特集:COP27に向けて注目される中東・アフリカのグリーンビジネス電化率100%に向け、再エネに期待(モザンビーク)

2022年10月31日

モザンビークで、再生可能エネルギー(再エネ)を活用した電源開発が進んでいる。2018年には、「電力開発統合マスタープラン」を制定した。これは、日本政府の支援も受け、2043年までの計画をまとめたものだ。また、政府は同年、国家電化戦略とその実行プログラムをまとめた。実行プログラムは、「Energy for All(みんなのエネルギー)」と題された。

世界銀行によると、2020年時点で、モザンビークの電化率は約30 %にとどまる(都市部75%、農村部4.5%)。この現状に照らすと、実行プログラムでの目標は野心的だ。2030年までに電化率を100%にするという。

再エネが電化率向上のカギを握る

モザンビークで最大の電力開発・供給事業者と言えば、モザンビーク電力公社(EDM)だ。その「EDM戦略2018-2028」では、(1)国家電化戦略目標の達成、(2)南部アフリカ地域に向けた電力供給元としての地位確立、(3)持続可能な開発をEDMが進めるための健全な経営と人材育成、を優先事項として挙げた。また、再エネを活用した発電にも期待が寄せられている。ポルトガル語圏再エネ協会(ALER)とモザンビーク再エネ協会(AMER)は、国家電化戦略の推進により、2020年から2030年までの10年間で発電容量が次のとおり伸びると見込む。

  • 水力発電:2,189MW(メガワット)→4,539MW(約2倍)
  • 太陽光発電:41MW→266MW(約6.5倍)
  • 風力発電:40MW分を新規導入

なお、2020年の電源構成では、豊富な水資源を生かした水力発電が約79%を占める(図1参照)。

対照的に、火力発電は約20%にとどまる。その中で存在感を示すのが天然ガスだ。もっともモザンビークには、石炭埋蔵量が約230億トンある。テテ州では、2011年に操業開始したモアティゼ炭鉱を中心に産業を形成。2016年以降、石炭は主力輸出品だ。にもかかわらず、これまで石炭火力発電所はなかった。この状況下、300MWの石炭火力発電所をテテ州に建設する計画が進められている。

とは言え、2030年までは、水力・火力とも発電はほぼ横ばいと見込まれる。むしろ伸びが見込まれるのは、太陽光だ。その構成比は4%に伸びる(2020年は1%、図2参照)。

図1:2020年電源構成比(%)
2020年のモザンビークの発電の電源構成比は、水力が79%、ガスが16%、重油が4%、太陽光が1%となっている。

出所:「モザンビーク再エネ開発計画概要」(ALER、AMER)からジェトロ作成

図2:2030年電源構成比予定(%)
2023年のモザンビークの発電の電源構成比の予定は、水力が76%、ガスが17%、太陽光が4%、重油が2%、風力が1%となっている。

出所:「モザンビーク再エネ開発計画概要」(ALER、AMER)からジェトロ作成

水力と太陽光発電に高まる期待

モザンビークで水力発電のポテンシャルは高い。「EDM戦略」によると、ザンベジ川流域では、合計1万8,000MWの水力発電の可能性があると期待されている。すでにマラウイとの国境に近い同流域で、1975年からカホラ・バッサ水力発電所が稼働中だ。同水力発電所は2,075MWの発電容量を持ち、アフリカで4番目の規模を誇る。国内だけでなく、南アフリカ共和国とジンバブエにも電力を供給する。

続いて政府は、ムパンダ・ンクワ(テテ州・ザンベジ川流域)、ツァテ(マニカ州・レブエ川流域)、ボロマ(テテ州、ザンベジ川流域)、ルパタ(ソファラ州・ザンベジ川流域)の各地で、発電所の開発を進める。このうち、ムパンダ・ンクワは官民パートナーシップ(PPP)によって開発することが予定されている。2022年10月現在、事業者を選定中だ。2022年6月には、7事業者が入札事前参加資格の審査を通過した。その中には、日本企業も名を連ねている。なお、同発電所の発電容量は1,500MW、投資額約45億ドルになる見込みだ。

また、モザンビークの北部・中部には、日射量が多い地域もある(すなわち、太陽光発電のポテンシャルが高い)。この利点を生かし、各地域への電力供給安定化に向けて今後の開発が期待される。国家電化戦略や「Energy for All」で示された再エネ電源開発の枠組みの中で、複数の太陽光発電所計画が進行中(表参照)。すでに2019年にモクバ太陽光発電所、2022年4月にはメトロ太陽光発電所が稼働している。水力発電とあわせ、同国のエネルギーミックスに占める再エネの割合をさらに引き上げる構えだ。

PPPの手法によりモザンビークで太陽光と風力発電の導入を図ることについては、EUも支援している。2020年には、フランス開発協力機構(AFD)を通して「再エネ・オークション推進イニシアチブ(PROLER)」を立ち上げた。同イニシアチブの狙いは、低コストのエネルギー源の多様化、再エネ増強、国全体の電化率向上にある。資金とノウハウが不足しているモザンビークにとって、強力な支援と言えるだろう。同イニシアチブにより、約2億ユーロの民間投資が3つの発電所建設に充てられる予定だ。

表:モザンビークで完了・進行中の太陽光・風力発電所建設
プロジェクトサイト 発電種別 発電容量(MW) 開発状況、概要
モクバ ザンベジア 太陽光 41
  • 2019年8月商業稼働開始。
  • モクバ・ソーラー・エネルギー・コンソーシアムが管理・運営。
  • 同コンソーシアムの構成:スカテック・ソーラー(ノルウェー)52.5%、EDM25%、KLPノルファンド・インベストメンツ22.5%
メトロ(*) カーボデルガード 太陽光 41
  • 2022年4月商業稼働開始。
  • メトロ・ソーラー・コンソーシアムが管理・運営。
  • 同コンソーシアムの構成:ネオエン(仏)75%、EDM25%
クアンバ ニアッサ 太陽光 15
  • 2021年10月着工。
  • 英国の独立系発電事業者(IPP)グローブレックが米国のプライベート・エクイティ、ソース・キャピタルと提携して開発を実施。TSK(スペイン)がEPCとして参加。
メクフィ カーボデルガード 太陽光 20
  • 2019年10月着工。
  • MBHE(南アフリカ)、Moz Energy、EDMにより、プロジェクト進行中。
ドンド(*) ソファラ 太陽光 40 2022年4月、入札により、トタル・エレンがプロジェクトを受注。トタル・エレンは、仏資源大手トタル・エナジーズのグループ企業。
マンジェ(*) テテ 太陽光 40 モザンビーク政府により入札準備中。
リシンガ(*) ニアッサ 太陽光 40 モザンビーク政府により入札準備中。
ナマーシャ マプト 風力 60 米国の再エネ開発企業エレクトラにより、プロジェクト進行中。

注:(*)は、PROLER対象プロジェクト。ただし、メトロについては既に完成した案件のため、記事中で言及した「約2億ユーロ」には含まれない。
出所:「モザンビーク再生可能エネルギー開発計画概要」(ALER、AMER)、各事業者プレスリリースなどから、ジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ・マプト事務所
松永 篤(まつなが あつし)
2015年からモザンビークで農業、BOPビジネスなどの事業に携わる。2019年からジェトロ・マプト事務所業務に従事。

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