トランプ米大統領、銅輸入に50%の関税賦課を決定、8月1日から
(米国、世界)
ニューヨーク発
2025年07月31日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月30日、1962年通商拡大法第232条に基づき、8月1日から銅および銅派生品の輸入に対して50%の追加関税を課す大統領布告を発表した。同日、ファクトシート
も発表した。商務省産業安全保障局(BIS)は3月に、銅の輸入に対する232条調査を開始し、トランプ氏は7月9日に50%の追加関税を課す意向を明らかにしていた(2025年7月11日記事参照)。
232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼす場合に、追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を大統領に認めている。具体的には、商務省が調査を担い、調査開始から270日以内に安全保障上の脅威の有無と輸入制限措置の提言をまとめた報告書を大統領に提出する。大統領は、報告書を受領後90日以内に安全保障上の脅威があるか否かを判断し、必要であれば輸入制限措置を発表する。輸入制限措置は、発表から15日以内に実施しなければならない(注1)。
大統領布告によれば、商務長官は6月30日に大統領に報告書を提出した。報告書では、銅は航空機、地上車両、船舶、潜水艦、ミサイル、弾薬を含む多様な防衛システムに不可欠な原材料であり、銅の輸入量と世界的な過剰生産能力が米国内の銅生産施設の閉鎖を引き起こしているなどとして、国家安全保障を損なうおそれがあると結論づけた。
これを受けトランプ氏は、米国東部時間8月1日午前0時1分から通関する全ての銅の半製品(semi-finished copper products)および銅を多量に利用する派生品(intensive copper derivative products)に、50%の関税を課すことを決定した(注2)。大統領布告では具体的な対象品目を示す付属書は公開されていないものの、ファクトシートでは、半製品の例に銅パイプ、銅線、銅棒、銅板、銅管など、銅を多量に使用する派生品の例にパイプ継手、ケーブル、コネクタ、電気部品などを挙げている。付属書は後日、連邦官報に公示される際に公開されるとみられる。
なお、銅鉱石、精鉱、銅マット、陰極、陽極などの銅の原材料および銅スクラップは今回の関税措置の対象にならない。232条に基づく自動車・同部品の追加関税の対象となっている場合も、対象外となる。ただし、関税払い戻し(drawback)は適用されない。
商務長官はまた、2026年6月30日までに、米国内の銅市場(精錬能力を含む)および米国における精錬銅の市場状況を大統領に報告することが定められた。これにより、大統領は精錬銅の輸入に対し、2027年1月1日から15%、2028年1月1日から30%の関税を課すか否かを決定する。なお、商務長官はこれら関税措置が必要ないことも報告できる。
そのほか、商務長官は米国内の銅産業を支援するため、国防生産法に基づき、2027年から米国で生産された銅原料と銅スクラップの25%を米国で販売することを義務付けるための措置も定めた(注3)。
(注1)232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照
(注2)大統領布告に追加関税(additional tariff)との文言はなく、一般関税率(MFN税率)に上乗せされるのか、MFN税率を含んで50%となるかは現時点では不明。
(注3)銅原料の米国内販売割合は、2028年に30%、2029年に40%に増加する。
(赤平大寿)
(米国、世界)
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