南アフリカ共和国の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は1.1%、金融と農業が牽引
  • 資源輸出が好調、最大の貿易相手国は中国
  • 対内直接投資は鉱物関連会社の売却でマイナスに転じる
  • グレーリスト除外やS&P格付けなど、投資環境には明るいニュースも
  • 対日貿易は拡大、外交交流も深化

公開日:2026年9月8日

マクロ経済

金融と農業が成長を牽引、インフレ鈍化で利下げ進む

南アフリカ共和国(以下、南ア)の2025年の実質GDP成長率は1.1%となり、2023年以降1%未満であった成長率がかろうじて1%を超えた。

産業別成長率は、2025年には10の産業部門のうち7部門でプラス成長を記録した。金融・保険・不動産・企業サービスは、経済活動の活発化により前年比1.9%の成長を記録し、GDP成長率に0.5ポイント寄与した。農林水産業は17.4%成長し、GDP全体を0.4ポイント押し上げた。農業生産の増加は主にラニーニャ現象による降雨によって豊作となった畑作物と園芸作物の生産量増加によるものだ。卸・小売り・飲食業などは2.3%の成長を記録し、GDP成長率に0.3ポイント寄与した。一方、建設業はマイナス4.4%、電気・ガス・水道はマイナス4.3%、製造業はマイナス1.2%と落ち込んだ。

支出側から見た2025年の実質GDP成長率は前年比で1.4%増加した。国内インフレ圧力の緩和を受けて民間最終消費支出が増加し、GDP押し上げに貢献した。消費者物価上昇率は、2024年の4.4%から2025年には3.2%へ鈍化した。一方、国内総固定資本形成と財・サービスの輸出はともにマイナスとなり、成長率を押し下げる要因となった。

南アフリカ準備銀行(SARB)はインフレ率3%を目標としており、2025年のインフレ率は3.2%で、目標に近づきつつある。インフレ低下を背景に、南ア準備銀行は利下げを重ね、政策金利は2025年1月に7.75%から7.5%へ、その後5月、7月、11月にもそれぞれ25ベーシスポイントずつ引き下げられ、年末には6.75%となった。

表1-1 南アフリカ共和国の産業別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 産業別寄与率 (通年)
実質GDP成長率 0.8 0.5 1.1 0.1 0.8 0.3 0.4 —
農林水産業 △4.6 △ 8.7 17.4 16.4 1.2 1.4 0.4 0.4
鉱業 △0.1 0.4 0.2 △ 3.3 3.2 2.4 △ 0.6 0.0
製造業 0.4 △ 0.4 △ 1.2 △ 1.4 1.2 0.2 △ 0.6 △ 0.1
電気・ガス・水道 △4.2 3.5 △ 4.3 △ 2.7 0.1 △ 2.6 △ 2.2 △ 0.1
建設 △0.5 △ 5.4 △ 4.4 △ 3.6 △ 0.8 0.1 △ 1.3 △ 0.1
卸・小売り・飲食業など △1.6 △ 1.2 2.3 0.3 1.1 0.4 0.9 0.3
運輸・倉庫・通信 4.2 △ 1.2 0.8 2.4 0.1 0.5 △ 0.3 0.1
金融・保険・不動産業・企業サービス 1.4 3.2 1.9 △ 0.5 0.6 0.0 1.4 0.5
政府サービス 0.7 0.3 0.4 △ 0.2 0.6 0.6 0.4 0.0
その他サービス 2.1 2.1 0.4 △ 0.1 0.6 0.2 0.4 0.1

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比

〔出所〕南アフリカ共和国統計局

表1-2 南アフリカ共和国の支出項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注1〕四半期の伸び率は前年同期比 〔注2〕GDPを支出項目別に算出、合算したもので、表1-1の数値と若干のずれが生じる。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 0.5 0.4 1.4 0.2 0.8 0.4 0.3
民間最終消費支出 0.2 1.0 3.6 0.5 1.3 0.9 1.2
政府最終消費支出 1.9 △ 0.1 △ 0.2 △ 0.2 0.9 0.3 0.5
国内総固定資本形成 3.0 △ 3.9 △ 2.2 △ 1.6 △ 1.5 1.4 1.3
財・サービスの輸出 5.1 △ 2.8 △ 2.5 0.8 △ 3.3 0.3 △ 0.6
財・サービスの輸入 3.9 △ 6.4 1.1 2.2 △ 2.1 2.2 0.5

