特集:アフリカ・スタートアップ:有望アグリテックに聞くドローン技術を駆使した精密農業を展開(コートジボワール)

2019年9月25日

コートジボワールは、カカオやカシューナッツの生産量で世界最大規模を誇る農業大国だ。近年ではドローンなどの最新技術を駆使して、農作業の効率化を図るためのサービスを提供するスタートアップが増えている。インベスティブ(Investiv)もその1つだ。同社代表のアブバカール・カリム氏に、事業概要や今後の展望を聞いた。(8月5日)

質問:
会社概要は。
答え:
2017年設立の精密農業のサービスに特化した企業だ。ドローンを駆使して、農作業の効率化を図り、生産性と収入向上に向けた技術的なソリューションを提供している。正社員はコンピュータエンジニアや農業エンジニアを含む12人。顧客は公社、個人の農家、農産品加工企業、種苗・肥料取扱企業、農業分野のNGOなどで、現在の顧客・団体数は約60に上る。2018年までの売り上げは1億600万CFAフラン(1,910万円、1CFAフラン=約0.18円)。
質問:
現在展開しているサービスは。
答え:
コートジボワールは農業大国だが、その生産性は低く、課題も山積している。そのため、次の4つの分野に焦点を当ててサービスを提供している。
  1. 土地環境の精査と農業区画の測定
    農業プロジェクトの実施では、農地の環境とその区画の境界を正確に把握し、土地開発計画を設計することが重要だ。ドローンを農業区画予定地の上空に飛ばし、一定の間隔で高解像度の画像を撮影、それらを地図作成ソフトウエアに取り込んでデータ処理を行う。
  2. 植物検疫診断サービス。
    コートジボワールをはじめ西アフリカ諸国の農業損失の50%は、植物の病害に起因すると言われている。生産効率を最適化するため、当社では病害に効果的に対処するアプリケーションを搭載したドローンを設計し、植物検疫診断サービスを実施している。具体的には、マルチスペクトルセンサーを搭載したドローンを活用し、対象区画内で病害が発生しているエリア、肥沃(ひよく)度の低いエリア、水分の少ないエリアなどを迅速に識別する。
  3. ドローンによる肥料の噴霧。
    検疫を実施した農地に、作物の育成に不可欠な栄養素を的確に与える。10〜20リットルの肥料を積載可能なドローンを備えており、10分足らずで2ヘクタールの農地に噴霧できる。
  4. 生育環境を可視化したプラットフォームの提供。
    顧客は、ドローンによって収集した農地区画のデータを専用のオンラインプラットフォームにアクセスして閲覧することができる。このプラットフォームでは、生育環境の変遷や作物の成長度合いを確認することも可能だ。また、顧客の要望に応じて、農地のマネジメントや生産効率向上のためのアドバイスも実施している。
質問:
ドローンは自社で開発か。
答え:
ドローンの機材は中国から輸入している。組み立てや、センサーとアプリケーションソフトウエアの搭載は、当地の農地環境に適切かつ効率的に適応させるため、自社で行っている。また、当社はWeRobotics(ドローンをはじめとするロボットエキスパートのグローバルネットワーク)のメンバーでもある。私自身はカナダの大学でドローン関連機器の開発や操縦技術を学んだ。

代表のアブバカール・カリム氏(ジェトロ撮影)
質問:
関係機関との連携やこれまでのピッチコンテストなどでの受賞歴は。
答え:
これまでに完了したものも含め、30のプロジェクトを実施している。当社の顧客には、コートジボワールの主要農産品を管理する政府機関や、それらの加工流通企業も含まれる。特に、稲作では米穀産業開発機関(ADERIZ)と連携し、主要作物関連では綿花、カシューナッツ、パームオイル取扱企業と提携してサービスを展開している。2018年には肥料や農薬などの農業資材の輸入と流通に特化したコートジボワール企業A2Pから、40万 ドルの資金調達を実施した。また、A2Pとはこの資金調達を通じて会社資本を統合、これにより国内の農業生産の広い分野でサービスを展開することも可能になった。
当社は、ナイジェリアの財団「トニー・エルメル」賞(2017年)、アフリカ開発銀行による「農業分野における革新的プロモーター」賞(2018年)、「スタートアップ・ポリテクニーク・パリ」コンテスト3位(2019年)などの受賞歴がある。これらのコンテストの賞金で、約6万ドルの資金調達にも成功している。
質問:
日本企業との連携の可能性は。
答え:
日本企業を含め、アグリテック分野の海外企業との連携に関心がある。当社が現在有している技術の高度化、サービスの多角化に資する企業とパートナーシップを結びたい。資金調達も課題だ。ドローン関連機器の輸入は免税されない。さらに、ドローンの使用には国立民間航空局の許可が必要で、飛行許可料は300万CFAフランと非常に高く、許可の更新にも150万CFAフランが課される。継続的な事業実施のために、引き続き資金調達のためのパートナー企業や機関も探している。
質問:
今後の事業展開の見通しは。
答え:
既存ビジネスの拡大も視野に入れながら、アグリテック分野の大企業とのアプリケーション開発のパートナーシップを検討している。まずは国内での展開を強化し、長期的計画では西アフリカ各国(セネガル、マリ、ブルキナファソ)への進出を目指している。
企業ウェブサイト:https://www.investivgroup.com/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
執筆者紹介
ジェトロ・アビジャン事務所
尾山 裕緒(おやま ひろお)
2012年、ジェトロ入構。途上国貿易開発部途上国貿易開発課、ジェトロ山梨、対日投資部対日投資課を経て、2019年3月から現職。