在中国日系企業の景況感と事業展開意向
日系企業実態調査中国編(1)

2026年4月15日

2025年8~9月に実施したジェトロ「海外進出日系企業実態調査(中国編)」(有効回答数:791社)の結果などを基に在中国日系企業の動向を分析するシリーズの第1弾。本稿では日系企業の業績見通しや景況感、今後の事業展開意欲について取り上げる。

製造業・非製造業とも黒字比率が上昇、業種間・業種内でのばらつき大

ジェトロが日本企業の海外現地法人に対して毎年実施している「海外進出日系企業実態調査」の2025年度版(2025年8~9月実施)では、同年の営業利益見込みを「黒字」と回答した在中国日系企業が63.2%となった。反日デモ直後の2012年度調査(57.2%)以来の低水準となった2024年(58.4%)より4.8ポイント上昇し、4年ぶりに回復した。

業種別(注)では、製造業の「黒字」が61.8%(前年比4ポイント上昇)、非製造業の「黒字」が64.8%(前年比5.8ポイント上昇)となり、いずれも前年比上昇して6割を超えた。黒字比率が高かった(7割以上)業種としては、精密・医療機器(81.3%)、金融・保険業(80.6%)、電気・電子機器部品(75.0%)、販売会社(73.9%)、電気・電子機器(70.8%)が挙げられる。

2025年の営業利益見込みが改善するとした割合は32%となり、こちらも前年(24.5%)比で7.5ポイント上昇した。前述の黒字比率が高かった業種のうち、精密・医療機器は50%が「改善」と回答したが、電気・電子機器部品および電気・電子機器は「改善」がそれぞれ25%、24%にとどまり、「悪化」がそれぞれ43.8%、44%となった。黒字を維持しながらもその利益水準は低下している企業が多いことがうかがえる。

営業利益が改善した企業、悪化した企業にそれぞれの理由について聞いたところ(複数回答)、改善理由としては「現地市場での需要増加」が46.5%で第1位、「輸出先市場での需要増加」が30%で第2位となった。悪化理由としては「現地市場での需要減少」が64.3%で第1位、「他社との競合激化などによるシェア縮小」が48.7%で第2位、「輸出先市場での需要減少」が27.4%で第3位となった。改善・悪化の要因として、現地市場・輸出先市場などの販売先市場が拡大傾向にあるか否かが大きく影響しているといえる。「現地市場での需要増加」および「現地市場での需要減少」の回答上位業種を見ると、例えば販売会社、輸送機器部品などはいずれの回答でも上位に位置しており、同一の業種内でも、自社の取り扱い製品の中に需要が拡大する製品がどの程度存在するかによって明暗が分かれる二極化の現状が進行していることが見て取れる。また、輸送機器部品では業績が悪化した企業(25社)のうち、52%が他社との競合激化によるシェア縮小を悪化要因の1つと回答しており、中国自動車市場のEV化や中国企業との競争激化の影響を受けていることが反映されているとみられる。

このほか、営業利益に影響した要因について自由記述の回答を見ると、具体的に市場の需要が拡大した分野としては、半導体関連製品や自動車の電子化、スマート化などが挙げられたほか、新規の顧客・販路開拓、あるいは新製品の開発などの取り組みが功を奏して業績が改善したとの回答が一定程度見られた。一方で、マイナス面の回答としては、日系企業などの顧客の業績不振や投資低迷を指摘する声も一定数見られた。

拡大意欲は過去最低、「拡大」には中国の成長分野の取り込み・中国企業への拡販がカギに

今後1~2年の事業展開の方向性については、「拡大」と回答した企業が21.3%と、調査開始以降で最低となった。中国の「拡大」は、2021年以降4年連続で下落したが、2025年は前年比0.4ポイントの縮小にとどまり、下落幅は過去3年に比べ縮小した(図参照)。他方、「現状維持」が64.3%で最大であり、「縮小」「第三国・地域への移転・撤退」は計14.4%と限定的であった。事業を「縮小」または「移転・撤退」する企業について、省市別では広東省が、業種別では輸送機器部品が最も多かった。「縮小」の理由としては取引先の他地域へのシフト、日本本社の調達方針変更、日系企業の設備投資減少、景気低迷などが挙げられた。

図:在中国日系企業の「黒字」「拡大」割合の推移(2007~2025年)
在中国日系企業に対して、2007年から2024年の期間、各年の営業利益見込みと今後1~2年の事業展開の方向性について聞いた。営業利益見込みが黒字と回答した企業の比率は2021年には70%を超えていたが、近年は低下傾向にあり、2024年は58.4%と、反日デモ直後の2012年度調査(57.2%)以来の低水準となった。2025年は63.2%となり4.8ポイント上昇し、4年ぶりに回復した。また、今後1~2年の事業展開の方向性について、拡大と回答した企業の比率は2007年には7割近くあったが、その後長期的に低下傾向にあり、2024年は21.7%と、2007年以降で最低となった。2025年は21.3%と過去最低を更新したが、前年比下落幅は0.4ポイントとなり、縮小傾向にある。

