在中国日系企業の競争環境と対応
日系企業実態調査中国編(2)
2026年4月15日
ジェトロが2025年8~9月に実施した「海外進出日系企業実態調査(中国編)」(有効回答数:791社)の結果などを基に在中国日系企業の動向を分析するシリーズの第2弾。本稿では日系企業の競争環境やそれを踏まえた取り組みについて取り上げる。
競合相手としての中国企業の台頭が進んでいることを確認した上で、在中国日系企業が中国企業と比較した際に自社の強み・弱みをどのように認識し、どのような対応を進めているのか、アンケート結果や現地でのヒアリングなどを基に紹介する。その上で、中国のみならず今後ASEANなどの第三国・地域でも中国企業と向き合う必要性がより高まる点を踏まえて、日系企業に対する示唆について考察する。
在中国日系企業の約4分の3が最大の競争相手を中国企業と回答
「海外進出日系企業実態調査(中国編)」2025年度版(2025年8~9月実施)では、在中国日系企業の約4分の3にあたる74.5%の企業が自社にとっての最大の競合相手は中国企業だと回答した。第2位は日系企業で13.5%となった。
業種別に見ると、製造業の8割超、非製造業の約7割が中国企業を最大の競争相手と回答した。製造業では電気・電子機器部品、輸送機器、紙・木製品・印刷において9割超が、輸送機器部品においても約9割が中国企業と最も競合すると回答した。非製造業では不動産・賃貸業、小売業、販売会社、建設業、商社・卸売業、運輸業で7割以上が中国企業と最も競合するとした。
2019~2024年に6割の企業で競合企業が増加、4割超でシェア縮小
中国における競争の激化は短期的な現象ではなく、比較的長期のトレンドとなっている。「海外進出日系企業実態調査(中国編)」2024年度版(2024年8~9月実施、有効回答数771社)では、2019年と比較した自社の主力製品・サービスの市場シェアについて、在中国日系企業では「増加」したとの回答が29.2%にとどまった一方、「縮小」したとの回答が41.9%に上った。
2019年と比較した競合相手の数の変化を聞いた設問では、在中国日系企業の6割が競合の数が「増加」したと回答し、「減少」したとの回答はわずか4.7%だった。製造業では、化学・医薬、一般機械、輸送機器部品において、競合が増加したとの回答が約7割となった。なお、前述の設問(過去5年のシェアの増減)において、輸送機器部品は57.8%が縮小(増加は21.9%)と回答しており、競争激化によるシェアの縮小がみられる典型的な業種となっている。他方、食料品や電気・電子機器部品はそれぞれ競合先が増加したとの回答が58.1%、57.1%と平均並みの水準であるにもかかわらず、シェアについては食料品で64.5%が、電気・電子機器部品では42.9%が拡大したと回答している。これらの業種においては競争が激化する中でも自社の優位性を維持・強化することでシェアの拡大を果たした企業が多いとみられる。
競合企業の主な競争力はコスト面と意思決定のスピード
同じく2024年度版の「海外進出日系企業実態調査(中国編)」において、最大の競合企業についてそう考える理由を聞いたところ(複数回答)、「コスト競争力」が84.7%で第1位、「意思決定の早さ(顧客対応や現地市場への適合など)」が55.8%で第2位となった。そのほか、小売業、アパレル、電気・電子機器部品、輸送機器部品などでは「納品・提供までのスピード」が、食料品や金融・保険業などでは「販売ネットワーク」が、精密・医療機器、一般機械、輸送機器などでは「製品・サービスの技術力」が、金融・保険業、精密・医療機器、小売業、情報通信業では「市場ニーズに適した製品・サービスの開発力」が比較的高くなっている。
競争上の対策は製造業ではコスト削減、非製造業は製品・サービスの開発・多角化
「海外進出日系企業実態調査(中国編)」2025年度版において、最大の競合相手との競争において、特に力を入れて取り組んでいる対策について聞いたところ(複数回答)、第1位が「価格の引き下げ(利幅調整を含む)」で44.9%、第2位が「コスト削減(人件費、光熱費などの削減、生産効率の改善など)」で44.8%、第3位が「進出先の市場ニーズに合わせた製品・サービスの開発」で40.4%となった。
