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グルテンフリー

フランスにおけるグルテンフリー市場は年々拡大し続けており、仏調査会社Xerfiの調査1によれば、2016年の市場規模は5億2,000万ユーロ、グルテンフリー食品を定期的に購入している人は1,160万人に上ると見込まれている。

2010年頃からブームに後押しされるように、グルテンフリー対応レストランや小売りの専門店が増加したが、グルテンフリーの菓子やパンは、「作るのが難しい」「味がおいしくない」と言われ、閉店する店もあった。

そんな中、「膨らみにくく、硬くなりやすい」というグルテンフリーパンに対する従来のイメージを変えたのは、2014年にオープンした、グルテンフリーパン専門店「シャンベラン」。小麦粉は使わず、米粉を主原料として使っている。パンに適したイタリアやフランス産の米を製粉し、そば粉と米粉からおこした酵母をミックス。薄く長方形にのばしたパンは、表面がこんがり焼かれ、弾力のある米粉特有の食感と調和がとれている。また、オリーブオイルが入ったイタリア発祥のパン「フォカッチャ」は米粉のみで作るなど、レシピの研究も進み、質も向上している。

一方、品種改良をしていないフランス産の古代麦を使用することで、「良質なグルテン」を選択するパン職人も現れている。現代の小麦に比べて繊維質が多く、グルテンアレルギーの人でも消化しやすいという。この点においては懐疑的な声もあり注意が必要だが、古代麦は無農薬または低農薬で栽培できるため、環境問題や地産地消の観点からも、今後さらに注目されていくだろう。

ビーガン市場

フランスのビーガン市場は、調査によって数字の差はあるが仏調査会社L’Obsocoが実施したアンケート調査2によれば、動物性食品を摂取しない“ビーガン”は、フランスの人口の0.4%程度、肉はとらないが乳製品、卵など動物性食品は摂取する“ベジタリアン”は6 %、さらに、肉の摂取を減らす食生活を心掛けている“フレキシタリアン”は8 %に上ると推測している。

チェーン系有機専門店ナチュラリアが2017年以降100 %ビーガン専門店をパリに4店舗オープンさせるなど、ビーガン・ベジタリアン市場の拡大を感じさせられる。

食品に続いて、徐々にビーガン製品の開発が進んでいるのがアルコール分野だ。ワインのほか、スパークリングワイン、シャンパン、シードル、ビール、蒸留酒にも広がっている。

「ビーガン向けアルコール」ときいても、アルコールと動物由来の食品との関係は想像しにくいだろう。しかし実際、ワイン醸造の最終段階では、にごりを吸着させる清澄剤として動物性のゼラチンや卵白、牛乳から抽出されるカゼインなどが使われており、また、ビールには同様の目的で、魚の浮袋が使われている。そして、これらの動物由来原料の代替として、鉱物由来の粘土ベントナイト、エンドウ豆、ジャガイモの粉、炭などが使用されたり、または無清澄で出荷されたりしたものが、「ビーガン向け」のアルコールとなる。

動物性食品の消費を減らす動きは、著名なレストランやシェフからも発信されている。例えば、パリの5つ星ホテル「シャングリ・ラ ホテル パリ」では、100%ビーガンのアフタヌーン・ティーを提案。他に、精進料理からヒントを得、肉を使わない料理を提供する、ミシュランのレストランガイドで3つ星を獲得したレストラン「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」もある。新しい技術の探求も必要となりそうだが、食材に制約がある分、伝統の枠にはまらず、創造力が発揮できると考える料理人もいる。

一方、約10年前からハンバーガー人気が続き、ステーキ専門店の開店も続いた。その多くが牛肉の質の高さを謳った高級店。食べる回数は減らすが、食べるなら良質な肉を選びたいという、現代フランス人の消費傾向がみえる。

グルテンフリーとビーガンの流れについて、「ブーム」「アメリカ文化の影響」といった声もあるが、食に対するフランス人の意識が変わってきたことは確かだろう。

  1. Xerfi 「Le marché des produits pour allergiques et intolérants alimentaires à l’horizon 2020」
  2. L’OBSOCO « Le véganisme » 2018年6月発行
    L’OBSOCOが18歳~70歳のフランス人4,040人を対象に行ったwebアンケート調査から推定