輸出・投資動向から見る中国企業の海外展開

2026年7月8日

中国市場では、需要と供給の不均衡が長期化している。一部産業では、生産能力の過剰などを背景に、「内巻」と称される激しい価格競争が続く。こうした状況もあり、中国企業はより稼げる市場の獲得や国際競争力の強化を目的として、海外展開を加速させている。本稿では、中国の輸出および投資統計などから、中国企業の海外展開の動向を整理する。

輸出、対米2割減も全体ではプラス成長を維持

2025年の中国の輸出は前年比5.6%増の3兆7,765億ドル、輸入は0.04%減の2兆5,823億ドルだった。中国の貿易黒字は前年から2,016億ドル増大し、1兆1,942億ドルと初めて1兆ドルを突破した(注1)

主な輸出相手国・地域(輸出額上位15カ国・地域)別に見ると、1位の米国向けが前年比19.9%減と最大の落ち込みとなった(表1参照)。他方、2位の香港のほか、3位ベトナム、6位インド、7位ドイツ、9位タイ、13位インドネシアなどで2桁増となり、輸出総額はプラス成長を維持した。

表1:中国の主な輸出先の状況(輸出額上位15カ国・地域)(△はマイナス値、ーは値なし)
順位 国・地域名 2024年 2025年
金額
(億ドル)
構成比
(%)
金額
(億ドル)
伸び率
(%)
構成比
(%)
構成比
増減
1 米国 5,247 14.7 4,203 △ 19.9 11.1 △ 3.5
2 香港 2,906 8.1 3,371 16.0 8.9 0.8
3 ベトナム 1,618 4.5 1,986 22.7 5.3 0.7
4 日本 1,520 4.3 1,575 3.6 4.2 △ 0.1
5 韓国 1,459 4.1 1,445 △ 0.9 3.8 △ 0.3
6 インド 1,205 3.4 1,360 12.9 3.6 0.2
7 ドイツ 1,071 3.0 1,183 10.5 3.1 0.1
8 マレーシア 1,015 2.8 1,038 2.3 2.7 △ 0.1
9 タイ 860 2.4 1,037 20.5 2.7 0.3
10 ロシア 1,153 3.2 1,035 △ 10.2 2.7 △ 0.5
11 オランダ 912 2.6 939 3.0 2.5 △ 0.1
12 メキシコ 902 2.5 892 △ 1.2 2.4 △ 0.2
13 インドネシア 767 2.1 854 11.4 2.3 0.1
14 英国 789 2.2 851 7.9 2.3 0.0
15 台湾 752 2.1 836 11.3 2.2 0.1
合計(対世界) 35,758 100.0 37,765 5.6 100.0

出所:グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成(原典:中国税関)

図1:中国の輸出額に占める米国、ASEAN、EUの構成比の推移
2016~2025年の中国の輸出に占める構成比。ASEAN:2016年12.1%、2017年12.3%、2018年12.8%、2019年14.4%、2020年14.8%、2021年14.3%、2022年15.5%、2023年15.5%、2024年16.4%、2025年17.6%。EU:2016年13.5%、2017年13.9%、2018年14.2%、2019年14.7%、2020年15.1%、2021年15.5%、2022年15.7%、2023年14.8%、2024年14.4%、2025年14.8%。米国:2016年18.3%、2017年18.9%、2018年19.2%、2019年16.8%、2020年17.4%、2021年17.1%、2022年16.2%、2023年14.8%、2024年14.7%、2025年11.1%。

注:ASEANは東ティモールを除く10カ国。
出所:グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成(原典:中国税関)

うち、米国向け輸出については、2025年にはトランプ第2次政権下で米中間で高関税賦課の応酬が展開され、中国の輸出総額に占める米国の構成比は、前年からさらに3.5ポイント低下し、11.1%となった(図1参照)。

2025年10月の米中首脳会談を経て、関税措置はピーク時より緩和された(注2)ものの、中国の対米輸出は回復していない。2026年第1四半期には、対米輸出が前年同期比16.4%減となり、輸出総額に占める米国の構成比は9.9%と、1割を割り込んだ。

