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議長国・英国の手腕が試される、COP26いよいよ開幕
世界をリードする英国の気候変動対策

2021年10月26日

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日から11月12日までの期間で、英国を議長国とし、英国のスコットランド南西部グラスゴーで開催される。COP26は、2020年11月に開催される予定だったが、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大のため、1年遅れでの開催となった。本稿では、COP26のポイントと英国の気候変動対策の取り組みについて紹介する。

焦点となるパリ協定の実施指針(ルールブック)の合意

パリ協定は、2015年にパリで開催されたCOP21で採択され、2016年に発効した。同協定は、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス(GHG)排出量削減などのための新たな国際枠組みで、初めて、全ての締約国が参加する公平な合意となった。同協定の概要は以下のとおり。

  • 世界共通の長期目標として2度目標の設定。1.5度に抑える努力を追求すること(1.5度以内の努力目標)。
  • 主要排出国を含む全ての国が削減目標(国が決定する貢献:NDC)を5年ごとに提出・更新すること。
  • 全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受けること。
  • 適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新。
  • イノベーションの重要性の位置付け。
  • 5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。
  • 先進国による資金の提供。これに加えて、開発途上国も自主的に資金を提供すること。
  • 2国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用。

今回のCOP26では、同協定の内容を踏まえ、4つの達成目標が掲げられている(参考1参照)。COP24、25で交渉継続となっている同協定の実施指針(ルールブック)の未決定要素である同協定6条(市場メカニズム)について合意し、同協定のルールブックを最終決定できるかどうかが焦点の1つとなる。

また、先進国は、気候変動対策に関する開発途上国支援として、開発途上国に対し2020年時点で年間1,000億ドルの気候資金を合同で政府・民間から動員すること、さらに2021年から2025年までの5年間も年間1,000億ドルの資金動員目標を維持することを約束している。2021年9月17日にOECDが公表した報告書によると、2019年の先進国による開発途上国への気候資金支援実績総額は796億ドルと目標額の約8割で、1,000億ドル動員達成計画に関する議論も注目ポイントとなる。

気温上昇1.5度以内の努力目標に向けた取り組みとしては、石炭の段階的廃止、森林破壊の抑制、電気自動車(EV)への移行、再生可能エネルギーへの投資促進などが議論される見込み。

参考1:COP26で達成すべきこと

1. 21世紀半ばまでに地球規模でネットゼロを確実に達成し、気温上昇1.5℃以内を手の届く範囲に維持する
各国は、2050年までにネットゼロ達成に向け、2030年の野心的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標を提示することが求められる。この目標を達成するには、各国は次のことを行う必要がある。
  • 石炭の段階的廃止の加速。
  • 森林破壊の抑制。
  • 電気自動車(EV)への切り替えの加速。
  • 再生可能エネルギーへの投資促進。
2.気候変動に適応して地域社会と自然生息地を保護する
気候変動はすでに進んでおり、排出量を削減しても、壊滅的な影響を及ぼしながら変動し続ける。COP26では、気候変動の影響を受ける国々が次のことを可能にし、奨励するために協力する必要がある。
  • 生態系の保護・修復。
  • 防衛策を確立し、警報システムを整備し、インフラと農業の回復力を高めることで、住宅や生活、命が失われる事態を回避。
3.資金を動員する
1、2の目標を達成するためには、先進国は年間1,000億ドル以上の気候資金を調達する約束を果たさなければならない。
国際融資機関はその役割を果たさなければならず、世界規模でネットゼロを達成するために必要な数兆円規模の融資を民間、公共部門から引き出すために取り組む必要がある。
4.実現に向け協力する
気候変動という課題に立ち向かうには、私たちは協力する以外に手はない。COP26で私たちは次のことを行う必要がある。
  • パリ協定の実施指針(ルールブック)の最終決定。
  • 政府、企業、市民社会の協力により、気候危機に対処するための行動の加速。

