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特集:2018年の対中直接投資動向北京市は引き続きサービス業の投資が活発、天津市への日本の投資は3倍に(北京市、天津市、河北省)

2019年5月29日

京津冀(北京市、天津市、河北省)地域の2018年の対内直接投資をみると、北京市と天津市ではサービス業の投資が大半を占める一方、河北省では製造業の投資が7割以上を占めている。日本からの投資は、天津市で前年比3倍、河北省でも2割増と好調で、北京市は投資額は公表されていないものの、サービス業への投資やスタートアップとの協業などが活発だった。京津冀地域の一体化が今後進む中で、各地域の投資のトレンドが変化するのか、特に雄安新区建設が本格化するのに伴い、日系企業など外資の進出が進むのか否かが注目される。

北京市:実行額は約3割減もサービス関連の投資は増加

2018年の北京市の対内直接投資は、契約額が前年比24.6%増の418億8,000万ドル、実行額は28.9%減の173億11000万ドルとなった(表参照)。

表:北京市・天津市・河北省の対内直接投資(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、—は値なし)
省・市 契約ベース 実行ベース
件数 前年比 金額 前年比 金額 前年比
北京市 2016年 22,075 △ 31.8 13,029 0.3
2017年 33,611 52.3 24,329 86.7
2018年 41,880 24.6 17,311 △ 28.9
天津市 2016年 1,106 6.9 30,826 △ 1.7 10,100 12.2
2017年 951 △ 14.0 10,610 5.0
2018年 1,088 14.4 24,649 4,590 4.0
河北省 2016年 162 △ 22.1 3,347 △ 41.1 7,354 19.0
2017年 194 19.8 3,707 10.8 8,490 15.4
2018年 246 26.8 5,579 50.5 9,081 7.0

注:天津市の2018年の実行額は外国出資者からの貸付額および再投資額を除いたもの。同年の伸び率は同様の定義で計算した2017年の実行額と比較したもの。
出所:省、市政府発表資料等を基にジェトロ作成

業種別にみると、構成比で26.1%を占める情報サービス・ソフトウエア産業は65.7%減の45億2,240万ドルと大幅に減少した。一方、リース・ビジネスサービス業(構成比15.7%)は18.2%増の27億1,400万ドル、科学研究・技術サービス業(13.9%)は18.8%増の24億499万ドルとなった。また、水利・環境・公共施設管理業(前年比12.3倍)、住民サービス・その他サービス業(10.0倍)、宿泊・飲食業(9.5倍)、金融業(2.7倍)などが急増した。

日本企業はサービス業の新規投資、イノベーション関連の協力案件が目立つ

日本企業の進出動向をみると、北京市全体の投資の傾向と同様に、サービス業の新規設立案件が多く見られた。野村不動産は2018年7月、北京市政府系デベロッパーの北京首都開発と共同で「北京首開野村不動産管理」を設立し、日系企業が多数入居するオフィスビル「北京発展大厦」の運営管理業務を開始したと発表した。一部賃料収益を得るほか、同ビルの運営管理業務に携わるとしている。同社にとっては、中国で初のオフィス事業となる。MTG(本社:愛知県)は8月、会員制トレーニングジム「SIXPAD STATION」の中国展開を進めるため、医薬品の製造・販売、医療機器の輸入販売などを行う中国の太陽昇(北京)とパートナーシップ契約を締結した。物流のセンコーは11月、ランテック(福岡県)、中国のシノトランスエアの3社で設立した合弁会社を通じ、北京市内に物流センターを稼働した。北京首都国際空港から5キロの場所に位置し、延べ床面積9,000平方メートルで2階建ての冷凍・冷蔵倉庫を有する。中国国内の冷凍・冷蔵物流需要に対応する。

