米232条鉄鋼関税、冷蔵庫や洗濯機など白物家電を対象に追加、6月23日に適用開始

(米国、日本)

ニューヨーク発

2025年06月23日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は6月16日、鉄鋼製品の輸入に対する1962年通商拡大法232条に基づく追加関税に関して、冷蔵庫、冷凍庫、食洗器、電気調理器、洗濯機、乾燥機など(注1)の白物家電を鉄鋼派生品として適用対象に追加したと官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回追加した製品に対する追加関税は、6月23日から適用する。

米国の鉄鋼・アルミニウム製品に対する232条関税は、第1次トランプ政権が2018年3月に適用を開始した(鉄鋼25%、アルミ10%)。その後、第2次トランプ政権が2025年3月に追加関税率を一律25%に(2025年2月12日記事参照)、さらに6月に一律50%へと、段階的に引き上げていた(2025年6月4日記事参照)。

232条関税の適用対象は、これまで複数回にわたって特定の鉄鋼・アルミ派生品を追加してきた。米国政府は、派生品追加の理由について、例えば2020年2月の追加に際しては、232条関税の回避を目的とした、鉄鋼・アルミの川下製品(鉄鋼を加工したくぎ、アルミを加工したケーブルなど)の輸入が増加したことなどを理由に挙げていた。なお、BISは米国内事業者から適用対象の追加申請を受け付けるプロセスを設置しているが(2025年5月2日記事参照)、米国の通商措置に詳しい弁護士事務所によれば、今回の追加は同プロセスとは別の措置で、今後さらに派生品が追加される可能性があると指摘している。

鉄鋼・アルミ製品に対する232条関税は、基本的に輸入申告価格の全体に対して課されるが、一部の派生品については、各派生品が含有する鉄鋼・アルミ材料の価格に対してのみ課される仕組みになっている。今回適用対象に追加された製品も、各製品が含有する鉄鋼材料の価格に応じて232条関税が課される。米国税関・国境警備局(CBP)の公表する鉄鋼・アルミ製品に対する232条関税のFAQ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(6月13日更新)によると、含有価格の算出基準は一般的に、鉄鋼・アルミ材料の購入価格とされる(2025年3月28日記事参照)。含有価格に応じて232条関税が課される製品の通関申告方法については、6月3日更新のCBPのガイダンス(鉄鋼外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますアルミ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照(注2)。

なお、今回適用対象に追加された鉄鋼派生品のうち、ワイヤーラックはアルミ製品に対する232条関税の適用対象にもなっている。そのため、ワイヤーラックが含有する鉄鋼材料とアルミ材料の価格に対して50%の232条関税がそれぞれ課されることになる(注3)。

(注1)冷蔵冷凍庫〔米国関税分類番号(HTSコード)8418.10.00〕、冷凍庫(8418.30.00、8418.40.00)、食洗器(8422.11.00)、調理コンロ・レンジ・オーブン(8516.60.40)、生ごみ処理機(8509.80.20)、洗濯機(8450.11.00、8450.20.00)、乾燥機(8451.21.00、8451.29.00)、ワイヤーラック(9403.99.9020)。

(注2)CBPのガイダンスは、適用対象品目をまとめた添付文書のみ更新されている(鉄鋼外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、6月20日更新/アルミ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、6月9日更新)。

(注3)追加関税は基本的に、一般税率(MFN税率)やその他の追加関税の関税率を累積して課される。ただし、鉄鋼・アルミ製品に対する232条関税の適用対象製品は原則、相互関税・ベースライン関税、自動車・同部品に対する232条関税、メキシコ・カナダ原産品に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税は累積して課されない(2025年4月30日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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