在中国日系企業が見る中国市場と競争対応
日系企業へのヒアリング結果からの分析

2026年8月1日

ジェトロの「2025年度海外進出日系企業実態調査(2025年8~9月実施、中国の回答数は791社)」では、営業利益見込みを「黒字」(注1)と回答した在中国日系企業が63.2%と、2013年以降で最低となった前回調査(58.4%)から4.8ポイント上昇した。今後1~2年の事業展開の方向性について「拡大」と回答した企業は21.3%と、比較可能な2007年以降で最低となった前回(21.7%)からさらに低下した。一方、「拡大」という回答の下落幅は0.4ポイントにとどまり、過去3年に比べて縮小した。また、在中国日系企業の約4分の3(74.5%)が最大の競争相手として中国企業を挙げた(注2)

前述の調査結果を踏まえ、中国で事業展開する日系企業にとって参考となる情報を把握するとともに、米中両国の追加関税措置や日中の情勢、中東情勢の影響に関する企業の声も併せて把握すべく、2025年の同調査で営業利益見通しが「黒字」かつ、今後の事業展開について「拡大」または「現状維持」(注3)と回答した在中国日系企業440社のうち28社を対象に、中国ビジネスにおける有望分野やビジネスチャンス、販路開拓・販売拡大に関連する取り組み、中国企業との競合状況と対応、日中の情勢・米中摩擦の影響、中東情勢の影響などについてヒアリングを行った(中国7事務所〔北京、大連、青島、上海、武漢、成都、広州〕が2026年5~6月に実施)(注4)。今回のヒアリングでは、中国企業との競争激化を認識しつつも、新しい成長分野や中国国内市場に引き続き商機を見いだし、販路開拓や差別化、コスト削減などを通じて競争力強化を図る日系企業の姿が浮かび上がった。本稿ではその概要を紹介する。

今回のヒアリング結果について、(1)中国市場の商機と対応、(2)中国企業との競合と対応、(3)外部環境(米中摩擦、日中の情勢、中東情勢)の影響の3点に整理する。

まず(1)について、今回のヒアリングに回答した在中国日系企業では、日系IP商品やヘルスケア、飲食関連の需要拡大に加え、EVや人工知能(AI)、脱炭素、半導体、ロボットなどの新興分野における投資拡大を商機と見ている企業があった。また、中国国内市場での販路開拓・販売拡大に向け、営業担当者の増員や商品ラインアップの拡充、第三国拠点との連携強化、インセンティブの導入、日本のIPの活用、中国市場の変化の速さに対応した商品開発、顧客接点の強化などに取り組んでいることが分かった。

また、(2)に関しては、内販拡大を進める中で、中国企業との競合が激化しているとの認識がみられた。中国企業は研究開発の速さやコスト競争力の高さを強みとする一方、技術力や品質の面でも日系企業へのキャッチアップが加速しているとの見解が多かった。このような状況に直面する日系企業は、中国企業との競争への対応として、コスト削減(設備や材料の現地調達、省人化・自動化)、競合との差別化(技術の独自性、信頼性、安全性、耐久性、ブランド力)に向けた取り組みを強化している。アフターサービスなどを含む総合的なサービス力が競争優位の源泉であるとの声もあった。

(3)については、中国の輸出管理措置に関して、レアアース・黒鉛などについて輸出許可の取得難度の上昇や、許可取得に要する期間の長期化、納期遅延、書類作成負担の増加が発生しているとの指摘があった(注5)。中東情勢の影響については、全体として直接的な影響はない、または限定的との声が多かったが、影響があると回答した企業の中では、各種コスト(原材料費、物流費、燃料価格など)の上昇を挙げる声が多数みられた。 以下では、各トピックについて詳しく紹介する。

消費はIP、ヘルスケア、飲食などに機会、中国企業の投資はAI、EVなどの新興分野で拡大

中国ビジネスにおける有望分野・ビジネスチャンスに関して聞いたところ、消費が拡大する分野としては、日系IP(コンテンツ)商品やウェルネス・ヘルスケア関連需要(例:眼科用品)、飲食関連需要(例:コーヒー)などが挙がった。また、中国企業の投資や需要が拡大する分野としては、データセンターや電力などのAI関連需要、EV化に伴う需要、脱炭素関連需要、半導体、ロボットなどが挙げられた。さらに、中国企業の海外展開や中国製品の輸出拡大に伴う関連需要の増加を挙げるコメントもあった。

