特集:主要国・地域の越境EC マレーシアの越境EC
2017年12月20日
EC市場規模
マレーシアのB2C市場の売り上げは15億米ドル(2014年)とされ、国際通貨基金(IMF)統計をもとに1人当たり売上高を算出すると、49ドルにとどまり、中国の213ドル(2015年)、米国の844ドル(2015年)よりもだいぶ少ない(政府などの試算)。換言すれば、EC市場の発展はこれからともいえる。
マレーシアにおける出店可能な主な越境ECプラットフォームとしては韓国系11ストリート、地場のレローンやイオンが管理するSHOPPUなどあるが数は少ない(アマゾン・マレーシアはなく、アマゾンの海外向け販売サイトを利用)。
一方、マレーシア政府はEC市場の育成に注力。中でも、アリババとの関係強化が注目され、2016年11月に訪中したナジブ首相は同社のジャック・マー会長と会談し、同氏をマレーシア政府のデジタル経済アドバイザーとすることを発表。また、2017年3月にはアリババもマレーシアに国際物流拠点の設立を発表した他、7月には、アリババ子会社とマレーシア政府が共同で立ち上げる世界電子貿易プラットフォーム(EWTP)のデータ処理を手掛けるデータセンター開設計画を発表。
日本商品のEC販路開拓上の課題
同国のEC市場規模が小さく、夜明け前の段階にあることを踏まえると、日本産品を売り込める越境ECの市場規模は極めて小さい。現状日本の商品では美容・健康関連製品の人気が高いが、日本製品は物流コストがかさみ、相対的に価格競争力が低下することが課題。
EC売れ筋商品
マレーシアでオンライン・ショッピングの経験があると回答した国民は83%、1年以内に再利用するとした回答も85%に及ぶ(2016年11月に11ストリートがマレーシア国内の3,507人を対象に実施したアンケート調査)など、近年は少額な買い物を中心にEC利用が進んでいる模様。同アンケートでは売れ筋商品も紹介され、2016年時点でのカテゴリー別人気商品はファッション・美容、電子機器、スポーツ・ホビーが挙がり、今後は室内装飾・家具、家庭用品・雑貨、サプリメントの人気が高まるとのこと。
日本の越境商品についても美容・健康関連の人気が目立つ。11ストリートは、少数ながらも日本商品を扱っている。2016年の人気商品はマウスウオッシュ。ヘアマスクなども数点扱っており、同社は日本のファッション・美容商品、電子機器などの品ぞろえ増を期待。また、イオンが管理するSHOPPUにおいても、日本製品としてはフェースパックや美肌用オイルなどの売れ行きが好調。
越境ECの課題
越境ECにおける最大の課題は物流で、輸送費がかかる分、商品の価格競争力が低下すること(マレーシアECサイト[11ストリート、レローン]関係者)。出店企業にとっても、マレーシアは品質以上に価格を重視する傾向が強く、価格設定は売れ行きを左右しかねない。
さらに日本からの出店の場合は、カスタマーサポートの問題もある。出店者側にサポート対応を任せているECプラットフォームの場合は、出店企業の担当者に相応の語学力が求められる。
EC決済では、11ストリートを利用する場合、料金は同プラットフォームが回収し、日本の銀行に振り込めば良いため、出店企業は外貨両替手数料を負わない。また、同社は商品を追跡し、買い手が受け取ったかをチェックし、「料金が支払われない」や「買い手が間違えて支払いを完了してしまう」といったミスが起きないようにしている。また決済自体も、マレーシアで1万以上の企業が導入しているIPAY88という決済サービスを採用、セキュリティーを担保し、決済面の不安を消費者が感じないように配慮している。
EC決済手段
マレーシアでの決済手段について、オンライン送金が54%で最多。以下、クレジットカードやデビットカードが33%と続き、代金引換が12%、指定口座への前払いが1%(上記11ストリートによる調査)。
マレーシアにおける越境ECの市場動向と制度
日本からの出品を可能にしている主なECサイト |
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主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋) |
1位:粉ミルク 2位:スチール製の収納箱 3位:MILO[飲料] 4位:携帯型充電器(モバイルバッテリー) 5位:折り畳み式アルミニウム机 (出所)11ストリートにおける売れ筋 |
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合 |
(原典)各社ウエブサイト、世界銀行、ATカーニー |
国内規制 | (1)データ制約に関する規制の有無 |
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(2)規制取扱商品 |
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(3)その他のEC販売に関連する規制 |
EC限定規制は必ずしも整備されているわけではないが、現状ECに関わる規制は次の通り。
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小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響 |
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ジェトロ海外調査部