特集:2018年の対中直接投資動向日本からの投資は51.3%増の9億9,112万ドル(湖北省)

2019年5月29日

2018年の湖北省の対内直接投資額(実行ベース)は、119億4,095万ドル(前年比8.6%増)と引き続き増加した。日本からの投資(実行ベース)は、9億9,112万ドル(前年比51.3%増)となり、国・地域別で香港に次ぐ2位だった。

湖北省の7都市で2桁以上の伸び

2018年の湖北省の対内直接投資額(実行ベース)は、前年比8.6%増の119億4,095万ドルで、契約金額は72.2%増の148億1,727万ドル、契約件数は53.7%増の418件だった(表1参照)。主要都市別にみると、対内直接投資額(実行ベース)で武漢市が前年比13%増、襄陽市が11.0%増、宜昌市が16.6%増となった。

中部4省(河南省、湖北省、湖南省、江西省)内では、湖北省の対内直接投資額(実行ベース)が最も少なかった。

表1:中部4省の対内直接投資(2018年)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、—は値なし)
省・市 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 前年比 金額 構成比 前年比
湖北省 2016年 235 100.0 △14.23 3,341 △ 19.7 10,129 100.0 13.2
2017年 272 100.0 15.7 8,607 157.6 10,994 100.0 8.5
2018年 418 100.0 53.7 14,817 72.2 11,941 100.0 8.6
階層レベル2の項目 武漢市 2016年 142 60.4 0.0 n.a. 6,833 67.5 14.1
2017年 161 59.2 13.4 n.a. 7,956 72.4 16.4
2018年 250 59.8 55.3 n.a. 8,989 75.3 13.0
階層レベル2の項目 襄陽市 2016年 6 2.6 △50 n.a. 824 8.1 13.3
2017年 17 6.3 183.33 n.a. 916 8.3 11.1
2018年 20 4.8 122.2 n.a. 350 2.9 11.0
階層レベル2の項目 宜昌市 2016年 12 5.1 20.0 n.a. 391 3.9 15.0
2017年 7 2.6 △41.7 n.a. 256 2.3 △34.5
2018年 18 4.3 0.0 n.a. 184 1.5 16.6
湖南省 2016年 661 100.0 17.6 20,636 75 12,852 100.0 11.1
2017年 n.a. n.a. 24,540 19 14,475 100.0 12.6
2018年 n.a. n.a. n.a. 16,190 100.0 11.9
河南省 2016年 196 100.0 △ 27.9 n.a. 16,993 100.0 5.6
2017年 n.a. n.a. n.a. 17,220 100.0 1.4
2018年 n.a. n.a. n.a. 17,902 100.0 3.9
江西省 2016年 568 100.0 △ 11.3 7,490 2 10,441 100.0 10.2
2017年 495 100.0 △ 12.9 10,125 35 11,464 100.0 9.8
2018年 594 100.0 20.0 8,884 △ 12 12,572 100.0 9.7

注:n.a.は数字が公表されていないことを示す。
出所:各省統計年鑑、商務庁・統計局ウェブサイト、商務庁・統計局担当者へのヒアリングなどを基に作成

2018年の湖北省における対内直接投資の特徴としては、主に以下の点が挙げられる。

(1)武漢都市圏(武漢市と周辺8都市)への対内直接投資(実行ベース)が全体の85.4%を占めた。

(2)産業別(実行ベース)にみると、第一次産業の投資額は1億2,604万ドル、第二次産業、第三次産業はそれぞれ67億5,568万ドルと50億5,923万ドルで、前年に引き続き第二次産業への投資が最大となった。

(3)業種別(実行ベース)では、金融業が前年比で約18倍の2億3,246万ドル、水利、環境、公共施設管理業が3.3倍の4億8,265万ドルと伸び率が高かった(表2参照)。構成比が最大の製造業は全体の52.1%を占め、投資額は前年比12.6%増の62億2,102万ドルとなった。構成比が2番目の不動産業は全体の19.9%を占め、投資額は1%増の23億8,138万ドルとなった。

表2:湖北省の業種別対内直接投資(2018年)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、—は値なし)
業種 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
農業、林業、畜産、水産 13 3.1 30 41.0 0.3 △ 85.9 126.0 1.1 △ 34.5
製造 123 29.4 38.2 4,149.0 28.0 134.8 6,221.0 52.1 12.6
電力、ガス、水生産供給業 11 2.6 22.2 215.0 1.5 △ 43.9 471.0 3.9 11.3
交通・運輸、倉庫、郵便 8 1.9 14.3 118.0 0.8 △ 10.7 257.0 2.2 △ 43.0
卸・小売り 79 18.9 83.7 470.0 3.2 96.6 388.0 3.2 △ 32.0
不動産 13 3.1 62.5 1,723.0 11.6 1620.9 2,381.0 19.9 1.0
賃貸・ビジネスサービス 47 11.2 17.5 609.0 4.1 △ 85.4 369.0 3.1 △ 55.3
水利、環境、公共施設管理 3 0.7 50.0 310.0 2.1 2120.5 483.0 4.0 231.4
鉱業 1 0.2 0.0 74.9 0.5 1914.5 0.0 0.0 0.0
建築 6 1.4 20.0 160.0 1.1 △ 13.0 63.9 0.5 143.0
情報伝達・コンピュータサービス・ソフト開発 37 8.9 117.7 560.1 3.8 291.2 405.6 3.4 269.1
宿泊・飲食 14 3.3 133.3 138.4 0.9 654.0 112.8 0.9 6.7
科学研究・技術サービス・地質調査 27 6.5 17.4 199.7 1.3 △ 0.6 209.7 1.8 7.9
住民サービス・他のサービス 2 0.5 △ 33.3 389.0 2.6 △ 98.9 121.0 1.0 150.4
文化・体育・娯楽 9 2.2 800 2.1 0.0 △ 99.6 70.4 0.6 828.9
金融 14 3.3 133.3 5,791.8 39.1 5989.6 232.5 1.9 1,791.5
総計 418 100.0 53.7 14,817.3 100.0 72.2 11,941.0 100.0 8.6