販路開拓・販売拡大に関連する取り組みとしては、営業担当者の増員や商品ラインアップの拡充、第三国拠点との連携強化、営業担当者へのインセンティブ導入などを実施している企業がある。また、日本のIPの活用(例:人気IPの限定グッズ販売)、中国市場の変化に対応した商品開発(例:本社から現地への開発権限移譲や現地人材の活用などを通じた開発サイクルの短縮による市場変化への即応力強化)、代金回収への対応(例:定期的なモニタリング、営業スタッフのインセンティブに代金回収率をひもづけ代金回収への取り組みを促す、保険付保、与信管理など)、顧客接点の強化(例:顧客の開発拠点に近い場所への営業拠点の設置、ローカルスタッフによる中国顧客企業への御用聞き強化)などに取り組んでいる企業があった(表1参照)。

例えば、ある飲食業界の企業では、飲食店において特定の曜日に売り上げが落ちる傾向がある中、人気の日系IPとコラボし、同IPの限定グッズをその曜日限定で販売したところ、売り上げを伸ばすことができた。また、顧客層も従来主力であったファミリー層から、IPを好む若年層へと拡大した(注6)

表1:在中国日系企業の販路開拓・販売拡大に関する取り組み注1:業種分類は「海外進出日系企業実態調査アジアオセアニア編」2025年度版に記載の分類に基づく。
注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。
項目 業種 企業の参考コメント
国内販売拡大に向けた体制強化 一般機械 本社向けのみだと本社設定価格に縛られ利益確保が難しいため、当社としては、本社向けと中国国内向けを再び5対5の構成に戻すことを目標としており、そのため営業部隊の増員と営業可能商品の拡大を進めている。
その他製造業 国内販売が増えると、多くの国内営業対応者が必要になる。一方、国内営業は24時間、土日も関係なく連絡が入るため負担が大きく、輸出営業を担当していた人材には対応が難しい。対策として、営業担当者に粗利に連動するインセンティブを導入している。その結果、営業担当者の意欲が高まっている。実際、他社と比較して営業担当者の給与は高く、それを原動力として受注獲得につなげている。
運輸/倉庫 顧客基盤の多様化に向け、従来の日系企業中心の営業から、外資系・欧州系企業の開拓を組織的に進めている。外資系フォワーダー出身の中国人材を採用し、これまでアクセスできていなかった顧客層へのアプローチを強化している。欧州向け事業については、欧州側の顧客が物流決定権を持つ案件を欧州拠点と共同でセールスする体制を構築している。地域をまたいだ営業連携の強化も進めている。
日本のIPの活用、コラボ 衣服/繊維製品 日中両国で使用できるブランドや、キャラクターライセンスの活用を検討中。
その他製造業 プロモーションも重要。中国の服装企業は日本のファッションデザインに興味がある。当社も日本のブランドとコラボして何かできないかと考えている。
飲食 当初の顧客ターゲット層は20代後半から30代前半の女性会社員、ファミリー層であったが、2024年に人気日系IPとのコラボをしたことで若年層を取り込むことに成功した。多くの飲食店は月曜日に売り上げが落ちる傾向にあるが、月曜にIP関連の限定グッズを販売することで、売り上げを伸ばした
市場の変化に対応した商品開発 化学品/石油製品 中国の市場の変化は他国に比べて速い。中国独自の商品として、既存商品をマイナーチェンジするかたちでの対応も進めている。
電気・電子機器 中国市場の急速な変化に対応するため、本社から中国側への開発権限の委譲を進めている。これまでは日本で開発した商品を中国に持ち込んでいたが、今後は現地の理工系人材を活用することで迅速な対応や製品改良を実現し、開発サイクルの短縮を通じて市場変化への即応力を強化していく方針。
代金回収 プラスチック製品 中国メーカーとの取引における代金回収については特段問題ない。営業を中国人スタッフに任せ、インセンティブに代金回収率をひもづけているほか、保険の付保、与信管理を確実に実施している。
輸送用機器部品(自動車/二輪車) 顧客企業によっては支払いのトラブルが起きていることもあるため、メーカーの見極めが重要だ。メーカーや車種を見極めた上で取引を判断している。
輸送用機器部品(自動車/二輪車) 中国系企業との取引における代金回収については、毎月、上海拠点から販売先をフォローしているため、先方が倒産しない限りは特段問題ない。
顧客接点の強化 輸送用機器部品(自動車/二輪車) 顧客企業の開発拠点に近い場所に営業拠点を設置することで、日頃から顧客企業の開発部門と交流し、設計段階から参入することが可能になる。
その他製造業 中国はとにかくスピード。中国のスピードについていくことが必要。顧客との接点を増やし、訴求力を向上させることが重要。
販売会社 これまでの中国ビジネスは、日本で出来上がったものをそのまま持ってきたり、日系企業のニーズをくみ取ったりしてきたが、ここに来て「中国企業が何に困り、何を求めているのか」という情報を貪欲に収集する方向に変わってきている。当社は営業部隊が全てローカルスタッフであり、自動車から家電、食品、医療まであらゆる業種を網羅して情報収集している。
その他 輸送用機器部品(自動車/二輪車) 高級NEVブランドの受注を獲得し、2027年ごろから納品する予定だ。これは、中国地場企業と地元政府の座談会に参加した際、日系サプライヤーとの取引に関心を持つ企業の紹介を受け受注につながったためだ。当社は地元政府と日頃からの関係を築いており、幅広く拠点を構えて現地政府とコミュニケーションを取っていたことに加え、地元政府の積極的な支援が新規受注につながったと思う。
運輸/倉庫 中国企業向けビジネスの拡大を志向している。中国内需の減少を踏まえ、中国発の輸出(インドネシア・タイなど)を増やしていきたい
飲食 可処分所得が沿岸部と比べて低い内陸部では、より低い価格を設定した。内陸エリアは可処分所得が低いからこそ、顧客に高い満足感を与えなければならない。

