欧州委、産業加速法案を発表、EV補助は「EU原産」限定で製造業価値を強化

(EU)

ブリュッセル発

2026年03月13日

欧州委員会は3月4日、気候中立に向けた脱炭素の促進と、エネルギー集約産業、ネットゼロ技術、電気自動車(EV、注1)のEU域内での製造の強化を両立し、域内産業の競争力、強靭(きょうじん)性の強化を目的とした産業加速法案(Industrial Accelerator Act、IAA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提案した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。許認可手続きの迅速化に加え、低炭素製品の需要喚起策として、公共調達や財政支援に「域内産(Made in EU)」および/または「低炭素」の一定比率要件(注2)を提案した。対象は、鋼材、コンクリート、アルミニウム、ネットゼロ技術(注3)、EVで、特にEVに関してはEU原産を後押しする案となった。

相互主義に基づき、公共調達にかかる「域内産」要件においては、EUと自由貿易協定(FTA)や関税同盟、WTOの政府調達協定を締結する国の産品は、「域内産」と同等とみなされる。「低炭素」の一定比率要件は付属書IIPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に記載されており、建設製品は建設資材規則(2023年12月28日記事参照)、その他はエコデザイン規則(2025年4月24日記事参照)で発表の委任規則で定められる要件に適合する場合、低炭素製品とみなされる。なお、需要喚起策として注目されていた「炭素強度(CI)ラベル」は、エコデザイン規則の委任法に含まれていない産業製品に対し、別途、委任規則を定めることが可能との案にとどまった。

財政支援にかかる「域内産」要件においては、原則、自由貿易協定などの締結国の産品は「域内産」と同等とみなされる。一方で、社用車向けゼロ排出・低排出車(ZLEV)への財政支援は「EU原産のみ」に限るとした。欧州委が2025年12月16日に自動車産業支援パッケージ(2025年12月25日記事参照)の一環として発表した、社用車のグリーン化に係る規則案の「域内産」要件を定義するかたちとなった。また、同時期に発表した域内産小型EVへの「スーパークレジット」の付与に関しても、「EU原産のみ」に限定した。IAAにより、EUのGDPに占める製造業付加価値比率を2024年の14.3%から2035年までに20%に戻す目標を掲げており、社用車の電化を通じたEVのEU域内生産の強化を重点策とする内容となった。

また、外国投資に求められる貢献として、バッテリー技術、EV(電動化・デジタル化関連部品を含む)、太陽光発電技術、重要原材料の採掘・加工・リサイクルにおける世界製造能力の40%以上を保有する国の企業による1億ユーロを超える外国投資には一定の条件を課す提案がなされた。次の条件のうち4つ以上が求められる。(1)出資・支配権の持ち分49%以内、(2)合弁会社の場合の持ち分49%以下、(3)知的財産・ノウハウのライセンス供与義務、(4)研究開発投資義務(年間売上高の1%以上)、(5)雇用要件(従業員の50%以上はEUの労働者)、(6)EUバリューチェーン強化戦略の作成・公開。なお、自由貿易協定などの締結国による投資、サービス提供目的、ポートフォリオ投資には同条件は該当しない。

そのほか、加盟国による「産業製造加速地域」の指定を通じた支援策や、電解槽の製造、原子力(小型モジュール炉を含む)の建設支援も含まれた。クリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)の一環として、当初は産業脱炭素化促進法案として発表され、推進派のフランスなどと、慎重派のドイツやイタリアなどを中心に意見が分かれ、3度の延期を経て発表された。今後、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)で審議される。

(注1)付属書IIIに記載のEVは、プラグインハイブリッド車(PHEV)、外部充電式ハイブリッド車(OVC-HEV)、燃料電池自動車(FCV)。

(注2)エネルギー集約産業のうち、鋼材は「低炭素」要件のみ、コンクリート・モルタル、アルミニウムは「域内産」および「低炭素」要件。今後、委任規則により、化学産業由来の製品が追加される可能性がある。ネットゼロ技術は「域内産」要件のみ。

(注3)ネットゼロ技術は、ネットゼロ産業法(2025年5月29日記事参照)の改正がIAAの中で提案されており、公共調達の対象は(a)バッテリー貯蔵システム(BESS)、(b)太陽光技術、(c)水配管式ヒートポンプ、(d)陸上・洋上風力、(e)原子力(核分裂)エネルギー技術。入札は(a)、(b)、(d)および水素、財政支援は(a)、(b)、(c)が対象。

(薮中愛子)

(EU)

ビジネス短信 68c1f36efb22274c