率が低くとどまっていることが、要因とされている(図1参照)。

プラスチック包装材のリサイクル率は44%が55%。11ポイント増加した。WRAPはリサイクルされるプラスチックの増加に加え、市場に出回るプラスチック包装自体の減少が寄与したとしている。目標の70%とは、まだ差がある(図2参照)。

図1:リサイクル可能なプラスチック包装の割合
実績値は2018年は66%、2019年は64%、2020年は70%、2021年は70%。2025年の目標値は100%。2022年から2024年の実績値、目標値は未発表。

注:2023年~2024年は未発表。2025年は目標値。
出所:WRAP資料からジェトロ作成

図2:プラスチック廃棄物のリサイクル率
実績値は2018年は44%、2019年は50%、2020年は52%、2021年は50%。2025年の目標値は70%。2022年から2024年の実績値、目標値は未発表。

注:2022年は推定値、2023年~2024年は未発表。2025年は目標値。
出所:WRAP資料からジェトロ作成

2022年4月からプラスチック包装税を導入

英国政府は2022年4月、プラスチック廃棄物削減を期し、プラスチック包装税を施行した。この制度では、対象になる包装材1トン当たり210.82ポンド(約3万8,580円、1ポンド=約183円)が課税される(2023年4月時点)。この制度の眼目は、再生プラスチックの利用促進にある。すなわち、再生包装品を製造するための経済的インセンティブを事業者に与えることが目的になっている。

課税対象者がとるべき手順は、表2のとおりだ。対象者にしてみると、継続的なコストがかかることになる。具体的には、確定申告の完了、提出、支払い、適切な記録の保持(輸出控除の申請に必要なものを含む)、申告書の修正などが挙げられる。

表2:プラスチック包装税登録に必要な手順
手順 要確認事項
1 「プラスチック包装税の対象になる包装材」「完成素材(Finished components)」「実質的な変更(Substantial modifications)」の定義を確認する。それら定義を踏まえ、製造または輸入する包装材が課税対象になるのか確認する。
2 製造・輸入する包装材の重量を計算する。その、課税登録が必要かを確認する。
3 登録方法を確認する。
4 保管しなければならない記録や会計手段、適切に調査する方法を確認する。
5 輸出や加工された部品が税額軽減を受けられるかを確認する。
6 申告書の提出方法を確認する。

出所:英国政府ウェブサイトからジェトロ作成

この制度で、対象となる事業者は、年間10トン以上のプラスチックを製造または輸入する企業とされている。より具体的には、(1)今後30日間のうちに製造、輸入する完成プラスチック包装材が10トン以上に及ぶ予定の企業、または(2)過去12カ月間で製造・輸入した最終プラスチック包装材が10トン以上の企業、だ。

一方、課税対象になるプラスチックは、包装材の重量比で再生プラスチックの使用量が3割未満のプラスチック包装材だ。換言すると、再生プラスチックの使用量が3割以上なら、課税対象から外れる。ただしその場合、製品ラインごとに記録を保管する必要が生じる。

なお、当該制度で言うプラスチック包装には、ハンガーやラベルも含まれる(英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。こうしたことについても、確認が必要だ。

逆に、「人用医薬品の包装」「包装以外の用途として長期間使用するもの」「複数の商品を安全に輸入するための輸送用梱包材として使用されるもの」「空運や海運、鉄道での商品保管で使用される包装材」は、課税対象外になる。また、プラスチックが部分的に使用されるだけなら、課税対象から外れることがある。具体的には、「プラスチックが重量比で最大素材でない場合」「プラスチックと他素材が同じ割合で使用される場合」は、課税対象にならない。例えば、当該包装がプラスチックと厚紙を使用している場合、プラスチックの重量が厚紙の重量以下なら、課税対象外になる。

なお、課税対象外でも、年間の10トンの総重量の計算には含めなければならない場合もある。この扱いはプラスチック包装材の種類や用途によって異なるため、注意を要する(表3参照)。