〔注1〕四半期の伸び率は前年同期比
〔注2〕GDPを支出項目別に算出、合算したもので、表1-1の数値と若干のずれが生じる。

〔出所〕南アフリカ共和国統計局

貿易

資源や輸送機器の輸出は増加、鉄鋼業は引き続き苦境

2025年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比5.8%増の1,168億6,500万ドル、輸入は3.7%増の1,049億9,700万ドルだった。輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったことで、貿易収支は118億6,800万ドルの黒字となり、黒字幅は前年から拡大した。

輸出を品目別に見ると、貴石・貴金属などが前年比15.0%増の237億2,700万ドル、鉱石・スラグおよび灰が5.2%増の180億9,400万ドルと、資源輸出が好調だった。輸送機器および関連部品、果実・かんきつ類も、それぞれ21.3%増の152億6,000万ドル、21.6%増の60億1,600万ドルと伸長した。一方、鉄鋼は40.0%減と大きく落ち込んだ。背景には、国内での中国産鋼材の流入や電力・物流コストの高騰など南アの鉄鋼業界が抱える構造的な苦境がある。国内最大手のアルセロール・ミタル・サウスアフリカ(AMSA)は2025年1月、長尺鋼事業の停止を発表しており(2025年1月24日付ビジネス短信参照)、国内の生産能力縮小が輸出減少につながったとみられる。

輸入では、鉱物性燃料が前年比で5.5%減の185億400万ドルとなった。一方で、原子炉・ボイラー、機械類・部品などが8.5%増の140億1,600万ドル、電気機械および部品が5.8%増の104億3,600万ドル、輸送機器および関連部品が22.8%増の87億7,700万ドルとなり、全体の伸びに寄与した。

表2-1 南アフリカ共和国の主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2025年は暫定値
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
貴石・貴金属など 20,634 23,727 20.3 15.0
鉱石・スラグおよび灰 17,194 18,094 15.5 5.2
輸送機器および関連部品 12,578 15,260 13.1 21.3
鉱物性燃料 10,575 9,514 8.1 △10.0
果実・かんきつ類など 4,949 6,016 5.1 21.6
原子炉、ボイラー、機械類・部品など 5,668 5,878 5.0 3.7
鉄鋼 5,755 3,454 3.0 △40.0
合計(その他含む) 110,456 116,865 100.0 5.8

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕Global Trade Atlas (S&P Global)

表2-2 南アフリカ共和国の主要品目別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2025年は暫定値
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 19,579 18,504 17.6 △5.5
原子炉、ボイラー、機械類・部品など 12,917 14,016 13.4 8.5
電気機械および部品 9,863 10,436 9.9 5.8
輸送機器および関連部品 7,148 8,777 8.4 22.8
プラスチックおよび同製品 2,897 2,858 2.7 △1.4
光学機器、写真用機器 2,395 2,537 2.4 5.9
医療用品 2,424 2,505 2.4 3.4
合計(その他含む) 101,250 104,997 100.0 3.7

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕Global Trade Atlas (S&P Global)

国・地域別では、引き続き中国が輸出入ともに最大の貿易相手国だ。同国向けの輸出は前年比3.4%増の128億1,900万ドル、輸入は8.2%増の235億8,100万ドルとなった。南アの貿易産業競争省(DTIC)は2025年8月7日、業界団体や輸出協議会と協議の上、中国との経済関係の強化を目的に、「南ア・中国貿易投資パッケージ(2025~2029年)」の概要を発表した。貿易における優先事項として、対中輸出の多角化を目指す重点品目リスト「トップ100」に関する両国間の交渉状況、中国国内での常設見本市の設立、規制措置に関わる協力などが挙げられた(2025年8月13日付ビジネス短信参照)。その後、9月23日には、ヨハネスブルクで、南ア・中国貿易投資促進会議が開催された(2025年9月29日付ビジネス短信参照)。

