持続可能な包装と企業の対応事例リサイクラスが示すプラスチックのリサイクル認証基準(EU)
包装・包装廃棄物規則(PPWR)に対応
2026年4月8日
2025年2月に施行されたEUの「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」は、包装のリサイクル可能性要件やリサイクルプラスチックの使用要件を義務付ける。法規制を別にしても、企業は、グローバル企業や欧州小売業などの海外取引先から類似要件や認証取得の要請を受ける場合もあるという。日本企業からは、どう対応し、どのような認証をとれば良いのかという声が寄せられる。そのヒントを得るべく、プラスチックのリサイクル認証基準を定める業界団体であるリサイクラス(RecyClass、拠点:ベルギー・ブリュッセル)に話を聞いた(インタビュー日:2025年12月3日)。
包装に関して詳細なリサイクル設計ガイドラインを提供
リサイクラスは、欧州横断のプラスチックリサイクル業界団体「プラスチックリサイクラーズヨーロッパ(Plastic Recyclers Europe)」の傘下団体だ。構成企業は155社。リサイクラス自身は、革新的な材料の科学的試験方法の開発に取り組む非営利団体だ。同団体は、蓄積した試験結果を応用する手段の1つとして、「リサイクル設計ガイドライン
」(図1)を設計した。
出所:リサイクラスウェブサイト
9つの包装カテゴリー(PETボトル、PETトレー、PEフィルム、PPフィルム、HDPE容器・チューブ、PS容器、PP容器・チューブ、HDPEまたはPPケース・パレット、EPS容器)(注)について、上記の「信号機システム」で各カテゴリーに分類される要件が詳細に定められている。また、包装以外に、自動車および電気・電子製品に関するガイドライン
も別に存在する。
同団体によると、PPWRで定められているリサイクル性能評価のAからCの基準(図2)は、リサイクラスのガイドラインに基づいて設計されたものだという。
出所:ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)概要スライド15ページ、PPWR6条などから作成
リサイクラスの認証を正式に取得するには、提携する監査団体による監査が必要で費用もかかるが、無料で自己診断に利用できる簡易版の「RecyClassオンラインツール
」も提供している。
「緑」および「黄色」判定がPPWRのA/B/Cに適合する可能性が高い
リサイクラスのファブリツィオ・ディ・グレゴリオ技術担当ディレクターとミレイア・ボアダ・デ・ヴィディエラ認証マネジャーによると、「リサイクラスの基準は現在の市場で最も厳格だ。リサイクラスで『緑』または『黄色』判定であれば、PPWRの要件は満たされる可能性が高い」と考えているという。これが、リサイクラスの要件が、詳細不透明なPPWRの「適合宣言書」のエビデンスとして企業から注目される理由だろう。
ただし、PPWRにおけるリサイクル設計基準とリサイクル性能等級の細則は、2028年1月に欧州委員会が定める予定のため、正式には同細則での確認が必要だ。A~Cの品目別要件がリサイクラスと同様になるかはまだ分からない。
リサイクル可能性が高い素材を探すことができるリサイクラスのウェブサイト
リサイクラスのウェブサイトには、 認証済み包装材リスト
がある。リサイクルの認証を利用し、公開を希望した企業の包装材が掲載されている。日本企業において欧州域内で包装材を探したい場合、こういった情報を収集するのは一案だろう。
また、ガイドラインに当該技術が言及されておらず判定ができない場合、コンバーター(包装製造企業)や素材メーカーに対して、特定の包装ではなく、「新しいバリア材」や「新しい素材組成」のような技術そのものの適合性をリサイクラスが検証することがある。その場合、認証ではなく技術承認(Technology Approval)
という形式で行う。この承認を受けた素材についても、リサイクル可能性の評価結果が公開されている。
また、リサイクラスはPPWRのリサイクル可能性要件だけでなく、リサイクルプラスチック使用要件に役立つ情報も提供している。同社認証の中には、認証済みリサイクルプラスチックのリスト
がある。PPWRとは別で、食品企業には重要なEUの「食品接触規則
」について、リサイクラスは、リサイクル素材を使った製品がリサイクルプラスチックの食品接触規則に適合するかは保証してはいない。ただし、使用されるプラスチックおよび製造プロセスが、同規則の要件を満たしているかは確認できる。
PPWR対応に向けた一歩としてリサイクラスの情報を活用
グレゴリオ技術担当ディレクターは、「欧州でもPPWRに適合した素材や製品が少しずつ増えている。過去数年でイノベーションも進み、『以前はリサイクル不可だったが、今は同じ用途に戻せる』というケースも増えている。しかし、依然として多くの包装材は 、PPWRの要件を満たしておらず、これからの5年間が非常に重要になる」と話した。
ジェトロが2025年11月に実施した日本企業の海外展開に関するアンケートによると、自社の製品の包装材の変更や認証の取得は、手間やコストの観点から簡単ではないと多くの企業が感じているのが事実だ。リサイクラスの無料オンラインツールは、取引先が求める情報を満たすとは限らない。ただし、「まず何から取り組んだらよいか分からない」「自社の現在地を知りたい」「欧州の取引先に何らかの情報を提出したい」「日本の包装企業と打ち合わせする際の情報整理に使いたい」といった場合に一度利用してみてはどうだろうか。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課
板谷 幸歩(いただに ゆきほ) - 民間企業などを経て、2023年4月ジェトロ入構。





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