米USTR、WTO閣僚会合に先立ち声明発表、複数国間協定の制度化など訴え
(米国)
ニューヨーク発
2026年03月25日
米国通商代表部(USTR)は3月23日、WTO改革を訴える声明を発表
した。声明
は、2025年12月にUSTRが発表した声明(2025年12月18日記事参照)に続くもので、3月26~29日にカメルーンで開催されるWTO第14回閣僚会合(MC14)に先んじて発表された(注1)。前回の声明発表後に各国・地域が同様の声明を発表したことを受け(注2)、今回の声明は、各国・地域の見解を引用しつつ、米国が改革を求める課題や解決案6点をあらためて示した。
声明ではまず、WTOが加盟国に課す通報義務(注3)が十分に履行されていない点を課題に挙げた。公平な競争環境を構築する上で、貿易に関する各国の制度の透明性が重要であるにもかかわらず、一部の加盟国が順守していないとし、各国が通報することに対する新たなインセンティブが必要だと主張した。具体的には、加盟国の通報義務不履行により不利益を被った場合の救済手段を検討すべきなどと主張した。
また、WTOの全会一致の法則により、意思決定が進まない点にあらためて懸念を示し、その対策手段として、複数国間(プルリ)協定について議論すべきと主張した。具体的には、一部の加盟国が特定の課題について、一定期間の暫定的な複数国間協定を締結し、期間終了後に当該複数国間協定をWTO協定の付属書4に加える(注4)とともに、この複数国間協定の貿易額が一定割合を超える場合、WTO協定そのものへ組み込むかを検討すべきと提案した。またUSTRは、この割合をWTO閣僚会合で議論すべきと述べている。
最恵国待遇(MFN)については、これまでの主張のとおり「各国が開放的で市場志向の貿易政策を採用する想定の下で策定されたもの」「各国が米国と比べて高い関税率や非関税障壁を課し、非市場的な貿易慣行を維持する現代に適合しない」との見解を示し、WTO加盟国が「市場の開放度や公正で市場主義に基づく競争、透明性へのコミット」などに基づき、MFNを適用する範囲を調整できる仕組みを検討すべきなどと主張した。
安全保障例外の適用については、前回の声明と同様に「各国が自国の安全保障上の利益を保護するために必要な措置を講じる主権的権利を有する」という米国の主張を示し、WTOが安全保障に関する問題を裁定することは、WTOを政治的論争に引きずり込むこととなり、「議論と交渉の場としてのWTOの存続可能性を損なうものである」と主張した。
このほかUSTRは、WTO事務局が加盟国主導という発足当初のあり方から離れ、独自の課題を追求するようになったことや(注5)、発展途上国が「特別かつ差別化された待遇(SDT、注6)」を自己申告で適用可能であり、WTOがその基準や適用のための手続きを明示していないことを課題に挙げた。
トランプ政権はこれまでにもWTOを批判する声明を発表し、一時はWTO離脱も指摘されていたが、USTRが3月2日に発表した「2026年の通商政策課題と2025年の年次報告」ではWTOに引き続き関与していく姿勢が示された(2026年3月3日記事参照)。
(注1)なお、加盟国には3月20日付で回覧されている。
(注2)USTRの発表によれば、2025年12月の声明発表以降、欧州連合(EU)、パラグアイ、中国、後発開発途上国(LDC)グループ、アフリカグループ、そして英国が同様の声明を発表した。
(注3)WTOは加盟国に対し、官報やそのほかの国内媒体を通じて自国の措置を公表するとともに、WTOを通じて貿易相手国に対しても情報を提供するよう義務付けている。
(注4)附属書4には複数国間協定が掲載されている。これらは一括受諾の対象ではなく、WTO加盟国であってもこれらの協定を受諾しなければならない義務はない。
(注5)例えば米国は、WTO紛争解決制度において、協定上は上級審にあたる上級委員会の判断が先例拘束性を有していないにもかかわらず、事実上の先例となり、協定解釈を拡大していることを問題視してきた。
(注6)SDTは、途上国による貿易参画機会の拡大を促す措置や、途上国の貿易利益保護など、途上国を対象とした特別待遇を指す。USTRは2025年1月に発表した「中国によるWTO義務履行に関する議会提出報告」の中で「特定のWTO加盟国が途上国としての地位を主張し、不適切なかたちでSDTを求めることで、貿易交渉で義務履行を回避している」とするなど、かねてから批判的な見解を表明していた(2025年9月26日記事参照)。
(滝本慎一郎)
(米国)
ビジネス短信 ea84280149f2b4b1






閉じる