持続可能な包装と企業の対応事例持続可能な包装材への移行が進むルーマニア市場
中・東欧の生産・供給拠点としての可能性
2026年10月30日
EUでは、包装廃棄物の削減と循環型経済への移行を目的として、包装・包装廃棄物規則(PPWR、特集「EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)関連情報」参照)が2025年2月に施行し、2026年8月から一部要件の適用が開始された。ルーマニアではこれまで、包装および包装廃棄物に関する法令2015年/第249号や飲料容器向けデポジット・リターン制度(DRS)などを通じて、持続可能な包装材の利用とリサイクル促進に向けた取り組みが進められてきた。加えて、PPWRの適用開始を背景に、再生材利用の拡大やリサイクル可能な包装設計への移行、リサイクルインフラの整備など、将来の規制要件を見据えた投資や取り組みも進みつつある。本稿では、ルーマニアにおける包装関連規制の概要と市場動向を整理するとともに、持続可能な包装材への移行に向けた地場企業の取り組みについて概観する。
包装・包装廃棄物の管理を定める国内法
ルーマニアにおける包装および包装廃棄物管理の基本法は、法令2015年/第249号だ。同法は、包装廃棄物の発生抑制、包装の再利用、リサイクルおよびその他の資源回収と循環型経済への移行を促進することを目的としている。対象は市場に投入される全ての包装材および包装廃棄物であり、事業者には適切な包装設計や回収・リサイクルへの責任が求められる。
企業にとって特に重要なのは、(1)市場に投入する包装材が法令で定める基本要件を満たすこと、(2)包装材の材質や重量を適切に管理し、回収・リサイクルに関する責任を履行すること、(3)包装材の識別表示をEUが定める材料識別コードに基づき適切に行うこと、(4)飲料容器についてはデポジット・リターン制度(DRS)(注1)に対応していること、(5)材質ごとのリサイクル目標に対応していること、(6)包装材に含まれる鉛、カドミウム、水銀および六価クロムの総濃度を100ppm以下とすることが義務付けられている点だ。
また、再利用可能包装を市場投入する事業者には最低80%の回収率の達成が求められている。包装廃棄物に関する拡大生産者責任(EPR)(注2)の履行状況は環境基金管理局(AFM)が監督しており、企業はAFMの認可を受けた拡大生産者責任実施機関(OIREP)を通じて回収・リサイクル義務を果たす方法が一般的だ(表参照)。
| 項目 | 法令の主な内容 | 根拠条項 |
|---|---|---|
| 1. 適用対象 | 材質や用途を問わず、ルーマニア市場に投入される全ての包装と、その包装廃棄物が対象となる。一次包装、二次包装、輸送包装も含まれる。 | 第2条、付属書1 d~f |
| 2. 市場投入の基本要件 | 市場投入できるのは、本法令付属書2の基本要件を満たす包装に限られる。包装の体積・重量を必要最小限とし、再利用、回収、リサイクルが可能となるよう設計・製造することが求められる。 | 第5条第1項、付属書2 第1項a、b |
| 3. 有害物質の濃度制限 | 包装またはその構成部品に含まれる鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの合計濃度は、重量比で100ppm以下とされる。一部例外がある。 | 第8条第1項 |
| 4. 材料識別表示 | 包装の材料識別表示を行う場合、本法令付属書3の番号および略号による表示制度を使用する。表示は包装本体またはラベルに付し、開封後も視認可能、判読可能かつ耐久性のあるものとする。 | 第9条第1~2項、付属書3 |
| 5. 拡大生産者責任(EPR)の対象事業者 | 包装製品を国内市場に投入する事業者、包装製品を輸入またはEU域内取引で取得して自社利用する事業者が、包装廃棄物に責任を負う。 | 第16条第1項a、付属書1 r |
| 6. 環境基金管理局(AFM)への登録 | 対象事業者は、AFMに登録しなければならない。登録は環境基金に関する最初の申告書の提出によって行われる。AFMは対象事業者の一覧を公表する。 | 第16条第2~3項、第20条第1項 |
| 7. 包装量の記録管理 | 事業者は、市場投入した包装について、材質別かつ包装区分別に数量記録を保有し、EPR義務を履行しなければならない。包装区分は一次、二次、輸送用に分けて管理する。 | 第16条第4項a、第17条第4~5項、付属書4 |
| 8. EPRの履行方法 | EPR義務は、自社で個別に履行する方法、または認可された拡大生産者責任実施機関(OIREP)を通じて履行する方法がある。個別履行が認められる包装の範囲には制約がある。 | 第16条第5項a~b |