注1:業種分類は「海外進出日系企業実態調査アジアオセアニア編」2025年度版に記載の分類に基づく。
注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。

出所:2025年度海外進出日系企業実態調査において、2025年の営業利益見通しが「黒字」かつ、今後の事業展開について「拡大」または「現状維持」と回答した在中国日系企業28社に対する、2026年5月~6月に実施したジェトロのヒアリング

中国企業はコスト競争力で優位、技術力の面でもキャッチアップ

中国企業との競合状況に関する認識については、幅広い業種で内巻(過当競争)の影響を受けているとの指摘がみられた。中国企業の技術的キャッチアップや研究開発のスピード、価格面での競争力の高さを指摘する声が多かった。一方、BtoB製品や国有企業との取引、より高い信頼性や品質が求められるハイエンド市場では、差別化を図れているとの声も聞かれた(表2参照)。

このほか、中国市場以外での中国企業の存在感の高まりもうかがえた。「中国企業との競争がグローバル市場にも拡大している」「中国市場で競争力を維持することが第三国市場での競争力維持につながる」「中国市場で競争力を維持できなければ海外市場でも勝てない」「中国市場は依然として大きく、そこで競争を通じて磨かれた製品やシステムが海外にも展開されていくため、中国での競争を避けることはできない」などの声が上がった(注7)

