WTO内外で進む複数国間協定
米国が挑む新たな国際通商システム(4)

2026年6月1日

米国は、2026年3月にカメルーンで行われた第14回WTO閣僚会議(MC14)に向け、2025年12月と2026年3月の2回に分けてWTO改革の必要性を訴える声明を発表した。全会一致の原則があるWTOは近年、160を超える加盟国間での意見の一致が難しく、新たなルール形成に関する交渉は停滞している。そこで米国通商代表部(USTR)は、「合意当事者にのみ利益と責任が限定される複数国間(プルリ)協定」を通じて、新たなルール形成を進めていく意向を示した。EU、英国、日本などもプルリ協定を重視しているほか、2026年5月のG7の貿易大臣による共同声明でもプルリ協定を活用する方針を示した。また米国は、WTO外でも、経済安全保障に関連する有志国間による協定を進めている。本稿では、トランプ政権2期目のWTOに対する姿勢を整理した上で、今あらためて注目されるプルリ協定や複数の有志国間で結ばれる協定を基に、今後の国際通商システムについて検証する。

WTOに対して軟化姿勢を見せる米国

1947年に関税および貿易に関する一般協定(GATT)が作成され、1995年1月にWTOが設立されて以降、国際通商システムはWTOを中心に構築されてきた。WTOには大きく、交渉、紛争解決、監視の3つの機能があるが、現在はいずれも十分に機能しているとは言い難い。ルール交渉については、発展途上国の影響力が増すにつれ全会一致の原則の下での意思決定が難しくなり、2001年に立ち上げられたドーハラウンドは目ぼしい成果を上げられないまま、終結できずに現在に至っている。紛争解決については、米国が紛争解決機関(DSB)の判断を国家主権の侵害と批判し、裁判官に相当する上級委員の選任を拒否してきた。その結果、現在は上級委員が不在となり紛争解決機能は事実上停止している(注1)。監視についても、補助金などを導入した際のWTOへの通報義務が徹底されていないなどの課題があり、実効性のある監視メカニズムの構築が求められている(注2)

こうした経緯から、米国はかねてWTOを批判してきた。さらにドナルド・トランプ大統領は国際機関への参加に懐疑的なことから、トランプ政権2期目発足当初は、米国がWTOから脱退するのではないかと危惧されていた。USTRは2025年3月に発表した「2025年の通商政策課題と2024年の年次報告」において、「設立30周年を迎えるWTOと米国の利益」と題するセクションを設け、「他国が米国ほど自由化を達成できていない」「中国の非市場経済がもたらす課題に対処できていない」「WTOの紛争解決制度は違反行為の是正を十分に果たせていないだけでなく、中国の非市場経済による被害に対処する加盟国の能力を損なっている」などとWTOを批判した。その上で、「我慢にも限界がある」と記した(注3)。8月になると、「米国第一」の方針に反する対外援助や国際機関への拠出を約50億ドル分停止すると発表した。WTOについては、中国共産党による不公正な貿易を助長してきたとして、2,900万ドルの拠出を停止するとした(注4)。USTRのジェミソン・グリア代表は、講演を行う際や主要紙へ寄稿する際、たびたびWTO批判を展開した。

もっとも、トランプ政権はWTOに対する批判を継続しつつも、その姿勢を次第に軟化させた。トランプ氏は2026年1月に、国連機関など66の国際機関からの脱退を表明したが、WTOを対象に含めなかった。このころになると、WTOに対する資金拠出を再開したと報道された(注5)。2026年のUSTRの年次報告書では、WTOで「米国の貿易に対する障壁削減のための取り組みを継続する」として、WTOに参加していく姿勢を示した。またMC14を控え、USTRは2025年12月と2026年3月に、プルリ協定を通じたルール形成、WTOへの通報義務、最恵国待遇(MFN)、安全保障例外の適用、特別かつ差別化された待遇(SDT)などに関する改革を提案した(注6)

MC14が終わると、目ぼしい成果を上げられなかったことから、グリア氏は「WTOが今後の世界の通商政策において果たす役割が限定的であることを裏付けた」と批判した。一方、米国のジョセフ・バールーンWTO大使(注7)は「米国はWTOにおける改革やその他の重要な課題について主導的な役割を果たしてきており、今後もその姿勢を継続していく」と、WTOに関与し続けていく方針を明言した(表参照)。MC14に至るまでの経緯と終了後の声明を踏まえると、米国のWTO脱退懸念は、トランプ政権発足当初と比べ、後退したと評価できる(注8)

