2025年の新車登録台数は堅調に増加、BEV・PHEVが牽引(英国)
産業界はイラン情勢、EU産業加速法案など懸念

2026年6月11日

英国自動車製造者販売者協会(SMMT)によれば、2025年の新車登録台数は前年比3.5%増の202万520台で、2020年代に入ってから初めて200万台を超えた。バッテリー電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の増加が牽引した。一方、生産台数は国内向け、輸出向けともに減少し、前年比8.0%減の71万7,371台だった。2026年第1四半期も、新車登録台数は増加、生産台数は減少する傾向が続いている。産業界は、イラン情勢が消費者行動や生産コストに与える影響に加え、英国にとって最大の自動車輸出先であるEUの産業加速法案(IAA、2026年3月13日付ビジネス短信参照)の動向、EU英国通商・協力協定(TCA)における原産地規則の緩和措置終了に懸念を示している。

新車登録台数は増加、BEV・PHEVの増加が顕著

2025年の新車登録台数は前年比3.5%増の202万520台で、2020年代に入ってから初めて200万台を超えた。用途別(表1参照)では全ての車種で増加したが、特に商用車は8.8%増と好調だった。

表1:用途別の新車登録台数注1:登録車両数が25台超の企業名義で登録された車両。 注2:登録車両数が25台以下の企業名義で登録された車両。
車種 2024年 2025年 前年比(%)
台数(台) 構成比(%) 台数(台) 構成比(%)
自家用車 746,276 38.2% 779,587 38.6% 4.5%
フリート(注1) 1,163,855 59.6% 1,194,545 59.1% 2.6%
商用車(注2) 42,647 2.2% 46,388 2.3% 8.8%
合計 1,952,778 100.0% 2,020,520 100.0% 3.5%

注1:登録車両数が25台超の企業名義で登録された、商用車などの車両。
注2:登録車両数が25台以下の企業名義で登録された車両。

出所:SMMT

燃料車種別(表2参照)では、BEVが前年比23.9%増の47万3,348台、PHEVが同34.7%増の22万5,143台で、いずれも2024年の伸び率(21.4%増、18.3%増)を上回って大幅に増加した。ハイブリッド車(HEV)は前年比7.2%増の28万185台だった。一方、ガソリン車の新車登録台数は93万7,938台で全燃料車種のうち最大だったが、前年比では8.0%低下した。

表2:燃料車種別の新車登録台数(△はマイナス値)
燃料車種 2024年 2025年 前年比(%)
台数(台) 構成比(%) 台数(台) 構成比(%)
ディーゼル車 123,104 6.3% 103,906 5.1% △15.6%
ガソリン車 1,019,128 52.2% 937,938 46.4% △8.0%
BEV(バッテリー電気自動車) 381,970 19.6% 473,348 23.4% 23.9%
PHEV(プラグインハイブリッド車) 167,178 8.6% 225,143 11.1% 34.7%
HEV(ハイブリッド車) 261,398 13.4% 280,185 13.9% 7.2%
合計 1,952,778 100.0% 2,020,520 100.0% 3.5%

出所:SMMT

新車登録台数上位10車種(表3参照)を見ると、上位3車種は前年と同様、フォード「プーマ」(5万5,488台)、起亜「スポテージ」(4万7,788台)、日産「キャシュカイ」(4万1,141台)だった。また、2025年にモデルチェンジしたステランティス傘下のボクソール「コルサ」(3万5,947台)が、上位10車種圏外から4位に浮上した。BEVの新車登録台数上位10車種(表4参照)を見ると、上位3車種はテスラ「モデルY」(2万4,298台)、テスラ「モデル3」(2万1,188台)、アウディ「Q4 e-トロン」(1万4,433台)だった。

表3:新車登録台数上位10車種
(単位:台)
順位 項目 台数
フォード「プーマ」  55,488
起亜「スポテージ」  47,788
日産「キャシュカイ」  41,141
ボクソール「コルサ」 35,947
日産「ジューク」  34,773
VW「ゴルフ」  32,478
ボルボ「XC40」  30,404
MGモーター「HS」 30,191
VW「ティグアン」  29,857
10  現代「ツーソン」  28,613