中間財輸出が牽引

中国の対米輸出減少を受け、行き場を失った一部の中国製品が低価格で第三国・地域へ流入するなど、いわゆる「デフレ輸出」の発生を指摘する声も聞かれる。そこで、対米輸出上位品目について、第三国・地域向けの輸出動向を整理する。

2025年の中国の対米輸出額上位10品目(HSコード4桁ベース)を見ると、全品目で対米輸出は前年から大きく減少した。うち、第1位の電話機・通信機器・同部品(HS8517)、第3位の小口貨物(HS9804)、第4位の蓄電池(HS8507)、第5位の自動車部品(HS8708)では、インド、ベトナム、欧州などへの輸出増が寄与し、それぞれの品目の対世界輸出ではプラスの伸びを維持した(表2参照)。

これら対世界輸出が増加した品目について、詳しく見てみる。最大品目の電話機・通信機器・同部品(HS8517)は、米国向け輸出が前年比31.7%減となった。主力のスマートフォン(HS8517.13)について、米国輸入統計では中国のシェアが2024年の81.1%から2025年には45.2%へ急激に低下した一方、インドのシェアが13.6%から42.3%へ、ベトナムが4.3%から11.3%へ上昇した。中国の同品目(HS8517)の輸出では、インド向けが69.8%増、ベトナム向けが25.1%増となったが、その中心はスマートフォン本体ではなく部品(HS8517.79)だ。アップルやサムスンによる中国からの生産拠点の分散に伴い、中国から両国への部品供給が増加しているとみられる。一方、中国のスマートフォン本体の輸出額(対世界)は減少傾向が続いている。

第4位の蓄電池(HS8507)と第5位の自動車部品(HS8708)についても、米国向けは前年比でそれぞれ23.7%減、10.4%減となった。一方で、ドイツ、ベトナム、オランダ、インドなど、自動車や電子機器の生産が活発で、部品や蓄電池への需要が大きい国向けの輸出が堅調な伸びを示した。

このほか、第3位の小口貨物(HS9804)は、TemuやSHEINなど中国系越境ECプラットフォームの拡大を背景に輸出が増加してきたが、米国が2025年5月に中国・香港原産品へのデミニミス適用(注3)を停止したことで、対米輸出は2025年通年で前年比30.3%減となった。一方で、シンガポールやベルギー向けなどで増加し、対世界輸出全体では20.9%増を維持した。ただし、タイやEUでも少額貨物への課税強化が進んでおり(注4)、中国系プラットフォームの事業戦略と中国輸出への影響が今後の焦点となる。

次に、対米輸出額上位10品目のうち、対米輸出、対世界輸出がともに減少した品目について見る。

第2位の自動データ処理機械(HS8471)は、対米輸出が前年比44.1%減となり、日本やドイツ向けの増加では補いきれず、対世界輸出も6.1%減となった。米国向けの同品目はノートPC(HS8471.30)が中心であり、近年は上述のスマートフォンとともに、生産拠点の中国からベトナムやタイなどへの分散が進んでいる。米国輸入統計では、米国のノートPCの輸入先として、中国の構成比は2024年の66.1%から2025年に17.8%に低下した。これに対し、ベトナムの構成比は27.2%から61.3%へ、タイは0.7%から9.2%へ急速に上昇した。また、中国からベトナム・タイ向けには、部分品・付属品(HS8473.30)輸出が大幅に増加しており、生産移管先への部材供給が拡大していることがうかがえる。

中国の対米輸出品目の6~10位には、玩具、家具、照明器具など、消費財が中心に並んでいる。これら品目は、中国の対世界輸出でも軒並み伸び率がマイナスとなっている。現地の消費者の嗜好(しこう)に応じて設計・製造された商品が多く含まれると考えられ、短期的な輸出先の振り替えの難しさを示唆している。

