特集:主要国・地域の越境EC ナイジェリアの越境EC
2017年12月20日
EC市場規模
ナイジェリアの小売市場におけるECの割合は、1パーセント未満。急成長し、推計で同国のインターネット利用者数は世界7位(注)で、間もなく1億人を突破する。英調査会社ユーロモニター・インターナショナルは、向こう5年間の小売部門におけるECの年平均成長率を21.3%と推計(売上高ベース)。米コンサルティング会社EIUカンバックの分析では、ナイジェリアがアフリカで最も有望なEコマース市場、としている。
今後も成長が見込まれるナイジェリアのEC市場だが、過去2年間の景気低迷と通貨ナイラの下落で消費者購買力は減退。2016年の小売部門におけるECの前年比伸び率は14.0%と、過去5年平均の75.2%を大幅に下回ったものの、中長期的には拡大基調見込みである。
ECの特徴
ナイジェリアでは携帯端末からのインターネット接続が全体の80.3%に達し、携帯端末からのアクセスが多いのが特徴。サブサハラ・アフリカ平均の66.4%、世界平均の52.3%を大幅に上回る(インターネット分析サイト、スタット・カウンター)。
ECメインプレーヤー
業界最大手はジュミア(JUMIA)で、新興国のIT系スタートアップ企業の立ち上げ・投資をする独ロケット・インターネットが2012年に設立。現在アフリカ16カ国で事業展開し、エジプトやケニア、モロッコなどではナイジェリア同様、国別ECサイトを運営。2016年3月には仏保険大手アクサや米金融大手ゴールドマン・サックスなどからも出資を得て、アフリカ大陸初のユニコーン企業(時価総額10億ドル[約1100億円]以上の未上場企業)となった。
ジュミアを追うのはコンガ・ドット・コム(KONGA.COM)。2012年に米ハーバード・ビジネススクールなどで学んだナイジェリア人起業家が設立。米小売業界などで普及している11月末の割引セール「ブラック・フライデー」をいち早く取り入れるなどして消費者に訴求。ジュミアとは対照的に、国内市場に特化する戦略を採用。
他にも、オンラインショップに不安を抱く顧客も取り込むため全国主要都市に実店舗も展開する2015年設立のユダラ(YUDALA)や、クラシファイド(個人同士の売買掲示)大手で2014年設立のジジ・ドット・エヌジー(JIJI.NG)、さらに飲食や旅行手配などに特化した専門ECサイトが多数存在。
仲介型越境ECサイトの最大手は、モール・フォー・アフリカ(MALL FOR AFRICA)。米アマゾン・ドット・コムやインターネットオークション世界最大手イーベイなどの有力プラットフォームのほか、ラルフ・ローレンやZARAといったファッション・ブランドの販売サイトなどとも提携。各提携先で購入された商品は米英の集荷センターで集約し、航空便でナイジェリアに輸送。仕分け後、各購入者に配送する。
EC物流
いずれも一部の商品は自社で在庫を持ち直接販売しているが、大半の商品はジュミア、コンガのプラットフォームに参加する多数の小売業者が販売。配送も一部は宅配業者に委託しているが、アフリカの困難な物流事情を考慮し、自社で集荷拠点と配送車両も保有している。
EC売れ筋商品
売れ筋商品は携帯電話、衣料品・靴・アクセサリーなどのファッション関連商品、ノートPC、タブレット、ベビー用品、キッチン用品、家電など。
EC決済手段
決済はクレジットカードも増えつつあるが、根強い現金主義を反映して代金引換が中心。ジュミア、コンガとも、カード決済に不安を感じる消費者の購買を促すため、銀行と提携してクレジットカードを利用しない独自の決済システムを導入。
不透明で時間のかかる通関手続きや貧弱な物流インフラの未整備などもあり、ナイジェリア向けに配送してくれる海外ECサイトは1、2年前までほとんど存在しなかった。こうした中、米英などのECサイトとナイジェリアの顧客の間に立って代金決済と配送の機能を仲介するECサイトも誕生。
英本社のUK2MEロジスティクスも、類似のサービスを提供。ナイジェリアの消費者は同社が提携する英米のECサイトで購入し、一律10%の手数料と通関手数料を同社に支払い、商品を受け取る。代金決済は口座振り込みや第三者決済で行う。
最近ではアマゾン・ドット・コムも、通関手続きを代行する「アマゾン・グローバル」は導入していないものの、関税や通関手数料を購入者が支払う方法で、ナイジェリア向けに配送を行っている。他方でジュミアは、アマゾンに先んじて、海外の小売業者からの配送と輸入手続きをジュミアが代行する「ジュミア・グローバル」を導入している。
越境ECの課題
これらを通じて、越境ECも徐々に広がりつつあるが、日本の事業者がナイジェリア向けに越境ECサイトで商品を販売するには、いまだハードルが高そうだ。モール・フォー・アフリカの場合、同社との業務提携と英米の集荷センターを通じた取引が前提となるため、英米に拠点がない限りは現実的ではない。ジュミア・グローバルも日本は対象国になっていないため、事業者の責任でナイジェリア国内のジュミアの集荷センターまで輸送しなければならない(購入者による関税や通関手数料の直接払いが想定されていないため、これも現実的ではない。こうしたことから、ジュミアやコンガで購入できる日本の商品は、すべてナイジェリア国内に拠点を持つ事業者が販売しているのが実態)。
未発達な郵便制度や激しい渋滞などに起因する配送コストも大きな課題。短期間で確実な配送を実現し利用者を獲得するためには物流部門の大半も自社で管理するしかない。
- (注)
- Internet Live Statsによれば、ナイジェリアのインターネット利用者数は2016年7月1日時点で推計8,622万人。
ナイジェリアにおける越境ECの市場動向と制度
日本からの出品を可能にしている主なECサイト |
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主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋) |
(出所)ジェトロによる当地EC企業関係者へのヒアリングおよびVENTURES AFRICAのウェブサイト |
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合 |
(出所)ジェトロによる当地EC企業関係者へのヒアリング、Euromonitor International、Mall for Africa のウェブサイト、Ventures Africa のウェブサイト
※越境に限らずEC全般(2014年)
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国内規制 | (1)データ制約に関する規制の有無 |
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(2)規制取扱商品 |
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(3)その他のEC販売に関連する規制 |
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小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響 |
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ジェトロ海外調査部