トランプ政権との政治的緊張もみられた米国との貿易は、輸出が前年比0.8%増の82億9,500万ドルで3位、輸入が3.2%増の71億8,200万ドルで4位だった。2025年8月7日から、米国は南ア向けの相互関税を30%としたものの、2026年2月に米国の連邦最高裁判所が同関税を無効とした。米国がサブサハラ・アフリカ産品の関税を免除する特恵関税制度「アフリカ成長機会法(AGOA)」は2025年9月30日に一度失効したが、2026年2月に同年12月31日までの延長が決まった。また本プログラムは失効時点の2025年9月30日まで遡及(そきゅう)して適用される。そのため、懸念は一時的ではあるが払拭されることとなった(2026年2月12日付ビジネス短信参照)。

表3-1 南アフリカ共和国の主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2025年は暫定値
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 12,403 12,819 11.0 3.4
ドイツ 7,305 9,238 7.9 26.5
米国 8,229 8,295 7.1 0.8
日本 4,896 5,510 4.7 12.5
英国 5,271 5,413 4.6 2.7
モザンビーク 6,571 5,245 4.5 △20.2
インド 4,745 4,688 4.0 △1.2
合計(その他含む) 110,456 116,865 100.0 5.8

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕Global Trade Atlas (S&P Global)

表3-2 南アフリカ共和国の主要国・地域別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)〔注〕2025年は暫定値
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 21,796 23,581 22.5 8.2
インド 7,335 7,644 7.3 4.2
ドイツ 7,079 7,215 6.9 1.9
米国 6,958 7,182 6.8 3.2
オマーン 2,966 3,465 3.3 16.8
タイ 3,225 3,438 3.3 6.6
サウジアラビア 2,466 3,128 3.0 26.8
合計(その他含む) 101,250 104,997 100.0 3.7

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕Global Trade Atlas (S&P Global)

対内・対外直接投資

対内投資は大型資産売却で流出超

南ア準備銀行の発表によれば、南アの対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、2024年の435億400万ランドの流入から、2025年には414億800万ランドの流出に転じた。これは主に、英国に本社を置く資源大手アングロ・アメリカン(Anglo American)による南ア子会社の売却が要因である。

四半期別に見ると、第1四半期には117億ランドの流入があったが、第2四半期には735億ランドの流出へと転じた。南ア準備銀行はアングロ・アメリカンがプラチナ事業会社であるヴァルテラ・プラチナ(Valterra Platinum)の株式を売却したことによるものと指摘している。第3四半期にも210億ランドの流出を記録した。第2四半期同様、アングロ・アメリカンによるヴァルテラ・プラチナの残りの株式売却によるものであるが、南アのメディア・エンターテインメント企業における外国人株主比率の増加によって一部相殺されたとしている。第4四半期はメディア・エンターテインメント、産業機器・サービス、物流セクターへの外国企業の投資により、413億ランドの流入となった。

フィナンシャル・タイムズの「fDi Markets」や各社発表などによると、2025年の投資プロジェクトは、鉱業、エネルギー、情報通信などの主要産業で多岐にわたった。このうち鉱業では、カナダの鉱業会社アイバンホー・マインズ(Ivanhoe Mines)によるプラットリーフ鉱山への開発投資が進行中であり、同事業には伊藤忠商事とJOGMECが計10%を出資している。

再生可能エネルギーへの投資も継続された。ノルウェーの再エネ電力会社スカテック(Scatec ASA)は、南ア・電力エネルギー省による再エネ独立発電事業者調達プログラム(REIPPPP)入札において、合計846メガワット(MW)の太陽光発電の優先入札者として選定された。

対外投資は大幅に拡大

一方で、南アの対外直接投資額は719億4,600万ランドとなり、大きく落ち込んだ前年の221億1,100万ランドから3.3倍増となった。これは2023年(514億5,600万ランド)の実績も約4割上回っており、2018年以降で最も高い水準である。

