特集:欧州市場に挑むまだまだ使える中古機械を輸出する旺方トレーディング

2019年3月1日

鳥取市に本社を構える旺方トレーディングは、国内で買い取ったトラクターをはじめとする農業機械を海外80カ国以上に輸出している。主な輸出先はEUで、取引先とのコミュニケーションを大切にしながら、EU加盟各国で異なる言語や通関手続きに対応し、輸出実績を伸ばしている。欧州ビジネスの実態や今後の展望について、同社の幸田伸一代表取締役に聞いた(1月25日)。

輸出の8割超がEU向け

1990年に設立された旺方トレーディングは、農業機械の買い取り・輸出、国内小売り・卸、農機具レンタルなどの事業を展開している。同社は、自動車と比べると中古製品の市場や流通が整備されていなかった中古の農業機械を、インターネットを活用して直接仕入れることによってコスト・手間を省き、海外に販売するビジネスモデルで実績を伸ばしてきた。これまでに、鳥取県の「経営革新大賞」(2012年)や中小企業庁の「がんばる中小企業・小規模事業者300社」(2014年)などに選定されてきた。

同社が輸出しているのは主に中古トラクターで、国内で買い取った中古トラクターのうち、台数ベースで約70%を輸出、残りを国内で販売または中古農機オークションに出品している。主な輸出先はEUで、2018年は輸出全体の約83%がEU向けであったという。

ここで、日本の中古トラクターの輸出統計を見てみると、2017年の輸出金額は127億4,800万円で、地域別ではアジア向けが全体の54.1%となる68億9,300万円で最大、EU向けは32.5%に相当する41億4,800万円だった(表参照)。国別では、全体の約4割を占めるベトナム向けが圧倒的に多いが、第2位リトアニア、第3位ロシア、第4位ブルガリア、第5位ポーランド、第6位フィリピン、第7位オランダ、第8位ドイツと、EU加盟国が上位に多く位置している。

表:2017年の中古農業用トラクターの輸出額(エンジン出力別)(単位:百万円)
国・地域 18キロワット
以下(注1)
18キロワット超
37キロワット
以下(注2)
37キロワット超
75キロワット
以下(注3)
75キロワット超
130キロワット
以下(注4)
合計
(地域別)
アジア 3,292 2,863 693 44 6,893
EU 3,335 754 56 4 4,148
ロシア・CIS 800 301 22 0 1,123
中南米 229 45 5 1 280
アフリカ 138 71 7 1 217
北米 81 4 2 0 87
合計(エンジン出力別) 7,874 4,039 785 50 12,748

注1:HS番号は8701.91.110、注2:同8701.92.110、注3:同8701.93.110、注4:同8701.94.110
出所:財務省貿易統計

旺方トレーディングのEUの取引先は、現地の大規模農家や農業機械ディーラーが中心で、最大の輸出先はオランダだ。日本製の中古トラクターは、オランダ国内で使用されるほか、同国のディーラーによりセルビアや南アフリカ共和国といったEU域外国に出荷されることもあるという。リトアニア向けも多い。バルト海に面しているリトアニアは港湾施設が充実しているのに加えて、かつてはソ連邦構成国であったことからロシア語が通じ、リトアニア経由でウクライナなどに販売されるなど、ロシア・CIS諸国のゲートウェイ的な位置付けであるという。そのほかでは、中・東欧地域最大の農業国であるポーランド向けも伸びている。

インターネット上での販売も、コミュニケーションを重視

同社の海外販売チャンネルはもっぱらウェブサイトで、英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、ロシア語、ドイツ語に対応している。バイヤーがネット検索で同社のウェブサイトにたどり着き、取引が始まることが多いという。初期のころは、広報を強化するため、ターゲット国において当該言語でネット広告も出していた。欧州の展示会や商談会に参加する形での販路開拓ではないものの、同社では取引先とのコミュニケーションを重視し、海外販売担当社員が欧州に出張して各国の取引先を訪問したり、逆に欧州の取引先が技術者・整備士を連れて鳥取を訪問して中古トラクターの状態を見に来たりすることがあるという。取引先とのやりとりはEメールが中心だが、欧州は多言語地域で英語では十分な意思疎通が図れないこともある。その場合は、電話やスカイプで相手と話して信頼関係を醸成することで、パーフェクトな意思疎通ができなくても、取引に必要なコミュニケーションを取れるよう工夫しているという。

同社が輸出しているのは、30~40年前に製造されたモデルが中心となっている。複雑な最新機能は装備されていないが、その分、作りがシンプルで丈夫、また修理や整備も簡単であるため、現地に出向いてのアフターサービスやメンテナンスは不要という。日本製トラクターは、故障が少ないうえ、欧米メーカーの製品に比べるとサイズが小さく小回りが利くことから、トラクターのアタッチメントを雪かきや芝刈りに代えたり、自宅周りのDIYに利用したりと、欧州では農業以外の目的で使われることも多く、需要が高い。


本社倉庫内の中古トラクター(ジェトロ撮影)

EU加盟国により通関に必要な書類が異なることも

EUとのビジネスの難しさとしては、EU加盟国であれば規則や手続きが統一されている印象があるものの、実際には国によってかなり異なることを挙げる。例えば、ポーランドやチェコの取引相手からは、現地での通関において原産地証明書が必要であると提出を求められるという。中古を扱う同社では、同一モデルのトラクターを輸出しているわけではないため、原産地証明に必要な情報をその都度、収集することは簡単ではないという。他方で、ロシア向けなどでは現地法の改正に基づくと思われる輸出手続きの変更に対応しきれないこともあったが、EU向けに関してはそのような突然の手続き変更などはなく、また代金回収でも問題が生じたことはないという。

同社は、主要市場であるEU向けの中古トラクターの輸出の強化に力を入れていくほか、日本国内で行き場を失っている中古の農業機械、例えば果樹園消毒機器や田植機械などは、現時点では欧州をはじめ海外に市場がないため、これらの中古農業機械を輸出できるように海外市場開拓をしていきたい、と意気込む。日EU経済連携協定(EPA)の発効(2月1日)により、今後、新たに輸出していく農業機械が関税撤廃の対象になっていれば、同社のビジネスにも追い風となる。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課 課長代理
鷲澤 純(わしざわ じゅん)
1998年、ジェトロ入構。ジェトロ大分(2000~2004年)、市場開拓部(2004~2006年)、ジェトロ・ウィーン事務所(2010~2015年)などを経て現職。

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