表2:中国企業との競合状況に関する認識注1:業種分類は表1に同じ。 注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。
業種 企業の参考コメント
一般機械 中国メーカーとの「内巻式」競争の影響は受けている。中国メーカー製品とは価格面では正面から勝負にならない溝がある
化学品/石油製品 当社ブランドは世界トップ3に入っていることからも、ブランド力や技術力で優位性は残っている。しかし、10年前と比べると、技術的優位性は地場企業にキャッチアップされている部分も出てきている。一般消費者向けは新規参入も容易で、参入・退出の動きが早い。
プラスチック製品 低価格化(過当競争、内巻)が続いており、包材である当社製品に対するコスト要求も厳しくなる見込み。将来的には利益率が低下することが考えられる。
一般機械 中国メーカーの技術力が向上し、技術優位性が低下している中、将来的な方向性を考える時期に差し掛かっている。
輸送用機器部品(自動車/二輪車) 中国企業の開発のスピード感は速く、見積もり用の図面を提示し、その後に正式図面の作成から金型製作までを1カ月で行う。その後、試作品製造など経て、3カ月程度で量産化する。これは日系企業向け案件(半年から8カ月)と比べて半分のリードタイムとなる。日系企業のサプライヤー選定も、日系企業だから選ばれる時代ではなくなってきており、一定の技術や性能があれば、価格の安い企業が選ばれる
電気・電子機器 中国国内企業の台頭に対し、当社は低価格帯における価格競争力に課題があると認識している。一方で、高品質・高信頼性を強みとしており、ハイエンド市場における優位性を維持している。顧客は一般に設備の重要度に応じてブランドを選定しており、重要設備については日系または欧州系製品が採用される傾向がある。現段階の競争相手は欧州企業だが、中国企業の成長は早く、追い上げてきている。中国企業の強みは研究開発力の高さにあり、研究開発投資も重視している。性能の向上が著しい一方で、価格も手頃であるため、注視すべき競争相手だ。
商社 内巻競争の影響は大きい。中国メーカーの技術力も向上し、同等規格の製品を生産できるようになってきていることに加え、彼らの価格は大幅に低い。一方、日本国内では社会全体で値上げが浸透しつつあり、製品は日本側の値上げ圧力と中国側の値下げ圧力の双方にさらされている
販売会社 内巻式競争の影響は大きい。中国企業が低価格で販売しているほか、品質も過去と比べて大きく向上しているため、多くの品目で価格競争に巻き込まれている。品質差が縮小した結果、以前は日本製品が選ばれていた用途でも、中国製品への切り替えが進んでいる。以前は「価格差があっても品質の良さで採用される」という状況であったが、「この価格差に見合うほどの品質差はない」という認識へと変化し、品質面で若干の差が残っていても、中国製品を採用し、工程側で使いこなす方向に動いている
販売会社 近年は中国企業や外資系メーカーとの競争が激化しているほか、コロナ禍以降の中国消費市場の低迷の影響を受け、当社は価格面でやや劣勢に立たされている。この結果、ピーク時と比較して、減収減益の状況にある。
持ち株・統括会社 中国市場では競争圧力が存在する。自社の主要製品は高価格帯に位置付けられているため、中国ビジネスにおいても引き続き強気の姿勢を維持している。高価格帯製品は需要が高く、販売先を選択する権限は自社にあり、価格競争の土俵に乗らないため、価格競争の影響は限定的だ。値下げは行わず、原材料費や物流コストの上昇分は顧客に転嫁している。他方、一部の低価格帯製品では中国企業の技術力や競争力が向上しており、内巻式競争をより実感している。
その他非製造業 従来のコピー品ではなく、中国企業による独自IPの台頭が主な競争要因となっている。中国企業は「自社IP開発力」「ブランド力」を高めており、競争の質が変化している。

注1:業種分類は表1に同じ。
注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。

出所:2025年度海外進出日系企業実態調査において、2025年の営業利益見通しが「黒字」かつ、今後の事業展開について「拡大」または「現状維持」と回答した在中国日系企業28社に対する、2026年5月~6月に実施したジェトロのヒアリング

日系企業はコスト削減や差別化要因の維持・強化、サービスを含む総合力で対応

中国企業との競合における対応については、コスト削減に向けた取り組みとして、設備や材料の現地調達への切り替えやサプライチェーンの現地化、ロボット・AIなどを活用した省人化・自動化などが挙がった。また、競合との差別化の観点では、技術の独自性、信頼性、安全性、耐久性、ブランド力などの要因を維持・強化していく方向性が指摘された。さらに、製品単品ではなく、多種な製品をワンストップで供給できることや、検品・品質管理・アフターサービスなどを含む総合的なサービス力が競争優位の源泉であるとのコメントもあった。中国企業が集中的な投資や市場参入を行うボリュームゾーンでの競合を避け、「販売量は限定的だが、中国企業が参入しにくいニッチ(高付加価値・少量多品種領域)な市場の獲得を目指す」という戦略を語る企業もあった(表3参照)。