製造業では、「コスト削減(人件費、光熱費などの削減、生産効率の改善など)」が約6割で最大だった。第2位が「価格の引き下げ(利幅調整を含む)」、第3位が「コスト削減(調達先切り替えなどによる原材料費の削減など)」となっており、全体的にコスト面での対策が中心となっている。特に、輸送機器部品では、上記の上位3項目がいずれも7割超となっており、「内巻」(過当競争)の影響を受け、コスト面での対応が強く求められているとみられる。非製造業では、「製品・サービスの多角化」「進出先の市場ニーズに合わせた製品・サービスの開発」の順に回答割合が高かった。「現地企業との協業・連携」の回答割合も比較的高かった。
また、競争が激化する環境下でコストの引き下げがさらに求められている中、日系企業の現地調達が進んでいる点が指摘できる。2025年度調査の中国現地からの調達率は73.6%(平均値)となり、7割を突破した。輸送機器では86.3%、食料品では82.1%に達している。さらに、現地での調達先の内訳(平均値)は「地場企業(中国企業)」(71.3%)、「進出日系企業」(24.5%)、「その他外資企業」(4.2%)となった。一般機械、化学・医薬、食料品、輸送機器などでは地場企業からの調達が約8割となっている。前述の現地調達率に、地場企業からの調達率を乗じると、在中国日系企業全体の調達の約5割が既に中国企業からの調達となっているとみなせる。中国企業の価格競争力の高さから、今後も日系企業はコスト引き下げの手段の1つとして、中国系サプライヤーからの調達を進めていく可能性がある。
日系企業、強みは性能・品質、弱みは価格や市場投入までのスピードと認識
同じく「海外進出日系企業実態調査(中国編)」2025年度版において、ターゲットとする市場における自社の強みと弱みを聞いた結果(複数回答)を「強みがある」割合から「弱みがある」割合を差し引いたDI値で算出したところ、製造業では、「性能・品質の高さ」や「アフターサービスの充実度」に強みを、「価格」や「市場投入までの速さ」に弱みを感じている企業が相対的に多かった。非製造業では、上記項目に加えて、「人材」に関して優位性を感じている企業が多い傾向にある。このほか、輸送機器部品では「マーケティング・販売」「市場のニーズやスピードに適した製品・サービスの開発力」「経営判断〔意思決定〕の早さ」に、一般機械では「市場のニーズやスピードに適した製品・サービスの開発力」「マーケティング・販売」に、電気・電子機器部品では「市場のニーズやスピードに適した製品・サービスの開発力」に弱みを感じている割合が比較的高かった(表参照)。
| 項目 | 総数(686) | 製造業 | 非製造業 | ||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
製造業 合計 (371) |
輸送機器部品 (61) |
鉄・非鉄・金属 (40) |
化学・医薬 (36) |
一般機械 (35) |
電気・電子機器部品 (30) |
非製造業 合計 (315) |
商社・卸売業 (81) |
情報 通信業 (43) |
運輸業 (32) |
金融・保険業 (27) |
事業関連サービス (23) |
||
| 性能・品質の高さ | **79.3 | **89.8 | **83.6 | **92.5 | **97.2 | **80 | **93.3 | *67 | *64.2 | *69.8 | **71.9 | *51.9 | *56.5 |
| アフターサービスの充実度 | *44.9 | *45.3 | *54.1 | *42.5 | *38.9 | *34.3 | *60 | *44.4 | *34.6 | *46.5 | *46.9 | *51.9 | *30.4 |
| ブランドの浸透度 | 23.6 | 29.9 | *31.1 | *35 | *33.3 | 14.3 | 26.7 | 16.2 | 9.9 | 4.7 | 21.9 | 18.5 | △ 4.3 |
