持続可能な包装と企業の対応事例リサイクルPET用途拡大に商機(ウツミリサイクルシステムズ・大阪)
需要高まるリサイクルプラスチック
2026年3月31日
ウツミリサイクルシステムズ(本社:大阪府大阪市)は、ポリエステルリサイクルを手掛ける中小企業だ。回収された使用済みPETボトルをリサイクルし、ポリエステルの繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)のフレークを製造する。PETフレークから食品などに使用できる高品質のペレット(フレークを溶かして粒状にしたもの)やシート、トレーを製造し、販売している(図1参照)。同社のPET素材の需要の高まりやEUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)の影響について内海正顯代表取締役に話を聞いた(取材日:2026年2月19日)。
出所:同社ウェブサイト
PETは海外輸出から国内のボトルtoボトルリサイクルへ
日本全体の指定PETボトル販売量は65万トン(2024年度)で、リサイクル率は85.1%に上る。これは世界最高水準だ。
2018年1月に、中国は固形廃棄物輸入を禁止した(2017年9月15日付ビジネス短信参照)。これにより、日本の使用済みPETボトルの輸出は減少。国内でのリサイクルは増加傾向で、2017年度は約30万トンだったが、2024年度には約45万トンとなっている。使用済みPETボトルを再度PETボトルへと再生する「ボトルtoボトル」リサイクルも増加傾向で、国内のPETリサイクルのうち57.7%にあたる25万トンはボトルtoボトルリサイクルだ。そのほか日本国内では、25.5%がPETのシートとして食品包装に使われたり、7.8%は繊維として衣服や自動車などに使用されたりしている(注)。
質の高いPET素材が欧州で生活雑貨や自動車内装に採用
1993年に創業したウツミリサイクルシステムズは、関西空港や阪南港に近い大阪府泉南市にリサイクル設備を持つ。年間処理能力は、2万5,000トンだ。PETボトルのリサイクルを回収から最終製品の生産まで自社で行う一貫生産体制を持ち、トレーサビリティーを通じて安全性の高いPET製品を生産しているのが強みだ(図2参照)。
一貫生産方式
出所:同社ウェブサイト
同社は、海外でも使用できるリサイクル材を生産する。米国食品医薬品局(FDA)規則に適合しているほか、EUの化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則であるREACH規則に基づき登録(エチレングリコール、テレフタル酸)。欧州食品安全機関(EFSA)の食品接触材料評価にも適合している。
国内向けの再生PETボトルおよびPET素材の生産・販売だけでなく、PETペレットを海外では台湾、韓国、タイ、欧州などに出荷している。同素材はアジアでは主に繊維として衣服などの生産に使われる。欧州向けのビジネスでは、同社の高品質なリサイクルPET素材を使用して大手家具メーカーが生活雑貨を生産したり、自動車部品メーカーが自動車の内装に使用したりしている。
リサイクルプラスチックの価格が高騰
グローバル飲料企業がリサイクル材使用の高い目標を掲げたことなどによりリサイクルプラスチック需要が高まったことで、リサイクルプラスチックの価格はバージンプラスチック(化石燃料から製造)と比べて高騰した。内海社長によると、「25年前はバージンPET素材が1kgあたり200円、再生PET素材が50円であった。現在ではリサイクルPET素材が250~300円、バージンPET素材がおよそ200円と、リサイクル素材の方が高い」と話した。2018年頃からリサイクル素材がバージン素材の価格を上回ったという。これにより、EUは、リサイクル素材と偽ったバージン素材を輸入することのないよう、監査を強化したり、プラスチックのリサイクル性を判別する機械を導入したりするまでになっているという。
PPWRによりPETのボトル以外の用途への期待も
2025年2月に施行されたEUの新たな包装に関する規制であるPPWRは、リサイクルプラスチックの使用に関し、野心的な目標を定める(表1参照)。
| No | 包装の種類 | 2030年 | 2040年 |
|---|---|---|---|
| 1 | PETを主要材料とする接触に注意が必要な包装(※) | 30% | 50% |
| 2 | PET以外のプラスチック材料の接触に注意が必要な包装(※) | 10% | 25% |
| 3 | 使い捨てプラスチック飲料ボトル | 30% | 65% |
| 4 | 1~3以外のプラスチック包装 | 35% | 65% |
※使い捨て飲料ボトルを除く
注:接触に注意が必要な包装とは、食品・飲料、飼料、医薬品、医療機器などに使用される包装。PETはポリエチレンテレフタレートの意。
出所:ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)概要スライド16ページ、PPWR7条1~2から作成
一方で内海社長は、「PETボトルにおいては、PPWRによりグローバル企業のリサイクル意欲は下がった」と言う。その理由を「多くのグローバル企業や欧州企業がリサイクル材使用割合50%に向けて投資を進めてきたにもかかわらず、PPWRにおいて使い捨てプラスチック飲料ボトルの2030年目標は30%にとどまった」からだと指摘する。本稿執筆時点でグローバル飲料企業が掲げるリサイクルプラスチック使用目標は、2035年までに30~40%などとなっている(表2参照)。
| 社名(本社所在地) | リサイクルプラスチック使用目標(世界) | 主な飲料製品(注) |
|---|---|---|
|
コカ・コーラ (米国) |
2035年までに30~35% |
コカ・コーラ スプライト ファンタなど |
|
ペプシコ (米国) |
2035年までに40%以上 |
ペプシ リプトン マウンテンデューなど |
|
ネスレ (スイス) |
30%(バイオベースプラスチックの使用を含む) 2025年実績:20.6% |
ペリエなど |
注:主な飲料製品は国によって異なる場合がある。各社の目標は飲料用ペットボトル以外のプラスチック包装も含む。
出所:各社ウェブサイト(2026年2月26日時点)からジェトロ作成
ただし、内海社長は、「PPWRによりこれまであまり広く使われてこなかったPETのトレーや軟包装への使用が広がるのではないかと考えている」と話した。求められるかたちや耐熱性などによりそれぞれに強みがあるが、PETは添加物が必要なく、ポリプロピレン(PP)などと比べて比較的マテリアルリサイクルしやすい素材であることがその理由だ。
内海社長は、「PPWRの目的を達成するために、これまでリサイクルが進んでいなかったPETトレーにも目が向けられ、今後はEUにおいても積極的に回収するのではないか」と話した。
リサイクルプラスチック量の増加が課題
PPWRが施行されたものの、EUにおけるプラスチックリサイクル体制の確立は現時点では不十分だ。PPWRが今後試行錯誤しながらも、その原動力になるかが注目される。
本稿で述べたようにリサイクルプラスチックの価格は高く、特に中小企業においてはその使用のハードルも高いのが現実だ。今後、2030年にかけてEUの規制、グローバル企業の調達要件を見定めることがより一層重要となるだろう。また、PETやPPなどのリサイクル材の性質やコスト、手に入りやすさを、自社の製品の性質と照らし合わせてリサイクル材の使用を判断していく必要があるだろう。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課
板谷 幸歩(いただに ゆきほ) - 民間企業などを経て、2023年4月ジェトロ入構。






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