表:トランプ政権2期目のWTOに対する主だった発言内容
日付 内容
2025/2/4 トランプ氏が特定の国連組織からの離脱とともに、米国が加盟している国際組織、条約、協定について見直すよう指示。
3/3 USTRが「2025年の通商政策課題と2024年の年次報告」で、WTOの下での貿易自由化交渉の失敗を挙げ、他国が米国ほどの自由化を達成できていない、中国の非市場経済がもたらす課題に対処できていない、WTOの紛争解決制度は、違反行為の是正を十分に果たせていないだけでなく、中国の非市場経済による被害に対処する加盟国の能力を損なっている、と批判し、「我慢にも限界がある」と記載。
7/16 グリア氏がデトロイトで行われたイベント「再工業化サミット」で講演。自身のUSTR代表としての目標は、(1)米国の貿易赤字の解消、(2)米国の実質世帯所得の中央値の上昇、(3)GDPに占める製造業のシェア拡大だと講演。
8/7 グリア氏が「ニューヨーク・タイムズ」紙に、WTO体制から脱却し、関税措置を用いて市場アクセスやサプライチェーンを再編する必要性を訴える論説を寄稿。
8/29 「米国第一」の方針に反する対外援助や国際機関への拠出を約50億ドル分停止すると発表。WTOに関しては、当初、2,900万ドルの拠出を停止すると発表したものの、その後、記載は削除。
9/3 グリア氏が全米保守会議の講演で、米国の指導者が1990年代以降、貿易に関するルールをWTOに委ねたことから「生産者の国から債務者の国へと変貌した」「米国の貿易赤字を無視した」 と問題視し、生産を担う中間層を中核とする「生産経済」を創り上げるべきと主張。
10/9 連邦議会上院が、トランプ政権1期目の2019~2021年にUSTRの法律顧問および次席代表代行を務めたバールーン氏をWTO大使に承認。
12/15 USTRが、WTO改革のアジェンダに、複数国間(プルリ)協定、最恵国待遇(MFN)、安全保障例外の適用、貿易不均衡、過剰生産、経済安全保障、サプライチェーンの強靭(きょうじん)性などを含めるよう提言する声明を発表。
2026/1/7 トランプ氏が、66の国際機関からの脱退または資金拠出の停止を指示する大統領覚書を発表。ただし、WTOは含まれない。WTOへの資金拠出は再開されていると報道された。
3/23 USTRが、通報義務、プルリ協定、MFN、安全保障例外、特別かつ差別化された待遇(SDT)などに関する改革案を発表。
3/30 MC14に対する声明。電子商取引モラトリアムの延長で合意できなかった点などについて、グリア氏は「失望している」「今週の会議は、WTOが今後の世界の貿易政策において果たす役割が限定的であることを裏付けた」と評価した一方、バールーン氏は「米国はWTOにおける改革やその他の重要な課題について主導的な役割を果たしてきており、今後もその姿勢を継続していく」と発表。
4/7 グリア氏がハドソン研究所のイベントに登壇。MC14で合意できなかった点について、「WTOがいかに時代遅れであり、ごく普通の事柄に対応することさえできないか、ましてや将来直面するであろう真に困難な課題には到底対応できないかを象徴している」と発言。

出所:米国政府発表資料などを基にジェトロ作成

WTOのプルリ協定とは

米国のWTO脱退懸念は一定程度緩和されたものの、WTOを改革する必要性に変わりはない。WTO加盟国は引き続き、各国が提案している改革案を実行に移していくことが求められている。米国がMC14に向け提案した改革案の中で、今後のルール形成に重要なのがプルリ協定だ。

プルリ協定は、WTO加盟国全てを指す多国間(マルチ)でなく、二国間(バイ)でもない、一部の有志国間で締結される複数国間協定だ(注9)。米国は全会一致の下での合意形成は極めて困難だとして、プルリ協定を活用する必要性を強調している(注10)。WTO協定上のプルリ協定は、付属書4に規定されており(WTO協定第2条3項)、現在は、民間航空機貿易に関する協定と政府調達に関する協定のみが有効となっている。WTO加盟国は、WTO協定の一括受託が原則となっているが、プルリ協定は一括受託の対象とはされておらず、当該協定に参加した国のみに対して効力を有する(同協定第2条3項)(注11)。だが実質的には、付属書4に規定されずとも、WTO協定と整合させるかたちでプルリ協定を締結できる。その代表例は情報技術協定(ITA)だ(注12)。参加国間でのIT製品の関税撤廃を約束するITAは、非参加国に対しても関税削減を適用することでWTO協定の基本原則であるMFNを維持し、WTO協定との整合性を保っている。