| 人材 | 18.1 | 1.9 | △ 1.6 | △ 2.5 | 0 | △ 31.4 | 16.7 | *37.1 | *38.3 | *58.1 | *34.4 | *59.3 | *34.8 |
| 納期 | 17.6 | 22.6 | *31.1 | 15 | *33.3 | △ 28.6 | *43.3 | 11.7 | 12.3 | 27.9 | *46.9 | 0 | 0 |
| 知的財産 | 9.2 | 7.5 | 8.2 | △ 12.5 | 13.9 | 2.9 | 0 | 11.1 | △ 1.2 | 16.3 | △ 3.1 | 14.8 | 17.4 |
| 流通チャネル | 6.1 | 5.9 | 4.9 | 2.5 | 25 | △ 11.4 | 20 | 6.3 | 14.8 | △ 9.3 | *43.8 | △ 3.7 | △ 17.4 |
| ビジネスモデル | 3.5 | △ 2.7 | △ 11.5 | 2.5 | 11.1 | △ 8.6 | 6.7 | 10.8 | 11.1 | 20.9 | 6.3 | 25.9 | 8.7 |
| 経営判断(意思決定)の早さ | △ 3.5 | △ 7.3 | △ 24.6 | △ 2.5 | 0 | △ 14.3 | △ 3.3 | 1 | 6.2 | 25.6 | 15.6 | 0 | 8.7 |
| 市場のニーズやスピードに適した製品・サービスの開発力 | △ 5.1 | △ 9.7 | △ 24.6 | △ 2.5 | 2.8 | △ 28.6 | △ 30.0 | 0.3 | 2.5 | *32.6 | 0 | 7.4 | 4.3 |
| マーケティング・販売 | △ 9.6 | △ 12.7 | △ 26.2 | △ 5.0 | 8.3 | △ 22.9 | 10 | △ 6.0 | 7.4 | △ 4.7 | △ 25.0 | 11.1 | △ 26.1 |
| 市場投入までの速さ | △ 20.3 | △ 25.9 | △ 42.6 | △ 10.0 | △ 25.0 | △ 54.3 | △ 23.3 | △ 13.7 | △ 8.6 | 16.3 | △ 6.3 | △ 18.5 | △ 13.0 |
| 価格 | △ 43.0 | △ 55.3 | △ 50.8 | △ 65.0 | △ 52.8 | △ 77.1 | △ 66.7 | △ 28.6 | △ 25.9 | 16.3 | △ 21.9 | △ 7.4 | △ 39.1 |
注1:DI値は「強みがある」割合から「弱みがある」割合を差し引きして算出。
注2:DI値が100~70は**、70未満~30は*。
出所:2025年度海外進出日系企業実態調査中国編
製造業を中心にタイなどASEANでも高まる中国企業との競合
中国企業との競合の高まりは中国以外の地域でも意識されている。「海外進出日系企業実態調査2025年度版(アジアオセアニア編)」より、アジアオセアニア地域(北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域、有効回答4,438社)全体において最大の競合相手を中国企業とする回答は31.2%で選択肢の中で最多となった(注1)。
特にASEAN域内においては、タイ、カンボジア、ラオスで、中国企業が地場企業や日系企業を上回って最大の競合相手となっている。この傾向は製造業に限定するとより顕著だ。ASEANの製造業では、競争力が最も強いと思う相手として中国企業(33.9%)が最多となり、地場企業(21.8%)、日本企業(21.7%)を上回っている。国別では、タイで中国企業との回答割合が4割を超えたほか、シンガポールを除く主要国において、中国企業を最大の競合相手とする回答割合が前年を上回っている。同回答割合がフィリピンは前年比で15ポイント以上、インドネシアでは10ポイント以上上昇している(図参照)。
注:有効回答30社以上の国。
出所:2025年度海外進出日系企業実態調査(アジアオセアニア編)
製造業の業種別に見ると、タイ、ベトナムでは電気・電子機器部品で、マレーシアでは電気・電子機器で、インドネシアでは一般機械において、最も競争力のある相手として中国企業を挙げた回答が多かった。輸送機器部品では最も競争力のある相手として中国企業と回答した割合が、タイで45.5%、ベトナムで27.3%、インドネシアで21.2%となった(注2)。