次に、中国の2025年の輸出額上位15カ国・地域のうち、前年比2桁増を示した上位5カ国(2位の香港を除き、3位ベトナム、6位インド、7位ドイツ、9位タイ、13位インドネシア)への主要な輸出品目を見ると、それぞれ上位5品目(HSコード4桁ベース)では、集積回路、フラットパネルディスプレイモジュール、蓄電池など中間財が多く並ぶ(表3参照)。また、これら5カ国向けでいずれも5位以内に入る「電話機、通信機器、同部品」については、品目内訳を見ると、既出の部品が中心となっている(ただしドイツ向けはスマートフォンが中心)。

表3:中国の輸出が好調な国・地域向けの主な輸出品目の動向(単位:億ドル、%、ポイント)(△はマイナス値、ーは値なし)注1:中国の輸出先上位15カ国・地域(2025年の金額ベース)中、輸出額が2桁の伸び率を示した上位5カ国・地域(香港除く)について記載。 注2  :太字の品目は、中間財に属するもの。
輸出先 金額
順位
HS 品目 2025年
金額 構成比 構成比
増減
(対2019年)
伸び率
(対前年)
ベトナム 1 8542 集積回路 267 13.5 3.3 62.1
2 8517 電話機、通信機器、同部品 118 5.9 △ 1.9 25.1
3 8524 フラットパネルディスプレイモジュール 111 5.6 39.9
4 8507 蓄電池 50 2.5 1.4 20.9
5 8473 パソコンなどの部品・付属品 45 2.3 1.4 69.5
インド 1 8517 電話機、通信機器、同部品 119 8.8 0.7 69.8
2 8542 集積回路 92 6.8 3.8 23.0
3 8471 自動データ処理機械(パソコンなど) 67 4.9 0.0 3.4
4 8524 フラットパネルディスプレイモジュール 51 3.7 3.7 △ 14.8
5 8529 テレビなどの部分品 50 3.7 1.9 26.9
ドイツ 1 8507 蓄電池 136 11.5 9.8 29.0
2 8471 自動データ処理機械(パソコンなど) 92 7.8 △ 1.7 17.2
3 8517 電話機、通信機器、同部品 36 3.0 △ 1.8 43.1
4 8708 自動車部品 32 2.7 0.6 12.8
5 9804 小口貨物 28 2.4 2.0 52.6
タイ 1 8517 電話機、通信機器、同部品 113 10.9 3.7 115.3
2 9804 小口貨物 33 3.2 2.7 19.0
3 8542 集積回路 32 3.1 2.3 45.9
4 8703 自動車 21 2.1 2.0 39.1
5 8471 自動データ処理機械(パソコンなど) 21 2.0 △ 1.2 26.3
インドネシア 1 8517 電話機、通信機器、同部品 37 4.3 △ 3.5 25.0
2 8703 自動車 22 2.6 2.6 208.9
3 8471 自動データ処理機械(パソコンなど) 20 2.4 △ 0.5 17.6
4 8524 フラットパネルディスプレイモジュール 16 1.9 9.3
5 8541 半導体デバイス 13 1.6 1.5 286.0

注1:中国の輸出先上位15カ国・地域(2025年の金額ベース)中、輸出額が2桁の伸び率を示した上位5カ国・地域(香港除く)について記載。
注2  :太字の品目は、中間財に属するもの。

出所:グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成(原典:中国税関)

以上から、中国の輸出は対米輸出の減少分を単純に他国向けに振り替えることで維持されているというより、グローバルな生産体制の再編を背景に、各国の生産拠点向け中間財の供給が重要な成長エンジンとなっていることが分かる。中国は最終財に加え、中間財や生産設備の供給地としても存在感を高めており、製造業の高度化が輸出競争力の維持につながっているとみられる。