出所:英国政府COP26公式ウェブサイトを基にジェトロ作成

COP26では、前述のとおり、全ての締約国が協力して、1.5度努力目標に向けた野心の向上、同協定実施指針の最終決定、開発途上国への資金支援、さらに気候変動に対する世界全体のさらなる野心的な行動目標が争点となる。

議長国・英国の気候変動対策の取り組み

英国は1990年から2019年にかけて、経済が78%成長した一方、GHG排出量は44%減少し、G7の中で最も速いペースでの減少だった。英国のGHG排出量削減目標では、2050年ネットゼロ(GHG純排出ゼロ)達成に向け、2030年までに1990年比で少なくとも68%削減し、2035年までに同78%削減する目標を掲げている(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)。また、発電部門では、2020年の総発電電力量に占める石炭火力の割合は1.8%となり、2012年の39.2%から大きく減少している。英国政府は、2021年7月には計画を1年前倒しし、2024年9月末までに国内の石炭火力発電所を廃止することを発表した(2021年7月7日付ビジネス短信参照)。

政府は、気候変動対策に関連した政策を2020年後半から相次いで発表し、取り組みを強化している(参考2参照)。政府は、まず2020年11月、2030年までの気候変動対策を強化し、新型コロナウイルス禍からの経済立て直しと雇用創出の中心的な役割を担う政策として「グリーン産業革命のための10項目の計画」を発表した(2020年11月20日付ビジネス短信参照)。同計画では、洋上風力発電40ギガワット(GW)の導入、ガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止、5GW規模の低炭素水素発電の開発、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)、原子力発電の計画推進など、2030年までの野心的な目標が掲げられた。さらに同年12月には、2050年までのネットゼロ達成に向けた具体的なアプローチを示した「エネルギー白書」を発表(2020年12月18日付ビジネス短信参照)。2021年に入ってからは、3月に「産業脱炭素化戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(7.41MB)」と「北海移行協定PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.32MB)」を、7月には「輸送部門の脱炭素化計画」(2021年7月21日付ビジネス短信参照)、8月には「水素戦略」(2021年8月23日付ビジネス短信参照)を発表している。

さらに、10月には、2050年までのネットゼロ達成に向け、2030年までに900億ポンド(約14兆1,300億円、1ポンド=約157円)の民間投資を呼び込むための具体的な計画を示した「ネットゼロ戦略」を発表(2021年10月26日付ビジネス短信参照)。再生可能エネルギーの導入をさらに拡大し、大規模な原子力発電所新設の推進、化石燃料では石炭火力に続きガス火力も削減することで、これまでの計画を15年前倒しし、2035年までに電力システムを脱炭素化する(2021年10月11日付ビジネス短信参照)。また同2021年10月に、住宅暖房の低炭素化を目指す「熱・建物戦略」も発表している(2021年10月25日付ビジネス短信参照)。

参考2:これまでの英国の気候変動対策の取り組み

  1. 2000年以降、G20のどの国よりも速く経済の脱炭素化に取り組んでいる。
  2. 主要経済国としては初めて、温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロにすることを法制化した。
  3. 世界最大の洋上風力発電量となった。
  4. 海外の化石燃料エネルギーセクターに対する直接支援を中止した。
  5. 2025/26年までの5年間で発展途上国の支援に116億ポンドを供出し、気候関連の国際融資を倍増する。
  6. 2030年までに国内におけるガソリン車とディーゼル車の新車販売を終了することを発表し、G7の中でも最も速いスピードで乗用車とバンの脱炭素化を目指す。
  7. 自然と自然に基づくソリューションを対象に、今後5年間で30億ポンド以上の気候関連の国際融資を行う。
  8. 2025年まで年間3万ヘクタールの土地への植樹を進める。
  9. 環境破壊の回復と気候変動への取り組みにおいて、農業を営む方々に最前線に立ってもらう計画を発表した。
  10. 2025年までに環境関連の情報開示を経済全体で義務化する予定で、2023年までに大部分の要件が揃う。
  11. 低炭素のセクターとサプライチェーンから国内で46万人分の雇用が提供される予定。 2030年までに最大200万人分の環境にやさしい雇用を創出することを目指す。

