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特集:アフリカ・スタートアップ:有望アグリテックに聞く食品廃棄物を餌に幼虫から高品質飼料を生産(チュニジア)

2019年9月25日

チュニジアのネクスト・プロテイン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (NextProtein)は、有機食品廃棄物を餌に繁殖させたアブの幼虫から、飼料・肥料を生産するアグリテック・スタートアップだ。持続可能な食料生産を目的に、自社で研究と品種改良を重ねて最良の品種を開発した。科学技術に裏打ちされた欧州規格の品質を誇り、有機であることやチュニジアで生産しているため、価格競争力がある点で優位性を持つ。共同創業者のモハメド・ガストリ氏とサイリーン・シャラーラ氏に、起業の経緯や事業内容について話を聞いた(8月27日)。


ネクスト・プロテイン(NextProtein)社長兼創業者の
モハメド・ガストリ氏(左)とサイリーン・シャラーラ氏
(ジェトロ撮影)
質問:
ネクスト・プロテイン設立の経緯は。
答え:
生物・化学部門のエンジニアである私と妻のサイリーン・シャラーラとで設立。2014年、妻が国連食糧農業機関(FAO)のバッタの異常繁殖による食糧危機問題対策ミッションでマダガスカルに在住時に、昆虫を害虫として捉えるのではなく、タンパク質源として利用することを発想した。雑食の「アメリカミズアブ」(ハエの一種)の幼虫を選択し、バイオ廃棄物を食料として工業的に飼育し、乾燥タンパク質パウダーと油を抽出、魚介類養殖の飼料として製品化する。
アブの飼料に使うバイオ廃棄物は欧州では資源価値が高く高値で販売されているため、フランスで生産するとコストがかかることも起業の一因だ。また、幼虫飼育には気温の比較的高い地域が最適(25℃以上)であることから、出身国であるチュニジアでの生産を決定した。両親の家のガレージで飼育を始め、少しずつ規模を拡大してきた。資金調達が必要となり、まず、パリ南郊にあるインキュベーター「IncubAlliance」に入居した。EUの環境関連スタートアップ支援プログラム「EIT Climate-KIC」から3年間で計9万ユーロの融資を獲得した。そのほか、イル・ド・フランス県の助成金8万ユーロ(無利子)、チュニジアの起業ネットワーク「Réseaux Entreprendre」から1万ユーロの融資(無利子で8年返済)を受けて、研究開発(R&D)を進めた。
質問:
起業形態とそれを選んだメリットは。
答え:
ネクスト・プロテインはフランス企業として2015年に設立した。純粋なチュニジア企業として資金調達するのは非常に困難な現実があるからだ。また、当初からチュニジア国内市場をターゲットとせず、グローバル市場への展開を目指していたことも、フランスで登記した理由だ。その後、2016年に生産拠点としてチュニジアに、99%フランス資本のオフショア法人(100%輸出向け)の子会社を首都チュニスの南方40キロ地点に設立した。既に200万ユーロ近い投資を行っている。
チュニジアでは、エンジニアや作業員を含め20人を雇うなど雇用創出に努めている。この分野での競合企業はフランス、南アフリカ共和国、カナダなどに存在するが、チュニジア通貨ディナール安を受け、チュニジアでの経費はフランスの3分の1で済む。海外で立ち上げたスタートアップが外貨による投資を受け、チュニジアに投資する利点は非常に大きい。生産拠点は3,000平方メートルの敷地に設立した。生産に必要な養殖機器と製品加工機器は海外から輸入している。幼虫の飼育期間は8~10日間で、餌にはスーパーなどで売れ残りの有機食品やレストラン・ホテル・学校給食の残飯などの食品廃棄物を回収し利用する。その後、殺菌、圧縮、乾燥といったプロセスを経て、幼虫から乾燥タンパク質粉(65%)と油の2製品を製造。動物用飼料で欧州ではペット用飼料、1年前からは魚介類の養殖飼料として許可されている。さらに、飼育の際に排出される幼虫の排せつ物を利用した天然肥料も製品化しており、環境に優しい農業を支援する。
図:ネクスト・プロテインの生産サイクル
有機食品や廃棄物を餌にアメリカミズアブの幼虫を繁殖させる。 その後、殺菌、圧縮、乾燥等のプロセスを経て、製品(1)乾燥タンパク質粉(ネクストプロテイン(養殖用飼料))と製品(2)油(ネクストオイル(動物用飼料))の2製品を製造。また飼育の際の幼虫の排泄物を利用して製品(3)ネクストグロー(農業用飼料)も生産される。

出所:ジェトロ作成。写真は同社提供

質問:
資金調達はどのように進めたか。それを裏付けした貴社の強みは。
答え:
設立から現在までで計200万ユーロの資金調達に成功した。60%が個人投資、30%がフランス公共投資銀行(BPI France)からの貸し付けだ。これまで300人ほどの投資家に会って、その中から10人の投資家を見つけた。エンジェル投資家を納得させたわれわれの強みは3つある。まず、環境に配慮しながら世界の食料確保を助けるというコンセプトがあったこと。次に、アメリカミズアブの幼虫を効率よく大量に飼育するための、バイオテクノロジーの知識・技術に裏打ちされた欧州規格の付加価値の高い製品を開発したこと。そして、自社で品種改良を重ねて最良の始種を開発したことだ。生産プロセスで化学物質は一切使用しておらず、水も食品廃棄物から出る水の再利用によりほとんど必要としない。
質問:
ビジネス展開のビジョンは。
答え:
現在、商品化の最終段階にある。EUの衛生許可・品質証明などの手続き行っており、2019年内に商品化を予定している。まずは欧州市場から始める。欧州規格のハイクオリティーな製品を作ることで世界市場を狙う考えだ。養殖業が一番盛んなのはアジア、次いで地中海諸国。アフリカではエジプトのティラピア養殖、北アフリカのタイ、スズキの養殖など、マーケットは広い。われわれのビジョンは食品廃棄物が入手でき、温暖な土地で現地生産すること。これによって現地での雇用創出も期待できる。
質問:
日本企業との連携への期待は。
答え:
マーケットとしては、日本のペット市場が非常に魅力的だ。また、日本では室内縦型栽培の管理システムが発達していることから、この分野に強い企業との技術提携に関心がある。同業他社との協業の可能性も今後探っていきたい。
執筆者紹介
ジェトロ ・パリ事務所
渡辺レスパード智子(わたなべ・レスパード・ともこ)
ジェトロ・パリ事務所に2000年から勤務。アフリカデスク調査担当としてフランス及びフランス語圏アフリカ・マグレブ諸国に関する各種調査・情報発信を行う。

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