特集:主要国・地域の越境EC メキシコの越境EC

2017年12月20日

EC市場規模

2015年のメキシコのEC市場規模は2,570億9,000万ペソ(約1兆5,940万円)で、前年比59%増、2012年との比較では3倍規模に成長する(メキシコインターネット協会[AMIPCI])など、年々増加傾向。同国EC取引では衣服・アクセサリーなどがよく売買され、海外からの購入にも積極的。アジアからの購入もあるものの、越境含むEC決済の安全性を特に気にする消費者が多い模様。

ECに限った規制取扱商品は無いが、通常貨物と同様、非関税規制は守る必要あり。小口配送では国際郵便にメリットがあるが、メキシコ特有の遅延・紛失など郵便事情の悪さから、国際宅配便を勧めるECサイトもある。

ECの課題

EC取引に関する課題として店主と運営側のトラブルも見られ、ルール確立が待たれる。一例としてクーリングオフ期間である5日間(連邦消費保護法)を過ぎた返品対応をメルカド・リブレ側が予告もせずに行い返金処理もした、として店主側が連邦消費者検察庁に訴え、同庁がマーケットプレイス運営側に罰金を課したというもの。また、アマゾンでは(メキシコでのトラブルであっても)、調停プロセスはワシントン州シアトルで行う旨規定するなど、調停のハードルを上げている(「エル・エコノミスタ」紙2017年3月28日付)。

北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の結果いかんでは既存の流通構造との対立が起こる可能性も懸念。米国通商代表部(USTR)の交渉方針の一つで、クーリエサービスによる関税、輸入消費税の非課税限度額(対メキシコ)を、1通関当たり「50ドル」から「800ドル」へ引き上げるよう求めている。メキシコで輸入配送を行っている企業は商業貨物を通関させる際、関税と消費税を払って通関し、それを小売りに卸す一方で、例えばアマゾンの米国マーケットプレイスで購入した製品の場合、個人消費としてメキシコへクーリエで配送され、非課税範囲内であれば関税や消費税を支払わずにユーザーのもとに届く。その限度額が800ドルへ引き上がるので、基本的にはEC取引上、マーケットプレイス出店者、消費者には有利な提案となる。しかしながら、メキシコのネット購入ではアパレル関連製品も多く、メキシコのアパレル産業にとって脅威となる(同国産アパレルをネット購入した際は、「800ドル」以下でも付加価値税(IVA)を支払う必要があるため、競争上国産品が不利になる)ため、メキシコ政府としては同意できないとしている(「エクスパンシオン」誌インターネット版2017年8月7日付)。

ECメインプレーヤー

日本からの出店を考えた場合、メルカド・リブレについては出店者がメキシコ居住であることを求めている模様で、現地進出企業であるか、現地にパートナーが必要。メキシコの主要ECプレーヤーであるリニオや、アマゾンは国際配送が可能で、海外からの出店が可能(リニオはラテンアメリカでの展開を想定)。

アマゾンによると、日本からの配送はメディアコンテンツ系のみの取り扱い。したがって日本からコンテンツ以外の商品配送となるとアマゾンの国際配送が使えず、個別配送が必要(EMS、SALが多い)。

EC売れ筋商品

オンライン出店者が出品するカテゴリーのトップ3としては「アパレル・アクセサリー」、「スポーツ・フィットネス」、「情報携帯端末およびその周辺機器」の順(メキシコインターネット協会[AMIPCI]2016年報告)。他方、消費者側が購入する「旅行を除く」トップ3カテゴリーは、「アパレル・アクセサリー」、「デジタル商品ダウンロード」、「イベントチケット」の順。

日本のものとして、定番はアニメグッズ系(例:ドラゴンボールのキャラクターのフィギュア)などだが、ウィッグ、エクステンションのようなアクセサリー系、お菓子(例:日本製キットカット『抹茶味』)などもみられる。

越境ECを行う理由

オンライン購入経験者のうち「海外から購買したことがあるか」の質問に対しては、6割が「ある」と回答。地域(複数回答)では、「米国」(61%)」が首位であるものの、次点は「アジア」(41%)で、「ラテンアメリカ」(13%)を大幅に上回る。海外購買の理由(複数回答)は、「(海外から買っても)安価(61%)」、「メキシコにはないユニークな商品(53%)」、「ブランド商品などでメキシコに存在しない(44%)」など。

EC決済手段

EC(越境ECを含む)利用の際の主な決済システムの利用割合(複数回答)は、ペイパル(62%)、デビットカード(56%)、クレジットカード(51%)、コンビニ決済(30%)、銀行送金(27%)。

ECの留意点

「出店者が改善すれば、よりオンライン・ショッピングを行うであろうと思われる点」について質問したところ、「決済手段の安全性(91%)」、「配送無料(90%)」、「返品保証(89%)」の順(AMIPCI報告)。ペイパルは金銭の授受を同社が仲介するため、取引先にクレジットカード番号や口座番号を知らせる必要がなく、消費者側にとって個人情報リスクを減らせるメリット。

関連規則は複数省庁が関係するとしながらも、データセンターの国内設置義務など、電子商取引に関してのデータ制約に関する規制は特にない模様(経済省商工局関係者)。同省は特に連邦個人情報保護法に基づく職権の執行、同活動の啓蒙普及活動を主に実施。

国際郵便と国際宅配便を比較すると、コストの低い国際郵便にメリットがありそうだが、メキシコ郵便の「遅延」、「紛失」の多さからアマゾンでは国際宅配便による輸送を出品者に勧める向きも見られる。さらには、ドアtoドアのトラッキングができないことも一因とされる。

