トランプ米政権、中国との通商合意に関するファクトシート発表、11月10日から対中追加関税10%分を撤廃

(米国、中国)

ニューヨーク発

2025年11月04日

米国のトランプ政権は11月1日、中国との通商合意に関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開した。ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席は10月30日に韓国で対面での首脳会談を行っていた(2025年10月31日記事参照)。首脳会談後、米国が合意内容を正式に発表するのは今回が初めてとなる。ファクトシートに記載した合意内容は次のとおり。

〇中国側の措置

  • 10月9日に発表した全世界向けの希土類(レアアース)に関する輸出管理と関連措置の停止(2025年10月14日記事2025年10月14日記事参照)。
  • レアアース、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、黒鉛(グラファイト)に対する一般輸出許可の発行(注1)。
  • 米国への合成麻薬フェンタニルの流入を阻止するための措置の履行。具体的には、北米向け特定指定化学物質の出荷停止、その他の特定化学物質の全世界向け輸出の厳格な管理(注2)。
  • 2025年3月4日以降に発表した全ての報復関税を停止(注3、2025年7月30日記事参照)。
  • 2025年3月4日以降に米国に対して実施した全ての報復的非関税措置の停止または撤廃。これには、米国企業を中国のエンドユーザーリストや、信頼できないエンティティー・リストに掲載した措置も含まれる(2025年10月14日記事参照)。
  • 米国産大豆を11~12月に少なくとも1,200万トン購入し、2026~2028年の各年に少なくとも2,500万トンを購入。米国産ソルガムや広葉樹原木の購入再開。
  • オランダ系半導体メーカー、ネクスペリアの中国国内施設からの出荷再開。
  • 1974年通商法301条に基づく米国の中国船の入港に対する手数料徴収に対する報復措置の撤廃、海運事業者に対する制裁の解除(2025年10月15日記事参照)。
  • 米国からの輸入品に対する関税除外措置の2026年12月31日までの延長。
  • 半導体サプライチェーンに関する米国企業を対象とした各種調査〔反差別調査やアンチダンピング(AD)調査を含む〕の終了(2025年9月18日記事参照)。

〇米国側の措置

  • フェンタニルの流入抑制を目的とする中国への追加関税10%分を11月10日から撤廃。中国に対する相互関税率を2026年11月10日まで10%に維持(2025年8月12日記事参照)。
  • 11月29日に期限が切れる301条追加関税の適用除外措置を2026年11月10日まで延長(2025年8月29日記事参照)。
  • 輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リストなどに掲載される事業体が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「関連事業体ルール」の適用を11月10日から1年間停止(2025年9月30日記事参照)。
  • 301条に基づく中国船の入港に対する手数料徴収(2025年10月14日記事参照)を11月10日から1年間停止。

今回のファクトシートに対して、政治専門紙「ポリティコ」(11月1日)は、長期的な通商協定の締結ではなく、妥協と不安定な休戦に終わったにもかかわらず、トランプ氏の関税政策の勝利として描いていると評した。そのほか、同紙はネクスペリアを巡る措置について、中国は曖昧なコメントを発表しており、半導体サプライチェーンに関して両国の見解が完全に一致していない可能性があるとも指摘している。

(注1)この輸出許可の発行は、中国が2025年4月(2025年4月7日記事参照)と2022年10月に課した規制の事実上の撤廃を意味する。ゲルマニウムは光ファイバー、半導体、太陽電池パネルに、ガリウムはコンピュータ、携帯電話、第5世代移動通信システム(5G)基地局用半導体、アンチモンはトランジスタやダイオードなどの半導体、黒鉛は電気自動車(EV)用バッテリーなどに利用される。

(注2)北米向け輸出を禁止する具体的な化学物質や、他市場向け出荷制限措置の内容については明記していない。

(注3)鶏肉、小麦、トウモロコシ、綿花、ソルガム、大豆、豚肉、牛肉、水産物、果物、野菜、乳製品など広範な米国農産物への関税が含まれる。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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