出所:英国政府COP26公式ウェブサイトを基にジェトロ作成

2年ぶりに開催されるCOP26までの道のり

COP26は当初、2020年11月に開催される予定だったが、前述のとおり延期となった。この1年間に開催された、気候変動に関する国際会議を紹介する(表参照)。英国政府は2020年12月12日、パリ協定5周年を記念して国連と英国、フランスの共催で「気候野心サミット」を開催した(2020年12月15日付ビジネス短信参照)。さらに、英国政府は2021年3月31日、国際エネルギー機関(IEA)と共催で「IEA-COP26ネットゼロサミット」を開催、世界のGDP、人口、GHG排出量の80%以上に相当する40カ国以上が参加した。同サミットでは、IEAが提示した「ネットゼロに向けた持続可能な復興の推進」「2030年およびそれ以降に向けた明確で野心的かつ実行可能なロードマップの策定」などのネットゼロの実現に向けた7つの主要原則が支持された(2021年4月2日付ビジネス短信参照)。

2021年4月22、23日に開催された米国のジョー・バイデン大統領主催の気候サミットでは、日本、米国、カナダなどが新たな削減目標を発表(2021年4月23日付ビジネス短信参照)。5月20、21日に開催されたG7の気候・環境大臣会合では、中国など主要なGHG排出国を含む、G7以外の国々にも排出削減目標(NDC)の強化を求め、石炭火力発電への国際公的支援全廃に向けた具体策を2021年内に講じることなどに合意した(2021年6月1日付ビジネス短信参照)。ボリス・ジョンソン英国首相が議長を務めたG7首脳会議(サミット、会期:6月11~13日)では、同合意に沿い、G7は2050年までのGHG排出ネットゼロ目標を確約。2030年代の電力システムの大半の脱炭素化や、2021年内の石炭火力事業への新規国際支援終了、ガソリン・ディーゼル車からゼロ・エミッション車への移行加速などに取り組む考えを明示した(2021年06月14日付ビジネス短信参照)。

米国のバイデン大統領が2021年9月17日にオンラインで開催した、首脳級の気候・エネルギー主要国経済フォーラム(MEF)では、バイデン大統領はCOP26に向けて、各国が協調してGHG削減へより一層努力する必要があるとして、EUとともに2030年までにメタンガス排出量を2020年比で少なくとも30%削減することを目指すと明らかにした。各国にもこの目標への参加を呼びかけ、英国、インドネシア、メキシコなどが参加の意向を示したとされる(2021年9月21日付ビジネス短信参照)。

表:COP26までの気候変動に関連した国際会議
月日 会議
2020年 12月12日 気候野心サミット
2021年 3月31日 IEA-COP26ネットゼロサミット
4月22-23日 気候サミット
5月20-21日 G7気候・環境大臣会合
6月11-13日 G7首脳会議
7月22-23日 G20環境大臣会合及び気候・エネルギー大臣会合
9月14日 第76回国連総会開幕
9月17日 気候・エネルギー主要国経済フォーラム(MEF)
9月30日-10月3日 プレCOP
10月30-31日 G20首脳会合

出所:英国政府COP26公式ウェブサイトを基にジェトロ作成

第76回国連総会では、ジョンソン首相が9月22日に一般討論演説を行い、COP26について言及。「COP26は、人類にとってのターニングポイントとなる」とし、このまま放置すると、今世紀末までに気温が2.7度以上上昇し、砂漠化、干ばつ、不作、これまでにない規模の人類の大量移動が発生する、と警鐘を鳴らした。そして、世界各国が今世紀半ばまでにカーボンニュートラル、ネットゼロを達成することを共同で公約することの必要性を強調し、気温の上昇を食い止めるためには、すべての国が2030年までに大幅なGHG削減に取り組む必要があるとして、各国への行動を呼びかけた。また、同首相は演説の中で、「私は、石炭、自動車、資金、森林保護という4つの分野での取り組みにより、GHG削減が可能になると強く信じている」とし、以下の今後の目標を示した。