出所:SMMT

表4:BEVの新車登録台数上位10車種(単位:台)
順位 項目 台数
テスラ「モデルY」 24,298
テスラ「モデル3」 21,188
アウディ「Q4 e-トロン」 14,433
アウディ「Q6 e-トロン」 13,148
フォード「エクスプローラー」 12,237
BMW「I4」 12,158
シュコダ「エンヤック」 11,940
起亜「EV3」 11,188
シュコダ「エルロック」 10,713
10  ボルボ「EX30」 10,289

出所:SMMT

生産は減少も、最大の輸出先EUのシェアは増加

2025年の自動車生産台数は前年比8.0%減の71万7,371台だった(表5参照)。SMMTは生産台数減少の要因として、サイバー攻撃による英国最大手自動車メーカーの生産停止(2025年9月29日付ビジネス短信参照)、大西洋を横断する貿易への新たな関税(注1)、および脱炭素化に向けた工場の再編が進行中であることを挙げた。内訳を見ると、国内向けは前年比8.2%減の16万1,545台、輸出向けは7.9%減の55万5,826台だった。

表5:英国の自動車生産状況(△はマイナス値)
項目 2024年(台) 2025年(台) 構成比(%) 前年比(%)
国内向 176,019 161,545 22.5% △8.2%
輸出向 603,565 555,826 77.5% △7.9%
合計 779,584 717,371 100.0% △8.0%

出所:SMMT

輸出先上位10カ国・地域(表6参照)については、EUは引き続き最大の輸出先であり、シェアも前年比2.7ポイント増の56.7%だった。前年に続き、2位と3位には米国と中国が続いたが、どちらもシェアは減少した。特に減少幅の大きかった米国は前年比1.9ポイント減の15.0%となり、SMMTは2025年前半の関税の不確実性(注2)が影響したものと分析している。自動車輸出台数における米国向けのシェアは、4月の16.5%から5月に11.3%に減少し、6月には15.9%まで回復した。これは、4月の米国による追加関税開始と、続く5月の米英関税合意が企業の意思決定に影響し、約1カ月後に数字に表れたものとみられる。

表6:輸出先上位10カ国・地域(単位:%)
順位 国・地域名 シェア
1 EU 56.7
2 米国 15.0
3 中国 6.3
4 トルコ 5.3
5 日本 2.9
6 カナダ 1.6
7 オーストラリア 1.5
8 韓国 1.5
9 スイス 0.9
10 アラブ首長国連邦 0.9

出所:SMMT

政策:義務は緩和、需要喚起と生産支援でZEVを推進

英国政府は2025年4月6日、ゼロエミッション車(ZEV)の販売割合義務付け(ZEVマンデート)の緩和を発表した(2025年4月15日付ビジネス短信参照)。キア・スターマー首相は発表同日、「目標は国内メーカーに資するものでなければならない」「重い罰金を支払わせたり、外国のメーカーからクレジットを購入させたりするようなことはしたくない」と述べており、国内メーカーに配慮した姿勢がうかがえる。SMMTは措置の緩和を歓迎しつつ、ZEVの需要を喚起するための大胆なインセンティブを求めた。

こうした声を受け、英国政府は2025年7月15日、ZEVの新車購入に係る補助金の導入を発表した(2025年7月17日付ビジネス短信参照)。同月13日には、ZEVの生産支援に資する国内プロジェクトに対する資金提供を強化する新たなプログラム「DRIVE35」を発表し、ZEVの普及を需要喚起と生産支援の両面から推進している。

2025年のBEVの新車登録台数は前年比23.9%増加し、構成比でも23.4%まで拡大した。しかし、これはZEVマンデートで定められた2025年のZEV販売比率目標である28%を依然下回る。SMMTのマイク・ホーズ会長は2026年3月13日、ZEVマンデートへの対応により生じるコストに関する声明を発表した。会員企業は、ZEVの販売促進のための購入者への割引や、競合他社からのクレジット購入、政府への支払いにより義務を履行しており、持続可能なものではないと述べた。また、ZEV普及の障害として、生産コストの高騰や公共充電料金の上昇、2028年4月から導入が提案されている走行距離課税(eVED、2025年12月2日付ビジネス短信参照)を挙げた。その上で、「2026年中にZEVマンデートの見直しが行われなければ、英国経済にとって不可欠な産業に損害を与え、脱炭素化への野心そのものを損なう危険性がある」として、さらなる規制緩和を求めている。