注:nは有効回答数。数値が2つある場合、前者が当該年の営業利益見込みに関する設問の有効回答数、後者が今後1~2年の事業展開に関する設問の有効回答数。
出所:ジェトロ 海外進出日系企業実態調査各年版

同回答を業種別に見ると、食料品、小売業で「拡大」が5割を超えたほか、精密・医療機器、化学・医薬、電気・電子機器も3割超が「拡大」を志向している。なお、建設業、金融・保険業、輸送機器部品では4分の1超が「縮小」と回答した。

「拡大」と回答した企業はその理由として約7割が「現地市場ニーズの拡大」を挙げた(複数回答)。拡大と回答した企業が5割超であった食料品では拡大と回答した全ての企業が同要因を挙げた。「現地市場ニーズの拡大」の内容としては、「自動化・NEV市場のニーズ拡大」「EV・半導体・電子・通信関連など中国が強みを持つ市場の拡大」「未開拓・未出店地域への展開」「中国企業への拡販」などが指摘された。「高付加価値製品・サービスの受容性が高い」も事業拡大要因として製造業で第3位、非製造業で第2位となった。具体的には、「環境に配慮したサービス」「日本独自のプライベートブランドの展開やIP(コンテンツ)」などが挙がった。中国企業の技術力・質の向上により、質の高い部品へのニーズが高まり、そのような環境下で質の高い製品を供給できる日系企業にとって新たな商機が生まれているとの趣旨のコメントも見られた。

「拡大」する機能としては、製造業、非製造業いずれも「販売」機能を拡大するとの回答が最も多かった(複数回答)。製造業では「高付加価値製品の生産」が、非製造業では「新規事業開発」がそれぞれ第2位となった。事業拡大の具体例を見ると、分野としては半導体、NEV、ヒューマノイドロボット、医療、スポーツ衣料、冷凍食品、SDGsなどが挙がった。取り組みとしては、より消費者に近い川下ビジネスの開拓、製品ラインアップの拡大、コスト競争力強化のための合理化投資、内陸部での拡販、EC販売の強化、第三国・地域での販売拡大、製品の国産化、製品化のスピードアップのための開発・設計の現地化、事業判断の迅速化のための地域統括機能強化などが示されている。

「現状維持」の内実は多様、中国企業への拡販や第三国・地域への展開を図る企業も

一方、今後の事業展開について「現状維持」と回答した6割超の企業に対してその理由を聞いたところ(自由記述)、単純な様子見姿勢とは一線を画す回答も多数見られた。例えば、短期的には中国の景気の厳しさ、今後の見通しの不透明性などを認識しつつも、中長期的には中国市場が引き続き自社にとって重要であるとの認識の下、現状を維持しつつ、今後の回復に備えるとする姿勢を示す企業も多数存在する。なお、リソースの制約がある中で現状拡大は難しく、また、中国企業との競争が激化する中で縮小を食い止めるために必死の努力をしている結果としての現状維持であるとの回答も複数見られた。

実際に、「現状維持」と回答した企業に、現状を維持するための工夫や取り組みについて聞いたところ(複数回答)、「他分野・他地域への販売拡大を見据えた体制・戦略の見直し」と回答した企業が約5割おり、「日系以外の企業への販路開拓へ向けた取り組み」を進めている企業も4割を超えている。「他分野・他地域への販売拡大を見据えた体制・戦略の見直し」の例としては、中国企業の海外需要の取り込みや中国以外の地域への販路拡大、新しい販売先・販売チャネルの開拓などが、「日系以外の企業への販路開拓へ向けた取り組み」の例としては、中国企業への営業強化、営業力向上、日本やASEANなど第三国・地域への営業拡大などが挙げられている(表参照)。中国企業が中国国内の「内巻」(過当競争)を回避すべくASEANなど第三国・地域への展開を進める中、在中国日系企業もその流れに乗って他地域への販路開拓を図ろうとする姿勢がうかがえる。また、中国発の人工知能(AI)技術やソリューションを活用して販売の強化や生産性向上を図る動きもある。中国で成長トレンドにあるロボット、医療機器、モビリティー、AIサーバーなどの新興分野の勢いに乗って自社製品の需要開拓を狙う意欲も旺盛だ。