  • 石炭火力については、開発途上国は2040年までに、先進国は2030年までに廃止する。
  • 自動車については、2040年までに世界でゼロ・エミッション車のみの販売とする。
  • 先進国は、開発途上国を資金支援する義務があることを認識しなければならない。
  • 自然のバランスを取り戻し、2030年までに森林や生物多様性の破壊を食い止め、回復させる必要がある。

 また、アロック・シャルマCOP26議長は10月12日、パリのユネスコ世界遺産センターで演説を行い、COP26の成果として求められる目標の4点を強調した。

  • 2030年までにGHG排出量を大幅に削減し、今世紀半ばまでにネットゼロを達成するための気候行動計画(NDC)の提示。
  • 石炭火力の削減、EVへの移行、森林の保護、メタンガスの削減に関する合意を含む、これらの計画を実現するための具体的な行動。
  • 開発途上国に対する年間1,000億ドルの気候資金動員目標の公約順守。
  • 今後10年間、さらに野心を高めていくための道筋をつける交渉結果。

その上で、気候変動の影響を受けやすい国々が、すべてのG20諸国および主要なGHG排出国に対して、さらなる野心的な2030年気候行動計画(NDC)を提示するよう求めていることを伝えた。また、シャルマ議長は演説の中で、「COP26は、写真撮影の機会でも、商売の話をする場でもなく、気候変動問題の解決に向けて、世界を軌道に乗せるための場でなければならない。それは各国のリーダーにかかっている」とくぎを刺し、各国へ気候変動対策のさらなる取り組み強化を訴えた。

COP26では各国のさらなる野心的な目標が求められる

2021年に入り、気候変動に関連した複数の報告書が発表されている。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月9日、「第6次報告書第1作業部会(WG1)報告書」を発表した。同報告書の中では、今後の温暖化について 5つのCO2排出シナリオを示しており、地球の表面温度は、検討したすべてのCO2排出シナリオで、今後数十年の間にCO2などのGHGの排出量を大幅に削減しない限り、21世紀中に気温上昇は1.5度および2度を超えるとされている。また、過去および将来のGHGの排出による海洋、氷床、地球の海面レベルの変化は、数世紀から数千年にわたって元には戻らない、と警告している。

IEAは10月13日、「世界エネルギー見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(14.31MB)」を発表した(2021年10月14日付ビジネス短信参照)。同報告書では、COP26に向け各国・地域がネットゼロ目標の達成を公約しており、すべての公約を達成した場合(APSシナリオ、注)、世界のエネルギー関連のCO2排出量は2050年までに40%減少し、2100年の世界平均気温は、産業革命前に比べて約2.1度上昇に抑えられるが、ネットゼロとならず、気温の上昇傾向は止まらないとした。また、IEAは、2030年までの重要な期間において、このシナリオの行動では、2050年までにネットゼロ達成を可能にするために必要な排出削減量には全く足りていないとし、2030年の目標を2050年までにネットゼロを達成できるように整合させ、強化し、誰も取り残さない世界規模の協力的な移行を実現するために、すべての国はさらに努力する必要があるとした。

新型コロナで1年延期された自国開催のCOP26で、さらに野心的な合意を実現し、これまで以上に気候変動対策で世界をリードできるのか。議長国・英国の手腕が試される。


注:
未実施のものも含め、政府の発表済み公約が仮に全て実施された場合のシナリオ(Announced Pledges Scenario)。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
宮口 祐貴(みやぐち ゆうき)
2012年東北電力入社。2019年7月からジェトロに出向し、海外調査部欧州ロシアCIS課勤務を経て2020年8月から現職。

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