出所:湖北省商務経済指標(2018年12月号)

(4)国・地域別の直接投資額(実行ベース)では、香港が56億7,002万ドル(前年比4.1%減)で全体の約半分を占めた(表3参照)。日本は51.3%増の9億9,112万ドルで、香港に次いで2位となった。

表3:湖北省の国・地域別対内直接投資(2018年)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値)
順位 国・
地域
契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年比 金額 構成比 前年比 金額 構成比 前年比
1 香港 154 36.8 65.6 12,471.0 84.2 178.3 5,670.0 47.5 △ 4.1
2 日本 12 2.9 71.4 35.3 0.2 △ 80.1 991.1 8.3 51.3
3 シンガポール 8 1.9 △ 27.3 967.4 6.5 387.4 698.9 5.9 44.7
4 台湾 72 17.2 132.3 278.1 1.9 △ 28.0 450.4 3.8 175.8
5 オランダ 1 0.2 0.0 246.1 1.7 2,361.1 267.0 2.2 8.4
6 スウェーデン 1 0.2 n.a. 1.4 0.0 694.4 249.3 2.1 △ 16.2
7 フランス 5 1.2 25.0 0.8 0.0 △ 85.3 214.0 1.8 △ 58.5
8 アメリカ 24 5.7 60.0 58.8 0.4 85.9 163.4 1.4 11.4
9 メキシコ n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 155.4 1.3 227.0
10 ドイツ 4 1.0 33.3 1.6 0.0 △ 87.2 140.9 1.2 4.3
総計
(その他含む)
418 100.0 53.7 14,817.3 100.0 72.2 11,941.0 100.0 8.6

注1:n.a.は数字が公表されていないことを示す。
注2:順位は実行金額の上位10ヵ国・地域。
出所:湖北省商務経済指標(2018年12月号)

好調な自動車関連投資

湖北省での日本企業の投資では、引き続き自動車関連の投資が好調だ。

西川ゴム工業は2018年8月、中国における自動車市場の拡大を受け、武漢市に100%出資の子会社を設立すると発表した(2月14日に設立完了)。自動車用ゴムや樹脂製品の製造加工・販売を行い、主要顧客向けに現地の生産基盤を増強する。資本金は900万ドルで、2020年度以降に年間売上高約30億円を目指すとしている。

自動車部品メーカーのデンソーは2018年9月、カーナビゲーションシステムなどのソフトウエア開発・設計を行うため、中国の光庭(湖北省武漢市)との合弁会社を設立すると発表した。新会社は「電装光庭汽車電子」で、資本金は1億元。デンソーが51%、光庭が49%を出資する。これまで両社はメーカー向けソフトウエアの共同開発を行っており、デンソーは合弁会社の設立を通じて、光庭のノウハウや開発リソースを活用し、現地のニーズに適合した自動車用デジタル機器の開発を加速させる。

豊田合成は2018年10月、中国での開発・生産体制強化に向けて、中国自動車部品会社の湖北Rock社(湖北省十堰市)を買収すると発表した。同社の親会社である湖北正奥汽車附件集団から株式の60%を約8億円で取得する。豊田合成グループのゴム・樹脂部品の設計・生産のノウハウと、湖北Rock社が華中エリアで持つ販売実績や販路を融合することで、事業基盤の拡大を目指す。

自動車用プレス部品の製造販売を手掛ける東プレは2018年12月、武漢に新会社「東普雷(武漢)汽車部件」を設立することを発表した。資本金は5億円で、東プレが100%出資する。新会社の設立を通じて、武漢エリアの顧客への部品供給を行い、中国での事業拡大と収益性の確保を図る。

サービス産業では、日系小売業大手のセブン&アイ・ホールディングスが2018年7月、湖北省でコンビニエンスストア「セブン-イレブン」を開店させることを発表した。まず、1~6月に武漢市への1号店出店を目指す。湖北省での日系コンビニチェーンの展開はローソンに次いで2番目となる。セブン-イレブンのフランチャイズ権を湖北東方美隣便利店(本社:湖北省武漢市)に付与し、同社を通じて今後事業を展開する。

執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所
片小田 廣大(かたおだ こうだい)
2014年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部進出企業支援課(2014~2015年)、ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課(2015~2016年)を経て現職。