2024年に石炭火力全廃へ、計画を1年前倒し

(英国)

ロンドン発

2021年07月07日

英国政府は6月30日、国内の石炭火力発電所を廃止する期限を1年間前倒し、2024年9月末とすることを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

政府はこれまで、既存の石炭火力発電所を2025年10月までに廃止する方針を打ち出していた(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)。今回、2020年12月~2021年2月に意見公募を実施した上で、英国の炭鉱部門に与える影響は少ないと分析し、期限を1年間早めた。政府は、これを近く法制化する予定。同政策は発電用の石炭にのみ適用され、鉄鋼業など他の石炭消費者や国内の炭鉱には適用されない。

廃止に向けた直近の動きでは、フランスのエネルギー大手EDFエナジーが2021年3月、イングランド北部ノッティンガムシャーのウェスト・バートンA発電所を2022年9月末までに廃止することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。この廃止以降、国内の石炭火力発電所は同地域にあるドイツのエネルギー会社ユニパーのラトクリフ・オン・ソア発電所だけとなる。

国内外で脱石炭加速に意欲

電力部門では着実に低炭素化が進んでいる。今回の発表によると、2020年の総発電電力量に占める石炭火力の割合は1.8%(暫定値)となり、2012年の39.2%から大きく減少している(添付資料図1、2参照)。

また、2020年春には、石炭火力発電が連続して使用されない期間が4月10日~6月16日の約68日間(約1,630時間)と産業革命以来の最長となり、年間累計では5,147時間になった。

石炭火力の代わりに発電電力量が増えているのが風力発電で、2021年5月21日には一時、発電電力17.7ギガワット(GW)、需要に対する割合62.1%を記録し、どちらも過去最大となった。2020年の年間総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は43.1%(暫定値)で、これに原子力を加えた低炭素電力は59.3%となっている。

また、2021年3月に実施された2024年度の容量市場オークション(注)には、初めて石炭火力発電所が参加しなかった。今後は、容量市場への排出量制限の導入により、石炭火力発電所は容量市場オークションに参加できなくなる。

政府は、2021年11月に英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、英国同様に石炭火力発電所の段階的廃止を加速するように全ての国に呼び掛けるとしている。5月下旬に英国で開催されたG7の気候・環境相会合では、石炭火力発電への国際公的支援全廃に向けた具体策を2021年内に講じることで合意しており、翌月のG7首脳会議(サミット)のコミュニケ(首脳声明)でも明言されている(2021年6月1日記事2021年6月14日記事参照)。

(注)電力需要のピークに備えた将来の供給量を、消費者にとって低コストで確保するために取引するもの。

(宮口祐貴)

(英国)

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