企業動向:中国ブランド躍進、BEV投資も進展

2025年の新車登録台数では、中国ブランドの躍進が目立った。奇瑞汽車(チェリー)が展開する「Jaecoo(ジャクー)」は、本格的な英国市場への導入が2025年1月に始まり、2万8,232台の販売を達成した。同じくチェリーが展開する「Omoda(オモダ)」は、前年比約5.5倍の1万9,855台と急伸した。また、BYDも約5.9倍の5万1,422台だった。このうち、ジャクーのスポーツ用多目的車(SUV)ジャクー7は、英国の2026年3月の新車登録台数でトップ(1万64台)となった(2026年4月20日付ビジネス短信参照)。なお、ジャクー7はガソリン車、HEV、PHEVの車種を持つが、BEVは展開しておらず、ジャクー公式ウェブサイトの発表によると、2026年3月の販売台数の85%はPHEVが占めるという。2026年4月12日付BBCによると、5年前の新車登録台数に占める中国ブランド車の割合は1.3%だったが、2026年現在では約15%まで増加している。BBCは、中国ブランド車躍進の背景として、英国がEUや米国と異なり、中国からの輸入車に対する関税措置(注3)を課していないことを挙げた。

BEVに関する企業動向としては、日産自動車の英国法人は2025年12月16日、4億5,000万ポンド(約958億5,000万円、1ポンド=約213円)を投資し、イングランド北東部のサンダーランド工場でBEVの3代目「リーフ」の生産を開始したと発表した(2025年12月24日付ビジネス短信参照)。同車種は2026年4月現在、ZEVの新車購入に関する補助金の対象となっている。リーフ向けバッテリーは、中国の再生可能エネルギー開発大手エンビジョングループ傘下のバッテリー企業AESCが、日産サンダーランド工場に隣接して新設したギガファクトリーで生産する。

また、英国政府は2026年4月9日、DRIVE35の一環で、自動車変革基金(ATF)から3億8,000万ポンドをインド財閥大手タタ・グループ傘下のアグラタス(Agratas)に投資すると発表した。同資金は、同社がイングランド南西部サマセット州に建設中のバッテリー製造ギガファクトリーに充てられる(2026年4月20日付ビジネス短信参照)。製造したバッテリーセルは、同じくタタ・グループ傘下の英国自動車大手ジャガー・ランドローバー(JLR)に供給される。

イラン情勢とEU産業加速法案が懸念材料

2026年第1四半期(1~3月)の新車登録台数を用途別(表7参照)に見ると、全車種において前年同期比で増加した。また、燃料車種別(表8参照)に見ると、BEVが前年同期比14.5%増、PHEVが同46.5%増と大幅に増加した。しかし、SMMTは、好調な実績の多くはイラン情勢の悪化が始まる前に受注されたものであると指摘した。同情勢はエネルギー価格などを通じて生活費の上昇を招き、消費意欲を弱める恐れがあるとして、自動車への支出が減退する可能性を示唆した。

表7:用途別の新車登録台数(2026年第1四半期)
車種 2025年第1四半期 2026年第1四半期 前年同期比
(%)
台数(台) 構成比(%) 台数(台) 構成比(%)
自家用車 227,586 39.2% 250,094 40.7% 9.9%
フリート 341,157 58.8% 350,632 57.0% 2.8%
商用車 11,759 2.0% 14,128 2.3% 20.1%
合計 580,502 100.0% 614,854 100.0% 5.9%

出所:SMMT

表8:燃料車種別の新車登録台数(2026年第1四半期)(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料車種 2025年第1四半期 2026年第1四半期 前年同期比
(%)
台数(台) 構成比(%) 台数(台) 構成比(%)
ディーゼル車 33,833 5.8% 30,513 5.0% △9.8%
ガソリン車 286,787 49.4% 276,689 45.0% △3.5%
BEV
(バッテリー電気自動車)
120,191 20.7% 137,614 22.4% 14.5%
PHEV(プラグインハイブリッド車) 53,686 9.2% 78,666 12.8% 46.5%
HEV(ハイブリッド車) 86,005 14.8% 91,372 14.9% 6.2%
合計 580,502 100.0% 614,854 100.0% 5.9%