表:現状を維持するための工夫や取り組み(自由記述)
項目 工夫や取り組み
これまでとは異なる分野・地域への販売拡大のための体制や戦略の見直し
  • 中国企業の海外需要の取り込み
  • 中国企業経由での第三国・地域輸出の増加
  • 客先(中国企業)が欧州などの他地域へ進出するのに合わせて製品(設備)を出荷
  • インド、東南アジアへ販売拡大
  • 東南アジアへの販路拡大の目的で、タイの展示会へ出展し会社・製品紹介を実施
  • 新しいビジネスソリューションの開発に努め、最新のテクノロジー(AIなど)を活用して販売力を拡大
  • AIサーバーなど新分野への販売拡大
  • ロボット・医療機器など新分野需要の開拓
  • モビリティー分野への深堀
  • グループ企業からの受託業務の拡大
  • EC、量販、コンビニなどでの販路拡大
  • 現地ディストリビューターの探索、育成
  • 新商品の立ち上げ
  • 日本本社以外の日本企業への販売
  • グループ会社以外への新規拡販
  • 医療品加工販売に向けた体制変更
  • 開発のみならず要件定義などコンサルティング分野への展開
  • 保有技術での他分野への営業
新規販路開拓へ向けた取り組み(日系企業以外への販路拡大など)
  • 中資系OEMへの営業活動強化、販路拡大
  • 中資系企業をターゲットとした営業の強化、営業力の向上
  • 中国パートナー企業との協業
  • 医療や重工業などの現地企業への新規販路開拓
  • 代理店経由での非日系企業への販路拡大
  • 中国系、外資系企業への販促活動強化
  • 東南アジアへの営業拡大、日本のインバウンド業務の継続推進
  • 日本本社開発品を現地生産販売によって付加価値品として売上拡大
  • 日本製商品の現地企業による販売拡大
コスト低減努力
(調達変更や人員削減など)
  • 生産効率を高めるために適切な人的資源を確保
  • 生産性向上、人員削減
  • 若い営業駐在員を派遣、管理層駐在員を削減
  • 事務スタッフの削減
  • 売り上げ減少に合わせて人員削減
  • クロススキル導入、多機能人材育成による業務効率向上
  • 機械自動化、AIによるソフト開発自動化・省人化の推進による生産性の改善
  • 仕様見直し
  • 調達コストの低い仕入れ先へのシフト
  • 新規調達先開拓
  • 日本からの輸入材料を現地調達に切り替え
  • 2社購買化など調達先の複数化
  • オフィスコストの低減
  • 構造改革の実施

出所:2025年度海外進出日系企業実態調査(中国編)

この結果から、「現状維持」を選択した企業の半数近くが、単純な様子見の姿勢というよりはむしろ今後のさらなる成長・拡大に備えた種まきのための取り組みを進めていることが分かる。「拡大」企業については、中国事業が好調な企業として、その取り組みなどをヒアリングしつつ、ベストプラクティスの1つとして紹介してきた(2025年9月16日付地域・分析レポート参照)。今後は多数を占める「現状維持」企業についてもその動向をしっかりと把握した上で、こうした日系企業の取り組みを支援する方策を検討する必要があるだろう。

前述の調査結果をまとめると、中国の日系企業の営業利益見通しは「黒字」との回答比率が4年ぶりに上昇に転じ、6割台を回復した。また、営業利益見込みが「改善」したとの回答が前年比で上昇し、3割台となった。一方、今後の事業展開意欲については、「拡大」との回答が21.3%で最低となったものの前年比の下落幅は縮小している。営業利益、事業展開ともに業種ごと、あるいは業種内におけるばらつきが大きくなっている。また、個別企業の声を見ると、事業展開を「現状維持」すると回答した64.3%の企業においても、その内実は多様であることがうかがえる結果となっている。調査実施後の日中関係には変化も見られるものの、個々の回答の裏側にある日系企業の実態を従来以上に丁寧に把握し分析することが、変化が激しい中国市場における日系企業の動向を理解する上でより重要となるとみられる。


注1:
業種分類は次のとおり。
製造業:食料品、繊維・衣服、紙・木製品・印刷、化学・医薬、プラスチック製品、ゴム・窯業(ようぎょう)・土石、鉄・非鉄・金属、一般機械、電気・電子機器、電気・電子機器部品、精密・医療機器、輸送機器、輸送機器部品、その他製造業
非製造業:農林水産業、鉱業・エネルギー、建設業、運輸業、情報通信業、商社・卸売業、小売業、販売会社、金融・保険業、不動産・賃貸業、事業関連サービス、旅行・娯楽業、飲食業、教育・医療、その他非製造業 本文に戻る

日系企業実態調査中国編

シリーズの次の記事も読む

(2)在中国日系企業の競争環境と対応

執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 リサーチ・マネージャー
小宮 昇平(こみや しょうへい)
2013年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課に配属。2016年3月より1年間の海外実務研修(中国・成都事務所)を経て、2017年3月から2018年8月まで中国北アジア課に所属。2018年8月から2023年7月まで中国・北京事務所にて調査業務等に従事。2023年7月から現職。