表3:中国企業との競合における対応注1:業種分類は表1に同じ。 注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。
項目 業種 企業の参考コメント
コスト削減に向けた取り組み 化学品/石油製品 主にコスト削減、人件費管理、新規顧客開拓を軸に対応している。
プラスチック製品 設備や原材料(カーボンなど、副資材も含む)を中国産に変えている。もともと原材料は日系商社から買っており、一部輸入もしていたが、中国にある中国メーカーのものに変えている。設備も中国産を採用することにより、導入コストが約5分の1となり、減価償却の観点からも良い
電気・電子機器 部品調達およびサプライチェーンの現地化を推進することで、製品コストの低減を図っている。
輸送用機器部品(自動車/二輪車) コスト低減のための取り組みとして、まずは材料の工夫を行っている。日系企業向けには日本の指定材、中国企業向けには中国材を使用するなど、エンドユーザーによって使い分けている。また、特に樹脂材料は大量購入によって単価を下げられるため、なるべく大量に仕入れるようにしている。
その他製造業
  • 従来、顧客からの注文はFAXが主流だった。現在は注文をEメールまたは電子システムで受けており、合理化を図っている。これらの取り組みによりコストが下がり、競争力が向上した。中国において人件費が20年前と比べて上昇しているにもかかわらず、当社の基幹商品はコストダウンによって過去と比較して最も安いコスト水準を維持している
  • スマート製造を進めている。検品や包装は人手で行っているが、こうした工程についても自動化を進めていきたい。中国(特に深セン)はロボット関連技術が進んでおり、しかも日本よりも安価だ。AIもうまく活用していきたいと考えている。日本本社も現地独自の生産効率化を許可している。
競合との差別化 金属製品
(メッキ加工を含む)
中国の縫製業界では、量から質への発展が進む中、当社製品や設備の耐用年数や安定性などを求める顧客が増加している。そのため、当社製品の価格は高いものの、顧客との関係を継続的に維持できており、有名ブランドから指定を受けるなど、売り上げは安定している。
一般機械 当社の製品は耐用時間などの面で、業界水準を大きく上回る品質・耐久性・安全性によって差別化を維持している。
一般機械 世界に先駆けて開発した独自技術や各国船級協会の認証取得実績を有し、船舶用途で重視される信頼性・安全性の面で中国メーカーとの差別化を図っている。また、幅広い製品ラインアップを提供できることも競争力の源泉となっている。
電気・電子機器 高品質の維持と優れたアフターサービスの提供により、安定的な取引先の確保に努めている。
輸送用機器
(自動車/二輪車)
主要製品については仕様変更を行わずに生産を継続しており、主要製品のスペックを維持しつつ、アフターサービス面での顧客対応や生産コストの削減を行っている。
商社 競合は日系・韓国系・中国系商社に加え、中国メーカーによる日本顧客への直接販売も存在する。ただし、メーカーとの直接取引の場合、検品や品質保証が不十分となるリスクがある。最大のリスクは契約内容と納品物の不一致であり、これを回避するためには厳格な検品体制とサプライヤーとの信頼関係が不可欠だ。このため、価格競争力だけでなく、検品・品質管理・調整対応を含む総合的なサービス力が競争優位性の源泉となる。
商社 競争力の源泉は、技術力、品質のばらつきの少なさ、加工歩留まり(良品率)の高さ、不良率・返品率の低さにあると考えている。特に特定の材料については安全性に直結するため、顧客企業、エンドユーザーともに安価な材料への切り替えリスクを避ける心理が働く。
販売会社 当社の「対中戦略」は、中国競合が参入しないニッチ(高付加価値・少量多品種領域)な市場の獲得を目指す方針。市場規模が何十万トンに上るような巨大市場は、中国企業が投資を決める理由となり集中的に参入してくるため、われわれが目指すべき市場ではない。逆に、数千トンから1万トン程度のニッチな市場であれば、中国企業はあえて参入してこない。こうした中国企業が関心を示しにくい領域を狙う方針だ。販売数量の拡大を追求するのではなく、ある程度価格が取れるニッチ市場を着実に積み上げていく戦い方だ。
販売会社 当社製品は、中国メーカー製品よりも高価格帯に位置している。しかし、当社は値下げ戦略を採用せず、長年にわたって培ったブランド力、独自に構築したエコシステム、高品質なサービスによって競争力を維持している。