表3:課税対象および対象外の包装
課税上の取り扱い 要件
課税対象
  • 年間10トン以上のプラスチックを製造または輸入する事業者。
  • 包装材の重量比で、再生プラスチックの使用量が30%未満のプラスチック包装。
課税対象外 (1)「年間の総重量」の計上にあたって除外
  • 輸入品の輸送に用いられるもの。
  • 国際的な航空・船舶・鉄道輸送にあたり、保管に用いられるもの。
  • 商品の長期保管に使用されるもの(例:工具箱、救急箱など)。
  • 商品の使用にあたり包装が不可欠なもの(例:プリンター用トナーカートリッジ、吸入器、など)。
  • 商品展示のために再使用できるようデザインされたもの(例:陳列棚、商品展示台など)。
(2)年間の総重量に含める
  • 人用医薬品と製造工程で直接接触する包装。
  • 包装以外の用途で長期間使用するもの(例:ホワイトボードのコーティングに使用されるプラスチックフィルム)

出所:英国政府ウェブサイトからジェトロ作成

しかし、所要の手続きが必ずしも順調に進んでいない可能性もうかがわれる。英国の法律事務所ピンセントメイソンズによると、導入初月(2022年4月)に登録した英国企業はわずか992社だった。歳入関税庁(HMRC)の試算で、対象企業が約2万社に及ぶはずだったにもかかわらず、だ。これに関連して同所は、登録義務を認識していなかった企業がある可能性を指摘した。例えばハンガーが対象になるなど、「プラスチック包装」の定義が必ずしも明確でなかったことが一因になっているという。

使い捨てプラスチック製品の禁止対象を拡大

イングランドでは以前から、「ストロー」「マドラー」「綿棒」について、使い捨てプラスチック製品を販売することができなかった。英国政府は2023年1月、その禁止対象を追加すると発表した。施行は、2023年10月から予定している(2023年1月24日付ビジネス短信参照)。追加されるのは、「カトラリー」「皿」「トレー」「ボウル」「風船の棒」「特定のポリスチレン製カップ・食品容器」だ。措置の背景として、使い捨てカトラリーの低リサイクル率を指摘した。政府によると、英国では使い捨てカトラリーが年間約27億個、使い捨て皿が約7億2,100万枚、使用されている。リサイクルに回るのは、そのうちわずか10%にすぎない。

これを受け、英国企業は対応に迫られている。食品関連団体、ブリティッシュ・テイクアウト・キャンペーンはBBCの取材に対し、企業に対する支援が必要と訴えた(2023年1月14日付報道)。代替品の切り替えには、コストがかかる。テイクアウトを提供する店舗を経営する小規模事業者は、その費用を価格に転嫁せざるを得ないためだ(注2)。

一方、ロンドンには、既にプラスチックを使用していない企業も複数存在する。BBC(注2)によると、ベーカリーE5ベイクハウスは、5年前から脱プラスチックに取り組み、堆肥化可能な生分解製容器、利用者が再利用可能なカップやテイクアウト用の箱を使用している。また、利用者にカップの持参を推奨。持参していない利用客には、スタートアップ企業「リユーサー」が提供する再利用カップを使うことができるサービスを導入済みだ。


カフェで使用される紙製のふたと100%リサイクル材のペーパーナプキン(ジェトロ撮影)

