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特集:RCEPへの期待と展望 -各国有識者に聞く豪中関係悪化の中、新たなビジネスチャンスに期待(オーストラリア)
マニュエル・パナジオトプロス氏:豪日経済インテリジェンス代表

2021年2月12日

オーストラリア(豪州)のマニュエル・パナジオトプロス氏は、日豪経済関係に特化したシンクタンク「豪日経済インテリジェンス」の代表として、日豪双方の政府・企業を対象とした情報提供・交流機会の創出や、経済情勢の調査分析などを行っている。長年にわたって日豪間の経済交流に携わってきた同氏から、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に対する期待や展望について話を聞いた(インタビュー日:2021年2月4日)。


マニュエル・パナジオトプロス氏(同氏提供)
質問
オーストラリアや関係地域にとってRCEPはどのような意義があると考えるか。経済的効果や地政学的な観点から、大局的な見方を聞きたい。
答え:
世界が経済危機に直面する中、RCEPはより自由な貿易や投資へのモメンタムを維持することに貢献する。オーストラリアが日本と緊密に連携して復活を支援した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)のように、RCEP協定は、アジア太平洋地域が新たな経済統合や経済的機会の推進力であることを示している。
RCEP協定には、その付加価値を高める特徴が3つある。1点目は、日本や中国、韓国を含む初めての協定であること。2点目は、締結国の中で高所得国と低所得国が混在しながら、単一通貨を持つことなく、地域のバリューチェーンの発展を下支えする。3点目として、原産地規則の標準化や既存の貿易協定の統合、非関税障壁の削減によって、新たなバリューチェーンの中心としてASEANの魅力が一層高まることが挙げられる。
オーストラリア企業にとっても、RCEP協定によってもたらされるルールの調和や非関税障壁の削減、知的財産権の保護によって、リスクの大幅な低減につながるだろう。RCEPはまた、閣僚会合や合同委員会の定期的な開催を通じて、中国や日本、オーストラリア、韓国などの間の地政学的緊張に対処するメカニズムを提供するだろう。
質問
オーストラリア政府や企業はRCEPに何を期待しているか。物品貿易の自由化(市場アクセス)をはじめ、知的財産、電子商取引のルールなどの視点から、具体的な企業活動、産業・ビジネスへの裨益(ひえき)という点から聞きたい。
答え:
オーストラリアは、ASEANとオーストラリア、ニュージーランドによる多国間協定(AANZFTA)や、RCEP参加国との2国間FTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)を既に有している。そのため、RCEP協定によって新たな市場が開拓されるわけではないが、前述のルール整備によって、地域内でのビジネスや投資がより魅力的なものとなる。さらに、オーストラリア企業はデジタル貿易や教育、ヘルスケア、エンジニアリング、専門サービス、政府調達などのサービス分野で新たな機会を見つけることができるだろう。
質問
RCEP協定は中国主導で署名に至ったとの報道なども見受けられる。中国が主導したという見方についてはどう考えるか。ASEAN、日本、豪州などの交渉スタンスはどう見えていたか。
答え:
私の理解では、RCEP協定は、既存のFTAの調和を目指したASEANによって開始された協定であり、中国だけでなく、重心は幾つか存在している。メンバー国の勢力バランスは、名目GDPの数値によって表されるものではない。中国とASEANにとって、オーストラリアと日本は、市場の需給バランス確保の観点から、また、先進国としての観点からも、非常に重要で補完的な役割を果たしている。
質問
インドは最終的にRCEPから離脱することになったが、インドに対しては門戸が引き続き開かれたかたちとなった。インド離脱の影響、インド復帰に対する期待や見方について教えてほしい。
答え:
インドの不在は残念だ。インドは、その経済規模や経済成長の可能性に加えて、中国との地政学的バランスの観点からも、参加が必要な国であり、日本やオーストラリアはインドが加盟することを望んでいただろう。インド国内の問題に加え、中国との間の政治的緊張が高まっている今、インド復帰に対する見通しはますます不確実なものとなっている。一方で、アジア太平洋地域における経済成長を希求するインドにとって、RCEP不参加の状態は機会費用の拡大につながることとなる。さらに、英国のCPTTP参加申請は、米国の再参加のインセンティブを生み出すことと同様に、インドに対してもRCEP復帰へのプレッシャーを与えるだろう。
質問
オーストラリアでのRCEP協定発効に向けた批准の見通しをどうみているか。国内の論調や世論、産業界の声などはどうか。
答え:
本当の意味での反対意見なしに、オーストラリアが批准することを期待している。オーストラリアの産業界やメディアは、RCEP協定におおむね好意的な反応を示している。中国との関係で困難に直面する中、この大規模な多国間協定はASEAN地域で活動するオーストラリアの輸出業者や投資家に恩恵をもたらすだろう。加えて、この地域でビジネスを拡大する日本や韓国などその他の主要な貿易相手国とオーストラリアとの間で、多くの新しい機会をもたらすことを期待している。
略歴
マニュエル・パナジオトプロス(Manuel Panagiotopoulos)氏
豪日経済インテリジェンス代表。ニューサウスウェールズ大学でMBAを取得後、在シドニー日本総領事館上級研究員などを経て、1998年に豪日経済インテリジェンスを設立。日本企業と豪州企業の間の連絡・調整、両者に対する日豪経済情報の提供、経済関連の各種セミナー開催を積極的に行い、日豪間の経済交流の拡大に貢献。2020年秋の外国人叙勲受章。
執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所
住 裕美(すみ ひろみ)
2006年経済産業省入省。2019年よりジェトロ・シドニー事務所勤務(出向) 。

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