この中で、メキシコはインターネットユーザー数の割に、EC取引での買い物が少ないとされ、これについて「中南米・カリブ地域ではクレジットカードの保有、使用率が低く、また郵便サービスの質が悪い(信用性を欠く)ことなどが原因」と指摘されている。ユーザーは代金決済の安全性にも懸念を抱いており、決済手段には、店側に個人情報を伝える必要のないペイパルを用いる割合が最も高いことなどがこれを裏付けている。

メキシコにおける越境ECの市場動向と制度

メキシコにおける越境EC市場動向
日本からの出品を可能にしている主なECサイト
  • アマゾンメキシコ
  • リニオ(Linio)
  • メルカド・リブレ(Mercado Libre)
(注1)アマゾン:メキシコマーケットプレイスはヒューストンで運営。メキシコにはFBA (フルフィルメント by アマゾン[商品の保管、注文処理、出荷、配送、返品に関するカスタマーサポートを代行し、売上向上を支援するサービス])の倉庫管理機能のみ。メキシコへは米国のFBAからでも配送(2~3日)、かつメキシコの消費者には一定額(599ペソ)以上の購入で配送費無料。(セミナー資料などによれば)出品者には米国 FBA10:メキシコFBA1程度の割合で在庫を置くことを推奨。米国販売とセットでメキシコを捉えるのが良い。
FBA日本からの海外配送はメディアコンテンツ系に絞られてしまっており、その他の品目は個配する。日本からの配送はEMS、SALが多い模様。
(注2)リニオ:国際配送に対応はしている。ラテンアメリカに強い。
(注3)メルカド・リブレ:出店者がメキシコ居住者であることを求めている模様。同じくラテンアメリカに強い。
(この3社のシェア) アマゾンはメキシコのみの売り上げを公表していないものの、インターネット協会、ユーロモニターなどを元にした数字では、メルカド・リブレ9.5%、リニオ5.8%、アマゾン5.5%。(エル・フィナンシエロ紙、2017年3月28日付)
主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋)
  • 衣服・アクセサリー 42%
  • スポーツ&フィットネス 28%
  • コンピューター、情報携帯端末およびそれらの周辺機器 22%
(出店者側の複数回答)
(出所)メキシコインターネット協会(AMIPCI)
  • 衣服・アクセサリー(53%)
  • デジタル商品(49%)
  • イベントチケット(37%)
(消費者側の複数回答)
(出所)メキシコインターネット協会(AMIPCI)
(注)ECサイト検索をする限りでは、日本の出品物では定番はアニメグッズ系などだが、ウィッグ、エクステンションのようなアクセサリー系、お菓子(例:日本製キットカット抹茶味)などもみられる。
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合
  • ペイパル(62%)
  • デビットカード(56%)
  • クレジットカード(51%)
  • 銀行送金(27%)
  • コンビニ決済(オクソ[OXXO] :コンビニ地場最大手)(30%)
(消費者側の複数回答)
(出所)AMIPCI
メキシコにおけるEC(越境EC含む)に関する制度
国内規制 (1)データ制約に関する規制の有無
  • データセンターの国内設置義務など、電子商取引関連のデータ制約に関する規制は特に無い。ただし、メキシコは2011年導入のAPEC越境プライバシールールシステムに参加。
  • NAFTA再交渉では、近代化を目指し電子商取引章が設定される可能性がある。その中身はTPP第14章「電子商取引」に近似することが想定される。データ制約に関しては、越境データ通信を制限する措置を課さないこと、ソースコードの開示義務付けを防止するルール確立などが盛り込まれる可能性がある(ECに関して、データ制約の方向には向かわないものと見られる)。
(2)規制取扱商品
  • ECに限った規制取扱商品は無いが、非関税規制は同様に守る必要あり。
  • 税関法、貿易法、輸出入一般関税法、経済省貿易細則・判断基準省令、その他省庁輸入規制(品目リスト)省令に定めのある品目。
  • 麻薬やわいせつ物、危険物など万国郵便条約に基づく禁制品(国際郵便のケース)。
  • メキシコ公式規格(NOM)履行義務に定めのある品目。
(3)その他のEC販売に関連する規制
  • 連邦消費者保護法第8章BIS(電子商取引における消費者の権利)
  • 商法(電子商取引の契約成立を規定)
  • NAFTA再交渉(デジタルプロダクツ非課税、無差別待遇、越境データ通信の自由、ソースコード開示非義務化など)
  • 連邦個人情報保護法一般、など。
小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響 (国際郵便)
  • 300ドル超~1,000ドル以下⇒総合課税(関税、付加価値税、行政通関手数料を併せた簡易税率)一律16%で通関。
  • 300ドルを超える場合で個人用商品であることが明らかでない場合、非関税規制の適用条件を満たしている必要。
  • 300ドル以下であり、商品の特徴や数量から個人用の商品であることが明らかな場合、関税、付加価値税、行政通関手数料なしで配送される。
(国際宅配便)
  • 価額が5,000ドル以下の貨物の場合、宅配業者の社内通関士が荷受人に代わり簡易通関として輸入申告を行い、輸入業者登録は不要。非関税規制は満たす必要あり。
  • 50ドル超は関税、付加価値税を合わせて16%の総合税率が課税される。
  • 50ドル以下の小口貨物は、関税、付加価値税が免除。行政通関手数料は支払う必要がある。
(注)国際郵便に割安感があるが、アマゾンでは国際宅配便による輸送を出品者に薦めている。理由は国際郵便の「遅延」、「紛失」の多さ。ちなみに、顧客からの評価が一定より下がると、マーケットプレイスから退場させられる、など。

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ジェトロ海外調査部

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