ジャガー・ランドローバー、サイバー攻撃で生産停止1カ月に

(英国)

ロンドン発

2025年09月29日

英国の自動車大手ジャガー・ランドローバー(JLR)は、サイバー攻撃を受け、システムを停止した結果、小売り・生産活動に深刻な混乱が生じていると9月2日に公表した。その後も影響は長引き、国内工場の生産停止を10月1日まで延長すると9月23日に発表した。段階的な操業再開に向けたタイムライン策定と調査の継続を進めている。

JLRは9月10日、「一部のデータが影響を受けた可能性があり、関連する当局に報告した」と明らかにした。データに影響が及んだことが確認された場合は、関係者へ直接通知する方針だ。

英国政府機関も対応に乗り出している。国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は9月5日、「JLRと連携し、インシデント対応を支援している」と発表。さらに、9月19日にはビジネス・通商省(DBT)と英国自動車製造者販売者協会(SMMT)が共同声明を発表し、「今回のサイバー攻撃は、JLRおよび自動車サプライチェーン全体に重大な影響を及ぼしている」と指摘した。9月23日には、ピーター・カイルDBT相がイングランド中部・ゲイドンのJLR本社を訪問し、サイバーインシデントの影響や生産再開の方法について同社と協議。早期の再稼働を支援する姿勢を示している。カイルDBT相はその後、JLRのサプライヤーの1社で、カールーフ製造などを手掛ける、ドイツに本社があるベバスト(Webasto)の工場を視察した。政府は関係する企業、労働組合、業界団体、地方自治体とインシデントの影響について協議を重ね、支援を表明している。

現地メディアによれば、JLRはサプライチェーン全体で約20万人の雇用を支えている。JLRの生産停止による影響を受け、経営難に陥ったサプライヤーに対する支援策の在り方について、政府は検討を進めている(2025年9月25日付「フィナンシャル・タイムズ」)。

(森詩織)

(英国)

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