ASEANへの製造業投資が拡大、サプライヤーの進出も進むか

中間財輸出の拡大の背景には、中国企業による組立工場など製造拠点の海外展開が進んでいることも一因と考えられる。中国商務部が発表する投資先国・地域別の対外直接投資統計は、執筆時点(2026年6月19日)で2024年の統計が最新値だ。中国の2024年の対外直接投資額(フロー)は前年比8.4%増の1,922億ドルで、2023年に続いて2年連続の増加だ(図2参照)。ピーク時の2016年(1,961億ドル)に次ぐ高水準となった。地域別では、全体の60.4%を香港が占めており、香港は引き続き中国企業の海外展開を支える資金調達拠点として役割を果たしていることが表れている。

次いで、ASEANへの投資(構成比17.9%)が前年比36.8%増と堅調な伸びを示し、過去最高額の344億ドルとなった。特に、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナムなどで増加傾向が顕著にみられた(図3参照)。このうち、シンガポールは投資の経由地として活用されるケースが多いとされる。また、対ASEAN投資を業種別に見ると、最大構成比は製造業で44.8%を占め、金額は前年から68.2%増と大幅増となった(図4参照)。

図2:中国の対外直接投資額の推移(地域別)
単位は10億ドル。棒グラフは地域別の対外直接投資額、折れ線グラフは前年比伸び率を示す(右軸)。2014年の対外直接投資額は123.1(前年比14.2%増)で、内訳はオセアニア4.3、北米9.2、中南米10.5、欧州10.8、アフリカ3.2、ASEAN7.8、アジア(ASEAN除く)77.2だった。2015年は145.7(同18.3%増)で、内訳はオセアニア3.9、北米10.7、中南米12.6、欧州7.1、アフリカ3.0、ASEAN14.6、アジア(ASEAN除く)93.8だった。2016年は196.1(同34.7%増)で、内訳はオセアニア5.2、北米20.4、中南米27.2、欧州10.7、アフリカ2.4、ASEAN10.3、アジア(ASEAN除く)112.0だった。2017年は158.3(同19.3%減)で、内訳はオセアニア5.1、北米6.5、中南米14.1、欧州18.5、アフリカ4.1、ASEAN14.1、アジア(ASEAN除く)95.9だった。2018年は143.0(同9.6%減)で、内訳はオセアニア2.2、北米8.7、中南米14.6、欧州6.6、アフリカ5.4、ASEAN13.7、アジア(ASEAN除く)91.8だった。2019年は136.9(同4.3%減)で、内訳はオセアニア2.1、北米4.4、中南米6.4、欧州10.5、アフリカ2.7、ASEAN13.0、アジア(ASEAN除く)97.8だった。2020年は153.7(同12.3%増)で、内訳はオセアニア1.4、北米6.3、中南米16.7、欧州12.7、アフリカ4.2、ASEAN16.1、アジア(ASEAN除く)96.3だった。2021年は178.8(同16.3%増)で、内訳はオセアニア2.1、北米6.6、中南米26.2、欧州10.9、アフリカ5.0、ASEAN19.7、アジア(ASEAN除く)108.4だった。2022年は163.1(同8.8%減)で、内訳はオセアニア3.1、北米7.3、中南米16.3、欧州10.3、アフリカ1.8、ASEAN18.7、アジア(ASEAN除く)105.6だった。2023年は177.3(同8.7%増)で、内訳はオセアニア0.5、北米7.8、中南米13.5、欧州10.0、アフリカ4.0、ASEAN25.1、アジア(ASEAN除く)116.5だった。2024年は192.2(同8.4%増)で、内訳はオセアニア1.1、北米6.0、中南米15.6、欧州12.5、アフリカ3.4、ASEAN34.4、アジア(ASEAN除く)119.3だった。

注:金融類を含む。
出所:CEICデータを基にジェトロ作成(原典:中国商務部)

