大阪・関西万博から世界へ、サステナビリティの社会実装海外パビリオン発の脱炭素
大阪・関西万博に見るグリーン技術(2)
2025年8月29日
かわいいマスコットとドイツの循環経済を学ぶ
連日、長い行列を作る海外パビリオンも多い。ドイツパビリオンもその1つだ。ドイツパビリオンは、「わ!ドイツ」と銘打ち、「循環経済」を来場者にわかりやすく伝える展示に力を入れる。「わ!」には循環の「輪」、調和の「和」、驚きの「わ!」の3つの意味が込められている。パビリオン内では、自然との共生、循環型の暮らし、循環経済に関する製品や技術、政府機関や自治体の取り組みをさまざまな方法で知ることができる。
入り口では、日本の「カワイイ文化」にヒントを得た、マスコット「サーキュラー」をかたどった音声ガイドが手渡される。写真の来場者が持っている、赤や緑に光っているのがサーキュラー型ガイドだ。パビリオンの至るところに、タッチポイントが用意されており、それに来場者がガイドを接触させると、その展示に関する解説を聞くことができる。
循環経済のホールでは、モビリティー、ヘルスケア、食品、ライフスタイルなどの分野で循環経済に貢献するドイツ企業の取り組みを、デジタルパネルを使って来場者に伝えている。

ドイツのファッションブランドが開発した、循環型ファブリックを用いた展示も興味深い。端材を再利用した生地、犬の抜け毛を使った生地、キノコで作ったレザー生地などユニークな生地もある。
ゆっくりと回転する床に配置されたソファに寝転び、循環経済に向けたメッセージ映像を鑑賞できるホールもある。映像では、循環型社会を実現するために何ができるかを問いかける。ドイツが目指す循環経済の未来を、細部まで作りこまれた展示で楽しみ、五感で感じることができるのが魅力だ。
凧で発電!?イタリアの再エネ企業の挑戦
イタリアパビリオンは、日本で初公開となる古代ローマ時代の彫刻「ファルネーゼのアトラス」、ミケランジェロの彫刻やバチカン美術館所蔵の絵画など、著名な芸術作品を間近で見ることができ、人気を博す。古代の美術品だけでなく、イタリア企業による現代のさまざまな製品・技術の展示もあり、展示を通じてイタリアの歴史をたどることができる。
6月3日から4日間、とあるイタリア企業がパビリオン内で特別展示を行った。再生可能エネルギー関連スタートアップのカイトエナジー(Kitenergy)だ。2010年設立の同社は、風力発電と太陽光発電の高機能技術を開発する。小中規模程度のコミュニティに向け、低コストでクリーンな電力を供給することを目的としている
同社開発中の主力製品は、凧(たこ)を使った風力発電装置「K100」だ。60平方メートルの大きさの凧を200~400メートル上空で飛ばし、凧が空を舞う動力で地上の発電機を回す。100キロワットの出力が可能で、風車型の風力発電とは違い可動式で、最適な場所に移動させて発電できる。送電網と切り離されたオフグリッド地域での普及を目指す。2026年までにイタリアやチリでの最終的なフィールドテストを経て、2027年に商用化の予定だ。

万博で初披露の新製品が、2023年に国連などと共同開発した「ザ・サン・イン・ア・ボックス」と名付けたコンテナ型可動式太陽光発電装置だ。20フィートコンテナに太陽電池パネル40枚とバッテリーが収納され、設置から1時間半で発電が可能になる。出力は17キロワット。災害時に設置される、避難所などでの電力供給を想定して設計されている。試作品を経て市場投入の準備はできており、オフグリッド地域が多いアジア展開を目指す。ブルーノ・フリゲーロ社長は、「我が社が重視するのはサステナビリティ。安価なメンテナンスコストで長く使えることが強み」と強調する。斬新な発想で、電力アクセスから誰も取り残さない社会の実現に向け、開発は続く。
- 注1:
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外務省「大阪・関西万博に参加表明のあった国・地域・国 際機関
」(2025年2月13日付)。
- 注2:
- ドイツパビリオンプレスキットおよび見学内容、Kitenergyへのインタビューに基づく(取材実施日:2025年6月6日)。
大阪・関西万博に見るグリーン技術
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- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部国際経済課 課長代理
田中 麻理(たなか まり) - 2010年、ジェトロ入構。海外市場開拓部海外市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)、海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ・クアラルンプール事務所を経て、2021年10月から現職。