ASEAN製造業においては今後中国企業との競争がさらに激化する可能性もあり、在中国日系企業のみならず、より幅広い国・地域の日系企業が今後中国企業との向き合い方を問われることになるとみられる。そうした観点からも、現状、まさに台頭する中国企業と直面している在中国日系企業の取り組みから参考にできる部分は多いだろう。
ヒアリングから探る、中国企業との競争における対応策
直近、2026年3月に実施した在中国日系企業に対するヒアリングによると、中国企業との競合について以下のような見解や取り組みがみられた(注3)。
- 中国企業と価格競争になっては勝てないとの認識の下、性能・技術面で優位性のある製品・技術で差別化を図り、大手国有企業から受注を獲得(素材)。
- 競争力のある中国製アプリケーションをパッケージ化して顧客に提供、日系企業が間に入って統合することで安心や品質を保証(IT)
- 中国ロボット企業にアプローチしても日系企業に対する技術ニーズがそこまで高くない。間接部品など精密機器では一部食い込めている。ロボットのコストに占めるシェアが高い減速機では日系がシェアを持っている。
- 新型コロナ禍で商業施設での「ついで買い」需要が消失し、売り上げが落ち込んだが、有名IP・異業種チェーンとのコラボによる販促、EC・ライブコマースの活用など販売チャネルの多様化などの取り組みで売り上げを回復。競合の中国企業は大量生産で安価な製品を供給可能。デフレ下の中国市場では付加価値がないものは安売りされるので、健康教室の開催などを通じて健康面の付加価値を訴求。ロイヤルカスタマーは味や品質を評価してくれる(食品)。
- 中国市場は過当競争となっており、家庭用製品では価格面で勝負できないため、より利益を取れる業務用・医療用に注力。低価格なエントリーモデルやサブスクリプションサービスの開発にも取り組む。中国拠点の生産能力を今後5年で倍増させ、増産分について中国企業との競合が少ないインドなど第三国・地域への販売拡大を図る(医療機器)。
中国市場の「内巻」の下で中国企業との価格競争に陥らないよう、付加価値(安心安全、質、健康、有名キャラクターなど)の付与やそのPRによって差別化・ブランド化を図る企業が多い。また、中国製品・中国企業や自社の中国生産拠点の競争力をリソースとして活用していく方向性もありうるだろう。
中国政府が「内巻」対策を推進している一方で、実態としては「内巻」が継続するのではとの指摘もある中、日系企業は中国および第三国・地域において、高い価格競争力を有する中国企業・製品との競合を迫られる場面が増加する可能性が高い。価格のみの競争に陥るのを回避し、前述のような付加価値を付与し、その価値を浸透させることが1つの解となり得るかもしれない。
- 注1:
-
同設問の競争相手(国・地域別)の選択肢は中国企業、地場企業、日系企業、欧州企業、インド企業、米国企業、台湾企業、韓国企業。
- 注2:
-
タイの自動車関連などの日系企業における中国企業との競合については、例えば2025年3月24日付地域・分析レポート参照。
- 注3:
-
このほか、在中国日系企業の競争上の対応としては、営業利益が「黒字」でかつ事業展開意欲が「拡大」と回答した黒字・拡大企業の強み・弱みや各種の取り組みについて紹介している(2025年9月16日付地域・分析レポート参照)。
日系企業実態調査中国編
シリーズの前の記事も読む
- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部中国北アジア課 リサーチ・マネージャー
小宮 昇平(こみや しょうへい) - 2013年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課に配属。2016年3月より1年間の海外実務研修(中国・成都事務所)を経て、2017年3月から2018年8月まで中国北アジア課に所属。2018年8月から2023年7月まで中国・北京事務所にて調査業務等に従事。2023年7月から現職。





閉じる




