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特集:総点検!アジアの非関税措置日系企業のASEAN内製造拠点としてNTMの影響は限定的(タイ)

2019年3月15日

タイは、企業活動を行っている日系企業数が5,000社を超えるなど、ASEANにおける日系企業の中核的な製造拠点となり、また近年ではASEAN向けのビジネスを展開したい日系企業の統括拠点を設ける動きも進んでいる。当地で、ビジネスを阻害する非関税措置の影響を感じている企業の割合は周辺国よりも低く、多くの日系企業が進出する一因であるといえよう。一方、強制規格や、食品への規制、外資規制など、進出日系企業の当地でのビジネスへの足かせとなっている措置も存在する。本稿では、ジェトロの調査結果、進出日系企業の声を基に、当地における非関税措置についてみていく。

非関税措置の影響ありは35.8%と調査平均を下回る

2018年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査によると、「ビジネスを阻害する非関税措置」の影響があると回答したタイの進出日系企業は有効回答544社中195社で、35.8%の企業が何かしらの影響を受けているという結果となった。同調査の対象であるアジア・オセアニアの計20カ国・地域の平均40.5%を下回った。業種別にみると、製造業が293社中101社(34.5%)、非製造業が251社中94社(37.5%)となった。

影響があると回答した中で、回答割合の高い項目としては、「基準・認証制度」(19.3%)、「輸入制限」(17.5%)、「外資規制(サービス貿易の阻害)」(12.4%)の順となった(表参照)。

表:タイ進出日系企業の回答したビジネスを阻害する非関税措置
ビジネスを阻害する非関税措置 全 体 製造業 非製造業
影響あり 195社 101社 94社
階層レベル2の項目 基準・認証制度(強制規格など) 19.3% 21.8% 16.2%
階層レベル2の項目 輸入制限(輸入者登録義務、輸入ライセンス制度、数量規制など) 17.5% 14.7% 21.0%
階層レベル2の項目 外資規制(サービス貿易の阻害) 12.4% 8.5% 17.4%
階層レベル2の項目 現地調達(ローカルコンテント)要求、国産品優先補助金など 12.4% 15.2% 9.0%
階層レベル2の項目 特恵関税利用時の原産地証明書の否認 9.0% 7.6% 10.8%
階層レベル2の項目 差別的な税制(関税以外) 8.5% 9.0% 7.8%
階層レベル2の項目 セーフガード、アンチダンピング課税 7.7% 9.0% 6.0%
階層レベル2の項目 輸出制限(未加工資源の輸出禁止、輸出税など) 6.9% 8.5% 4.8%
階層レベル2の項目 知的財産の侵害(水際での模倣品差し止め措置ができない) 4.5% 4.3% 4.8%
階層レベル2の項目 その他 1.9% 1.4% 2.4%
階層レベル2の項目 特に問題なし 349社 192社 157社

注:影響が「ある」場合は、影響のある項目について複数回答。
出所:「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(ジェトロ)

最も回答の多かった「基準・認証制度」としては、すべての工業製品が対象となるタイ工業規格(Thailand Industrial Standards:TIS規格)が挙げられる。TIS規格は国家規格で、工業省傘下の工業規格局(TISI)が管轄しており、TISIのみがTIS規格を認証する権限を持つ。TIS規格は大きく強制規格と任意規格に分けられるが、日系鉄鋼関係企業の担当者によると、申請に係る費用負担や、取得までの時間などの課題がある一方、申請手続きが明確であり、認証取得によって品質面での信頼につながるなど一定の評価を受けているという。

「輸入制限」としては、輸入製品に対する強制規格でもあるTIS規格に加え、食品や医薬品、化粧品を輸入する際に必要な食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)への登録制度が挙げられる。食品に関しては後述するが、医薬品については伝統医薬品と現代医薬品にカテゴリーが分かれており、現代医薬品については、さらに新薬、後発医薬品、新後発医薬品と分かれている上に、申請書類がそれぞれ異なるといった煩雑さが指摘される。また、物流業関係者からは「登録自体の基準が非常に厳格」との声もある。

「外資規制(サービス貿易の阻害)」についてタイでは、外国人事業法に基づき、規制業種を3種類のリストの中で43業種に分け、それら業種への外国企業(外国資本50%以上)の参入を原則として禁止している。そのため、規制業種に参入する場合には、地場企業とパートナーを組み、外国資本を50%未満にすることが必須となる。実際に、物流業関係者は「パートナーを組む場合、追加投資をしても利益の半分がパートナーのものとなってしまうため、本社サイドへのインセンティブが下がる。外資規制が投資の足かせとなっている」と指摘する。外国人事業法では、第3リストの21番目の業種として「省令で規定されたサービス業を除く、その他のサービス業」が含まれており、実質的にほとんどのサービス業が対象になるといってよい。