スーパーマーケットも対策

ウバマーケット(注3)の調査によると、プラスチック汚染の責任はスーパーマーケットとメーカーにあると、77%の人が考えている。

では、英国の当該業界は、どのような取り組みを講じてきたのか。当地大手スーパーマーケット3社の目標と取り組みについてまとめてみた(表4)。

表4:各スーパーマーケットによる目標と取り組みについて
企業名 目標 取り組み内容
テスコ
(Tesco)
2018年初頭からプラスチック包装に関する取り組みを開始。2019年半ばには、4R戦略(Remove、Reduce、Reuse, Recycle)を発表。循環型経済への移行を目標に掲げた。 ヨーグルトやデザートのふた、複数の缶詰をまとめるための包装など、多数のプラスチック使用を廃止(2023年7月時点で22億個以上を削減済み)。なお、菓子やチーズなど、単純に取り除けない包装は、最小限に抑えるよう対処してきた。
これまでに、1年間に使用する包装の重量を4,500トン以上削減。
2020年から2022年にかけては、再利用可能な容器での販売を期し、そのためのプラットフォームを提供する企業(ループ)と提携。再利用可能な瓶に充填(じゅうてん)して販売することによるリユースの実証を実施。
マークスアンドスペンサー
(M&S)
2040年までに炭素純排出量をゼロにすることを目標にしている。 野菜などのプラスチックトレーを除去。こうした取り組みを通じ食品事業部門で、2021年単年度に7,500万個のプラスチックを削減。
食品に加え、衣服や家庭用品の分野でもハンガーの改善・使用中止やプラスチックカバーの撤去などの取り組みを進めた。2018年以降、6,000万個のプラスチックを削減。
セインズベリーズ
(Sainsbury’s)
2025年までに、自社ブランドのプラスチックパッケージを50%削減。リサイクル材の含有量とリサイクル可能性を向上させる。 自社ブランドの電球と電池のプラスチック包装をすべて取り除いた。スーパーマーケットとして初の試み。その結果、年間15トンのプラスチックの削減に成功。
また、WRAPや消費者商品フォーラム(Consumer Goods Forum、消費者向け商品の小売事業者・製造者を取りまとめる国際団体)などと連携した取り組みも進めている。

出所:各社ウェブサイトからジェトロ作成


スーパーマーケットで配布される木製カトラリー(ジェトロ撮影)

代替製品開発にスタートアップが参画

プラスチック廃棄物削減に向け取り組むスタートアップも見逃せない。ここでは、代替プラスチックを提供する英国発企業として、ケルピー、ノットプラ、デリパックの3社を紹介する。

ケルピー(Kelpi)

西部バースに2020年に設立された。同社はバイオ精製した海藻をベースに、家庭で堆肥化でき、海洋にもやさしいバイオプラスチック包装を製造する。製品は、衣類用ポリバッグやホットフード用のトレーなど、幅広い。

開発したバイオプラスチック技術を特許出願中。多国籍企業との協力事例もある。

ノットプラ(Notpla)

ロンドンのハックニーで、2014年に設立。海藻・植物をベースとした包装容器を製造している。自然環境で生分解可能、かつ家庭での堆肥化も可能だ。電子機器、ファッション、化粧品から食品に至るまで、複数の業界のプラスチック問題に対応している。

同社製品の1つに、「ノットプラコーティング」がある。この製品は、持ち帰り用食品包装に用いられる従来のコーティングと同様、耐油性や耐水性に優れている。違いは、プラスチックでなく海藻から作られていることだ。ジャストイート・テイクアウェイ・ドットコム(オンライン飲食デリバリー事業者)などと提携し、飲食店に提供している。

デリパック(DeliPac)

2012年にロンドンで設立された。紙ベースの繊維を原料に、100%リサイクル可能な飲食品向け容器を開発している。

容器は生分解性で、堆肥化も可能。また、この素材は電子レンジやオーブンでの加熱から冷凍にも対応する。さまざまな食品向けに使用可能だ。


注1:
英国プラスチック協定には、英国政府、有志企業・NGOなどが参画した。 この協定では、2025年までに達成すべき4つの目標が設定された。具体的には、(1)不必要または問題がある使い捨てプラスチックを排除する、(2)すべてのプラスチック包装を再利用、リサイクル、堆肥化可能にする、(3) 7割のプラスチック包装を効果的にリサイクルもしくは堆肥化可能にする、(4)プラスチック包装に含まれるリサイクル素材の割合を平均で3割にする、だ。
注2:
BBCが2023年1月14日付で報道。
注3:
ウバマーケットは、実店舗で買い物する際のアプリを開発する企業。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所(執筆当時)
山本 ゆうか(やまもと ゆうか)
2023年1月~3月、ジェトロ・ロンドン事務所にインターンとして在籍。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課を経て2021年9月から現職。