図3:中国の対ASEAN主要国向け直接投資
単位は100万ドル。2010年は、カンボジア467、インドネシア201、マレーシア164、シンガポール1,119、タイ700、ベトナム305だった。2011年は、カンボジア566、インドネシア592、マレーシア95、シンガポール3,269、タイ230、ベトナム189だった。2012年は、カンボジア560、インドネシア1,361、マレーシア199、シンガポール1,519、タイ479、ベトナム349だった。2013年は、カンボジア499、インドネシア1,563、マレーシア616、シンガポール2,033、タイ755、ベトナム481だった。2014年は、カンボジア438、インドネシア1,272、マレーシア521、シンガポール2,814、タイ839、ベトナム333だった。2015年は、カンボジア420、インドネシア1,451、マレーシア489、シンガポール10,452、タイ407、ベトナム560だった。2016年は、カンボジア626、インドネシア1,461、マレーシア1,830、シンガポール3,172、タイ1,122、ベトナム1,279だった。2017年は、カンボジア744、インドネシア1,682、マレーシア1,722、シンガポール6,320、タイ1,058、ベトナム764だった。2018年は、カンボジア778、インドネシア1,865、マレーシア1,663、シンガポール6,411、タイ737、ベトナム1,151だった。2019年は、カンボジア746、インドネシア2,223、マレーシア1,110、シンガポール4,826、タイ1,372、ベトナム1,649だった。2020年は、カンボジア956、インドネシア2,198、マレーシア1,374、シンガポール5,923、タイ1,883、ベトナム1,876だった。2021年は、カンボジア467、インドネシア4,373、マレーシア1,336、シンガポール8,405、タイ1,486、ベトナム2,208だった。2022年は、カンボジア632、インドネシア4,550、マレーシア1,606、シンガポール8,295、タイ1,272、ベトナム1,703だった。2023年は、カンボジア1,378、インドネシア3,133、マレーシア1,427、シンガポール13,097、タイ2,018、ベトナム2,593だった。2024年は、カンボジア1,465、インドネシア4,591、マレーシア1,306、シンガポール17,888、タイ4,556、ベトナム3,920だった。

注:金融類を含む、フロー。中国の2024年の対外直接投資額が10億ドルを超えたASEAN上位6カ国について掲載。
出所:CEICデータを基にジェトロ作成(原典:中国商務部)

図4:中国の対ASEAN直接投資(業種別)
単位は10億ドル。棒グラフは製造業、小売・卸売、リース・商業サービス、電気・ガス・水供給、建設、その他の業種別投資額を示す。2018年のASEAN向け対外直接投資額は13.7で、内訳は製造業4.5、小売・卸売3.5、リース・商業サービス1.5、電気・ガス・水供給0.9、建設0.3、その他3.0だった。2019年は13.0で、内訳は製造業5.7、小売・卸売2.3、リース・商業サービス1.2、電気・ガス・水供給0.9、建設0.5、その他2.5だった。2020年は16.1で、内訳は製造業6.3、小売・卸売1.6、リース・商業サービス1.7、電気・ガス・水供給1.4、建設1.7、その他3.3だった。2021年は19.7で、内訳は製造業8.6、小売・卸売3.2、リース・商業サービス2.1、電気・ガス・水供給1.5、建設0.6、その他3.8だった。2022年は18.7で、内訳は製造業8.2、小売・卸売4.2、リース・商業サービス0.6、電気・ガス・水供給1.6、建設0.2、その他3.9だった。2023年は25.1で、内訳は製造業9.1、小売・卸売4.8、リース・商業サービス3.2、電気・ガス・水供給1.8、建設0.1、その他6.0だった。2024年は34.4で、内訳は製造業15.4、小売・卸売9.5、リース・商業サービス3.1、電気・ガス・水供給1.9、建設1.2、その他3.3だった。

注:金融類を含む、フロー。
出所:CEICデータを基にジェトロ作成(原典:中国商務部)

ASEANにおける中国製造業企業の展開動向については、ジェトロの調査レポート「中国企業のASEAN展開に関する動向把握」において、新エネルギー車(NEV)、家電、建設機械、産業用ロボットなどに焦点を当ててまとめているので参照されたい。このうちNEV分野では、タイで2024年7月に比亜迪(BYD)が、長安汽車が2025年6月にそれぞれ新設工場を稼働させるなど、完成車メーカーの進出が相次いでいる。これに伴い、モーターやギアなどの中国系部品サプライヤーのほか、車載電池メーカーの投資も活発化している。

