「グリーン産業革命」を発表、ガソリン、ディーゼル車は2030年に販売禁止へ

(英国)

ロンドン発

2020年11月20日

英国のボリス・ジョンソン首相は11月18日、クリーンエネルギー、輸送、自然、革新的な技術などの野心的な10項目の計画を含む「グリーン産業革命」を発表した。この計画は、英国が2050年までに温室効果ガス(GHG)の純排出ゼロ(注)の目標達成に貢献するものとし、英国政府による総額120億ポンド(約1兆6,560億円、1ポンド=約138円)の投資を行い、最大25万人の雇用を創出する。英国の強みを中心に構築された10項目の中には、電気自動車(EV)や洋上風力、水素、原子力などが含まれる(添付資料表参照)。

特にEVの項目では、政府は2020年2月にガソリン車とディーゼル車の新車販売を2035年までに禁止する方針を発表していたが(2020年2月6日記事参照)、自動車製造業者や販売業者と協議を行い、今回の計画ではその方針をさらに早め、2030年までに実現するとした。ただし、炭素排出ゼロで長距離走行可能なハイブリッド車の販売は2035年まで認める。また、ゼロエミッション貨物輸送の先駆者となるため、ディーゼル重量物車両(HGV)の段階的廃止に関する協議も開始するとした。

洋上風力の項目では、10月6日の与党・保守党の党大会での演説内容も含まれ(2020年10月14日記事参照)、英国の全家庭への電力供給に十分な容量を供給するため、2030年までに洋上風力による発電量を現在の4倍の40ギガワット(GW)にするとした。一方、太陽光や陸上風力、エネルギー貯蔵などといった関連技術は項目に含まれなかった。

本計画は、2021年に開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、開催地:英国グラスゴー)に向けても重要だとし、世界中の国々や企業にGHGの純排出ゼロ推進への参加を呼び掛けるとしている。

各業界団体もこれを歓迎する声明を発表している。英国自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は「政府がEVへの移行に当たりハイブリッド車の重要性を認めたこと、ゼロエミッションまたは超低排出ガス車の購入インセンティブへの追加支出とEV製造能力強化への支援を歓迎する」とした。目標の達成には、消費者が新技術の恩恵を享受でき、従来の燃料補給と同様に充電を容易にすることが重要とした。

エネルギー関連の業界団体エナジーUKのエマ・ピンチベク最高責任者は「エネルギー産業は、政府が掲げるEV、ヒートポンプ、エネルギー効率などの野心的な目標の多くの実現に貢献することができ、水素、原子力、洋上風力などの技術投資に深く関わっている」と述べ、「エネルギー産業界は『グリーン産業革命』で中心的な役割を果たす準備ができている」とした。

(注)人間の活動によって排出される温室効果ガス(GHG)の量を森林などで吸収されるレベルにまで抑えること。

(宮口祐貴)

(英国)

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