特集:主要国・地域の越境EC 米国の越境EC

2017年12月20日

EC市場規模

米国ではEC市場が年二桁台の伸びで拡大。とりわけ、アマゾンは有料会員プログラム「プライム」を通じ利用者を増やし、国内EC市場で4割のシェアを占有。同市場では越境ECの利用も増加傾向。日本企業では楽天が自社海外向け販売サイトを通じて、米国市場にアプローチし販売増。

2016年のECによる小売売上高は前年比14.9%増の3,897億ドル(米商務省)。米国18歳以上の88%がインターネットを日常的に利用。中でも“18歳から29歳”のインターネット利用率は99%、“30歳から49歳”が96%と高く、若い世代が中心となりEC市場の拡大を後押し(統計調査会社スタティスタ・アンケート調査[2016年])。

ECメインプレーヤー

国内EC市場全体に占めるアマゾンの割合は2013年の26%から2016年には43%へ拡大。

米国におけるアマゾンの有料会員プログラム「プライム」加入者数は8,500万人。同国のアマゾン利用者全体に占めるプライム会員の比率は63%。同会員の平均支出額は年間1,300ドルで、非会員の平均700ドルを大きく上回る(米国の市場調査会社CIRP[コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ]のレポート[注1])。

また、イーベイは出品者と購入者が取引を行う消費者間のマーケットプレイス(注2)で、入手しにくいお宝商品やビンテージものが豊富といった点が特徴的。一方、世界最大のハンドメイド作品を扱うエッツィは世界中から売り手が参入し、手作りの工芸品やギフト商品、アクセサリーなど、4,500万点もの商品を扱うマーケットプレイスとして注目。

越境ECの留意点

米国EC市場に占める越境ECの割合についてはデータの制約があるが、米国の消費者も海外の商品を求める傾向にある。ECサイトを利用して海外店舗から買い物を行った消費者の利用率は、2016年の43%から2017年には47%へ上昇(デジタル市場分析会社コムスコアの調査[2017年第1四半期、米国オンラインユーザー5,000名対象])。消費者が越境ECを利用する主な理由として、「比較的安い価格で商品を購入できるため」(43%)、「国内にはないユニークな商品が欲しいため」(36%)、「好きなブランドや商品が国内で購入できないため」(34%)。一方、海外から商品を購入する際に考慮すると点として、「関税その他の経費を含めた合計金額が明記されていること」(77%)、「全ての価格が自国通貨で表示されていること」(76%)、「購入しようとする海外の店舗の知名度」(74%)など。

越境ECの課題

越境EC取引に際する課題は、越境EC向けのB2C配送サービスが未確立なこと。多くの国や地域へと送ることができるEMS(国際スピード郵便)が主な配送方法である一方で、料金や配送スピードに対する多様なニーズに応えられる状況にはなっていない。同課題を克服すべく、楽天は2017年5月から楽天市場商品を独自で海外配送するサービスを開始。梱包(こんぽう)や配送業務などを楽天側が代行し、出店者は海外配送業務の手間をかけずに越境ECに取り組める仕組み。また、消費者は2店舗以上から購入する場合、追加料金無しでまとめて配送できることで、より安い配送が可能。配送先は現在米国を含めた12カ国。配送サービス・メニューは、配送日数が注文後約2週間の「エコノミー配送」と、3~4日の「エクスプレス配送」の2種類。

日本からのEC売れ筋商品

楽天ECカンパニーは、主に海外向け販売サイト「楽天グローバルマーケット」(注3)を通じて米国に販売し、販売実績はここ数年で大きく伸長(5年前に比べ7倍以上の規模へ成長)。特に円安時に購入額が増える傾向にある。日本から楽天グローバルマーケットに出品している商品で、米国で販売実績の良い商品は、主に日本のスポーツ用品や化粧品、高級バッグなど。

日本からの出品に際する留意点

日本からの出品に際する留意点として、楽天グローバルマーケットでは自動翻訳エンジンを提供しているものの、商品情報をより正確に魅力的に伝えるため、人手による翻訳や写真によるアピールを出品者に依頼。また、出品者が英語でのカスタマーサポートができるかどうかも販売を伸ばしていく重要な要素。

注1:
市場調査会社CIRPがまとめたレポートは、2017年4~6月にアマゾンで買い物を行った500人の米国人を対象としたアンケート調査を基に推計したもの。
注2:
インターネット上に存在する物の売り手と買い手が自由に参加できる取引市場。
注3:
Rakuten Global Market外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

