コンテンツ中国展開の新拠点・成都、日本企業の新たな活路
2026年2月24日
現在、日本のコンテンツ産業は「クールジャパン」戦略の再構築フェーズにあり、経済産業省も「コンテンツ産業の海外展開促進」を最重要政策の1つとして掲げている。日本発コンテンツ7分野の海外売り上げは2024年時点で約6兆円に達し、日本の一大輸出産業となっている(注1)。日本政府が2033年までにコンテンツ産業の海外売上高を20兆円にする目標を掲げていることからも、さらなる成長が期待されている。
中国は米国に次ぐ世界第2位のコンテンツ市場規模を誇り、日本にとって極めて重要なターゲット市場だ。これまでは上海市や北京市などの沿岸部が同産業における中国での主戦場とされてきたが、内陸部で大きく成長を遂げている都市が、四川省の省都・成都市だ。本稿では、中国市場への展開や開発パートナーの開拓を検討している日本のコンテンツ関連企業向けに、成都市のコンテンツ市場のポテンシャルとビジネスチャンスについて解説する。
成都市、中国西南部を牽引するハイテク産業・デジタル経済の拠点へ
成都市の人口は2,000万人超で、2024年のGDPは約2兆3,500億元(約52兆円、1元=22円)を超える中国西南地域における経済の中心地だ。中国の新華社傘下の週刊誌「瞭望東方週刊」が2025年12月に発表した「中国で幸福度の最も高い都市リスト」では、成都市は17年連続で選出されている。古くは三国志の劉備が蜀の都を開いた都市としても知られる成都市だが、現代においては中国西南部を牽引するハイテク産業・デジタル経済の拠点へと変容しつつある。
現在、同市において官民を挙げて成長しているのがコンテンツ産業だ。2月3日付の「四川日報」によれば、「成都ハイテク産業開発区」には約6,000社のデジタル文化・コンテンツ関連企業が集積。テンセント、バイトダンスといった中国のIT企業に加え、インテルなどのグローバル企業も拠点を設けている。同区内の「天府長島デジタル文創園」には、2025年に公開され世界的大ヒットとなった「哪吒(ナタ)2・魔童鬧海」をはじめとするナタシリーズを手がける成都可可豆動画影視やモバイルゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」の開発元である天美工作室群(TiMi Studio Group)が拠点を置き、コンテンツ産業を牽引している。
また、成都市は成都ジャイアントパンダ繁育研究基地があり、パンダ保護・研究拠点としてパンダを基軸とした独自の知的財産(IP)エコシステムを形成している。2021年に成都で開催されたワールドユニバーシティゲームズ(注2)の公式マスコット「ロンバオ(蓉宝)」をはじめ、市内の至るところでパンダをモチーフとしたマスコットや広告などを目にすることができる。成都市では「大パンダ文化クリエーティブコンテスト」のように、パンダに関するデザインコンテストがいくつも開催されるなど、パンダを介してさまざまなシーンで「キャラクターをIPとして育てる力」が培われており、IP利用に関してのノウハウを蓄積する機会となってきた。こういった経験が現在の同市におけるコンテンツ産業発展の土壌となっているとみられる。


成都市政府は2025年5月に、デジタルコンテンツ産業の同市での発展支援に関わる一連の政策を発表した(2025年6月12日付ビジネス短信参照)。主に、テレビ・映画、SF、ゲーム・eスポーツ、コンテンツ産業関連スタートアップ企業の育成の4つの分野に関するものとなっている。うち、デジタルコンテンツのスタートアップを対象にした政策である「デジタルコンテンツ分野におけるスタートアップ企業の育成・発展に関する成都市の政策」では、スタートアップの創業スペースの提供やオフィス家賃の補助に加え、人材の育成に関するサポートメニューも盛り込まれており、人材育成から資金調達まで一気通貫で支援する政策となっている。
さらに一般財団法人日中経済協会は2025年4月に成都市および成都市企業の日本企業に期待する分野や協業ニーズなどがまとめられた「成都対日経済貿易協力機会リスト」を公開。同リストにはコンテンツ分野に関する内容も盛り込まれている。また、成都先知者科技は、集英社、東宝、電通、ADK、東映などの多くの日本のライセンサーと協力関係を築いており、これまでに「スラムダンク」公式ライセンス版スマホゲームや、「ハイキュー!!FLY HIGH(中文タイトル 排球少年:新的征程)」「黒子のバスケ Street Rivals(中文タイトル 黒子的藍球:街頭対決)」といった人気IPを用いたゲームを開発し、大きな反響を呼んでいる。このような事例はある一方で、成都市企業とともに新たなコンテンツやIPを創出するといった連携事業を行う日本企業は、まだまだ少ないのが現状だ。
2025年の成都市デジタルコンテンツ産業の規模は4,100億元を超え、中国トップクラスに位置する見込みだ。成都市政府は2027年末までに、累計6,500件の成都市初出店となるデジタルコンテンツ関連店舗の誘致を目標に掲げており、政府も同市場の拡大に期待を寄せている(2025年4月23日付ビジネス短信参照)。成都市には、成長を続ける「大規模な市場」、世界レベルの作品を生み出す「高度な人材」、そして強力な「政策支援」を基盤としたコンテンツ産業のエコシステムが形成されつつあるとみられる。上海市や北京市などの沿岸部で競争が激化する中、官民を挙げてコンテンツ産業に力を入れ、かつ日本企業との協業を望んでいる成都市は、日本のコンテンツ産業の今後の中国展開における「重要拠点」となるのか、今後の動きが注目される。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・成都事務所
黒木 亮佐(くろき りょうすけ) - 2021年、ジェトロ入構。対日投資課、山口事務所での勤務を経て現職。






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