TIS規格は製品の品質保証に寄与するが、必要以上の要求も

「TIS規格」と「FDAへの登録制度の運用」が、タイでのビジネスに影響を与えるケースがみられ、以下で日系企業の声を中心に説明する。

「TIS規格」とは、上述のとおり、工業分野における標準化を進めるために制定された国家規格である。TISIウェブサイトによると、強制規格として定められているのは、(1)建築資材(25品目)、(2)家電等消費者向け製品(10品目)、(3)電気部品・エンジニアリング用製品(39品目)、(4)水回り製品(4品目)、(5)食品(1品目:パイナップルの缶詰)、(6)熱源類(2品目)(7)医療・医薬(4品目)、(8)ペイント類(8品目)、(9)自動車・機械エンジニアリング(20品目)、(10)化学(1品目)となっている。一方、任意規格であっても、上述のとおり製品の品質の信頼が得られるといったメリットがあり、日系企業担当者も「製品の品質保証となり、顧客の信頼が受けられる。受注チャンスが広がるように感じる。」と語る。

タイの基準認証制度の課題は、目的や施行細則が必ずしも明確でない場合がある点だ。例えば、認証取得についてはタイ国内の申請で3カ月程度の時間を要するが、その手続きを速めてほしい場合は直接交渉が必要な場合がある。また本来は、消費者が用いる最終製品の段階で安全性を確保していることが重要なはずが、最終製品に使われる中間財でもTIS規格を取得し、ラベルを貼るよう指導が入るなど、必要以上と思われる要求があるという声も聞こえる。また規格の変更が行われても、サンプル数や手順など運用が定まっておらず、現場が混乱した事例もあるとのことだった。他方、TIS規格の取得については従来、他国と比べても緩く、グレーな部分が多かったが、電子化の進展などにより申請手続きが近年、厳格化しているとの声も聞かれた。

FDAへの厳格な登録、審査期間が長期にわたる場合も

「FDAへの登録」については、食品や医薬品、化粧品が対象となるが、ここでは主に食品についてみていく。食品は、「食品法B.E.2522(Food Act 1979)」により、1. 特定管理食品(7品目)、2. 品質規格管理食品(41品目)、3. 表示管理食品(12品目)、4. 一般食品(上記品目以外)、の4つのカテゴリーに分類して管理される。また、不適切な食品の流通を未然に防止する観点から、輸入の前段階において、食品の輸入業者許可、特定管理食品の食品調理法登録、食品登録、表示、広告(テレビCM、看板など)の認可などが義務付けられている。食品の輸入業者許可は、販売目的で輸入する際にいずれのカテゴリーの食品でも取得が必要な3年間有効の許可書で、輸入通関時にはこの輸入許可書のコピーを添付する。

こういった厳格なルールの下で管理されているFDAへの登録だが、登録済みの食品でも問題が起こることがあるようだ。通関時に、FDA担当官から「登録食品分類が違うのではないか」といった指摘を受け、通関ができないケースも聞かれる。また、タイで食する習慣のない食品については「食べ物ではない」という理由で、食品等の登録が行われないケースがあるので注意が必要だ。

食品グループ1.特定管理食品の登録については、審査期間が非常に長期にわたることが指摘される。通常2週間で審査されるにもかかわらず、数年に及ぶケースもあるという。食品関係企業担当者は「成分分析結果を出しているにもかかわらず、法定根拠のない資料の要求や、成分分析結果を見れば判断可能な却下理由にもかかわらず、即時での判断でなく数年後に却下されたことがある」と言う。

また、水産物については、提出義務のある書類が漁獲証明、原産地証明、輸出許可証または衛生証明書のうちいずれか一点と法令で規定されているにもかかわらず、通関時には複数の提出が求められるケースがあるようだ。

輸入業者は「オーヨーマーク」が必要も、貼付のタイミングが不明確

FDAへの登録に加え、上述した食品グループ1、2、3の場合は食品の輸入に先立ち、食品の製造・輸入業者はFDAから食品登録番号(通称:オーヨーマーク)を取得する必要がある。オーヨーマークの製品への貼付はFDAルールで義務付けられているものの、食品輸入業関係者は「(通関前、通関後など)どのタイミングで貼付するのかが明確でないため、税関で止められるケースがある」と指摘する。また、日本製の商品輸入時に商品の中から数点について、パッケージ内のすべての文言の英訳の提出を求められることがあり、「貨物がタイに到着した後の指示のため通関が遅れてしまう」といった課題もある。英訳の提出は、法律、FDAルールなどの根拠が不明確だという。

タイ投資委員会によると、日本からの対内直接投資は、2017年で897億バーツ(約3,139億5,000万円、1バーツ=約3.5円)と全体の4割程度を占める。また、日本からの輸出は320億ドルと、日本の輸出先として世界で7番目に多い。このような日本、タイの密接な関係をより強固にするためにも、進出企業がさらにビジネスをしやすい環境づくりが期待される。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
南原 将志(なんばら しょうじ)
2014年、香川県庁入庁。2018年より現職。

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