世界最大級の金採掘会社の1つであるゴールド・フィールズ(Gold Fields)は、オーストラリアの合弁事業パートナーであるゴールド・フィールズ・リソーシーズ(Gold Road Resources)を約37億豪ドル(24億米ドル)で買収した。ゴールドフィールズの完全子会社であるグリュイエール・ホールディングス(Gruyere Holdings)がゴールド・フィールズ・リソーシーズの株式を100%保有することになる。

通信大手のボーダコム(Vodacom)は、ケニアの通信大手サファリコム(Safaricom)の株式20%を追加取得し、保有比率を55%に引き上げた。これにより、ケニアとエチオピアをはじめとする東アフリカ市場へのコミットメントをさらに強化した。今回の買収にはケニア政府が保有する15%の株式と、英国の通信事業者ボーダフォン(Vodafone)が保有する5%の株式が含まれており、取引額は21億ドル(360億ランド)だった。

小売り大手のミスタープライス(Mr.Price)は、中・東欧の繊維・小売業界最大手企業の1つであるNKDグループ(NKD)を買収する契約を締結した。NKDは、ドイツ、オーストリア、イタリア、スロベニア、チェコ、クロアチア、ポーランドに2,178店舗(2025年末時点)を展開している。買収額は最大4億8,700万ユーロ(約91億ランド)と見積もられている。

表4 南アフリカ共和国の対内・対外直接投資額〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ランド)(△はマイナス値)
項目 2023年 2024年 2025年 2024年末残高
対内直接投資額 72,009 43,504 △ 41,408 2,164,525
対外直接投資額 51,456 22,111 71,946 2,878,654

〔出所〕南アフリカ準備銀行(SARB)「Quarterly Bulletin(四季報)」2026年6月号

表5 南アフリカ共和国の主な対内直接投資案件(2025年)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT マイクロソフト(Microsoft) 米国 3月 54億ランド 過去3年間でデータセンターを設立するために204億ランドを投資したが、Azureサービスの需要拡大に対応するため、2027年末までに54億ランドを追加投資する。
IT カッサバ・テクノロジーズ(Cassava Technologies) 英国 4月 140億ランド エヌビディア(NVIDIA)のAIコンピューティング技術によって稼働するデータセンターに関する「AIファクトリー」の開発計画を発表した。エジプト、モロッコ、ナイジェリア、ケニアを加えた総投資額は140億ランドを予定。
再生可能エネルギー スカテック(Scatec ASA) ノルウェー 7月 130億ランド 南アフリカ共和国(以下、南ア)電力エネルギー省(DEE)による再生可能エネルギー独立発電事業者調達プログラム(REIPPPP)第7回入札において、総発電容量846MWの太陽光発電プロジェクト(クルーンスタット太陽光発電クラスター)の優先入札者資格を獲得した。
再生可能エネルギー ノルウェー気候投資基金(Norfund) ノルウェー 9月 14億ランド 西ケープ州に拠点を置く新たな再生可能エネルギープラットフォーム「Anthem」の設立と、南アにおけるその他のプロジェクト開発のために投資する。
鉱業 アイバンホー・マインズ(Ivanhoe Mines) カナダ 11月
(操業開始)
非公開 アフリカ大陸最大の貴金属鉱山となるリンポポ州のプラットリーフ鉱山に投資する。2000年から探鉱を進め、2025年11月18日から操業開始。プラチナ、パラジウム、ニッケル、ロジウム、金、銅など、様々な重要鉱物が産出される。同鉱山の株式の64%を保有する。日本からはJOGMECと伊藤忠商事が10%出資する。