スタートアップや大学との協力案件も目立った。クレディセゾンは7月、中国のフィンテック企業の信用宝金融信息服務(北京)に出資し、同社のビッグデータプラットフォームを基にした情報管理技術と人工知能(AI)を用いた高度な信用分析・スコアリングによる与信技術を活用し、近隣アジア諸国でのコンシューマーファイナンス事業を加速させるとした。丸紅は8月、清華大学傘下の投資資産管理会社である啓迪控股(TUS−Holdings)とデジタルトランスフォーメーションへの取り組みにおける協力協定を締結したと発表した。同社からデジタル技術・アイデアの紹介を受けるほか、イベントなどの共催によって、中国のスタートアップ、ベンチャー企業の丸紅への関心を高めることを目指す。日立製作所は11月、日立(中国)、日立(中国)研究開発とともに、清華大学と「未来創新(イノベーション)連携計画」に関する戦略的提携協定を締結したと発表した。両者は連合実験室での共同研究などを行ってきたが、これまで築いてきた連携関係を発展させ、社会課題を起点に価値創出を目指すイノベーションパートナーとして共同研究に取り組む。

北京市は引き続き金融などサービス業の開放を推進

北京市政府もサービス業の開放拡大を推進している。国務院は2019年2月22日、「北京市サービス業の開放拡大の全面的推進に関する総合試験活動案に関する国務院の認可回答」を公布し、サービス業の開放拡大に向けた試験的取り組みの期限がさらに3年延長されることになった。総合試験活動案の中では、177項目の各種開放措置が示されており、うち47項目は金融業の開放だ。また、統括会社や研究開発センターの誘致促進策も盛り込まれた。北京市はこのようにサービス業を重視する一方、大気汚染リスクの高い一部の業種については淘汰(とうた)していく方針を示しており、製造業を中心に市の環境規制の動向には今後とも注視が必要となる。

天津市:日本からの投資が3倍に

2018年の天津市の対内直接投資は、契約件数が前年比14.4%増の1,088件、契約額が246億4,900万ドル、実行額は4.0%増の45億9,000万ドルだった(表参照)。天津市商務局は2018年の特徴として、契約件数が堅調な伸びを示したこと、外資産業の構造調整が進んだこと、主要国・地域からの投資が相対的に安定していたことなどを挙げた。

産業別(実行ベース)でみると、サービス業向けが33億7,000万ドルとなり、投資全体の69.5%を占めた(構成比は前年比0.9ポイント拡大)。そのうち、ファイナンスリース業は8.5%増の14億1,000万ドル、リース・ビジネスサービス業は24.5%増の6億2,000万ドル、ハイテクサービス業は11.4%増の4億1,000万ドル、交通輸送・倉庫業は2.1倍の1億6,000万ドルだった。製造業への投資額(実行ベース)は2.3倍の14億6,000万ドルで全体の31.8%を占めた。うち、ハイテク製造業は73.9%増の1億7,000万ドルとなり、中でも電子・通信設備製造業(8,933万ドル)、医薬製造業(7,422万ドル)への投資が大幅に増加した。また、中国(天津)自由貿易試験区の一部が含まれる濱海新区への投資は34億5,000万ドルと、市全体の投資額の約7割を占めた。

主要国・地域別では、上位10カ国・地域からの投資が47億2,000万ドルで投資全体の97.3%を占めた。うち、香港は前年比0.9%減の31億ドル、米国が66%増の4億6,000万ドル、日本が3倍の3億6,000万ドル、シンガポールが48.4%増の2億7,000万ドルとなった。

日系企業の動きとしては、アイロムグループが8月、Beroni Group(貝羅尼集団、天津市)と戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。Beroni Groupは医薬品の研究開発や販売を行うバイオ企業で、プレシジョン・メディシン(精密医療)や抗がん剤、遺伝子治療製剤などの先端医療の実用化に注力している。今回のパートナーシップ契約締結により、日本および中国市場で製薬企業や医療機関とのネットワークを強化し、細胞培養加工などの分野で新たな事業機会を創出して事業拡大を目指すとした。

