特集:2018年の対中直接投資動向2018年は第三次産業が急増(山東省)

2019年5月29日

2018年の山東省における対内直接投資は、実行額が6.5%増の123億8,600万ドルとなった。国・地域別では、上位5カ国・地域のうち、香港、韓国は前年比プラス成長を維持したが、他の3カ国(米国、ドイツ、シンガポール)はマイナスになった。都市別では、主要4都市のうち、省都である済南市が契約額、実行額ともに伸びが最も高かった。産業別では、第三次産業の実行額が前年比42.7%増と大きく増加し、構成比も5割を超えた。

香港と韓国からの投資が増加、大手企業による案件が目立つ

2018年の山東省における対内直接投資は、契約件数が前年比45.8%増の2,156件、投資額(実行ベース)が6.5%増の123億8,600万ドルとなった。

山東省商務庁が発表した国・地域別の内訳によると、1位は依然として香港で、投資額(実行ベース)が24.7%増の82億7,900万ドルとなり、全体の66.8%を占めた(表1参照)。そのうち、大規模なプロジェクトとしては、2017年に済南市で生鮮品を扱うEC会社を設立した香港のユニコーン企業「毎日優鮮」が、2018年に2億ドルを追加投資して毎日優鮮便利購網絡科技を新設した案件がある。2位の韓国は1.3%増の14億4,200万ドルだった。3位は米国の3億4,100万ドル、4位はドイツの3億1,900万ドル、5位はシンガポールの2億5,800万ドルで、それぞれ前年比32.2%、58.7%、50.5%と大きく減少した。日本からの投資は2016年から3年連続で6位を維持し、2018年の投資額は44.4%減の2億3,100万ドルだった。一方、契約件数は83%増と大幅に増加したため、投資実行までの時間差を考慮すると2019年度の日本からの投資実行額は増加に転じる可能性がある。

表1:山東省の国・地域別対内直接投資(2018年)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値)
順位 国・地域 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
1 香港 694 32.2 48.3 8,279 66.8 24.7
2 韓国 595 27.6 47.6 1,442 11.6 1.3
3 米国 145 6.7 96.0 341 2.8 △ 32.2
4 ドイツ 43 2.0 48.3 319 2.6 △ 58.7
5 シンガポール 55 2.6 150.0 258 2.1 △ 50.5
6 日本 86 4.0 83.0 231 1.9 △ 44.4
7 台湾 130 6.0 47.7 131 1.1 △ 42.9
8 マレーシア 18 0.8 63.6 120 1.0 183.5
9 カナダ 37 1.7 37.0 82 0.7 23.6
10 オーストラリア 33 1.5 37.5 66 0.5 △ 46.2
総計 2,156 100.0 45.8 12,386 100.0 6.5

注:山東省では2018年から、中国商務部の統計項目に合わせることになったため、ベンチャーキャピタル投資、株主ローンなどの項目が除外された。
出所:山東省商務庁の資料

多くの投資案件がある中でも、フォーチュン・グローバル500企業による投資が目を引く。日本のイオン、ソフトバンク、米国のIBM、英国のBP(石油事業)、フランスのVeolia(総合環境サービス事業)など27社が山東省で51件のプロジェクトに投資し、契約投資額(契約されたプロジェクトのうち、審査認可済みの投資額)は前年比41.4%増の21億ドルに達した。投資案件の業種は製造業、電力・ガス・水の供給業が中心だが、新エネルギー、新材料といった新興産業にも及んでいる。

山東省政府は対外開放をさらに強化するために、2015年と2018年に「フォーチュン・グローバル500および業界先行企業との提携を深化する行動方案」(2015~2017年)、(2018~2020年<魯政字〔2018〕106号>)を発表している。後者では、3年間で「十強」産業(次世代情報技術、ハイエンド装備、新エネルギー新材料、スマート海洋、健康福祉、グリーン化学、現代高効率農業、文化創意、観光、現代金融)において、100件のフォーチュン・グローバル500企業との提携プロジェクト、200件の業界先行企業との提携プロジェクトを達成することを目標としている。