〔出所〕データベース「fDi Markets」、各社発表および報道などから作成

表6 南アフリカ共和国の主な対外直接投資案件(2025年)
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
鉱業 ゴールド・フィールズ(Gold Fields) オーストラリア 5月 24億ドル オーストラリアの合弁事業パートナーであるゴールド・フィールズ・リソーシーズ(Gold Road Resources)を約37億豪ドル(24億ドル)で買収した。ゴールド・フィールズの完全子会社であるグリュイエール・ホールディングス(Gruyere Holdings)がゴールド・フィールズ・リソーシーズの株式を100%保有することになる。
保険 サンラム(Sanlam) インド 6月 非公開 インドのシュリラム・グループ(Shriram Group)とともに、インドで資産運用に関する合弁会社を設立した。合弁会社は50対50の出資比率で、5年以内に5,000億ルピー(約52億ドル)の資産運用を目指している。
IT ボーダコム(Vodacom) ケニア 12月 360億ランド ケニアのサファリコム(Safaricom)の株式20%を追加取得し、保有比率を55%に引き上げた。これにより、ケニアとエチオピアをはじめとする東アフリカ市場へのコミットメントをさらに強化した。今回の買収にはケニア政府が保有する15%の株式と、英国のボーダフォン(Vodafone)が保有する5%の株式が含まれており、取引額は21億ドル(約360億ランド)である。
小売り ミスタープライス(Mr Price) ドイツ 12月 91億ランド 中央・東ヨーロッパの繊維・小売業界最大手企業の1つであるNKDを買収する契約を締結した。NKDは、ドイツ、オーストリア、イタリア、スロベニア、チェコ、クロアチア、ポーランドに2,178店舗(2025年12月31日現在)を展開している。買収額は最大4億8,700万ユーロ(約91億ランド)と見積もられている。

〔出所〕データベース「fDi Markets」、各社発表および報道などから作成

投資環境・外資誘致政策

鉄道貨物輸送の民間開放や新エネルギー計画など改革進む

南ア政府は、投資環境の改善と民間・海外からの投資促進に向け、物流やエネルギー分野の構造改革を進めている。物流分野では鉄道貨物輸送への民間参入を推進し、エネルギー分野では電力供給の安定化と新規投資の呼び込みを目指した政策整備を進めている。

この取り組みの一環として、政府は2025年8月に6つの鉄道回廊にまたがる合計41路線を最大10年間運営する事業に対して、11の民間運営事業者を選定した。鉄道回廊では石炭や燃料、鉄鉱石、クロム、マンガン、砂糖などの商品輸送が想定されている。新規の鉄道運営会社では、2026/2027会計年度(2026年4月~2027年3月)から年間2,000万トンの貨物輸送の増加が見込まれている。南ア政府は、こうした民間事業者の参入や既存路線の強化を通じて、2029年までに年間2億5,000万トンの鉄道貨物輸送量を目指している(2025年9月4日付ビジネス短信参照)。

エネルギー分野では、南ア政府は2025年10月、包括的なエネルギー政策である「統合資源計画(IRP)2025」を発表した。同計画は、エネルギー危機への対応、経済成長の促進、そして持続可能なエネルギーミックスへの移行を目指すものである。政府の新たな計画では、2039年までに2兆2,000億ランド(GDPの30%に相当)の投資が見込まれ、この戦略によって電力供給はより多様な技術を組み合わせたものへと転換されることが期待されている(2025年10月24日付ビジネス短信参照)。

また、2025年は南アの投資環境に対してポジティブなニュースが複数あった。マネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金調達などを監視する国際組織の金融活動作業部会(FATF)は 10月、南アを監視強化対象国であるグレーリストから除外した(2025年10月28日付ビジネス短信参照)。さらに、格付け大手S&Pグローバル・レーティング(S&P)は11月に南アの外貨建て長期ソブリン信用格付けを「BB-」から「BB」に、現地通貨建て長期ソブリン信用格付けを「BB」から「BB+」に引き上げた。見通しは引き続きポジティブで、南ア政府による改革が継続すればさらなる上昇の可能性を示唆した。南ア財務省によると、主要格付け機関による格上げは過去16年以上例のないことだった(2025年11月20日付ビジネス短信参照)。

対日関係

貿易は輸出入とも拡大、TICAD9を契機に政府間交流も深化

日本の財務省「貿易統計(通関ベース)」によれば、2025年の南アから日本への輸出は前年比12.1%増の65億8,825万ドルとなった。輸出全体の68.2%を占める非鉄金属は、価格の上昇に伴い22.7%増の44億9,094万ドルとなった。2位の石炭は0.6%増の4億5,691万ドルで横ばい、3位の鉄鉱石は10.4%減の4億1,974万ドルと落ち込んだ。

