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特集:アフリカ・スタートアップ:有望アグリテックに聞く水産養殖業向けの計測装置・管理アプリを開発(エジプト)

2019年10月16日

エジプトでは約1万人の水産養殖業者がいるとされ、多くは伝統的な方法で養殖を営んでいる。人口増加が進む中東・アフリカ地域では、タンパク源となる魚の需要増加が見込まれる中、カイロに本社を置くコナティブ・ラブズ(Conative Labs) は、養殖業の生産性向上のため、情報通信技術(ICT)を活用した計測装置と観測・管理アプリである「Nile bot」を開発した。同社のアハメッド・ハーリッドCEO(最高経営責任者)に話を聞いた(9月25日)。


アハメッド・ハーリッドCEO(ジェトロ撮影)
質問:
会社の概要は。
答え:
2017年にカイロで設立し、スズキやエビなどの水産養殖向けに、ICTを用いて総合的に生産管理するNile botを開発し、販売している。エジプトでは主に、ティラピア、スズキ、エビなどの養殖業者が約1万おり、検査機材などを使わない伝統的な手法が主流だ。伝統的な養殖業者に対し、測定装置を販売し、安定的、継続的、効率的な生産を実現することを目指している。エジプト国内で競合他社はなく、装置とアプリのセット価格は1,000~1,500ドルで、欧州産の同様の機材と比較しても安価なことが強みである。中東・アフリカで市場が大きいエジプトに加え、バーレーン、クウェート、リビアのほか、リトアニア、パキスタンなどでも導入実績がある。国内では直接、顧客に説明しながら、海外は代理店を通して販売している。2019年1~9月までで7万5,000ドルを販売しており、毎月約2.5%の売り上げ増が続いている。年間の売り上げ目標は10万ドルである。
Nile botの開発に当たり 、2017年にユニセフ、中東の有力アクセラレーターFlat 6 labsやstart-Egyptから合計20万ドル以上の出資を受けた。ユニセフとは、水のモニタリング・管理事業をヨルダン、レバノンで提携して実施している。また、米国でワークショップを開催するなど海外にも積極的に出向いており、南アフリカ共和国で開催されたアフリカ開発銀行主催のピッチコンペティションでの受賞歴がある。スタッフは、開発、事務、販売スタッフを含めて9月現在で15人いる。

養殖池に設置されたNile bot(コナティブ・ラブズ提供)
質問:
装置とアプリについて。
答え:
伝統的な養殖業では機材を使わないか、使う場合でもPH値、酸素濃度、温度などをそれぞれ別の装置で測定していた。しかし、Nile botはPH、酸素、温度および餌を与えた量について、1つの装置で計測が可能である。さらに、スマートフォンやタブレット、パソコンから観察・管理アプリを通じて、養殖池のリアルタイムの状況を観測できるほか、養殖環境データを蓄積することが可能である。また、異常値が検出された場合、アプリやSMSなどで警告することができる。これまでは餌を過剰供給する養殖業者が多かったが、餌の投入量をデータで管理でき、餌を適量供給できる。適切な環境整備、異常値警告システム、餌の量の調整によって、大規模業者では3カ月で約6,000ドルの節約および生産性向上の効果が出た例もあるという。

養殖池でのNile bot使用の様子(コナティブ・ラブズ提供)
測定装置は、大規模な養殖池では屋外に設置でき、電源コードのほか、太陽光発電から電力を供給する装置も販売している。小規模の養殖プラントが複数ある業者では、持ち歩き可能な充電式の測定装置を1つだけ購入して、それぞれのプラントで測定し、データを個別に収集することも可能である。装置のメンテナンスも簡単で、既に海外に販売した装置もチャット・アプリのWhatsAppやメールでのやり取りでトラブル解決できるため、海外で普及する可能性がある。ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で装置の説明ビデオを視聴できる。

養殖池でのNile bot使用の様子(コナティブ・ラブズ提供)
質問:
起業の動機と経緯は。
答え:
エジプトのへルワン大学でエンジニアリング、養殖などを学び、卒業プロジェクトで、伝統的な養殖業が非効率で餌を無駄に使用しており、何十年も前の養殖方法から変わっていないことを知った。併せて、養殖はタンパク源生産としてエジプトで有望な産業であることを認識した。近年は、国内でインターネットのアクセスが容易になり、スマートフォンやタブレットも普及したことから、伝統的な養殖から脱却できるチャンスだと考え、効率化、生産性向上につながる装置とアプリを開発した。水資源管理局で働いていた経験を生かし、2015年に似たようなアイデアで大学の友人グループで起業したが、スタッフを扱う経験や販売の経験不足など装置開発以外の部分でうまくいかなった。2017年に、大学の知人以外のビジネス経験者なども呼び込んでConative Labsを設立し、初期投資調達に成功して、順調に成長を続けている。
質問:
日本企業や海外企業との連携の可能性は。
答え:
欧州の装置とは価格面で勝負できるが、技術と価格面でアジア諸国の企業とは競合すると感じている。一方で、製品をブラッシュアップするために協業できる部分があれば、日本や海外の企業と協業したい。現在も、中国などから輸入している部品もある。市場としては、中東・アフリカなどがアクセスしやすいと考えているが、海外の市場を検討するに当たり、海外企業と連携できる部分があるかもしれない。ユニセフや、マレーシアに本部を置く漁業・養殖国際研究機関のWorldFishとも連携しているので、国際機関や公的機関とも事業や研究での協力を進めたい。なお、エジプトでの融資や出資は難しい部分もあるので、日本からの投資は歓迎である。現状、1,000個の装置の製造、アプリと装置の改良、販売強化のために、25万ドルの資金調達を希望している。
質問:
今後の可能性について。
答え:
エジプトの人口は1億人に達し、食料のニーズも増加が続いている。一方で、海外から大量に食材が輸入されているため、国内での安価な魚の生産・販売には可能性を感じている。将来は、これまで販売した8カ国以外にも販売を拡大したい。これまでは、自社の一部屋のラボでしか製造できていなかったため100個程度しかNile botを製造できていないが、養殖業者からの評判も良く、ニーズはあるので、投資を受けて大規模に外部委託できれば、販売を一気に拡大できる可能性が高い。委託できれば、ラボは研究・開発に特化する予定だ。現在、アグリビジネスにおいても、オープンソースのソフトウエアを活用し、農業用センサーなどの装置とアプリを開発している。この地域での養殖業は発展が見込め、投資は歓迎であると伝えたい。

執筆者紹介
ジェトロ・カイロ事務所
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課(2010年~2013年)、ジェトロ北海道(2013~2017年)を経て現職。貿易投資促進事業、調査・情報提供を担当。

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