USTRの提案では、米国以外の国・地域も、プルリ協定の活用を重視していると強調している。例えば英国がWTO一般理事会に提出した文書で、プルリ協定が「主要なWTO課題を前進させるための道筋となり得る」「加盟国が異なるペースで進展を図りたい場合に明確な前進の道だ」と述べ、EUもまた「改革においては、志を同じくする国でのプルリ協定やクラブ型アプローチの道筋も検討すべき」と主張している。また日本は、2025年5月に、WTOとの共同声明において、「プルリ協定によるものを含む、現在の状況に対処するためのルール形成機能の強化」をWTO改革の柱の1つに据えると表明している(注13)。さらに、2026年5月にパリで行われたG7貿易大臣会合においても、プルリ協定を推進していく方針が示された(注14)

米国が提案する新たなかたちのプルリ協定

では、米国が提案しているプルリを活用したルール形成はどのようなものなのか。USTRは、MC14の直前の2026年3月に発表した声明で、将来的なWTO協定付属書4への組み込みを念頭に置いた「暫定プルリ協定」の活用を提案した。暫定プルリ協定は、一部のWTO加盟国の間で結ばれる自発的かつ一時的な協定で、締約国は例えば5年間といった一定期間、協定を履行し、協定がもたらす利益を検証する。その後、予定していた期間の満了後、暫定協定をWTOの付属書4に組み込むか否かをWTO加盟国で審議する。もっとも、プルリ協定を付属書4に追加するには、閣僚会議において全会一致で決定する必要がある(WTO協定第10条9項)。USTRの声明によれば、WTO加盟国で暫定プルリ協定の付属書4への追加について審議することが、暫定協定の効果を検証する機会になり、仮に締約国以外のWTO加盟国が反対した場合でも、WTO外(注15)での暫定協定の継続につながると指摘している。

USTRはまた、暫定プルリ協定が付属書4に追加されるための新たな仕組みも提案している。暫定プルリ協定の履行期間後、対象品目の締約国間における貿易額が一定割合を超える場合に、自動的に付属書4に組み込むことを認める「クリティカルマス」の考え方だ。米国はこの「一定割合」を、具体的にどの水準にするか、WTO加盟国間で議論すべきだと提案している。

なおUSTRは、ITAのように、MFN原則の下で、協定非参加国も参加国への輸出で恩恵を受けられる開放型のプルリ協定には、「深刻なフリーライダー問題を引き起こす」「相互性の欠如は単に愚かなだけでなく、フリーライダーは貿易体制に対する不信感も生み出す」と反対しており、あくまで「合意当事者にのみ利益と責任が限定される」閉鎖型の協定を推進している(注16)

WTOの外で進む経済安全保障に関する有志国間協定

USTRが将来的に付属書4へ組み込むことも踏まえたプルリ協定を提案する一方、MC14では、1998年以降、閣僚会議のたびに合意されてきた電子商取引モラトリアム(電子的送信に対する関税の不賦課合意)の延長で合意できなかった(注17)。こうした現状を鑑みれば、WTO内でのプルリ協定の推進は容易ではない。そこで、必ずしも付属書4に規定することを目指さないWTOの外で行われる有志国間による協定もルール形成の上で重要となる。現に米国は、同盟国や友好国と、WTOで規定されていない経済安全保障を中心とする分野で協力を進めている(注18)。その端的な例は、重要鉱物だ。

国務省のマルコ・ルビオ長官は2026年2月、首都ワシントンで重要鉱物閣僚会合を初開催した。日本を含む54カ国および欧州委員会が参加した。会合には、J.D.バンス副大統領も参加し、同盟国や友好国間で重要鉱物の最低価格を設定し、公正な市場価値を反映した市場をつくる「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案した。貿易圏に参加する国に対しては米国市場へのアクセスを保証すると同時に、貿易圏全域での生産拡大を図る。より具体的には、有志国と重要鉱物の最低国境調整価格を決める複数国間イニシアチブを検討する(注19)。また米国は、人工知能(AI)の進化によって重要鉱物や関連インフラなどの需要が増加し、サプライチェーン再編が進むとの認識の下、敵対国への依存軽減や機密度の高い技術の保護といった領域で連携する「パックス・シリカ」を推進している。5月上旬時点で、日本を含む15カ国・地域が参加している(注20)