ASEAN最大の自動車市場を有するインドネシアでも、BYDが2024年1月に工場建設計画を発表し、2026年の稼働を予定する。また、資源確保に関わる動きとして、寧徳時代新能源科技(CATL)の傘下企業などが、電池資源であるニッケルの採掘・製錬から電池セル生産、リサイクルまで、サプライチェーン全体の一貫構築を図るインドネシアの国家戦略事業に参画している。

タイおよびインドネシア政府は、現地調達要件や国産化政策を通じて、完成車の輸出にとどまらず、部品や電池を含むサプライチェーンの現地化を促す政策を強化している(注5)。中国の完成車メーカーからは、コスト競争力が高い中国製部品を輸入した方が安価に製造できるとの声も聞かれる。しかし、現地政府の要請や生産拡大に伴い、関連サプライヤーの進出がさらに進む可能性がある。また、将来の需要拡大を見越して、先行的に進出する中国企業もあると指摘されている。

米国の経済調査機関Rhodium Groupが取りまとめた中国NEVメーカーの投資額(注6)の推移を見ると、中国国内での投資は、発表ベースで2022年に、実行ベースで2023年にそれぞれピークを迎え、その後は減少傾向にある(図5、図6参照)。一方、海外投資は、発表ベースでは2023年をピークに落ち着きをみせているものの、実行ベースでは2022年以降4年連続で増加している。これは、過去に発表された投資案件の実行が進んでいることを反映したものとみられる。当面は海外での生産能力拡大が見込まれるが、新規の発表案件は減少傾向にあることから、今後の実行ベースの伸びは鈍化する可能性がある。

図5:中国NEVメーカーの海外投資額の推移(発表ベース)
単位は10億ドル。2018年の投資額は、中国国内が32.8、海外が2.4だった。2019年は、中国国内が30.9、海外が3.1だった。2020年は、中国国内が26.9、海外が3.3だった。2021年は、中国国内が54.0、海外が4.9だった。2022年は、中国国内が85.9、海外が15.0だった。2023年は、中国国内が64.1、海外が26.8だった。2024年は、中国国内が33.1、海外が22.6だった。2025年は、中国国内が28.8、海外が12.3だった。

注:2年移動平均値が用いられている。
出所:Rhodium Group「China Global Clean Tech Investment Dashboard」(アクセス日:2026年6月22日)

図6:中国NEVメーカーの海外投資額の推移(実行ベース)
単位は10億ドル。2018年の投資額は、中国国内が14.7、海外が1.6だった。2019年は、中国国内が22.3、海外が1.6だった。2020年は、中国国内が26.4、海外が1.9だった。2021年は、中国国内が31.1、海外が1.1だった。2022年は、中国国内が55.4、海外が1.6だった。2023年は、中国国内が71.0、海外が3.7だった。2024年は、中国国内が51.1、海外が8.1だった。2025年は、中国国内が32.8、海外が13.3だった。

注:2年移動平均値が用いられている。 出所:Rhodium Group「China Global Clean Tech Investment Dashboard」(アクセス日:2026年6月22日)

海外展開を巡る不確実性の高まり、中国側でも海外投資の管理強化へ

また、発表額のうちどの程度が実際の投資実行につながるかも注視が必要だ。一部の国で、中国企業を巡る通商環境の変化などにより不確実性が高まる中、中国企業が投資計画の延期や見直しを行うケースもみられる。米国では、中国電池大手CATLが技術供与を行うとしていたフォードの電池工場計画が、当初の稼働予定(2026年)から延期されている。また、チリでは、BYDや青山控股集団傘下企業によるリチウム関連投資案件が、リチウム価格の低迷などを背景に取り止めが伝えられている。さらに、英国では経済安全保障上の理由から、中国・明陽智慧能源の風力タービン利用を政府が支持しない方針を決定し、同社の英国投資計画も先行きに不透明感が生じている(注7)