日本からの南アの輸入は前年比9.9%増の23億1,070万ドルとなった。構成比40.6%の自動車は16.0%増の9億3,730万ドルとなり、日本からの輸出増加を牽引した。背景には南アの自動車市場の回復がある。2025年の新車販売台数は15.7%増の59万6,818台と、年間の新車販売台数としては新型コロナ禍以降で初めて2019年水準(53万6,612台)を上回った(2026年1月14日付ビジネス短信参照)。

表7-1 南アフリカ共和国の対日主要品目別輸出(CIF)〔通関ベース〕(単位:1,000ドル、%)(△マイナス値)〔注〕2025年は暫定値
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
非鉄金属 3,658,735 4,490,944 68.2 22.7
石炭 454,087 456,906 6.9 0.6
鉄鉱石 468,592 419,740 6.4 △ 10.4
木製品等(除家具) 203,650 219,992 3.3 8.0
自動車 274,333 217,838 3.3 △ 20.6
鉄鋼 222,134 214,074 3.2 △ 3.6
非鉄金属鉱 254,860 193,921 2.9 △ 23.9
合計(その他含む) 5,877,357 6,588,252 100.0 12.1

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕財務省「貿易統計」(通関ベース)を基に作成

表7-2 南アフリカ共和国の対日主要品目別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:1,000ドル、%)(△マイナス値)〔注〕2025年は暫定値
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車 808,162 937,300 40.6 16.0
自動車の部品 253,651 251,088 10.9 △ 1.0
建設用・鉱山用機械 139,493 189,043 8.2 35.5
ゴム製品 93,009 86,248 3.7 △ 7.3
荷役機械 60,213 64,617 2.8 7.3
鉄鋼 76,509 57,014 2.5 △ 25.5
原動機 50,330 56,242 2.4 11.7
合計(その他含む) 2,103,318 2,310,700 100.0 9.9

〔注〕2025年は暫定値

〔出所〕財務省「貿易統計」(通関ベース)を基に作成

日本の財務省統計によると、2025年の日本から南アへの対外直接投資額は、実行額が前年比22.8%減の7,564億円、回収額が18.4%減の7,305億円で、ネット(差し引き)の投資額は69.5%減の259億円だった。

2025年は両国政府間の交流も活発だった。第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のため訪日したシリル・ラマポーザ大統領は8月21日、横浜市内のホテルで開かれた日・南アビジネスフォーラムに出席し、日本企業に積極的な貿易・投資の拡大を訴えた(2025年8月25日付ビジネス短信参照)。また、日本の農林水産省は2025年9月18日、南ア農業省との間で「農業分野における協力のための意向表明書(MOI)」を締結し、小規模農家の開発、農産物貿易の促進、穀物の安定供給を含む食料安全保障などの分野で、相互協力を強化するとした(2025年10月6日付ビジネス短信参照)。11月19日には、経済産業省が南ア政府と脱炭素に関する協力覚書(MoC)を締結した。南アのエネルギー移行に関する計画、クリーン水素・アンモニアなどのクリーンエネルギー、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)、スマートグリッドなどのデジタル技術など、幅広い分野で協力の枠組み構築を目指している(2025年12月12日付ビジネス短信参照)。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 失業率:いずれも4Q 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 0.8 0.5 1.1
1人当たりGDP (米ドル) 6,112 6,332 6,769
消費者物価上昇率 (%) 6.0 4.4 3.2
失業率 (%) 32.1 31.9 31.4
貿易収支 (100万ランド) 139,587 214,306 212,084
経常収支 (100万ランド) △ 76,424 △ 47,991 △ 35,222
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 62,518 65,459 75,893
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 158,124 168,354 n.a.
為替レート (1米ドルにつき、南アフリカ・ランド、期中平均) 18.45 18.33 17.89

〔注〕
失業率:いずれも4Q
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:南アフリカ共和国統計局
1人当たりGDP:IMF
貿易収支、経常収支、外貨準備高(グロス)、対外債務残高(グロス)、為替レート:南アフリカ準備銀行