注1:業種分類は表1に同じ。
注2:一般機械には、汎用(はんよう)・生産用・工作機械/農機・建機/金型・機械工具を含む。

出所:2025年度海外進出日系企業実態調査において、2025年の営業利益見通しが「黒字」かつ、今後の事業展開について「拡大」または「現状維持」と回答した在中国日系企業28社に対する、2026年5月~6月に実施したジェトロのヒアリング

中東情勢の影響、現時点では限定的もコスト上昇の指摘あり

外部環境の影響についても聞いたところ、中国の輸出管理措置に関しては、レアアース・黒鉛などについて輸出許可の取得難度の上昇や、許可取得に要する期間の長期化、納期遅延、書類作成負担の増加が発生しているとのコメントがあった。なお、米中両国の追加関税措置に関しては、一部で対米輸出の停止や他拠点からの対米輸出への切り替えなどもみられるものの、全体的には影響なしとの回答が多かった。

このほか、中東情勢の影響については、ヒアリング実施時点で、全体として直接的な影響はない、または限定的との回答が多数だった。影響が出ているとした企業では、各種コスト(原材料費、物流費、燃料価格など)の上昇を挙げる声が多数みられた。対応としては、価格転嫁を行うとした企業が多い一方、値上げ交渉が難しいことや、仕入れコストの上昇をカバーできるほどの価格転嫁が困難であるとの声もあった。

今回のヒアリング結果からは、中国市場の変化や中国企業の競争力向上に直面しつつも、変化に対応しながら引き続き中国市場や中国企業への販売拡大、中国企業との競争に取り組む日系企業の姿が浮き彫りになった。このような在中国日系企業の実態を定期的に把握することは重要であり、こうした情報は日系企業が今後の中国ビジネスを検討・判断する上でのヒントの1つになると思われる。


注1:
調査実施年の営業利益見込みについて、「黒字」「均衡」「赤字」のいずれかを選択する設問。 本文に戻る
注2:
在中国日系企業の景況感や事業展開意向、中国企業との競合状況や対応については、2026年4月15日付地域・分析レポート「日系企業実態調査中国編(1)在中国日系企業の景況感と事業展開意向」「日系企業実態調査中国編(2)在中国日系企業の競争環境と対応」も参照。 本文に戻る
注3:
今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」「現状維持」「縮小」「第三国・地域への移転・撤退」のいずれかを選択する設問。 本文に戻る
注4:
前年度のヒアリング調査結果は、2025年9月16日付地域・分析レポートを参照。 本文に戻る
注5:
中国のレアアースなど両用品目の輸出管理措置に関しては、2026年3月10日付2026年3月24日付2026年3月24日付2026年3月31日付地域・分析レポートを参照。 本文に戻る
注6:
中国におけるコンテンツ市場の動向に関しては、2026年2月24日付2026年4月20日付地域・分析レポート、調査レポート「中国コンテンツ市場調査 2025年版」も参照。IPとのコラボに関する取り組みについては、2025年2月25日付地域・分析レポートも参照。 本文に戻る
注7:
中国企業の海外展開動向については、ビジネス短信特集「中国企業の海外展開―製造業・グリーン・デジタル分野の最新動向―」や、2026年7月8日付地域・分析レポートを参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課リサーチ・マネージャー(執筆時点)
小宮 昇平(こみや しょうへい)
2013年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、ジェトロ・成都事務所(実務研修生)、海外調査部中国北アジア課、ジェトロ・北京事務所、調査部中国北アジア課を経て、2026年7月からジェトロ・北京事務所にて調査業務などに従事。