南ア政府、統合エネルギー政策IRPを発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2025年10月24日

南アフリカ共和国のコシエント・ラモホパ電力エネルギー相は10月19日、プレトリアで行われた記者会見で、同国のエネルギー政策となる統合資源計画(IRP)2025を発表した。同月15日に閣議で承認されたIRP2025は、同国のエネルギー危機への対応や、経済成長の促進、持続可能なエネルギーミックスへの移行を目指す包括的なエネルギー政策を概説している。IRPでは、2039年までにGDPの30%相当の2兆2,000億ランド(約19兆3,600億円、1ランド=約8.8円)の投資を計画しており、南アの電力供給を現在の石炭依存から脱却させ、多様な技術を組み合わせたものに転換することを目標にしている。これにより、電力供給問題に対処し、経済成長を促進させ、雇用を創出し、2030年までにGDPを3%成長させることを目指している。

電源構成も、石炭中心から再生可能エネルギー、原子力、ガス発電へと大きくシフトする。現在の発電の割合は、石炭火力58%、屋上太陽光発電10%、グリッド接続太陽光発電10%、風力8%、ディーゼル発電4.5%、揚水発電4%、原子力3%を占めている。これを2039年までに風力33%、太陽光24%、ガス15%、分散型発電(注)15%、貯蔵8%、原子力5%を目指している。

具体的な中身としては、2039年までに10万5,000メガワット(MW)の新規発電容量を追加することを目指している。その結果、南ア国営電力会社エスコムの発電容量は現在の2.5倍になる予定だ。また、(1)2030年までに6,000MWの新たなガス発電、(2)原子力産業化計画に基づく5,200MWの新しい原子力発電、(3)2030年までにクリーン石炭テクノロジー実証プラントなどの建設などを盛り込んでいる。

なお、南ア政府はパリ協定の目標の「2030年までに二酸化炭素(CO2)換算で約1億6,000万トンを削減し、2035年までに1億4,200万トンに削減する」を掲げている。南ア政府は今回のエネルギー政策を通じて、排出削減計画を順守しつつ供給の安定性を確保できる、よりクリーンで多様化されたクリーンエネルギーミックスの実現を目指している。しかし、送電網の改修や建設能力、厳しいガス調達スケジュールなど、依然として課題が残っている。

(注)消費地に近い場所で発電を行う小規模な発電設備(太陽光、風力、燃料電池など)の総称。

(トラスト・ムブトゥンガイ、多崎央)

(南アフリカ共和国)

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