特集:欧州市場に挑む乾しいたけを欧州に輸出する大分県椎茸農業協同組合
オーガニック食品への需要が高い欧州、有機栽培を輸出

2018年11月9日

かつて「輸出貢献企業」として表彰された大分県椎茸農業組合は、約10年前から再び乾しいたけの輸出に取り組み始めた。欧州への輸出は東南アジアや米国と比べるとまだ少ないが、オーガニック食品への需要が高いため、他の国・地域向けとは異なり、有機栽培された乾しいたけのみを輸出している。同組合の阿部良秀・代表理事組合長に欧州への輸出について聞いた(10月5日)。

組合の設立当初から品質保証を徹底

大分県は乾しいたけの生産量が全国1位で、国内生産量(約2,500トン)の約44%に相当する約1,100トンを毎年生産している。2001年~2008年には大分県のシェアは20~30%で推移していたが、中国産の乾しいたけが大量に輸入されるようになって日本国内で原産地表示の偽装が発覚したこともあり、市場単価が下落し、他県での生産量が減少した。現在、日本には年間で約5,000トンの乾しいたけが中国から輸入され、価格が安いことから主に外食産業や総菜製造で利用されている。そんな状況にあっても、大分県では生産者と行政が一体となり、品質向上や生産の効率化などを進めて危機を乗り越えたことで、近年では国内生産に占めるシェアが拡大している。

県内の生産者をとりまとめ、生産指導から乾しいたけの集荷、市場開拓までを担っているのが大分県椎茸農業協同組合だ。大相撲千秋楽で優勝力士に賞金とともに乾しいたけを詰めたカップを贈呈していることでも知られる同組合は1907年に設立され、4,124人の組合員を抱える。設立当時には、不良品を取り換えるという画期的な品質保証を行ったことで名声を高めた。現在でも、品質や安全性の確保への取り組みは徹底している。東日本大震災に伴う原発事故を受けて、専門部署を設置し、導入した放射能測定機器による測定結果をウェブサイトで公表した。また、生産量が多いことで偽造の対象とされやすいため、2005年には「大分乾しいたけトレーサビリティ協議会」が設立され、製品ごとにシリアル番号を印字し、生産および流通履歴から産地表示の適正さを証明するシンボルマークを貼付している。

食がテーマのミラノ国際博覧会にも参加

 大分県椎茸農業協同組合は、国内消費量の減少対策と海外の和食ブームを受けて、2008年から海外輸出への取り組みを「再開」した。同組合は、かつては日本を代表する輸出企業で、1968年と1969年には通商産業省(当時)から「輸出貢献企業」として表彰されている。当時は、1ドル=360円で、中国産の乾しいたけが出回っていない、大分での生産量が今より多かったなど、現在とは事情が大きく異なるが、香港向けを中心に輸出量は年間最大241トンで、2017年の約7トンの30倍以上の乾しいたけを輸出していた。

図:大分県椎茸農業協同組合の輸出量推移(単位:kg)
2012年度369キロ、2013年度875キロ、2014年度1,332キロ、2015年度1,720キロ、2016年度2,147キロ、2017年度6,900キロ。年度は2月から翌年の1月まで。
注:
年度は2月~翌1月。
出所:
大分県椎茸農業協同組合

輸出の再開に当たっては、まず、タイをはじめとする東南アジアや中国の富裕層をターゲットとした。しかし中国については、東日本大震災後に日本からの農産品の輸入を規制したため、ニーズがあることが分かっていながらも輸出ができていない。一方、欧州については、2014年にフランスの総合食品見本市である「SIAL」に出展し、そして2015年には食がテーマのミラノ国際博覧会に出展した。現地では、レストランイベントを行い、現地料理にアレンジした料理や、肉厚しいたけをステーキの代わりとするベジタリアン用メニューを提案し、好評を得た。現在では、欧州への輸出量は年間約1,200キロで全輸出の17%を占め、英国をはじめフランスやベルギーなど5カ国に輸出している。大分の乾しいたけの主力は、傘が7分開きで歯応えがある「冬菇(どんこ)」、冬菇より肉厚で大型の「香菇(こうこ)」、7分開き以上で採取し傘の肉が薄い「香信(こうしん)」だが、欧州への輸出は香信が中心だという。


欧州への主要輸出製品である「香信」(大分県椎茸農業協同組合提供)

欧州市場を意識し有機JAS認定を取得

欧州への輸出のカギとなるのが、有機栽培だ。食の安全に対する意識の強い欧州では、アジアや米国市場とは異なり、オーガニック食品への関心がとても高いという。そこで、大分県椎茸農業組合では、欧州市場を意識して2014年に有機JASの認定を取得した。現在では、組合員である生産農家のうち7~8軒が有機JASにのっとってしいたけを生産し、欧州へは有機栽培の乾しいたけのみを輸出している。有機JASは、EUの有機制度(グリーンリーフ)と互換性があることから、現地でもオーガニック商品として流通させている。

他方、欧州輸出の難しさとしては、EU加盟国であっても国によって異なる通関手続きであるという。乾しいたけは生鮮食品ではないため、食物検疫証明書は不要とされるにもかかわらず、イタリアでは同証明書を求められることがある。実際にミラノ国際博覧会ではなかなか通関できず、最後は日本大使館の協力を得て、ようやく会場に運び入れることができた。同じ国でも税関の担当官により対応が異なることがあり、米国やアジアと比べると通関に手間がかかるという。また、地理的に遠いことから、頻繁に現地を訪れて販路を開拓することが困難であり、香港や台湾、東南アジアなどの近隣の市場に比べると、リソースを割くことができない状況にある。

日EU経済連携協定(EPA)が発効(2019年春までの見込み)すれば、EUの輸入時の関税(12.8%)が撤廃される。通関の問題が改善し、大分県内での有機JASによるしいたけの生産量が伸びるなどの条件が伴わないと、欧州向けの輸出が伸びていくことは難しいが、同組合にとって海外の販路開拓は必要である。今後は、欧州は高品質、高付加価値のオーガニック食品に対するニーズが高いため、がん予防をはじめとするしいたけの持つ機能性や栄養価のPRをしたり、また欧州各国ではキノコを食べる習慣があることから、現地のグレードの高いキノコと遜色ない大分産乾しいたけを使ってもらうような戦略を考えたりしているという。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課 課長代理
鷲澤 純(わしざわ じゅん)
1998年、ジェトロ入構。ジェトロ大分(2000~2004年)、市場開拓部(2004~2006年)、ジェトロ・ウィーン事務所(2010~2015年)などを経て現職。

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