価値観の近い国同士で進むルール形成の行方が重要に

プルリ協定を中心にルール形成していくべきとの指摘は、WTO交渉が停滞し始めた2010年代からあった(注21)。WTOの意思決定の機能不全を理由にプルリ協定を推進する姿勢は、当時も現在も大きな違いはない。だが、2010年代はまだ、経済合理性の下、多国間で自由貿易を促進する前提があった一方で、現在は米中対立の長期化・深刻化に象徴されるように、加盟国間での意見の一致が、より一層、難しくなっている。そうした中、有志国間のみでルールを形成しようとする姿勢にあらためて焦点が当たるのは自然な流れといえよう。

また現代は、経済安全保障が通商政策の主要な決定要因になっている。経済的威圧への対応も重要だ。そのため、敵対国への技術流出を防ぐ輸出管理の強化や、価値観を共有する国同士で安全保障上重要な品目のサプライチェーンを強靭化するための施策が、WTO外でも活発に行われている(注22)。米中の覇権争いが続く限り、関税や輸出管理、投資審査といった規制が増えることはあっても減ることはないと見込まれる。そうすれば、価値観の異なる国同士のビジネスには、常に一定の制限がつきまとう(注23)

米中対立や新型コロナウイルス禍を経験する中で、サプライチェーンの途絶は、国家の安全保障に関わる脅威であると同時に、企業経営における重大な課題だとの認識が広がった。企業にとってサプライチェーン途絶による損失は大きいため、現在ではサプライチェーンを構築する際、人件費や生産コストの低さのみならず、地政学的リスクを踏まえた安定供給の確保も、重要な要素として考慮しなければならなくなっている。そのため、グローバルな経営戦略を検討するにあたっては、こうした価値観の近い複数の国によるルール形成には注意を払う必要がある。