中国政府自身も対外投資や技術移転に対する管理を強化する姿勢を強めている。まず、中国の第15次5カ年(2026~2030年)規画の綱要を見ると、国内における製造業の高度化や中核技術・標準・ブランドの確立を打ち出しつつ、中国企業の海外展開については「産業チェーンの秩序ある越境配置」「中間財貿易の拡大」「貿易のデジタル化、グリーン化、ハイエンド化」を推進する方針が示された。高付加価値分野を国内製造の中核に据えつつ、国際分業の深化や輸出構造の高度化を図る姿勢がうかがえる。

また、2025年7月には「輸出禁止・制限技術目録」が改正され、海外投資が活発な電池分野で「電池正極材製造技術」が輸出制限技術に追加された(2025年7月22日付ビジネス短信参照)。さらに、2026年5月に国務院が「対外投資に関する規定」を公布し(7月1日施行)、対外投資に対する安全審査制度の整備や監督管理の強化の方針を打ち出している(2026年6月5日付ビジネス短信参照)。

中国企業の海外展開は引き続き拡大基調にあるものの、受け入れ国側では経済安全保障や産業政策の観点から、中国側では中核技術や産業チェーンの競争優位維持の観点から、管理が強化されつつある。今後は、国内に蓄積した技術力や生産能力を維持・強化しつつ、海外投資と中間財輸出をどのように組み合わせて国際展開を進めるかが、中国企業のグローバル戦略における重要な論点になるとみられる。


注1:
中国税関の貿易統計を基に、貿易データベースGlobal Trade Atlasがドル換算した数値。 本文に戻る
注2:
米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の間で、2025年10月30日に韓国で行われた首脳会談を経て、米国側はフェンタニルの流入抑制を目的とする中国への追加関税を20%から10%への引き下げ(2025年11月10日以降)や、中国に対する相互関税率(10%)の維持などを含む合意内容を発表した(2025年11月4日付ビジネス短信参照)。2026年2月20日には米国最高裁判決により、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税およびフェンタニルの流入抑制を目的とする追加関税は無効とされた(2026年2月24日付ビジネス短信参照)。なお、トランプ大統領は同日、1974年通商法122条に基づき、全ての輸入に原則10%の課徴金を課すと発表した。 本文に戻る
注3:
デミニミス(非課税基準額)制度とは、一定額以下の少額貨物について関税の支払いを免除し、簡易な通関手続きを認める制度。米国では輸入申告額800ドル以下の貨物が対象であったが、2025年5月から中国・香港原産品への適用を停止した。また、米国は全ての国・地域からの輸入貨物について、2027年7月から同制度を廃止することを決定している(2025年7月8日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
注4:
詳細は、2026年1月7日付2025年12月17日付ビジネス短信参照本文に戻る
注5:
詳細は、2025年2月28日付2026年2月2日付地域・分析レポート参照本文に戻る
注6:
Rhodium Groupが中国企業によるNEV、風力発電、太陽光発電の3分野における投資動向を取りまとめデータベース「China Global Clean Tech Investment Dashboard」に基づく。投資対象資産がクリーンテクノロジー関連事業に従事していることを明確に確認できる場合、または投資時点で投資家が当該資産をクリーンテクノロジーのバリューチェーンに組み込むことを明示している場合に限り、集計対象とされている。なお、発表ベースの投資額は、法的拘束力のある文書や覚書(MOU)などにより確認可能な投資案件を集計し(うわさや検証不能な案件、法的文書を伴わない投資計画は除外)、実行ベースは、発表後も案件の進捗を継続的に追跡し、実際に実行・完了した投資額を集計したものと説明されている。 本文に戻る
注7:
各投資案件に関する詳細は、2025年5月16日付ビジネス短信2026年4月24日付ビジネス短信2025年12月4日付地域・分析レポート参照本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
小林 伶(こばやし れい)
2010年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、企画部企画課事業推進班(北東アジア)、ジェトロ名古屋などを経て2019年6月から現職。