グリア米USTR代表、閣僚会合を踏まえWTOを批判する論説を発表

(米国)

ニューヨーク発

2026年04月09日

米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は4月8日、WTO第14回閣僚会合(MC14)の結果を踏まえ、WTOを批判する論説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(注1)。現在のWTOは「米国の国益を損なう」と批判するとともに、米国はWTO外で通商協定を進めていく意向を示した。

論説では、WTOが、「中国が世界の製造業を支配する一方で、米国の貿易相手国が高い貿易障壁を罰せられることなく維持できる」国際貿易秩序を生み出す一因となったと批判した。また、「開発途上国という自ら宣言した地位ゆえに、加盟国の約4分の3は合意されたルールのいくつかを順守する義務を負っていない」と指摘した。USTRはMC14の直前に発表したWTO改革を訴える声明で、開発途上国による「特別かつ差別化された待遇(SDT、注2)」を改革する必要性を訴えていた(2026年3月25日記事参照)。

紛争解決システムについては、「終わりのない訴訟の場へと変質」した結果、不公正な貿易慣行に対抗できなくなり、規則順守につながることはまれで、紛争解決の意欲をそぐ仕組みになっていると指摘した。米国は長年、紛争解決機関(DSB)の上級委員会の判断が事実上の先例となり、協定解釈を拡大し、米国の主権を侵しているなどと批判しており、トランプ政権1期目から上級委員の選任を拒否している。その結果、現在、上級委員は1人もおらず、審理ができないことから紛争解決制度は機能していない。

電子送信に対する関税不賦課モラトリアムについては、「世界全体で標準的な慣行となっているにもかかわらず、WTOは依然として2年ごとに形式的に更新している」「膨大な時間と労力が費やされ、多くの加盟国が更新を人質に取って、無関係な目的との取引材料にしている」と批判した。グリア氏の論説によれば、MC14で米国は、他の24の加盟国とともに、電子送信に対する関税不賦課を恒久的に合意すべきと提案したが、合意できなかった。そこで、4年間の延長へと譲歩して合意を目指したが、ブラジルとトルコが反対したため合意に至らなかった。こうした現状に対してグリア氏は、全会一致の原則の下で「合意形成はほぼ不可能」と断じた。

これらを踏まえ、グリア氏は「米国は、WTOが米国の労働者や企業のニーズに応えるのを30年も待つつもりはない」とし、WTOでは解決が難しい関税・非関税障壁への対処、貿易における構造的不均衡の是正、サプライチェーンの多様化などのため、相互貿易協定(ART)を通じて、米国は「独自の道を進んでいる」と述べた。USTRが3月末に発表した、2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」に基づけば、米国はこれまでARTを、18カ国・地域と締結、あるいは合意した(2026年4月2日記事参照)。

トランプ政権2期目では、一時、WTOへの資金拠出が停止され、脱退も危惧されていた(2025年9月3日記事参照)。だがその後、資金拠出は再開され(2026年1月9日記事参照)、3月に公開されたUSTRの年次報告書では、WTOへの関与を継続する方針が示された(2026年3月3日記事参照)。また、米国のWTO大使を務めるジョセフ・バールーン氏は、MC14直後の声明で、WTO改革に関与し続けると述べた(2026年4月1日記事参照)。それでも、グリア氏が述べるように、WTOに対する米国の批判は根強く、今後も米国とWTOとの関係性は注視し続ける必要がある。

(注1)論説はウォール・ストリート・ジャーナル紙に4月7日付で寄稿された。

(注2)SDTは、途上国による貿易参画機会の拡大を促す措置や、途上国の貿易利益保護など、途上国を対象とした特別待遇を指す。

(赤平大寿)

(米国)

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