トヨタ紡織は10月、天津市に自動車用フィルター製造の新工場を建設し、生産を始めた。新工場ではエアクリーナーやキャビンエアフィルターを生産する。従来の1.5倍の生産エリアを確保して今後の受注拡大に対応するとともに、樹脂成型設備を新規導入することで、エアクリーナーを含む吸気系構成部品の生産から完成品までの一貫生産体制を整え、競争力の強化を図るとした。

河北省:投資実行額は7.0%増

2018年の河北省の対内直接投資は、契約件数が前年比26.8%増の246件、契約額は50.5%増の55億7,864万ドル、実行額は7.0%増の90億8,110万ドルといずれも増加した。

産業別(実行額)でみると、第一次産業は前年比57.3%減の2,381万ドル、第二次産業は9.2%増の74億5,732万ドル、第三次産業は0.3%減の15億9,997万ドルとなった。

業種別では、投資額(実行ベース)の75.9%を占める製造業が前年比10.2%増の68億9,172万ドルで全体の伸びを牽引した。このほか、交通輸送・倉庫・郵政業は57.5%増の2億5,184万ドル、金融業は3.8倍の2億3,964万ドル、卸・小売業は59.1%増の1億3,947万ドルと好調だった。一方、不動産業(29.1%減)、電力・ガス・水生産供給業(16.1%減)、情報サービス・ソフトウエア産業(65.4%減)などは大幅に減少した。

国・地域別の投資状況(実行額)をみると、最大の投資元である香港は前年比4.1%増の49億1,740万ドル、中南米が11.1%増の19億2,604万ドルだった。日本は21.7%増の3億6,926万ドルで2年連続の増加となった。シンガポールは前年のマイナスから倍増し2億833万ドルとなった。前年比で減少となった国・地域を見ると、EUが3.6%減の4億3,385万ドル、米国が17.8%減の4億336万ドル、韓国が31.5%減の5,467万ドル、台湾が0.8%減の4,352万ドル、オーストラリアが51.8%減の4,133万ドルだった。

日系企業の進出例としては、ベルグアースが12月、中国の持ち分法適用関連会社の子会社となる故城欣璟農業科技を河北省衡水市に設立した。資本金は500万元(約8,000万円、1元=約16円)で、持ち分法適用関連会社の北京欣璟農業科技が100%出資する。ベルグアースは中国国内で苗事業を展開することを目的に、2017年12月に北京欣璟農業科技を設立して野菜苗の生産・販売に適した地域の調査や選定を行ってきた。その結果を受け、野菜の生産地と消費地とが近接した河北省衡水市に野菜苗の生産・販売を行う子会社を設立することにした。2019年9月中に事業を開始する予定としている。

地域一体化や雄安新区建設の動向に引き続き注目

京津冀(北京市、天津市、河北省)地域全体の外資投資の動向を見通す上では、引き続き同地域の一体化の進展や雄安新区の建設の動向が注目される。

2018年12月には雄安新区と京津冀域内の主要都市を鉄道で結ぶ拠点となる「雄安駅」が着工するなど、域内一体化を促すインフラ整備が進展している。雄安新区については、国務院が2019年1月2日に「河北雄安新区全体規画(2018~2035年)に関する回答外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を公開したほか、中国共産党中央委員会と国務院が1月24日に「河北雄安新区の全面的な深化に向けた改革と開放拡大を支援することに関する指導意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を発表した。現在、同区では基礎インフラの整備が進められている段階だが、すでにビジネス獲得に向け動く日系企業もあり(2019年4月4日地域分析レポート参照)、同区の建設が今後より本格化する中で、日系企業の進出等が進むか注目される。


注:
本レポートでは天津市の投資実行額として同市商務局の統計を使用。同統計の投資実行額は再投資などを含まない。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所
小宮 昇平(こみや しょうへい)
2013年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課に配属。2016年3月より1年間の海外実務研修(中国・成都事務所)を経て、2017年3月から2018年8月まで中国北アジア課に所属。2018年8月より北京事務所にて調査業務等に従事。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所
張 敏(ちょう びん)
1999年、ジェトロ・北京事務所入構。2004年10月より調査業務に従事。

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