済南市への投資額が急増、日本からの投資は青島市、煙台市に集中

山東省への投資実行額を都市別に見ると、引き続き青島市、済南市、煙台市、威海市の4都市に集中している(表2参照)。投資額の多い順に、青島市(前年比4.1%増の58億400万ドル)、済南市(30.3%増の18億100万ドル)、煙台市(13.3%増の16億8,800万ドル)、威海市(5.5%増の8億5,600万ドル)となっている。

表2:山東省の対内直接投資(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値)
省・市 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
山東省 2016年 1,477 100.0 △ 2.1 16,727 100.0 9.8
2017年 1,479 100.0 0.0 17,944 100.0 9.0
2018年 2,156 100.0 45.8 12,386 100.0 6.5
階層レベル2の項目 青島市 2016年 680 46.0 △ 10.9 6,937 41.5 11.4
2017年 650 43.9 △ 4.0 7,780 43.4 14.0
2018年 956 44.3 47.1 5,804 46.9 4.1
階層レベル2の項目 済南市 2016年 104 7.0 0.0 1,691 10.1 14.7
2017年 110 7.4 6.0 1,873 10.4 12.6
2018年 239 11.1 113.4 1,801 14.5 30.3
階層レベル2の項目 煙台市 2016年 232 15.7 3.6 2,048 12.2 14.2
2017年 207 14.0 △ 11.0 2,148 12.0 6.5
2018年 281 13.0 35.1 1,688 13.6 13.3
階層レベル2の項目 威海市 2016年 188 12.7 15.3 1,204 7.2 15.0
2017年 191 12.9 2.0 1,304 7.3 10.1
2018年 235 10.9 23.0 856 6.9 5.5

注1:2017年の数値は期中レート(1ドル=6.7463元)を用いてジェトロでドルに換算。
注2:2018年から、山東省では中国商務部の統計方法に合わせ、統計項目を変更したため、2017年以前の数値とは連続性がない。
出所:山東省商務庁の資料

省都である済南市は過去数年3位だったが、2018年に2位に浮上し、他の3都市と比べてより高い成長率を達成した。Festo(ドイツに本拠を置く空気圧機器のメーカー)による済南グローバル生産センター第2期プロジェクト、InspurとIBMとの合弁事業「浪潮商用機器」、台湾フォックスコンとの半導体産業関連プロジェクトなど、フォーチュン・グローバル500企業や業界先行企業との提携プロジェクトが大きく寄与した結果だ。

一方、日本からの投資は青島市、煙台市に集中している。2018年6月には、IHI運搬機械(IUK、東京都)が青島市の県級市である莱西市に機械式駐車場事業の合弁会社「青島華通石川島停車装備」を設立した。新会社を通じて、収容効率を高めた水平循環方式の機械式立体駐車場「スーパースクエアパーキング」をメイン機種として生産を行い、事業展開を図る。

シャープは2018年8月、煙台市に中国子会社「煙台夏業電子」を設立した。新会社は中国で電気通信機器、電気設備、電子設備、電子部品に関する生産、販売などを行う。

第三次産業が契約、実行ともに5割を超える

山東省への投資実行額を産業別にみると、第一次、第二次産業への投資が鈍化する一方で、第三次産業は前年比42.7%増の71億9,000万ドルと増加し、構成比は2017年の38.6%から2018年は58.1%へと大きく拡大した(表3参照)。