| 9. 回収・リサイクル費用 | 事業者は、対象包装の回収、輸送、一時保管、選別、リサイクルなどに必要な費用を負担する。また、責任を負う包装について本法令付属書5の最低目標を達成しなければならない。 | 第16条第4項d~f |
| 10. リサイクル目標 | 2025年以降の最低目標は、全体の資源回収70%、リサイクル65%。材質別では紙・段ボール75%、プラスチック50%、ガラス70%、鉄系金属70%、アルミニウム50%、木材25%。2030年以降はさらに引き上げられる。 | 付属書5 |
| 11. 再利用可能包装 | 再利用可能包装を市場投入する事業者は、「再利用可能包装」と表示し、回収体制を整えて最低80%の回収率を達成しなければならない。再利用終了後も6カ月間は回収を継続する。 | 第10条第4項a~b、第12条 |
| 12. DRSへの対応 | 0.1~3リットルのガラス、プラスチック、金属製の使い捨て一次飲料容器を対象に、デポジット・リターン制度(DRS)を設ける。DRS対象包装の年間目標は、制度運営者を通じて履行される。 | 第10条第5、第16条第2¹項・第5¹項 |
| 13. 年次報告とデータ責任 | 個別履行事業者、OIREP、自治体、回収事業者などは、包装・包装廃棄物管理に関するデータを毎年環境省へ提出し、その正確性について責任を負う。 | 第17条第1~2項、第18条 |
| 14. 廃棄物削減方針 | 対象事業者は、包装の種類・製品ごとの材料使用量削減を含む包装廃棄物の発生防止措置を、事業方針に組み込まなければならない。 | 第22条第3項 |
| 15. 罰則・監査 | 違反内容に応じて4,000~50,000レイの罰金が定められている。AFMは報告データおよび目標達成状況を毎年確認する。 | 第26条第1項、第27条 |
注:表中のリサイクル目標は、法令2015年/第249号付属書5に定める2025年以降の最低目標を示した。
DRSの詳細な運用要件については、同法に加え、政府決定2021年/第1,074号およびその改正法令を確認する必要がある。
出所:法令2015年/第249号を基にジェトロ作成
なお、EU PPWRは加盟国に直接適用されるため、今後はルーマニア企業もPPWRへの適合が求められる。また、加盟国は、2027年2月12日までに、PPWR違反に対して適用する罰則を定める国内法を整備することが求められている。
メーカーが包装設計を見直す動きが顕著に
2026年8月のPPWRの一般適用開始に伴い、ルーマニアでは包装業界全体で対応準備が進んでいる。企業には、包装のリサイクル可能性、包装廃棄物の削減、再生材利用、材料トレーサビリティーおよび資源利用効率の向上が求められるようになり、これまで包装材メーカー任せであった適合性評価についても、包装された製品を市場投入する製造事業者自身が責任を負う方向へと変化している。
こうした規制環境の変化を受け、ルーマニア市場ではリサイクルしやすい包装設計への移行や軽量化が進みつつある。特に、複数素材を組み合わせた包装ではなく、単一素材で構成されるモノマテリアル包装やリサイクル可能なポリエチレンテレフタレート(PET)包装への関心が高まっている。また、使い捨てプラスチック削減の流れを背景に、バイオベース材料や堆肥可能な包装などの代替素材に対する投資も進められている。
また、ルーマニア市場では包装設計の見直しと並行して、回収・リサイクルインフラの整備が進められている。例えば、ルーマニアの官民連携プロジェクトRoFlex(ロ・フレックス)は、回収事業者、選別施設、リサイクラー、ブランドオーナーなどが連携し、リサイクルが難しい軟包装材の回収・再資源化体制の構築を進めている。
前述のとおり、ルーマニアではDRSが2023年11月に導入された。対象となるのは0.1リットルから3リットルまでの飲料容器(PETボトル、ガラス瓶、金属缶)だ。DRSは、非営利法人レトゥロ(RetuRO)によって運営されており、導入以降、短期間で高い成果を上げている。2026年5月には回収率が約85%に達したほか、制度導入以来100億本を超える飲料容器が回収されている。また、累計70万トン以上のPET、アルミニウムおよびガラスが回収され、リサイクル事業者へ供給されており、ルーマニア国内における再生材供給基盤の強化に大きく貢献している。
PPWRでは加盟国に対し2030年までにプラスチック包装について55%(廃棄物重量に対する割合)のリサイクル率達成を求めている。しかし、業界団体CEFLEXによると、ルーマニアのプラスチック包装のリサイクル率は2025年時点で約37%にとどまっている。このため、飲料容器以外の包装材についても、リサイクルしやすい設計や再生材利用の拡大が重要な課題となっている。
規制対応を加速させる地場企業