注1:
WTOによる紛争解決は、パネルによる1審と上級委員会による2審で行われる。米国は、上級委員会の判断が協定上は先例拘束性を有しないにもかかわらず事実上の先例となり協定解釈を拡大している、また安全保障上の事態に関しては当事国の判断が尊重されなければならない、などと批判し、トランプ政権1期目の2017年から上級委員の指名を拒否してきた。 本文に戻る
注2:
WTOを中心としたルール形成の現状については、ジェトロの「世界貿易投資報告」や経済産業省の「通商白書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.3MB)」を参照。 本文に戻る
注3:
2025年のUSTRの報告書に対して、政治専門紙「ポリティコ」は、「比較的抑制の効いた表現となっているため、議会が今年中にWTOからの脱退を決議する可能性は低い」と評していた。ただし、米国のWTOに対する支持は大幅に弱まっており、トランプ氏による追加関税賦課は、WTOに違反しているとも指摘した。Doug Palmer, “USTR report passes up chance to recommend WTO withdrawal”, Politico, March 3, 2025. 本文に戻る
注4:
WTOに関する記述は、国際労働機関(ILO)や経済協力開発機構(OECD)とともに後日、削除された。 本文に戻る
注5:
Margaret Spiegelman, “Trump signs order withdrawing U.S. from UNCTAD, other fora”, Inside U.S. Trade, January 7, 2026. 本文に戻る
注6:
2025年12月の声明は、2025年12月18日付ビジネス短信、2026年3月の声明は、2026年3月25日付ビジネス短信を参照。 本文に戻る
注7:
トランプ氏は2025年2月に、政権1期目にUSTRの法律顧問および次席代表代行を務めたバールーン氏をWTO大使に指名した。同氏はその後、10月に連邦議会上院で承認された。 本文に戻る
注8:
グリア氏はMC14後のブルームバーグのインタビューで、WTOからの脱退よりも改革を優先する方針を述べている。“USTR Greer on Hormuz, China Talks, Trade Tariffs.’, Bloomberg News, March 31, 2026. 本文に戻る
注9:
WTOの全加盟国を対象とする場合に「多国間(multilateral)」を、複数国間に限定される場合に「複数国間(plurilateral)」を、二国間に限定される場合に「二国間(bilateral)」を用いる。だが近年では、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)のように一定の規模を有する複数国間協定も、便宜的に「多国間」と呼ぶ場合もある。 本文に戻る
注10:
バールーン氏は2026年5月6日のWTO一般理事会において、「WTOにおける交渉に将来性があるとするなら、それはプルリ協定による交渉になる」と述べた。Caroline Hug, “US says World Trade Organization’s multilateral era is over”, Politico, May 7, 2026. 本文に戻る
注11:
プルリ協定への加入(第12条3項)、脱退(第15条2項)、改正(第10条10項)などについては、当該協定が定める内容に従う。 本文に戻る
注12:
WTOのITAに関するウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。 本文に戻る
注13:
外務省「日本政府と世界貿易機関事務局による共同プレスリリース(仮訳)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(145KB)」2025年5月13日。 本文に戻る
注14:
外務省「G7貿易大臣コミュニケ(仮訳)(199 KB)」2026年5月6日。 本文に戻る
注15:
WTO協定で定められていない分野、あるいはWTO協定で定められた以上の高水準のルール形成を複数国間で行う場合、「WTO外」のプルリ協定と呼ぶことがある。具体的には、WTOのサービス貿易一般協定(GATS)で規定されていない、金融、通信、輸送などで高水準な自由化を目指した新サービス貿易協定(TiSA)などがある。なお、TiSA交渉は、2017年にトランプ政権が発足して以降停滞し、現在はTiSAに含まれていた電子商取引のみが継続して交渉され、「電子商取引共同声明イニシアチブ(JSI)」に再編・移行されている。TiSAからJSIへの流れは、岩田伸人「WTOにおけるデジタル貿易のルール交渉の行方外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」、国際貿易投資研究所(ITI)、2023年8月21日参照。バイデン前政権時、米国はJSIが公表した電子商取引に関するテキストを支持しなかったが(2024年8月1日付ビジネス短信参照)、トランプ政権は、電子送信への関税不賦課に賛成する方針を示している(2026年4月9日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
注16:
当該方針は、米国が一方的に恩恵を与えるのではなく、相互的な関係を基本とする、トランプ政権が掲げる「米国第一の通商政策」の方針と重なる。一方で、クリティカルマスを実現できれば、フリーライドする余地が少ないため、実質的には問題を解決できるとの考え方もある。ITAにおいても、フリーライド問題に対処すべく、クリティカルマスの考え方を用いている。ITAでは対象品目の貿易額が世界の貿易額の90%以上となることを発効の基準としており、1997年に29カ国・地域で157品目を対象に発効した後、現在、参加国・地域は82に、対象品目は358品目に拡大し、世界のIT製品貿易の約97%をITA参加国が占めている。 本文に戻る
注17:
MC14については、2026年3月31日付ビジネス短信を参照。 本文に戻る
注18:
USTRは、経済安全保障に関する取り組みについては、議論に機密情報が含まれることから「政府間の信頼・機密保持・共通利益が不可欠」だとし、価値観や認識が異なる国による議論には重大なリスクが伴うため「WTOにおける経済安保の取り組みは不適切」だと主張している。2025年12月18日付ビジネス短信を参照。 本文に戻る
注19:
国務省によれば、重要鉱物閣僚会合から4月下旬までの間に、米国は27件の重要鉱物に関する二国間協定を締結した。こうした二国間協定をベースに、最低国境調整価格を決める複数国間のイニシアチブの策定を目指している。James Bikales, Hannah Northey, “Trump admin touts 27 mineral deals in bid to counter China”, Politico, April 30, 2026. 本文に戻る
注20:
国務省のパックス・シリカのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。 本文に戻る
注21:
例えば、次を参照。中富道隆「通商分野でのイッシューベースの複数国間合意(プルリ合意)についてPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(491KB)」、経済産業研究所(RIETI)、2012年4月2日。 本文に戻る
注22:
米国は、同盟国・有志国との二国間通商合意に経済安全保障条項を組み込み、輸出管理などの規則を整合させ、敵対国への技術流出を防ぎながら、AIなどの先端技術において米国主導の国際的なエコシステムの創出を図っている。米国の経済安全保障に関する方針は、2026年2月6日付地域・分析レポート「経済安保中心の通商協定」を参照。 本文に戻る
注23:
米国の対中輸入額は、米中対立が始まった2018年から減少傾向にあり、2025年は特に顕著に減少した。2026年5月13日付地域・分析レポート「トランプ関税と米国の貿易額、ノートPC・スマホで進む脱中国」を参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 調査担当ディレクター
赤平 大寿(あかひら ひろひさ)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部国際経済課、海外調査部米州課、企画部海外地域戦略班(北米・大洋州)、調査部米州課課長代理などを経て2023年12月から現職。その間、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部客員研究員(2015~2017年)。政策研究修士。