出所:SMMT

2026年第1四半期(1~3月)の自動車生産台数(表9参照)は、国内向けが前年同期比1.1%増加したが、輸出向けが8.8%減少し、全体では6.7%の減少となった。SMMTは、今後の生産台数を減少させ得る要因として、中東情勢に起因する生産コストの増加や需要鈍化の可能性に加え、EU離脱後のEU・英国間の通商協力協定(TCA)における原産地規則の緩和措置終了(注4)、およびEUの産業加速法案(IAA)(注5)の影響を指摘した。SMMTは、TCAの原産地規則の緩和措置終了について、「政府に対し現実的な解決策の検討を求めているほか、今後のEU・英国首脳会談において自動車関連の問題を議題に盛り込み、双方の利益となるよう貿易関係を改善するよう働きかけている」とした。また、IAAについては、「英国製の車両、部品、バッテリーに対し、関連する全ての規定において(EU原産と)同等の待遇を認めることは、雇用、サプライチェーンのレジリエンス、産業の変革、脱炭素化を支え、消費者の選択肢と手頃な価格を確保し、長年にわたり築かれてきた相互に有益な貿易関係を保護することにつながる」として、早急な修正を求めている。IAAは、推進派のフランスなどと、慎重派のドイツやイタリアなどを中心に意見が分かれ、3度の延期を経て2026年3月に発表された。発表後も、ドイツ自動車工業会(VDA)が「企業の生産コストを増加させ、競争力を低下させる可能性がある」と指摘する(2026年3月19日付ビジネス短信参照)など、EU内でも足並みがそろっていない。EUは英国にとって自動車輸出台数の56.7%を占める最大の市場であり、今後の動向が注目される。こうした複合的な外部要因を踏まえると、英国自動車市場はBEVへの政策支援が支えとなる一方、貿易政策とコスト環境への依存度が一段と高まっているといえる。

表9:英国の自動車生産状況(2026年第1四半期)(△はマイナス値)
項目 2025年
第1四半期(台)
2026年
第1四半期(台)
構成比(%) 前年同期比
(%)
国内向 46,523 47,041 23.4% 1.1%
輸出向 168,713 153,848 76.6% △8.8%
合計 215,236 200,889 100.0% △6.7%

出所:SMMT


注1:
米国による追加関税を指す。 本文に戻る
注2:
英国政府は2025年5月8日に米国との貿易協定合意を発表。英国から米国への自動車の輸出について、4月に全貿易相手国に課すとしていた25%よりも低い10%の低関税を、年間10万台を対象に適用するとした(2025年5月9日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
注3:
EUは中国製BEVに対し、相殺関税措置による追加関税を課している(2024年12月19日付地域・分析レポート参照)。米国は中国からの輸入車両に対し、自動車・同部品を対象とする1962年通商拡大法232条および1974年通商法301条に基づき高関税を課している(2026年3月19日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
注4:
EU英国TCAでは、関税の免除を受けるにあたり、許容される非原産の部品・材料の割合の上限を設けている。ただし、HV、PHEV、BEVおよびこれらの車種向けの蓄電池、電池セル、電池モジュールについては、当該上限に関し2026年末まで緩和措置が適用される。詳細は調査レポート「移行期間終了後の英国ビジネス関連制度(2021年3月)」の「主な品目の原産地規則(P40~)」を参照のこと。 本文に戻る
注5:
IAAでは、EUの社用車向けゼロ排出・低排出車(ZLEV)への財政支援は「EU原産のみ」に限るとしている。IAAの詳細は、2026年3月13日付ビジネス短信「欧州委、産業加速法案を発表、EV補助は「EU原産」限定で製造業価値を強化」を参照のこと。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
齊藤 圭(さいとう けい)
2015年、東北電力入社。2025年4月からジェトロに出向し、調査部欧州課勤務を経て、2026年4月から現職。