S&P、南アの信用格付けを引き上げ

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2025年11月20日

信用格付け会社S&Pグローバル・レーティング(S&P)は11月14日、南アフリカ共和国の外貨建て長期ソブリン信用格付けを「BB-」から「BB」に引き上げた。加えて、現地通貨建て長期ソブリン信用格付けを「BB」から「BB+」に引き上げた。見通しは引き続きポジティブで、改革が継続すればさらなる上昇の可能性を示唆している。南ア財務省によると、主要格付け機関による格上げは16年余りぶりとなる。

S&Pによると、今回の格上げは、南アの経済成長の見通し、財政の改善、国営企業、特に国営電力公社エスコムの債務の減少が要因と述べている。歳入は、付加価値税(VAT)と法人税の好調な徴収に支えられ、2025/2026年度(2025年4月~2026年3月)の上半期に予算目標を上回り、9月までに180億ランド(約1,645億円、1ランド=約9.14円)の黒字を達成した。政府債務と財政赤字の見通しも改善している(2025年11月17日記事参照)。S&Pは、GDP成長率が2024年の0.5%から2025年には1.1%に加速し、2028年まで平均1.5%を維持すると予測している。これは、電力改革、物流改善、そしてエネルギー、インフラ、デジタルトランスフォーメーション改革などによって支えられている。

市場は格付け引き上げを歓迎し、ランド建て国債の利回りは、借り入れコストの低下と投資家の信頼回復を反映して、8.655%から8.615%に低下した。与党第1党のアフリカ民族会議(ANC)は、政府の改革と財政運営の加速を高く評価し、与党第2党の民主同盟(DA)は、南ア財政の信頼性回復に向けた国民統一政府(GNU)の取り組みを高く評価した。

一方、エコノミストもおおむねこのニュースを歓迎したが、成長と財政規律を促進するための継続的な努力を求める声が上がっている。SABCのインタビューで、コンサルティング会社エコノメトリックスのアザール・ジャミン博士は「ランド高は南アの財政状況の改善の影響だが、依然として、犯罪、失業、インフラ格差、不平等などの根深い課題がある」と警告した。ヨハネスブルク証券取引所(JSE)の最高経営責任者(CEO)レイラ・フォーリー氏は、「信頼できる政策、規律ある実行、政府や企業の継続的な協力により、安定的で長期的な成長の基盤が再構築されている。改革が根付くと、信頼性が高まり、投資が続き、勢いが増し始める」と称賛している。経済団体ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)のブシ・マブソCEOは、「この格上げは南アが再び活況を取り戻したことを示している。借り入れコストが低下し、センチメント(市場心理)が上向くことで、南アは回復に向かっている」と述べている。

(トラスト・ムブトゥンガイ)

(南アフリカ共和国)

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