表3:山東省の産業別対内直接投資(2018年)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、—は値なし)
産業 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
総計 2,156 100 45.8 12,386 100.0 6.5
第一次産業 50 2.3 85.2 166 1.3 △ 9.1
第二次産業 675 31.3 31.6 5,030 40.6 △ 23.7
階層レベル2の項目採鉱業 1 0.0 0 0.0 △ 100.0
階層レベル2の項目製造業 609 28.2 35.9 4,646 37.5 △ 18.7
階層レベル3の項目紡績業 7 0.3 △ 12.5 52 0.4 451.3
階層レベル3の項目化学関連業 21 1.0 5.0 313 2.5 86.8
階層レベル3の項目医薬製造業 9 0.4 △ 25.0 88 0.7 △ 67.6
階層レベル3の項目汎用設備製造業 92 4.3 10.8 889 7.2 △ 44.7
階層レベル3の項目専用設備製造業 92 4.3 50.8 547 4.4 △ 9.4
階層レベル3の項目通信・電子設備 40 1.9 66.7 543 4.4 42.9
階層レベル2の項目電力・ガス・水関連 37 1.7 2.8 230 1.9 △ 44.9
階層レベル2の項目建築業 28 1.3 0.0 154 1.2 37.6
第三次産業 1,431 66.4 52.4 7,190 58.1 42.7
階層レベル2の項目卸売・小売業 601 27.9 56.1 1,184 9.6 89.9
階層レベル2の項目運輸・倉庫・郵便 39 1.8 85.7 200 1.6 △ 67.2
階層レベル2の項目ホテル・飲食 45 2.1 25.0 12 0.1 288.4
階層レベル2の項目情報・PCサービス・ソフトウエア 99 4.6 50.0 316 2.6 △ 54.9
階層レベル2の項目金融業 165 7.7 101.2 236 1.9 △ 49.6
階層レベル2の項目不動産業 87 4.0 31.8 4,009 32.4 134.6
階層レベル2の項目リース・ビジネスサービス 155 7.2 14.0 507 4.1 79.7
階層レベル2の項目科学研究・技術支持など 164 7.6 92.9 516 4.2 △ 11.2
階層レベル2の項目水利・環境・インフラ管理など 14 0.6 40.0 55 0.4 0.5
階層レベル2の項目住民サービスなど 21 1.0 23.5 43 0.3 2,292.7
階層レベル2の項目教育 16 0.7 △ 5.9 3 0.0 802.8
階層レベル2の項目衛生・社会保障・福利 7 0.3 0.0 49 0.4 2,050.9
階層レベル2の項目文化・体育・娯楽 18 0.8 100.0 59 0.5 84,714.3
階層レベル2の項目公共管理・社会組織 0 0.0 0 0.0 500.0

注:山東省では2018年から、中国商務部の統計項目に合わせることになったため、ベンチャーキャピタル投資、株主ローンなどの項目が除外された。
出所:山東省商務庁の資料

第二次産業で、製造業は46億4,600万ドルと前年比で18.7%減少したが、全業種中に占める構成比は37.5%と最も大きく、全国平均水準を7ポイント上回っている。製造業のうち、構成比が比較的大きい通信・電子設備産業は42.9%増だったが、汎用設備製造業、専用設備製造業はそれぞれ44.7%減と9.4%減だった。

第三次産業では、構成比が大きい不動産業は前年の2.3倍の40億900万ドル、卸売・小売業は89.9%増の11億8,400万ドルだった。さらに、住民サービス、教育、衛生・社会保障・福利、文化・体育・娯楽の分野はそれぞれ23.9倍、9倍、21.5倍、848.1倍と急増した。

中央政府は2018年1月、山東省に「新旧エンジン転換総合試験区」の設立を認可した。「山東新旧エンジン転換総合試験区建設総体方案」(国函〔2018〕1号)によると、総合試験区の3大核心都市である済南市、青島市、煙台市で次世代情報技術、スマート製造、ハイエンド装備、生物医薬、現代物流などの産業を重点的に発展させるとしている。今後、これらの分野のイノベーションを促進するために、政府からより多くの外資誘致優遇策が出る見込みだ。

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所
董 玥涵(トウ ゲツカン)
大連外国語学院日本語学部卒業後、日本の東北大学環境科学研究科で環境技術政策マネジメントを専攻。2016年、ジェトロ・青島事務所入所。ヘルスケア事業、総務、調査を担当。

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