海外の化石燃料プロジェクトへの公的資金支援を終了

(英国)

ロンドン発

2020年12月15日

英国政府は12月12日、パリ協定5周年を記念して国連と英国、フランスの共催で開催した「気候野心サミット」(オンライン開催)の中で、2030年までの温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で少なくとも68%削減することに加え(2020年12月7日記事参照)、海外の化石燃料プロジェクトへの公的資金の投入を終了することを発表した。

この政策は今後、短期のコンサルテーションが実施され、2021年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、開催地:英国グラスゴー)までに発効することを目指すとしており、ごく一部の例外を除いて、新たな原油、天然ガス、石炭火力プロジェクトの輸出金融、開発支援、貿易促進を終了する。政府は2020年1月に開催した英国アフリカ投資サミットでの声明などで、アフリカを含む海外の石炭採掘と石炭火力発電所に対し、新たな政府開発援助などを行わないことを示していたが、今回の政策はその内容をさらに強化したものとなった。

また、政府は今後5年間で116億ポンド(約1兆6,124億円、1ポンド=約139円)の「国際気候ファイナンス」を約束。さらに、途上国が新型コロナウイルス感染症による損害からの復興政策に気候変動対策を含むことでより質の高い復興ができるよう支援することを目的とした多国間グリーン・リカバリー・イニシアチブに、新たに1,000万ポンドを投じることを発表した。

英国は過去4年間で貿易促進と輸出金融を通じて、英国の石油、天然ガスの輸出に対し210億ポンドを支援してきた。これを踏まえ、英国政府は今回の政策が大きな変化となるとし、グリーンテクノロジーと再生可能エネルギーの支援への移行を促進し、英国全体の雇用創出と産業の国際的成長を促すものと位置付けている。

ボリス・ジョンソン首相はサミットに先立ち、「気候変動は世界的な課題の1つであり、この課題への対応を2030年までにGHG排出量を少なくとも68%削減するという新たな取り組みとともに先導できたこと、また、海外の化石燃料プロジェクトへの支援を終了することを発表でき、うれしく思う。野心的で断固とした行動をとることにより、未来の雇用を創出し、新型コロナウイルスの影響からの回復を促進させ、次世代のために美しい地球を保護する」と述べた。

(宮口祐貴)

(英国)

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