特集:アフリカ・スタートアップ:有望アグリテックに聞く安価なドローンサービスで農業成長を目指す(ナイジェリア)

2019年11月5日

産油国としてのイメージが強いナイジェリアだが、国内の産業別GDP構成比で最も大きいのは25.1%の農業だ。一方で、コメや鶏肉の国内生産は需要の半分に満たないと言われており、生産性の低さや輸送インフラの欠如など課題も浮き彫りになっている。2017年にラゴスで設立されたビートドローン(Beat Drone)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、農薬散布や生育状況の解析などにドローンを活用し、生産性向上を図るサービスを提供するのみならず、パイロットの育成やドローンの現地生産・販売も視野に入れる。共同創業者のコンフィデンス・オディオニェ氏とオラインカ・アキンタデ=オジョモ氏に話を聞いた(10月21日)。


共同創業者の2人(左:オラインカ氏、右:コンフィデンス氏)(ジェトロ撮影)
質問:
会社の概要は。
答え:
2017年に2人で設立し、ドローンとソフトウエアを活用して解析サービスを始めた。石油・ガス、インフラ、農業の3つのフィールドでサービスを展開している。石油・ガス分野では、プラントやパイプラインなど、常に監視が必要だが人が立ち入ることが難しいところにドローンの需要がある。インフラも同様の理由で、建設現場や鉱山などに活用されているほか、道路の写真を撮影し、修復が必要な箇所を特定する際に当社のドローンを提供している。現在最も力を入れているのが農業で、農薬散布や農地の状況把握と解析のサービスを行っている。6人の正社員と、12人のパイロットが非常勤として働いている。
質問:
なぜ農業に力を入れているのか。
答え:
ナイジェリアにおいて、農業が最重要かつ最有望な産業だからだ。ナイジェリアが成長するためには農業生産を増やし、自国民を養っていかなければならない。国内の農地の生産性は、理想の半分にも満たない。特に非効率な肥料・農薬散布や、生育状況に合わせた対応ができていないことが大きな原因だと分かってきた。そこで、ドローンを活用して、効率的かつ安価な肥料・農薬散布と、効果的な生育状況の把握と分析を可能にするサービスを始めた。1ヘクタール当たりのコストを、農薬散布は10~15ドル、農地状況把握は3ドルと、ナイジェリアの農家でも十分に手頃な価格を実現している。例えば、人力で農薬を散布すると、1ヘクタール当たり複数人を雇わなければならず、しかも短時間では終わらない。彼らに10ドルずつ払うことを考えれば、十分に安価と言える。
ナイジェリアの有力な農業スタートアップであるファームクラウディ―や大手農業企業と提携し、今までに8,500の農家、8万エーカー(約3万2,376ヘクタール)に対してサービスを提供している。

ドローンによる農薬散布(ビートドローン提供)
質問:
課題と今後の展望は。
答え:
農業全般における、知識とスキルの欠如だと思う。それは、ドローンを活用するに当たっても同様だ。なによりも先に、ドローンを操縦できるパイロットの養成が喫緊の課題だと考える。状況を打開するために、「ビートドローン・アカデミー」の設立準備を進めている。国内各地の大学と提携し、各大学にドローン用のクラスをつくってもらう。我々は、そこにドローンと講師(ビートドローンの社員)を派遣して、パイロットを養成する。既にイバダン大学(オヨ州、ナイジェリア最古の大学)とは、アカデミー設立の協力覚書(MoU)を結んでおり、鋭意、準備中だ。
さらに、ドローンの国内組み立てと販売を実現したいと考えている。ナイジェリアで使われているドローンは、中国から輸入されたものがほとんどだ。より安価で信頼できる製品を現地生産して、ドローンをより身近かつ安心なものにするのが目標だ。
質問:
日本企業との連携の可能性は。
答え:
既に、日本企業とは何社も面談している。投資も大歓迎だが、関心があるのは画像解析などのソフトウエア分野だ。日本の高い技術を取り入れて、サービスの質を高めたいと考えており、具体的な議論をしている日本企業もある。近い将来に、日本企業との連携事例や、出資事例をつくることができればとてもうれしい。
執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
山村 千晴(やまむら ちはる)
2013年、ジェトロ入構。東京本部で勤務後、2015年2月よりジェトロ岡山にて地元中小企業の輸出支援を中心に担当し、2017年4月より現職。主にナイジェリア、ガーナでの日系企業ビジネス支援に従事している。