WTO第14回閣僚会議、全加盟国での合意は持ち越し

(世界)

調査部国際経済課

2026年03月31日

WTOは3月26~29日にかけて、カメルーンの首都ヤウンデで第14回閣僚会議を開催した。WTOの改革に向けた作業計画などについて交渉を進めたものの、4日間の会期中に合意に達することができず、閣僚会議に次ぐWTOの意思決定機関である一般理事会の次の会合で合意を目指すこととなった。

合意できなかった論点として、音楽・映画など国境を越える電子的送信に対し関税を賦課しない慣行の継続が挙げられる。この関税不賦課の慣行は1998年以降、一時期を除き、2年に1度程度開かれる閣僚会議の度に延長されてきた。今回は同慣行を原則5年延長する案で合意を図ったものの、一部の途上国が反対し調整がつかなかったもよう。2026年3月31日をもって同慣行は期限切れとなった。

今回合意を目指したパッケージとしては主に、(1)WTO改革に向けた作業計画、(2)電子的送信に対する関税不賦課の慣行継続、のほか、(3)紛争解決手続きにおける「非違反申し立て」(注1)のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)への適用に関する猶予期間の延長、(4)漁業補助金に関する取り決め(注2)、(5)後発開発途上国向け措置の5点がある。持ち越しとなったこれら5点の合意を改めて目指す一般理事会の日程は未定だが、5月の開催が見込まれている。

有志国での電子商取引協定は前進

閣僚会議では全加盟国(166カ国・地域)での合意には至らなかったものの、有志国の取り組みでは一定の前進がみられた。66のWTO加盟国・地域は3月28日、電子商取引に関する協定の施行に向けた「道筋(pathway)」に合意したと発表した。同協定には電子的送信に対する関税不賦課の恒久化も含まれる。協定をWTOルールの一部へと取り込むには全WTO加盟国の同意が必要となり、ハードルが高い。そのため今回、暫定的な規定として参加国間での仲裁による紛争解決に関する取り決めを追加して、複数国間協定として出発しつつ将来的なWTOルールへの取り込みを目指すことで合意した。今後参加国は国内で批准手続きを進め、45カ国・地域の寄託が得られた時点で協定が発効する。

同じく有志国の複数国間協定では、既に2023年に協定内容に妥結していた投資円滑化協定の参加129カ国・地域が今回の閣僚会議で全WTO加盟国の同意によるWTOルールへの同協定の取り込みを目指したが、インド1カ国の反対により達成できなかった。

(注1)他のWTO加盟国の措置がWTO協定上の義務には違反しないものの、その措置の結果として自国の利益が無効化・侵害された場合に、WTO紛争解決を利用できる手続き。

(注2)WTO漁業補助金協定は2025年9月に発効したが(2025年9月24日記事参照)、過剰漁獲能力・過剰漁獲につながる補助金に関するルール作りは継続課題となっており、その道筋に関する取り決め。

(安田啓)

(世界)

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