米国における越境ECの市場動向と制度

米国における越境EC市場動向
日本からの出品を可能にしている主なECサイト
  • アマゾン米国
  • イーベイ
(その他)
  • エッツィー(Etsy)
  • 楽天グローバルマーケット
主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋) (アマゾン.comプライム会員における購入上位品目)(2016年)
  1. メディア製品
  2. 電化製品(50ドル未満)
  3. パーソナルケア製品
  4. 衣料品・服飾雑貨
  5. 電化製品(50ドル以上)
  6. 家庭用品
  7. 玩具
  8. ベビー・子供用品
  9. 食料品
  10. ペット用品
(出所:米国統計サイト「Statista」)
(消費者支出調査[Consumer Expenditure Survey])購入上位品目(2009‐15平均)
  1. その他の商品
  2. 衣料品・服飾雑貨
  3. 家具・家庭用品
  4. 医薬品、健康・美容補助食品
  5. 電化製品
  6. 音楽・ビデオ
  7. PCハードウェア
  8. スポーツ用品
  9. 本・雑誌
  10. 玩具、趣味品、ゲーム
(出所)米国労働局
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合
  • クレジットカード
  • デビットカード
  • プリペイドカード
  • 代金引換
  • eWallet(ペイパルl、Google Wallet、Apple Pay)
  • 銀行振込
(出所)Worldpay「Global Payments Report
米国の主な支払い方法の割合
  • クレジットカード(34%)
  • デビットカード(25%)
  • eWallet(20%)
  • 銀行振込(6%)
  • その他(5%)
  • 代金引換(4%)
  • プリペイドカード(3%)
(出所)Global Payments Report Worldpay(2015年)レポート
米国におけるEC(越境EC含む)に関する制度
国内規制 (1)データ制約に関する規制の有無 (データ保護)
  • 連邦取引委員会(Federal Trade Comission)が公正な取引を監督・監視する機関だが、各州においても規制が異なる場合もあるため、留意する必要性がある。
  • 特に、カリフォルニア州は他州と比較して、プライバシー・データ保護に関して独自の規制を設けている。
CA州における関連規制:
  • "Shine the Light Law"CA Civil Code 1798.83
  • California Civil Code Section 1798.82
  • The California Online Privacy Protection Act (CalOPPA)
(出所)United States Cross-Border Trading Report、eCommerce Worldwide
(その他の関連規制)
(消費者保護法)
  • Consumer Product Safety Act (CPSA)(消費者製品安全法)
  • Consumer Product Safety Improvement Act of 2008 (消費者製品安全性改善法)
  • Consumer Credit Protection Act 1968 (CCPA) (消費者信用保護法)
(個人情報保護法)
  • Privacy Act of 1974 (個人情報保護法)
  • Fair Credit Reporting Act (FCRA)(公正信用報告法)
  • Children's Online Privacy Protection Act (COPPA, COPA)(児童オンラインプライバシー保護法)
(2)規制取扱商品 (輸入制限・禁止品目)
  1. 食品
    農林水産物や食品は輸入禁止、輸入制限が生じる。また、バイオテロ法に基づき米国食品医薬品局(FDA)に貨物到着前の事前通知を提出の上、通知番号を受け取り、税関申告が必要となる。
  2. 化粧品
    連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act: FDCA)により、法定基準を満たさないものや不正表示のものなどは輸入が禁止されている。
  3. 医薬品
    FDCAにより、FDAの許可がない医薬品の輸入は禁止されている。
  4. 麻薬服用など道具
    規制薬物法(Controlled Substances Act)により、規制薬物の製造加工、体内への摂取・注入機器などの輸入は一切禁止されている。
(参考)
  • US Customs and Border Protection "Prohibited and Restricted Items"
(3)その他のEC販売に関連する規制 (その他の留意点)
  • 日本にサーバーと発送拠点がある場合、日本からの輸出者は米国での法人登録や許認可取得などの義務はない。
  • 国際取引上の観点から、経済協力開発機構(OECD)の電子取引に関するガイドラインに従う必要性がある。例えば、インターネット販売業者は公正な広告を行い、ウェブサイト上で事業者自身の業種や所在地、商品とその価格、保証、返品やクレームの方法、取引保護上の措置などを明示するなど。
  • 発送に関しても配達所要日数、配達遅延時の通知、払い戻しなどに関する規制が生じる。配達所要日数を記載する場合、その根拠が必要となるが、配達日数を記載しない場合は30日以内に配達できる合理的な根拠を持っている必要があるという「30 day rule」がある。
  • 米国内にサーバーと商品発送拠点を設置した販売において、消費者保護や公正取引などの観点から連邦取引委員会が定めるガイダンス「Online Advertising and Marketing」に留意することが必要。インターネット広告の留意点、出荷前に知らせる事項、開示すべき情報、サーバーのセキュリティーなどに関する内容が記載されている。
(その他のEC販売に関連する規制)
  • Uniform Electronic Transaction Act(UETA):電子署名法
小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響 (輸入手続き)
  • 米国では2,500ドル未満の小口貨物は略式輸入(informal entry)として扱われ、通常の貨物よりも簡易な通関手続きが適用される。ただし、繊維製品、その他の制限品目などは略式輸入の対象外。
  • 2,500ドル未満の小口貨物を米国へ輸入する際、「フォーム3461(Entry/Immediate Delivery for ACE)」を輸入者もしくは通関業者が米国税関国境警備局(Customs and Border Protection: CBP)に提出する。略式輸入の手続きの詳細情報:連邦規則集19CFR、Part 128.24 (Informal Entry Procedures)
  • 通関業者はCBPのライセンスを取得している必要がある。通関手続きを行う港、空港の通関業者のリストは、CBPのウェブサイトで検索することが可能。
(関税)
  • 商品の金額や種類によって関税が発生することを通知しておくことが必要となる。米国へ商品を輸出する際の、相手国先でかかる関税率については米国国際貿易局のウェブサイトまたはWorld Tariffで確認が可能。

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ジェトロ海外調査部

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