このような市場環境の変化を受け、ルーマニア企業の間では、堆肥可能な包装、モノマテリアル包装、リサイクル可能包装など、持続可能な包装材の開発や導入を進める動きがみられる。以下では、こうした取り組みを進める企業事例を紹介する。
- グッドパック(Goodpack):
ルーマニアに本社を置く東欧最大級の食品包装メーカー。PPWRへの対応を見据え、単一素材(モノマテリアル)のPET包装を中心とした事業を展開している。同社は「100%リサイクル可能な包装」を実現し、PETおよびポリプロピレン(PP)を用いた食品包装を提供している(注3)。2026年1月にはイタリアの包装技術企業シロパック(Siropack)と提携し、再生素材を80%以上使用するとともに、リサイクル性と食品安全性を両立したモノマテリアル再生PET(rPET)包装をルーマニア市場に導入することで合意した。 - マスペクス・ルーマニア(Maspex Romania):
食品・飲料メーカーとしてリサイクル可能なPET包装への切り替えを進めており、2024年にはケチャップ製品にリサイクル可能PET容器を導入した。また、紙容器メーカーのテトラパック(Tetra Pak)や大手スーパーマーケットのメガ・イマージュ(Mega Image)などと連携し、ルーマニア初の飲料・乳製品向け紙容器の回収パイロットプロジェクトにも参加している。 - プロマテリス(Promateris):
ルーマニアを代表する持続可能な包装材メーカー。中・東欧地域最大級の生分解性・堆肥化可能包装材メーカーとして知られており、製品はEU規格EN13432(堆肥化および生分解によって回収可能な包装材の要求事項)に適合している。近年は循環型経済への移行を見据え、バイオベース材料や堆肥可能な材料への転換、生分解性包装の開発、研究開発体制の強化を成長戦略の中核に位置付けている。2026年第1四半期時点では、売り上げの60%超を西欧向け輸出が占めており、同社は地域企業から欧州レベルの持続可能包装メーカーへの成長を目指している。 - アルカ・グループ(Alka Group):
ルーマニアの菓子・食品メーカー。持続可能性戦略の一環として包装の環境負荷低減を推進している。同社はプラスチック使用量削減やリサイクル率向上に取り組む方針を公表しており、包装の持続可能性向上を重要課題として位置付けている。
高機能な素材や包装技術のニーズ高まる
今後、ルーマニアではPPWRへの対応を背景に、従来の包装から、リサイクル可能性や再生材の利用を考慮した包装材への転換が進むとみられる。特に、モノマテリアル包装や再生PETなど、既存の包装形態を維持しながら環境負荷を低減する素材に加え、バイオベースや堆肥可能など新たな素材への需要拡大も見込まれる。こうした市場では、環境性能だけでなく、食品の保存性や安全性、コスト競争力などを同時に満たすことが求められるため、高機能な素材や包装技術を有する企業にとっては新たなビジネス機会が生まれる契機となる。また、ルーマニア企業の中には西欧市場への輸出を拡大する動きもあることから、ルーマニア国内の需要に加え、同国を中・東欧地域における持続可能な包装材の生産・供給拠点として捉えることも重要となる。今後、PPWR対応を契機とした包装材の切り替え需要を背景に、機能性と環境性能を両立した包装材の開発・供給において、国内外企業による投資や提携の機会が広がることが期待される。
- 注1:
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デポジット・リターン制度とは、飲料用容器の購入時にデポジットを支払い、空の容器を返却することで返金を受けられる制度。PPWRでは分別収集を促進するため、加盟国に同制度を導入することを求めている。
- 注2:
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拡大生産者責任(EPR)とは、製品の生産者の責任範囲を製品の設計・生産段階と使用段階だけでなく、製品の廃棄処理やリサイクルの段階まで拡大するもの。
- 注3:
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PPWRでは2030年以降、市場に出る包装は全てリサイクル可能であることが求められる。リサイクル可能と見なされる要件は、(1)マテリアルリサイクル用に設計されていること、(2)廃棄物となった場合には分別収集され、大規模なリサイクルが可能な確立されたプロセスに対応していること。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ブカレスト事務所
本吉 美友(もとよし みゆ) - 2025年からジェトロ・ブカレスト事務所勤務。主に調査を担当。








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