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特集:総点検!アジアの非関税措置非関税措置に加え、制度運用なども事業上の障壁に(ミャンマー)

2019年3月15日

ミャンマーでは近年、民主化の進展や急速な経済成長などに伴い、日本からの進出企業が増加している。2018年末時点での現地日本商工会議所会員数は、民政移管が行われた2011年の7倍を超え、400社に迫る勢いだ。外資導入の本格化に伴い規制緩和が進みつつあるが、軍政時代から残る貿易投資に関する規制の抜本的な改革はまだ道半ばで、進出日系企業からは、非関税措置をはじめとするビジネス阻害要因を指摘する割合が域内で有数の高さとなっている。制度運用に当たる行政担当者の能力が不十分なことなどもあり、通関手続き面で問題を抱える企業も多いことが分かった。

「非関税措置あり」とした割合は域内で2番目の高さ

ジェトロが実施した「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査(以下、ジェトロ調査)」によると、「ビジネスを阻害する非関税措置の有無」の質問項目で、ミャンマーにおいて「ある」と回答した企業は53.3%に上り、調査対象国・地域の平均値(40.5%)を上回り、インドネシア(64.9%)に次いで2番目に高い割合となった。

項目別では「輸入制限(輸入者登録義務、輸入ライセンス制度、数量規制、輸入課徴金など)」が30.8%で最多となり、「外資規制(サービス貿易の阻害)」が27.1%と続いた(図参照)。

図:ビジネスを阻害する非関税措置(ミャンマー)
回答した進出日系企業107社のうち57社(53.3%)が「ビジネスを阻害する非関税措置がある」と回答した。主な非関税措置の項目別では、輸入制限、外資規制の順に高い指摘割合となった。

出所:「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(ジェトロ)

最も高かった「輸入制限」について見ると、ミャンマーでは通常、輸入ライセンスの事前取得が必要となっている。2011年の民政移管以降、規制が徐々に緩和され、2015年には「ネガティブリスト形式」として輸入ライセンスの取得が必要な品目以外は、取得が免除された。しかし、2017年12月に出た通達(No.61/2017)では、3,988品目まで減少したネガティブリストに830品目が追加され、4,818品目が対象となった。しかも、取得対象品目のうち、87類(輸送機器)が820品目、29類(有機化学品)が465品目、03類(魚介類)が383品目、84類(一般機械)が264品目など、食品、車両、重機関連といった、進出日系企業にとって輸入ニーズの高い品目が多く含まれている。この点に関しては、多くの日系企業が共通の課題として挙げており、日本・ミャンマー間で事業環境上の課題を幅広く議論する「日ミャンマー共同イニシアチブ」の主要議題にもなっているものの、抜本的な解決は図られていない(2018年12月7日記事参照)。

次いで指摘割合が高かった「外資規制(サービス貿易の阻害)」に関しては、2018年5月に商業省が、卸・小売り分野において一定条件のもとで外資100%による投資を認める通達(No.25/2018)を公布、10月に同通達に基づく登録企業4社が公表され、1号案件として日系企業が登録される(2018年10月19日記事参照)など、規制緩和の兆しが見られつつある。一方、929平方メートル未満の小規模小売業への外資参入が規制されるなど、参入障壁が依然として残っており、現地日系企業もこの点を課題として挙げている。27.1%という外資規制分野の指摘割合は、調査対象国・地域の中で最も高く、外資企業への卸・小売業のさらなる開放が求められる。

「基準・認証制度(強制規格など)」では、食品輸入時に必要な保健省の食品・医薬品管理部(FDA)の認証に関する問題も挙げられた。食品を取り扱う進出日系企業は「FDAの担当官ごとに判断が異なる」と指摘する。直近では、シャンプーやリンスといった日用品を輸入しようとしたところ、法令上はFDA認証が不要なのに、次回輸入時からは認証を取るよう指導があったとのことだった。

通関手続きについても多くの企業が課題を指摘

前述のほか、進出日系企業の多くが指摘したのが、通関上の問題だった。実際、ジェトロ調査での「貿易制度面の問題点」についての設問(複数回答可)では、「通関に時間を要する」が43.6%でトップ、「通達・規則内容の周知徹底が不十分」と「通関等諸手続きが煩雑」が42.7%となるなど、通関手続きに課題を抱える企業の割合が高い。

ミャンマーでは、国際協力機構(JICA)の支援のもと、2016年から電子通関システム「Myanmar Automated Cargo Clearance System(MACCS)」が国内の主要港と空港で稼働した。自動審査処理システムが導入され、あらかじめ設定された輸出入者、品目、原産国などの情報から、システムが自動的に審査区分をグリーン、イエロー、レッドの3つに分類するようになった。これにより、現物検査の割合が減り通関手続きの効率化に資すると期待されていたが、現地日系部品メーカーからは、「輸入貨物がレッドに分類されると、輸出時にも現物検査を強いられる。顧客に納入する製品の袋を破って検査され、商品が毀損し顧客からのクレームを受けたケースがある」など、深刻な事例が報告されている。また、「汚職防止のための税関局の方針で、税関担当者の人事異動が頻繁になり、過去と同じ貨物であっても不必要な書類の提出や追加の説明を求められる」との指摘が複数から寄せられた。

現地日系食品メーカーからは、「ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の原産地証明書であるフォームDを利用した貨物は全量レッド分類となっている模様」「フォームDを使ってマレーシアから生産機械を輸入しようとしたところ、一部構成部品に『Made in Japan』の記載があったことを理由に、当該原産地証明書が否認されそうになった」などの事例もあり、運用面で特恵関税が適用されにくい状況となっている。

MACCS導入に伴い、税関が課税評価額を決定する賦課課税方式から、取引価格(CIF価格)をベースとする申告納税方式に徐々に変更されているが、「異動したばかりの税関担当者が理解しておらず、インボイスによる取引価格での申告が認められない」(前述の日系食品メーカー)という例も報告されている。このメーカーでは、当該担当者の上司あてにレターを準備し、結果的に是正されたということだが、そのために本来かける必要のない事務的なコストが発生してしまった。

ハード面以外にソフト面での対応・支援も必要

進出日系企業が抱える事業上の課題としては、非関税措置に該当するような輸入ライセンスなどにみられる制度面での措置だけでなく、FDAや通関手続きのように、担当官の能力が不十分なため企業が多大な事業コストを強いられる例が見られる。外資を本格的に受け入れ始めて日が浅いミャンマーにおいては、システム導入だけでは改善できない人的な課題に対する現地政府側の取り組みに加えて、それを支援する継続的な仕組み作りが求められると言えよう。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
竹内 直生(たけうち なおき)
2005年、ジェトロ入構。経済分析部知的財産課(2005年~2008年)、ジェトロ香川(2008年~2011年)、展示事業部海外見本市課(2011年~2014年)(部署名はいずれも当時)を経て、2014年~2018年ジェトロ・ハノイ事務所勤務。2018年7月より現職。

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